ネットワーク経由でもっと便利に地デジを楽しむ
地デジチューナーの発売が解禁された当初は、録画したデータは録画したPCで見ることしかできず、メディアにダビングするとしても画質で劣るDVDがやっとの状態だったため、「アナログから地デジになってコンテンツが自由に扱えず不便になった」と感じたユーザーも多かったはずだ。
http://ascii.jp/elem/000/000/498/498482/
しかしそれから約2年。各メーカーの開発により、ようやくアナログ時代以上の利便性を実現しつつある。それが録画番組のネットワーク配信機能だ。
アナログ時代もネットワーク配信できる製品があったが、統一されたものではなく、各社独自仕様のものが中心だった。それがデジタル時代になり、メーカーをまたいだ機器間で録画データを楽しめるようになってきた。今回はその最新事情を解説しよう。
LAN経由でデジタル放送を配信するのに
必要となる「DLNA」と「DTCP-IP」
現在たとえば無線LANでPCやデジタル機器を接続するのに、特定のメーカーの製品同士でないと接続できないかも……などと気にするユーザーはほとんどいないだろう。著作権保護が施されたデジタル放送の録画データでも、無線LANなどと同じように統一された規格でデータの再生や転送が可能になりつつある。それがDLNAとDTCP-IPだ。
DLNA(Digital Living Network Alliance)は、PCとデジタル家電を繋ぐ約束事(方式)を策定するための団体で、この団体にはインテル、マイクロソフトなどPCの基幹となる製品を作るメーカーから、パナソニック、シャープ、ソニーなどの家電メーカーまで幅広く加盟している。この団体が策定したルールにしたがって作られた製品がDLNA認定製品だ。
日本の家電メーカーが中心になって構成されているDLNAのサイト
DLNAに対応していれば、メーカーが違っても相互にネットワークを通して、映像、写真、音楽データを機器間で共有することができる。つまり、無線LANでいうところのIEEE802.11b/g/nのようなものだ。DLNAにも複数のバージョンがあるため、認定されているからと言って必ずしも繋がるわけではないが、これは今後徐々に整合性がとれていくだろう。
ただし、DLNAに対応しているからといって、それだけでデジタル放送のデータをネットワーク経由で再生できるわけではない。というのも、デジタル放送では勝手に録画データを複製できないよう著作権保護が求められている。しかし一般的なTCP/IPのネットワークは基本的にデータを暗号化せずに送受信するため、そのまま録画データを流したのでは、簡単にコピーできるソフトが作られてしまう。
そこで、通信の中身を暗号化し、データ複製が勝手に作れない仕組みが開発された。それがDTCP-IPだ。DTCPは元々IEEE1394(i.LINK)で搭載されていた著作権保護技術をIPネットワーク上で使えるようにしたものである。
DLNAでメーカー間で共通の通信方式を確立し、DTCP-IPで著作権を保護する。この2つがそろってようやく家庭内でデジタル放送(3波チューナーで録画したBS/110度CSデジタル放送も含む)の録画データを共有することができるようになったわけだ。
第2回第3回で紹介した、PC用の地デジチューナー製品には、このDLNA/DTCP-IPに対応したサーバーソフトが搭載されるケースが多くなっている。たとえばアイ・オー・データ機器の「mAgicTV Digital」ではソフトウェアをインストールするだけで、何も設定しなくとも録画した番組をネットワーク越しに再生できた。
「mAgicTV Digital」に添付されているサーバーソフトウェアから配信の設定が行なえる
DLNA+DTCP-IPの組み合わせで、デジタル放送の録画データをネットワーク配信できることがわかったが、さて実際にはどのような組み合わせで映像を楽しむことができるのだろうか。次ページ以降で具体的に紹介していく。
3万円で購入できるお手頃&高性能メディアプレーヤー
「プレイステーション3」
プレイステーション3(PS3)は非常に高い処理性能を持つゲーム機として知られている。しかしそれだけではなく、非常にコストパフォーマンスの高いメディアプレーヤーという側面も持っている。Ver 3.00のファームウェアからはDTCP-IPにも対応。PCで録画した番組をネットワーク経由でPS3で再生することができる。
PS3の新しいファームウェアでの機能の1つとして、DLNA/DTCP-IPへの対応がある。PS3さえテレビに繋いでおけば、PCに録画したデジタル放送のデータをテレビで見られるようになる
小型化されて、価格も2万9980円となったPS3。ゲーム機、AV機器としての性能もさることながら、地デジを録画できる周辺機器「torne」まで発表された。お買い得度は非常に高い
操作性もソニーならではのクロスメディアバーで軽快だ。ゲーム用コントローラーで操作するのはちょっと……という向きにもオプションでBluetooth対応のリモコンが用意されている。
高い処理性能を持つPS3だけあって、UIの動作も非常に高速である
DLNA/DTCP-IP対応のテレビも増加中
東芝「REGZA」シリーズのテレビもネットワーク対応モデルを中心にDLNA/DTCP-IPに対応している。ZX9000はUSB接続の外付けHDD、LAN接続のネットワークHDDに録画が可能だが、さらにDLNA/DTCP-IP対応のメディアプレーヤー機能が用意されているなど、ネットワーク周りに非常に強く、PCユーザーに大変人気が高い製品だ。
東芝REGZAシリーズの上位モデルにもDLNA/DTCP-IP対応のメディアプレーヤー機能を装備する
またDLNA/DTCP-IP対応のメディアプレーヤー機能だけであればパナソニック「VIERA」、ソニー「BRAVIA」、日立「Wooo」などでも上位モデルを中心に対応が進んできている。PCユーザーであれば、テレビ選びの際にこういった機能も注目すべきだろう。
パナソニック、ソニー、日立などの一部モデルもDLNA/DTCP-IPに対応するが、基本的には自社製品との接続以外の情報が十分でないので、若干わかりにくい
単体のネットワークメディアプレーヤーに
スカパー!HDのチューナー
アイ・オー・データ機器、バッファローはDLNA/DTCP-IP対応の単体のネットワークメディアプレーヤーを発売しており、これもPCに録画したデジタル放送の録画データを再生できる。
DLNA/DTCP-IP対応のプレーヤー機能を単体で提供する製品がアイ・オー・データ機器やバッファローから発売されている
アイ・オー・データ機器の「AVeL Link Player(AV-LS700)」。実売価格は1万5000円前後。ネットワークを経由してDLNA/DTCP-IP対応の地デジチューナー搭載PCやNASからデータを受信して再生できる バッファロー「LT-H90WN」。実売2万5000円前後。機能的にはほぼ同等だが、無線LAN、有線LANどちらも対応しているため、ケーブルを設置せずに利用できる
またASCII.jpでも以前記事を掲載したが、2009年10月から本格的にスタートした「スカパー!HD」用チューナーもDLNA/DTCP-IPに対応している(関連記事)。そもそもスカパー!HDではDLNA/DTCP-IPの機能を利用して、チューナーからBDレコーダやネットワークHDD(NAS)に放送データを転送して録画を行なう。
チューナーの機能も本来はそれらの録画データを再生するためのものだが、筆者が検証した結果、PCで録画した番組も見ることもできた。これもDLNAとDTCP-IPという仕様が定まっているいるからこそだろう。なお、スカパー!HD用チューナーの「SP-HR200H」は、加入者であれば月額630円でレンタルできる(購入も可能)。
スカパー!HDチューナーはNASとの組み合わせで録画機能をサポートし、また録画したデータはチューナーからDLNA/DTCP-IP対応のプレーヤー機能で再生が可能である。この機能がPCに録画したデータにも使えるのだ
市販ソフトウェアを使ってPCで見る
デジオンの市販ソフト「DiXiM Digital TV」をインストールすれば、ネットワークを通してチューナーを搭載していないPCでも録画した番組を見ることができる。DiXiM Digital TVはダウンロード販売で4980円。
DiXiM Digital TVを用いてネットワーク越しにデジタル放送のデータを再生するには、HDCP対応のモニターなど、PCに地デジチューナーを搭載するのとほぼ同等のスペックが必要なので注意したい
家電ライクなインターフェイスを持っている。さらに上位版の「DiXiM Digital TV plus」ではサーバー側の機器に対するリモートコントロール機能も持っている
録画したデータをNASにダビングする
アイ・オー・データ機器の「mAgicTV Digital」などには、PCに録画した番組をDTCP-IP対応のネットワークHDD(NAS)に対してムーブする機能がある。ムーブしたデータは、ここまで紹介してきた機器を用いることでネットワーク越しに再生することができる。NASであれば、DLNAのサーバーとなるPCの電源を常にオンにしておく必要がなく、より利便性が高いだろう。
アイ・オー・データ機器やバッファローのDLNA/DTCP-IP対応のNASでは、DTCP-IP対応でのダビングに対応したPCや家電レコーダーから録画データをコピー(ムーブ)してくることも可能。NASに保存したデータもまたDLNA/DTCP-IP対応のプレーヤーから再生できる
アイ・オー・データ機器の「HVL1-Gシリーズ」。1.5GBモデルで実売価格は約3万円
無線LANを利用する場合は実効帯域に注意が必要
対応機器さえ用意すれば、比較的簡単に利用できるネットワーク経由の録画データの再生だが、若干気をつけなければならないのが無線LAN経由で接続するケースだ。
デジタル放送は地デジで最高17Mbps、BSデジタルでは24Mbpsの帯域が必要となる。スペック的には最大54MbpsのIEEE802.11a/gでも、電波状態が若干悪い程度でもコマ落ちで正常に見られない場合がある。できればIEEE802.11n対応の機器を用いるか、ケーブルの取り回しが煩雑になっても有線LANが確実だろう。
バッファロー「WLI-TX4-AG300N」は、有線LANにしか対応していないデジタル機器を複数(4台まで)まとめて、無線LANのアクセスポイントに接続してくれる製品。最大300MbpsのIEEE802.11nへの対応でデジタル放送のネットワーク配信にも適している
以上、4回に渡ってイマドキの地デジチューナー事情についてリポートしてきた。
ダビング10、ブルーレイへのムーブ、編集機能、ネットワーク配信など、PC用地デジチューナーはユーザーのニーズを次々に実現してきた。そして製品として各社ともに完成度が非常に高いものとなっている。しかし、地デジチューナーの進化は留まりはしないだろう。今後も製品の進化に期待したいところだ。