USB機器を手軽に“LAN対応”にしてしまう「ETG-DS/US」は、どんな機器が使えるか。前編は設置準備と複合機やスキャナ、iPhoneなどが使えるかを検証する。
手持ちのUSB機器を“ネットワーク/ワイヤレス対応”にする「ETG-DS/US」
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1001/27/news018.html
アイ・オー・データ機器の「ETG-DS/US」と、今回検証したUSB機器の一部 アイ・オー・データ機器の「ETG-DS/US」は、手元にあるUSB接続のPC周辺機器をLAN経由で使用できる“USBデバイスサーバ”と呼ぶカテゴリの製品だ。
USBデバイスサーバとは何か。PCに専用ユーティリティソフト「net.USBクライアント」をインストールすることにより、本製品に接続したUSB機器──具体的にはHDDや光学ドライブ、プリンタ、テレビチューナーユニット、Webカメラなどを、ネットワーク上の各PCから共有して利用できるものとなる。
この技術については「USB機器をすこぶる簡単に無線化する“net.USB”とは」を参照願いたいが、要は、USBから伸びるケーブルをLAN回線に置き換えてしまうものと考えるとよいだろう。普通のUSB機器をPCでなく、LANに接続されたETG-DS/USにつなぐと、あたかもLAN接続型のHDD(NAS)のようにネットワーク接続対応機器に変わる。信号をLAN回線経由で送受信するので、無線LANルータを併用するなら手元のUSB機器を簡単にワイヤレス化できてしまうメリットもあるわけだ。
今回はこのETG-DS/USへ手元にあるUSB機器を接続し、動作の可否と挙動をチェックしていこう。
本体サイズは50(幅)×100(奥行き)×28(高さ)ミリで、折りたたみスタイルの携帯電話、あるいは5ポートほどのよくあるUSB増設ハブくらいだ。別途電源に付属のACアダプタを用いて運用する。価格は7400円だ
ネットワーク経由での接続ながら、PCからはUSB接続と認識される
本体にUSBポートを2基備えるが、別途セルフパワー型のUSB増設ハブを用いて最大15インタフェースまで接続可能だ 検証に入る前に、まずは設置方法と使い方をざっとおさらいしておこう。設置準備は、家庭内LANのハブに本機をLANケーブルで接続し、利用したいPCにユーティリティソフト「net.USBクライアント」をインストールしておくだけ。任意のUSB機器をETG-DS/US本体のUSBポートに接続すると、PCの「net.USBクライアント」側で認識され、それが使えるようになる。対応OSは64ビット/32ビット版Windows 7/32ビット版Vista/XP、Mac OS X 10.4~10.6(2010年1月現在)。Windows用以外にMac OS対応のnet.USBクライアントも用意されるが、今回は所有機器の都合で、Windows PC環境のみで検証することをお許し願いたい。
マウント後は、もう普段と同じ感覚で使用して大丈夫だ。例えば、HDDなどのストレージ機器はネットワークストレージではなくローカルディスクとして、同様にマウスやキーボード、スピーカーといった機器も、PCのデバイスマネージャで確認すると、それぞれのUSB接続として認識されている。PCには「いつものUSB機器ですよ」とだまして認識させているわけで、これはなかなか面白い挙動である。
なお、本体にはUSBポートが2基あるが、バスパワー供給できるのは1台のみとなる。そもそも本機を使うユーザーであれば2基だけではおそらく足りないと思うので、適当な数のセルフパワー型USB増設ハブはあらかじめ用意しておいてほしい。USBハブの多段接続はサポートされないが、USB機器は最大15インタフェース分接続できる(最大15台ではないことにも注意したい)。
net.USBクライアントのメイン画面に接続したUSB機器が一覧表示され、その下に現在のステータス(使用できます/あなたが使用中です/他の人が使用中です)が並ぶ(画像=左) 自動接続設定や、接続時に指定アプリケーションを起動するといった設定項目もある(画像=中、右)
1つ注意したいのは、ETG-DS/USを用いて接続したUSB機器1台につき、同時に1台のPCでしか利用できないことだ。net.USBクライアント自体は自宅内のPCすべてにインストールできるが、同時に使用できるのは1つだけ。誰かが別のPCで使用中なら「すみませんが、これを使いたいのでアンマウントしてもらえませんか」と、マウント中のnet.USBクライアント(のPC)にメッセージを送る機能を利用して、アンマウントしてもらうことになる。そのようなわけで、例えばETG-DS/USにUSB接続型のHDDを接続した場合、NASのように複数台のPCから同時に使用する──というややハードな使い方には適していないが、家庭内など比較的少数のPCで運用するなら適宜切り替えながら使うようにするとよいだろう。
接続したUSB機器は複数台のPCで同時に使えない(マウントできない)制限がある。使いたい機器がほかのPCで使用中の場合は、マウント中のnet.USBクライアント(のPC)にメッセージを送る機能を利用して、アンマウントしてもらう
実際にUSB機器をいろいろつないでみよう
では、実際にETG-DS/USに接続した際の各USB機器の挙動を見ていこう。
今回は、Core 2 Duo E6400(2.13GHz)、2Gバイトメモリを搭載し、普段使う32ビット版Windows XP Professional(SP3)とほぼクリーンインストール状態の64ビット版Windows 7 Ultimate環境で検証した。ETG-DS/USのファームウェアは現時点での最新バージョンであるVer.1.01、net.USBクライアントソフトも同じくVer1.01を使用。USB増設ハブにセルフパワー対応のエレコム「U2H-TS410SBK」を用い、LAN環境は有線の1000BASE-Tに統一した。
検証した各機種の動作状況は、青色の枠を「普通に動作」、オレンジ色の枠を「動作不可/ほぼ不可」で分けてある。
ドキュメントスキャナ──PFU「ScanSnap S1500」
PFU「ScanSnap S1500」 業務上、常時使用する機器ではないが使用機会は多く、かつ複数人で使い回す機会の多いのがこの手の小型ドキュメントスキャナ。ETG-DS/USの導入において一番早く「これをネットワーク化したい」と思っていた使い方だ。
ScanSnap S1500(レビュー:“解像度不問”の高速読み取りを実現――「ScanSnap S1500」を試す 参照)はみごと「問題なく普通に動作」した。本体のワンタッチスキャンボタンについてもUSB接続時と変わらず利用できるうえ、スーパーファインモードスキャンする場合もデータ転送の速度が落ちることもなく、基本的な使い勝手は「ほぼ同じ」だ。
ドキュメントスキャナは、(A4インクジェット複合機ほどではないが)机上においてそこそこ設置スペースを取ることから、置き場所に困ることもある。これで、適当なじゃまにならない場所へ設置して複数のメンバーで共有できるほか、(普段は常時接続していない)ノートPCユーザーなど、スキャナを使うためにいちいちつなぐのが面倒と思っていた人には特によさそうだ。
ただ、机から離れた場所に設置すると、原稿をセット、およびスキャン後に原稿を回収するために席を立つ必要が生じるデメリットもあるといえばあるが……。あと、以下の機器すべてに当てはまるが、機器に付属するソフトが複数台のPCにインストール可能かどうか、ライセンスをよく読んだ上で利用するようにしたい。
インクジェット複合機──ブラザー「DCP-535CN」
ブラザー「DCP-535CN」 プリンタも家庭内のPC機器の中ではかなり大型で、場所をとるものだろう。最近はLAN接続対応の「ネットワークプリント」機能を備えたモデルが人気だが、ETG-DS/USを導入すれば、現在使っているUSB接続型のプリンタもほぼ同様の“ネットワーク対応プリンタ”になってしまう。
検証したDCP-535Cも、結果は「大丈夫」だった。プリント、スキャン機能いずれとも問題なく利用できたうえ、双方向通信(インク残量情報の取得など)も同じように使えた。
ただし、プリント機能については1台のPCで独占したままというわけにもいかない。ETG-DS/USは、別途プリントサーバ機能も備えるので、複数のPCからプリンタ機能を同時に共有して使いたいならこの機能を使い分けることになる。net.USBモードは双方向通信も含めてほぼすべての機能を使えるが、複数台で同時利用は不可(利用は接続した1台だけ)。一方のプリントサーバモードは双方向通信をサポートしないが、複数台で同時利用可能という違いがある。
Webカメラ──ロジクール「Qcam for Notebooks Pro」
ロジクール「Qcam for Notebooks Pro V-UAR38」 ネットワーク接続対応のWebカメラ機器も存在するが、意外に高価だ。数千円台で導入できるUSBタイプのよくあるWebカメラをそのままネットワーク対応にできるとなると、USBで使用できるケーブル長の制限を超えて、任意の場所へカメラを設置できるようになる──というわけだ。
評価機器のQcam for Notebooks Proは「問題なく動作」した。別途無線LANを併用するなどし、別の部屋にいる赤ちゃんやペットの様子をチェックする、あるいは(普段PCを使う場所から離れているであろう)玄関付近に置いて簡易防犯カメラにするなどといった用途に威力を発揮しそうだ。
USBディスプレイアダプタ──アイ・オー・データ機器「USB-RGB/D」
アイ・オー・データ機器「USB-RGB/D」 USBディスプレイアダプタは、USB接続で外部のディスプレイを接続できるようにする機器。要はDVI端子をUSB端子に変換する機能を持つ。ETG-DS/USで使うとこれをさらにLANインタフェースに変換するわけで、なかなか回りくどい変換を行うことになる。
ただ、USB-RGB/Dは「問題なく動作」した。スパン/クローン表示したデュアルディスプレイ環境のほか、640×480ドット/4Mbps程度のXViD動画を再生したが、コマ落ちなどの不具合も発生しなかった。
具体的な用途は、少し離れた場所にある家庭用テレビをセカンドディスプレイとし、PC内の動画を再生する“なんちゃってDLNA風”に使うシーン。あるいは会議室に設置してある大画面テレビやプロジェクターにUSBディスプレイアダプタを接続し、無線LAN経由にて手元のノートPCでプレゼンをするなどの使い方はどうだろうか。
アナログビデオキャプチャーユニット──アイ・オー・データ機器「GV-MDVD3」
アイ・オー・データ機器「GV-MDVD3」 使用する機会は減っているが、ふと昔録画したVHSテープの映像をバックアップしておきくなることもあるだろう。
ただ、このGV-MDVD3は残念ながら「×~△」だ。GV-MDVD3をnet.USBクライアントにマウントさせるところまでは問題なかったが、外部ソースとなるVHSビデオからキャプチャーソフトでキャプチャー開始操作をしたとたんにエラーが発生し、強制終了となる。また、マウント/アンマウントの操作をするたびに別機器と誤認してドライバを再インストールしようとするなど、挙動がたいそう不安定で実用には耐えない。
ただし外部ソースの表示であれば一応使え、キャプチャーソフトにおけるプレビュー画面上でもコマ落ちなどは見られなかった。今どきニーズがあるかは分からないが、離れた部屋にあるVHSビデオ(などのアナログ映像機器)の映像をPCで視聴するといったことなら一応はできるかもしれない。操作はビデオデッキの前まで行かなければならないが……(ちなみに、LCD-USB7XBは2010年1月現在、アイ・オーが公開する動作確認済み機器一覧には含まれていない)。
スマートフォン──アップル「iPhone 3GS」
アップル「iPhone 3GS」 iPhone 3GSは、PCからの認識はもちろん、iTunesとの同期も含めて「一応動作」した。
音楽データはもちろん、1つ50Mバイト程度の動画データも同期させてみたが、USB接続と比べて転送速度が若干落ちる以外の使い勝手に差はなかった。手元のPCには(物理的に)何も接続していないのに同期が行われている光景は改めて見ると不思議で、思わずにやけてしまう感覚が得られる。
ただ、今回のWindows XP環境下での検証時に、アンマウント直後にPCごと落ちる(ブルースクリーンになる)挙動も数回見られた(Windows 7環境では問題なかった)。再現性がないので筆者環境のみであればよいが、こういうのが何度かあるのは若干の不安要素だ(もし同期中に落ちたら、データが消失してしまう可能性もあるわけだし)。
もっとも、iPhoneについては複数台のPCで共用することも少なく、家庭内のUSBハブに差したままというわけにもいかないので、利用におけるメリットは正直うまく思いつかない(なんとなく、離れた場所でも同期できる/同期するデータをPC別に分ける/そのほかの機能を無視して共有ストレージにしてしまう──などはあるが)。これを試してほしいという案があれば、ご意見をいただければ幸いだ。
(続く)
とりあえず前編はここまで。後編は、本機を導入予定の人の多くが気になるであろう「ストレージデバイスのパフォーマンスはどうか」をはじめ、「それをわざわざしなくても……」という機器も含めて、接続状況のチェックと利用シーンを考えていく。