韓国で再び注目されるFMC/FMSサービス
KTとSKテレコムが相次いでサービスを投入
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20100304/345327/?ST=network
bstitution,携帯による固定の代替)サービスを開始している。相次いで始まったFMC/FMSサービスの概要とその反響をリポートする。
(日経コミュニケーション編集部)
亀井 悦子/情報通信総合研究所 研究員
韓国で,再びFMC/FMSサービスが盛り上がりを見せてきた。KTは2009年10月にFMCサービス「QOOK & SHOW」を,SKテレコムは同年11月にFMSサービス「T Zone」を始めた(表1)。過去には,KTが「One Phone」というFMCサービスを,韓国LGテレコムが「気分ゾーン」というFMSサービスを展開したことがあった。しかしこれらは一時的なブームにとどまり,サービスとして広く受け入れられるまでには至らなかった。
表1●KTの「QOOK & SHOW」とSKテレコムの「T Zone」の概要
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KTのFMCサービスやSKテレコムのFMSサービスは,以前のサービスとどのように違うのだろうか。
無線LANでVoIP通話ができるQ&S
2004年にKTが提供を始めたFMCサービスのOne Phoneは,サービス開始からわずか2年で新規受け付けを終了した。屋外では携帯電話,屋内ではBluetoothによって固定電話が利用できるというものだったが,消費者に深く浸透することはなかった。
これに対してQOOK & SHOWは,一つの携帯電話端末機で第3世代携帯電話(3G)のW-CDMAと無線LANの両方で音声通話を利用できるサービスである。サービス名のQOOK & SHOWは,固定電話やVoIP(voice over IP),ブロードバンドなどKTの固定通信サービスのブランドである「QOOK」と,携帯電話ブランドの「SHOW」をつなぎ合わせたものだ。
QOOK & SHOWを利用すれば,無線LANが使える自宅などで無線LAN経由のVoIP通話が可能となる。通話料は固定電話へが3分39ウォン(約3円),携帯電話へが10秒13ウォン(約1円,3分では234ウォン=約18円)。通常の携帯電話からの通話は,固定あても携帯あても10秒18ウォン(約1.4円,3分では324ウォン=約25円)であり,特に固定への通話が大幅に安くなる。
またKTは,韓国国内に約1万3000カ所の公衆無線LANアクセス・ポイント(AP)を保有しており,これら公衆無線LAN AP経由でもVoIP通話が可能だ。データ通信も公衆無線LAN APを経由した場合は通信料が無料となる。QOOK & SHOWを利用することによってユーザーは,音声通話料を月平均34.8%,データ通信料を同88%節約できるとKTは説明している。
写真1●KTの「QOOK & SHOW」対応端末
左が「KTT-F110」(韓国KTテック製),右上が「SPH-M7200」(韓国サムスン電子製),右下が「SPH-M8400」(同)。
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One Phoneが普及しなかった大きな要因としては,当時の監督機関であった情報通信部(現放送通信委員会)が端末補助金の支給や料金割引などを許可しなかったことで料金メリットを出せなかったことが挙げられる。情報通信部は,KTの固定通信市場における市場支配力が融合サービスで行使される懸念があると見ていたからである。
しかし現在は状況が大きく変わっている。2009年6月にはKTと子会社のKTFが合併し,現KTは固定通信と携帯電話の両方を手掛ける通信事業者となっている(関連記事)。放送通信委員会も,今のところQOOK & SHOWに対して規制をかける動きは見せていない。
QOOK & SHOWに対応した端末は,2009年12月時点で3機種(写真1)。2009年12月1日に発売された最新機種の「SPH-M8400」(韓国サムスン電子製)は,W-CDMAと無線LANのほか韓国版モバイルWiMAXサービスの「WiBro」にも対応している。ただし,WiBro経由ではVoIPは利用できない。
KTはW-CDMA,無線LAN,WiBroの三つの無線技術を活用しようという「3W戦略」を打ち出しており,対応端末の発売もこの戦略の一環だ。
指定地域の通話が割安なT Zone
一方,FMSサービスとは自宅などから発信した携帯電話の料金を固定電話並みに割り引くサービスである。通話料が固定電話と同等(あるいはそれ以下)になるものの,FMCとは違って通信経路は携帯電話網のままである。
韓国初のFMSサービスとして注目されたのは,2006年にLGテレコムが始めた気分ゾーンだ。自宅や会社に設置したBluetooth対応APの半径30m以内の割引ゾーンでは,携帯電話を利用しても固定電話並みの通話料金が適用されるサービスだった。一時的に人気を博したものの,自宅などでは携帯電話で通話しようという利用者が多くなかったことや,割引ゾーン以外での料金メリットがそれほど大きくなかったことなどから有名無実化してしまった。
これに対してSKテレコムが提供するT Zoneでは,ユーザーが指定する「住所地」から半径50m程度の地域での通話に割安なVoIP水準の料金を適用する(SKテレコムは半径25m内は割引を保証するとしている)。通話料はKTのQOOK & SHOWと同じだ。
QOOK & SHOWとは異なり,対応端末を購入する必要がなく,サービスに申し込めば月額2000ウォン(約154円)の基本料を支払うだけで利用できる。契約中の料金割引プランとの併用も可能。これらがT Zoneのセールス・ポイントとなっている。SKテレコムは,標準料金プランの利用者で月200分通話する人の場合,通話料を40%程度節約できると試算している。
T Zoneには10日で10万人の加入者
これら新サービスに対する消費者の注目度は高いようだ。
KTのQOOK & SHOWは,新たに対応端末を購入する必要があるうえ,その対応3機種が時差的に発売されたことなどにより,2009年11月時点の加入数は5000弱程度にとどまった。
対するSKテレコムのT Zoneは,サービス開始10日間で10万人が加入したという。加入者の属性を見ると男女比は55対45で大差ないが,年代別で見ると20~30代が6割以上を占めている。これは携帯電話の利用頻度が高く,通信料に敏感なビジネスパーソンや主婦などを中心とした利用者層と推測される。月額150円程度で利用でき,またいつでもやめられることから,気軽に「お試し感覚」で申し込んでいるユーザーが多いのだろう。
3グループがFMC/FMSで競合
2008年以降,韓国では固定・携帯の通信事業者の統合が進んでいる。SKテレコムやKTに続き,2010年1月にはLGグループの通信3社が合併した。同グループも,既にFMCサービスの提供意向を明らかにしている。
これまではバンドル・サービスが加入者のつなぎとめや新規加入の促進に有効な手段と考えられてきたが,今後はFMCやFMSサービスがそれに取って代わる可能性がある。今年は,KT,SK,LGの3グループがユーザーの「お得感」を実感できるようなFMC/FMSサービスを投入するだろう。その一方で,各事業者にとっては,これらによって減少する音声通話収益を補う新規事業の基盤固めが急がれる。
亀井 悦子(かめい えつこ)
情報通信総合研究所 研究員
1988年NTT入社,2006年より現職。韓国を中心にアジアなどの新興国におけるICT分野に関する調査・研究を行なっている。
この記事は情報通信総合研究所が発行するニュース・レター「InfoComモバイル通信ニューズレター」(旧InfoCom移動・パーソナル通信ニューズレター,2009年4月号より内容を一部刷新し名称変更)の記事を抜粋したものです。
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[2010/03/29]