WiMAXとWi-Fi――モバイルの通信インフラが理想に近づいた
2009年はUQコミュニケーションズがWiMAXサービスを開始したことと、ケータイ対応の無線LAN製品が増えたことで、モバイル環境が一変した。
2009年は次世代モバイルブロードバンドのWiMAXサービスをUQコミュニケーションズが開始し、イー・モバイルが下り最大21MbpsのHSPA+を導入。さらに、小型無線LANルータをウィルコムやイー・モバイルが販売するなど、モバイルブロードバンドが大きな変化を迎えた年だった。そしてiPhoneやAndroid端末に代表されるスマートフォンを取り巻く環境の変化が、モバイルに変革をもたらした。
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0912/28/news051.html
モバイルブロードバンドに新風を吹き込んだ「UQ WiMAX」
2009年のトピックとしてまず取り上げたいのが、「UQ WiMAX」のサービス開始だ。UQ WiMAXが採用しているモバイルWiMAXは理論値で下り最大40Mbps、上り最大10Mbpsと高速で、通信環境が良好なら実測でも下り15Mbps以上、上り5Mbps以上を記録する。この通信速度も重要だが、むしろ筆者が着目したのは、契約と端末販売方式だ。
「AtermWM3300R」 UQ WiMAXの端末は適正な価格で販売されており、契約や料金とは完全に切り離されている。このため、原則として長期契約が存在せず、端末の購入方法と利用料金も関係しない。端末はUQも販売するが、サードパーティから購入した端末も自由に利用できるし、特に手間も掛からない。魅力的な端末が出れば購入してオンラインで登録するだけで使い始められる。実際、NECアクセステクニカからモバイルWiMAXルータ「AtermWM3300R」が発売されている。
また、UQ WiMAXでは1契約で最大3台を登録して利用できるので(同時に通信できるのは1端末のみ)、通信モジュール内蔵PCと通信カードでSIMカードを差し替える必要はない。3GのSIMが悪いと言うつもりはないが、筆者はイー・モバイルの音声端末と通信カードで1枚のSIMカードを併用しており、何度か(使用する端末に)SIMカードを入れ忘れて泡を食ったことがある。今はモバイルWi-Fiルータとデータ通信端末を併用しているが、通信端末は基本的にカバンに忍び込ませてあるので、うっかりモバイルWi-Fiルータを忘れたり、バッテリーが切れたりしても、手間をかけずにノートPCで通信できて便利だ。
長期契約を前提に端末代金の割引やキャッシュバックなども行っているMVNOもあるが、これは選択肢の1つと考えればよい。もちろんドコモやイー・モバイルで長期契約をしないという選択肢はあるが、契約時の端末代金の負担や料金の格差が大きく、実質2年の長期契約を前提にしたプランを選ばざるを得ない。多くのユーザーに選択肢があるという点だけでも、UQ WiMAXの方針は評価すべきだと思う。
もっとも、UQ WiMAXは2.5GHzという直進性が高く減衰の大きな周波数帯を利用する上、料金面でも初期費用が割高で、月額料金も固定のみと手軽さに欠ける部分もあり、契約者数の確保に苦労しているのも事実。実際、本サービが開始した2009年7月でも、サービスエリア内の屋外で接続すらできないエリアの穴が多く、「これでは……」と思うことが多かった。
「UQ WiMAX」では3種類の料金プランが用意されている しかしエリアカバーに関しては、すでに基地局の整備を大幅に前倒しし、筆者の行動圏内の東京23区内や川崎、横浜の市街地などではエリアの穴はかなり減った。12月には下限が月額380円の2段階制定額を導入し、導入のハードルを下げた。結果的には2009年は助走の年となり、2010年が勝負の年になりそうだ。UQ WiMAXは、通信速度以外にも他キャリアにはない魅力があるだけに、ぜひ頑張ってほしいと思う。
無線LANルータ+無線LANケータイが実現した“ネット接続の一元化”
2009年に筆者のモバイル環境で最も変化したのが、ネット接続の一元化だ。今までもウィルコムやイー・モバイルの端末である程度一元化はできていたが、ウィルコム端末は通信速度が遅く、イー・モバイルは「H11T」などの音声端末を利用しても公式コンテンツがあまりに乏しく、FeliCa対応端末がないことから、ネット接続の理想的な一元化はできずにいた。
「WiMAX Wi-Fiゲートウェイセット」(左)と「Pocket WiFi」(右)
だが、モバイル無線LANルータと無線LAN対応ケータイが登場したことで状況が変わった。3G対応のUSBモデムを接続できるルータは海外製品が発売されていたが、6月には無線LANルータ機能を持つ「UG01OK」とUSB型WiMAX端末「UD01OK」の「WiMAX Wi-Fiゲートウェイセット」がUQから、11月にはイーモバイルから3G通信機能を内蔵した「Pocket WiFi」(D25HW)が発売され、一気に身近になった。前者は公式にはバッテリー動作はサポートしていないが、モバイルWiMAX向けにはメーカーブランドとしてUQのUSBモデムと組み合わせが可能な「URoad-5000」がシンセイから、通信機能も内蔵したAtermWM3300RがNECアクセステクニカから、バッテリー動作可能な製品として登場している。
音声端末は無線LAN対応モデルが3キャリアから出そろった。話題性が高いのは、対応機種が多くサービスが豊富なソフトバンクモバイルの「ケータイWi-Fi」だが、筆者が注目し、実際に手にしたのはauだ。ドコモの「ホームU」は実質自宅やオフィスなどでしかiモードを無線LANで利用できず、ソフトバンクモバイのケータイWi-Fiは利用料金が一律4410円で料金面のメリットがないためだ。
「biblio」と「AtermWM3300R」 auの現行モデルで無線LANに対応しているのは「biblio」だけだが(2009年12月28日現在)、auでは3G通信と同等のサービスをすべて無線LANで利用できる。別途「Wi-Fi WIN」(月額525円、2011年6月までは無料)とパケット通信定額サービスの契約が必要だが、その気になればパケット通信料を限りなくゼロに近く抑えられる。端末とauのゲートウェイ間を暗号化して接続する都合上、有料の公衆無線LANサービスがほとんど利用できない(WEB認証も802.1x認証も利用できない)という弱点があるが、モバイル無線LANルータと組み合わせる分には問題ない。
筆者の場合、仕事の都合上どうしてもPCから利用できる定額のモバイルインターネット接続が必要になる。加えて、音声端末のパケット通信にお金を掛けたくないものの、おサイフケータイなど国産ケータイならではの便利なサービスを利用するだけでもパケット通信料金が1000円を超えることがあった。しかし、biblioを購入してようやくネット接続の一元化が完成した。特にauがメール送受信無料の「ガンガンメール」を開始したことで、モバイル無線LANルータを併用せずにメールを送受信できるようになった点も大きかった。
モバイル無線LANルータに話を戻すと、GoogleがExchange互換サーバ機能を提供することで、iPhoneやWindows Mobile端末では無線LAN接続でもメールをリアルタイムで受信可能になったことも見逃せない。キャリアの3G接続を使わないと便利に使えない――そんな呪縛から放たれつつある。
現実には、モバイル無線LANルータもバッテリーを複数持ち歩かないと1日の行動をカバーできないし、国内で正規販売されていて、通信機能を内蔵するモビリティ重視の製品となると、イー・モバイルかUQ WiMAX(およびMVNO)となり、エリア面での課題も残る。それでも筆者にとって、モバイル無線LANルータと無線LAN対応ケータイの組み合わせは必要不可欠な通信手段となっている。
現状、筆者は4つのモバイル無線LANルータを所有している。その中で、携帯性と無線LANの接続性のよさ、メーカーブランドなので購入方法と加入する事業者をオンラインサインアップで選択できる点を考慮して、NECアクセステクニカのAtermWM3300Rを常用している。無線LAN対応ケータイは、3Gパケット通信をすべて無線LANに置き換えられ、パケット通信料金を大幅に削減できる点と、音声端末とQWERTYキーボードがうまく融合したと感じたbiblioが便利だ。
用途次第ではiPhoneよりも使いやい「BlackBerry Bold」
「BlackBerry Bold」 2009年のナンバー2はBlackBerry Boldだ。レビューでも触れているが、メール端末としての使い勝手はピカイチであり、音楽プレーヤーとしても不満はない。多少の慣れは必要だが、QWERTYキーボードで快適に文字入力でき、情報を引き出すのが中心なら片手でも安心して使える。文字入力以外の操作は中央のトラックボールと左右のキーで行えるので、右手と左手どちらでも快適に扱える。初期状態でも不都合なく使えることを考えると、Windows Mobile端末やiPhoneよりも使い勝手に優れていると思う。
また、通信インフラに対する考え方も独特だ。BlackBerryの利用にはRIMのサービスを契約し、ISP料金のような形で国内では月額1575円を支払う必要がある(2010年4月までキャンペーンにより50%オフ)。その代わり、無線LAN接続やメールのリアルタイム受信を含む、多くのサービスや機能をほぼ制限なく利用できる。
さらに、3Gネットワークでの利用はパケット定額制を前提にしているiPhoneと異なり、月額390円~5985円の「Biz・ホーダイダブル」を組み合わせることで、データ通信量が最小限に抑えられる。もちろん何の遠慮もなく3Gネットワークで使えば上限額に達することは目に見えるが、移動中は3G網でメールを送受信し、ほかは無線LANを活用すれば通信コストを十分に抑えられる。メールは先頭の一部だけを受信し、続きは無線LANに接続して受信するようにしている。
シニア向け“元祖”は伊達じゃなかった「らくらくホン6」
「らくらくホン6」 ナンバー3にはドコモの「らくらくホン6」を挙げたい。筆者が母親用の端末をauからドコモにMNPする形で手に入れたものだが、最大のきっかけは「防水」だ。濡れることが前提ではないが、防水の安心感は計り知れない。連絡待ちのときでも身に付けて水回りでの作業もできるし、何より汚れても洗い流すだけで済む。FeliCaやFOMAハイスピードが非対応なのが気になるが、音声通話とメールの利用が中心なら、大きな問題はないだろう。
母親にはこれまでもシニア層向けの端末を使ってもらっていたが、メニュー構成や表記1つを取っても、「最新のらくらくホンだな」と思わせてくれた。筆者の母親はアドレス帳も使いこなせない機械オンチであり、今までの端末ではワンタッチダイヤルを使ってもらうのが限界だったが、らくらくホン6では(母親が)メニューボタンから使える機能が増えた。これはメニューの並びやガイダンス表記が分かりやすかったのだろう。また、不在着信の通知とともに、どのボタンを押せばよいかを画面に表示してくれる。「そこまでするか」と思う人もいるだろうが、こういった機能を筆者は求めていた。ケータイの「不在着信あり」の通知を見るたびに、「あなた電話した?」という電話が母親からちょくちょく掛かってくることは、もうなさそうだ。
今年は「iPhone 3GS」も購入したが、こちらは選外とした。触れている時間だけなら最も長いだろうが、電話機としてはほぼ使っておらず、“カメラ付きiPod touch状態”なので、スマートフォンとして正しい評価が下せるとは思えなかったからだ。
音声端末に関しては、今年はよく言えば熟成の年だった。スリム化を含めてデザインにこだわった端末も多く登場し、カメラは1000万画素を超えた。反面、新たなサービスや機能が乏しく、ほとんど食指が動かなかったし、同じような閉塞感を感じた人も多いのではないだろうか。2010年は、もっとワクワクする端末が登場することを期待したい。