VAIO史上、最薄最軽量モバイルノート「VAIO X」を徹底検証する(後編)
「VAIO X」が非常に薄くて軽いのは分かった。では、パフォーマンスやバッテリー駆動時間、発熱、騒音はどうなのか? 後編は各種テストでVAIO Xの実体に迫る。
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0910/12/news006.html
後編は「VAIO X」をとことんテストする
「VAIO X」 ソニーが10月22日に発売するモバイルノートPCの新作「VAIO X」は、厚さ13.9ミリ、重さ約765グラム(最軽量構成では約655グラム)の驚異的な薄型軽量ボディと、標準で約10時間のロングバッテリーライフを両立しているのが特徴だ。
先に掲載したレビューの前編では、ボディデザイン、バッテリーオプションの構成、基本スペックや通信機能、インタフェース、液晶ディスプレイ、キーボードとタッチパッドの使い勝手についてチェックした。
今回のレビュー後編では、Atom Zの採用で気になる実際のパフォーマンス、3タイプのバッテリーによる駆動時間の違い、薄型軽量ボディでは不利になちがちな動作時の発熱、そして内蔵ファンの騒音レベルまで、仕様の異なる3台のVAIO Xをじっくりテストしていく。
なお、PC USERではレビュー以外にも、本体の分解を含む開発者インタビュー、製品発表会リポート、VAIO秋冬モデルの全ラインアップ紹介など、VAIO Xに関連した情報を多数公開している。VAIO Xをより詳しく知りたい方は、以下の囲みにある記事も併せてご覧いただきたい。
3台のVAIO Xを横並びで比較
今回入手した3台の試作機は、Atom Z540(1.86GHz)と64GバイトUltra ATA SSD搭載の店頭販売向け標準仕様モデル、Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSerial ATA SSD搭載のソニースタイル直販VAIOオーナーメードモデル、そしてAtom Z550(2.0GHz)と256GバイトSerial ATA SSD搭載のハイエンドなVAIOオーナーメードモデルだ(Serial ATA SSDはUltra ATA変換アダプタ経由でチップセットに接続)。
VAIOオーナーメードモデルでは、WiMAX+IEEE802.11a/b/g/nの無線LAN(11nはドラフト準拠、最大受信速度300Mbps/最大送信速度150Mbps)の構成も選べるが、テストした試作機はいずれもFOMA HIGH-SPEED対応のワイヤレスWANとIEEE802.11b/g/nの無線LAN(11nはドラフト準拠、最大受信/最大送信速度150Mbps)を搭載している。
店頭向けモデルのデータストレージを64GバイトUltra ATA SSDから128Gバイト/256GバイトSerial ATA SSDに変更した場合と、CPUクロックを上げた場合に、テスト結果がどのように変わるのかに注目してほしい。
各機の仕様表とデバイスマネージャの画面は以下の通り。重量を計測したところ、Atom Z540(1.86GHz)と64GバイトUltra ATA SSD搭載で約745グラム、Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSerial ATA SSD搭載で約760グラム、Atom Z550(2.0GHz)と128GバイトSerial ATA SSD搭載で約763グラムと、それぞれの公称値を下回る軽さだった。
なお、ソニーが10型以上の液晶ディスプレイを搭載したノートPCとして世界最軽量をうたう約655グラムの構成は、64GバイトUltra ATA SSD、WiMAX+IEEE802.11a/b/g/nの無線LAN、Sバッテリーを選択し、Bluetoothを省いた場合の値になる。
左からAtom Z540(1.86GHz)と64GバイトUltra ATA SSDを搭載した標準仕様モデル「VPCX118KJ/B」(ブラック)、Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSerial ATA SSDを搭載したVAIOオーナーメードモデル「VPCX11AKJ」(ゴールド)、Atom Z550(2.0GHz)と256GバイトSerial ATA SSDを搭載したVAIOオーナーメードモデル「VPCX11AKJ」(プレミアムカーボン)。ほかのカラーより5000円高いプレミアムカーボンの天板は、光沢塗装で高級感がある半面、指紋が目立ちやすい
今回テストした「VAIO X」の試作機
製品名 VPCX118KJ/B VPCX11AKJ(ゴールド) VPCX11AKJ(プレミアムカーボン)
販路 標準仕様モデル VAIOオーナーメードモデル
ボディカラー ブラック ゴールド プレミアムカーボン
OS 32ビット版Windows 7 Home Premium
CPU Atom Z540(1.86GHz) Atom Z550(2.0GHz)
メインメモリ 2Gバイトオンボード(DDR2-533MHz SDRAM)
チップセット Intel System Controller Hub(SCH) US15W
液晶ディスプレイ 11.1型ワイド(1366×768ドット)
データストレージ 64GバイトSSD(Ultra ATA) 128GバイトSSD(Serial ATA) 256GバイトSSD(Serial ATA)
WiMAX -
無線LAN IEEE802.11b/g/n(最大受信/送信速度150Mbps)
ワイヤレスWAN FOMA HIGH-SPEED対応(最大受信7.2Mbps/送信5.76Mbps、GPS内蔵)
Bluetooth Bluetooth 2.1+EDR準拠
キーボード 日本語配列
バッテリー Lバッテリー
オフィススイート -
PDF作成ソフト -
セキュリティ対策ソフト マカフィー・PCセキュリティセンター(60日期間限定版)
日本語入力ソフト ATOK 2009 for Windows(30日期間限定版)
VAIOアプリ 搭載
保証サービス 1年間保証 3年間保証<ベーシック>
本体サイズ 278(幅)×185(奥行き)×13.9(高さ)ミリ
重量(公称値) 約765グラム 約780グラム 約780グラム
重量(実測値) 約745グラム 約760グラム 約763グラム
販売価格 実売11万円前後 10万9800円 13万9800円
Atom Z540(1.86GHz)と64GバイトUltra ATA SSDを搭載した店頭販売向け標準仕様モデル「VPCX118KJ/B」(ブラック)のデバイスマネージャ画面。64GバイトのUltra ATA SSDは基板むき出しの小型タイプで、「SanDisk pSSD-P2」(MLC)だ。無線LANはAtheros AR928Xを装備する。「Sony Firmware Extension Parser Device」と、「Sony Programmable I/O Control Device」はほかのVAIOノートでも見られる独自デバイスだ
Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSerial ATA SSDを搭載したVAIOオーナーメードモデル「VPCX11AKJ」(ゴールド)のデバイスマネージャ画面。128GバイトのSerial ATA SSDは、uSATAコネクタ仕様で基板むき出しタイプの1.8インチドライブ「Samsung MMCRE28GFMXP-MVB」(MLC)だ
Atom Z550(2.0GHz)と256GバイトSerial ATA SSDを搭載したVAIOオーナーメードモデル「VPCX11AKJ」(プレミアムカーボン)のデバイスマネージャ画面。256GバイトのSerial ATA SSDは、uSATAコネクタ仕様で基板むき出しタイプの1.8インチドライブ「Samsung MMDPE56GFDXP-MVB」(MLC)だ
Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア
圧倒的な薄型軽量を誇るVAIO Xだが、気になるのは省電力を重視したCPUのAtomとチップセットのIntel SCH US15W(グラフィックス機能のIntel GMA 500を統合)が、パフォーマンスにどのような影響を与えているかだろう。
まずはWindows 7標準の性能評価機能であるWindowsエクスペリエンスインデックスを実行した。各モデルのスコアは以下の通りだ。
Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア。左からAtom Z540(1.86GHz)+64GバイトUltra ATA SSDの標準仕様モデル「VPCX118KJ/B」(ブラック)、Atom Z540(1.86GHz)+128GバイトSerial ATA SSDのVAIOオーナーメードモデル「VPCX11AKJ」(ゴールド)、Atom Z550(2.0GHz)+256GバイトSerial ATA SSDのVAIOオーナーメードモデル「VPCX11AKJ」(プレミアムカーボン)
WindowsエクスペリエンスインデックスはWindows Vistaから導入されたが、Windows 7ではスコアの基準が見直され、最高点がこれまでの「5.9」から「7.9」へ引き上げられた。同じスペックのPCでもWindows 7ではVistaよりスコアが全体的に低くなる傾向にあり、Vista搭載PCとスコアを横並びで比較することはできないので、注意してほしい。
結果は3台ともプライマリハードディスクが最も高いスコアだった。64GバイトUltra ATA SSD搭載の標準仕様モデルで「5.3」、128Gバイト/256GバイトSerial ATA SSD搭載のVAIOオーナーメードモデルでは「6.3」にスコアが跳ね上がっている。
一方、ゲーム用グラフィックスの値は一番低く、「2.5」という結果になった。次に低いのがプロセッサで、Atom Z 540(1.86GHz)搭載時で「2.7」、Atom Z 550(2.0GHz)搭載時でも「2.8」にとどまる。
残るメモリは「4.3~4.4」、グラフィックスは「4.4」というスコアだ。グラフィックスはまずまずの値に思えるが、実際はVAIO XでWindows Aeroをオンにするとパフォーマンスが低下するため、ソニーはAeroをオフにした状態で出荷しており、そのままでの使用を推奨している。したがって、Windows 7で強化されたAeroの恩恵は得られない。
PCMark05、CrystalMark 2004R3のスコア
次に総合ベンチマークテストのPCMark05とCrystalMark 2004R3(ひよひよ氏作)を実行し、システム全体のパフォーマンスを調べた。各テストはACアダプタを接続し、Windows 7の電源プランは「高パフォーマンス」に設定している。
左がPCMark05の結果、右がCrystalMark 2004R3の結果
Atom ZとIntel SCH US15Wチップセット搭載のノートPCとしてはハイスペック寄りなVAIO Xだが、テスト結果を見ると、やはり全体的なパフォーマンスは控えめだ。注目すべきはHDDのスコアで、標準仕様モデルの64GバイトUltra ATA SSDと、VAIOオーナーメードモデルで選べる128Gバイト/256GバイトSerial ATA SSDとでは大きな差が生じている。64GバイトUltra ATA SSDに比べて、PCMark05のHDDスコアで約3.4~3.5倍、CrystalMark 2004R3のHDDスコアで約1.8~2倍もの性能アップが見られた。
256GバイトSerial ATA SSDを搭載した構成はCPUも少し速いので、厳密な比較とはいえないが、これくらいの動作クロックの差であれば、HDDテストに与える影響はごく少なく、HDDスコアの差はそのまま受け取っても問題ないだろう。
ちなみに、レビュー前編とインタビュー記事で触れた通り、Intel SCH US15WチップセットはSerial ATAインタフェースをサポートしないため、64GバイトUltra ATA SSDの場合のみチップセットと直接接続し、128G/256GバイトSSDではSerial ATA/Ultra ATA変換アダプタのボードを介して接続する。
したがって、128G/256GバイトSerial ATA SSDはUltra ATAへの変換処理が性能面でのボトルネックになり、本体の重量がわずかに増えるが、それでもテスト結果からは速度と容量の両面で大きな効果があることが分かる。パフォーマンスを少しでも高めたいならば、真っ先に128G/256GバイトSerial ATA SSDの搭載を検討すべきだ。
CPUのスコアについては、標準仕様モデルからして高クロックのAtom Z 540(1.86GHz)を採用しているため、わずかに高速化したAtom Z550(2.0GHz)を選択してもパフォーマンスの差は大きくない。テスト結果からはクロックアップしたぶんの性能向上を確認できるが、128G/256GバイトSerial ATA SSDより優先順位は低くていいだろう。
PCMark05 HDDテスト、CrystalDiskMark 2.2のスコア
性能の差が目立つSSDの違いをより詳しく調べるため、PCMark05のHDD関連テストとCrystalDiskMark 2.2(ひよひよ氏作)も走らせた。
PCMark05のHDD関連テストは、実際の利用シーンを想定したデータの読み書きを行うものだ。テスト内容は、XP Startup(Windows XPの起動をトレース/データのリードが中心)、Application Loading(アプリケーション6種類の起動をトレース/リードが中心)、General Usage(WordやIEなど標準的なアプリケーションの使用をトレース/リード60%、ライト40%)、Virus Scan(600Mバイトのウイルススキャン/データのリードが中心)、File Write(680Mバイトのファイル書き込み/ライト100%)の5つで構成される。
CrystalDiskMark 2.2はシンプルにディスクのデータ読み書き性能を調べるテスト。シーケンシャル/ランダムのリード/ライト速度を計測できる。今回はデフォルトの設定でテストした。
左から、PCMark05のHDD関連テスト、CrystalDiskMark 2.2のリード/ライトの結果
結果はやはり128G/256GバイトSerial ATA SSDが、64GバイトUltra ATA SSDを大きく上回った。64GバイトUltra ATA SSDはデータのライト速度、特にランダムライトの速度が遅いが、128G/256GバイトSerial ATA SSDによって大きく改善できることが分かる。
テストした機材に搭載されていた128GバイトSerial ATA SSDと256GバイトSerial ATA SSDは同じモデルの容量違いで、SSDとしてのスペックはいずれもシーケンシャルリードが220Mバイト/秒、シーケンシャルライトが200Mバイト/秒となっている。テスト結果を見ると、やはりUltra ATA変換のボトルネックにより、ドライブ自体のパフォーマンスは最大限発揮できていないが、ここはチップセットの限界として受け入れるしかない。
なお、SSDの個体差なのか、今回のテストではCPUがわずかに高速な256GバイトSerial ATA SSD搭載の構成より、128GバイトSerial ATA SSD搭載の構成のほうがディスクパフォーマンスがやや優勢だった。この傾向は、何度テストしても変わらなかった。
3DMark05、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコア
主にビジネスユース向けのVAIO Xでは3Dグラフィックス性能を重視していないが、3DMark05とFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3も一応実行した。
左が3DMark05(1024×768ドット)、右がFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3の結果
Intel SCH US15Wチップセットに統合されたグラフィックスコアは、Netbook標準のIntel GMA 950より性能が低いIntel GMA 500なので、当然テストの成績は振るわない。DirectX 9.0c対応テストの3DMark05はもちろん、DirectX 8.1世代の今となっては少々古いテストであるFF XIベンチ3の結果を見ても、解像度が低いLow設定で700台にとどまり、プレイは困難だ。CPUやSSDを強化した構成でも、3Dグラフィックス性能については効果がほとんど見られない。
Windows 7の各種動作時間
定番のベンチマークテストプログラムを一通り実行したことで、VAIO Xが高クロックのAtom ZとSSDの採用により、Atom Z搭載PCとしてはなかなかのパフォーマンスを確保していることは分かったが、やはり気になるのはWindows 7がどの程度快適に動作するかだろう。
そこで、実際にWindows 7の各種動作に要する時間をストップウォッチで計測した。計測したのは、Windows 7の起動、スリープへの移行と復帰、休止状態への移行と復帰、シャットダウンの動作にかかる時間だ。
Windowsの起動時間は電源ボタンを押してから「ようこそ」画面が出るまでの時間と、デスクトップ画面が表示され、あらかじめスタートアップに登録しておいたテキストファイルが起動するまでの時間の2段階で計測した。なお、これまでにWindows Vista搭載ノートPCで同じようなテストを実施した際は、ウェルカムセンターが起動するまでを起動時間としていたが、Windows 7では起動時にウェルカムセンターが表示されなくなったので、テスト方法を変更している(Windows 7のテスト方法のほうが起動時間が短い傾向にある)。
Windows 7の各種動作時間 VAIO Xの設定は基本的にデフォルトで、ACアダプタを接続した状態だ。各動作時間にはバラツキがかなりあるので、計測は10回以上行い、異常な数値が出た場合はそれを排除してから平均値を算出した。購入直後に近い状態でテストしたため、Windows 7のアップデートやアプリケーションの追加などで、各動作時間は大きく変わってくる。
テスト結果には右のグラフに示した通りで、全体的にVistaより高速だった。特に休止状態への移行と復帰が速くなっているのはモバイルシーンでうれしいところだ。
3台の比較では、SSDの差が目立つ。高速な128Gバイト/256GバイトSerial ATA SSDを搭載した構成はすべてのテスト項目で64GバイトUltra ATA SSDより高速で、特に休止状態への移行と復帰、シャットダウンの時間で大きな差を付けた。
CPUをAtom Z550(2.0GHz)に強化した構成では、テスト結果にわずかな高速化が見られた程度で、体感速度はさほど変わらない。グラフの数値は平均値を採用しているので、1回ずつの計測ではAtom Z540(1.86GHz)と128GバイトSerial ATA SSDを備えた構成のほうが高速な場合も少なからずあった。
ちなみに、起動からデスクトップ表示(スタートアップに登録しておいたテキストファイルの展開)までにかかる時間は40秒前後だが、そこからウイルス対策ソフトを含む常駐ソフトやデスクトップガジェットが完全に起動するには30~40秒程度かかる。
Windows 7の使用感は意外にも……
さて、実際にVAIO Xを数日間仕事用に使ってみたが、「意外にWindows 7が動く」という印象を受けた。VAIO Xと同じAtom ZとIntel SCH US15Wチップセットを採用した「VAIO P」(当時はVAIO type P)は、特に低スペックな標準仕様モデルにおいてWindows Vistaの動作が緩慢で、ガマンが必要だったが、VAIO Xでは標準仕様モデルでもWindows 7が実用に耐えうる速度で動き、Windowsの基本動作にストレスを感じるシーンは少ない。これは、いい意味で予想を裏切られた。
さらに、高速な128Gバイト/256GバイトSerial ATA SSDを搭載した構成では、Windows 7の使用感がワンランクアップし、長時間使っているとAtom Z搭載機であることを忘れるほどだった。さすがに、Core 2 DuoやデュアルコアCeleron搭載のモバイルノートPCと比較すると軽快さは物足りず、フォトレタッチや動画編集、オフィススイートでも重いデータを日常的に扱う用途などに使うのは困難だが、Webブラウズやメール、出先でのプレゼン、ちょっとしたビジネス文書の作成や閲覧といった作業であれば、不満なくこなせるだろう。
こうした背景には、Windows 7がWindows Vistaより低スペックのPCでも動作が軽くなるように設計されている点に加えて、Windows 7向けにインテル製グラフィックスドライバの最適化が進んだ点、VAIO Xが標準仕様モデルでも高クロックのAtom Zを採用する点、映像と音声のコンテンツ解析といったシステムに負荷がかかるVAIO独自アプリケーションが省かれている点など、複数の要因がある。
Vistaとは一部異なる動画再生支援機能
付属ソフトの「PMB」はAVCHDのハードウェアデコードによるHD動画再生に対応する Intel SCH US15Wチップセットに統合されたグラフィックスコアのIntel GMA 500は、Windows Vistaに対応したハードウェアデコードによる動画の再生支援機能を備えているが、Windows 7では変更が見られる。現状でインテルが提供するグラフィックスドライバはWMV(VC-1)の動画再生支援が含まれていないのだ。ただし、MPEG-4 AVC/H.264やMPEG-2のハードウェアデコードには対応する。
ソニーによれば、VAIO Xにインストールされているアプリケーションでは、「PMB」(Picture Motion Browser)でハードウェアデコードによるAVCHDのHD動画再生が可能だという。実際にAVCHDビデオカメラ撮影したHD映像(1440×1080ドット/約12Mbps)をPMBに登録して再生したところ、コマ落ちすることなく再生できた。
Windows Media Player 12でのWMVファイル再生については、ハードウェアデコードが効かないため、VAIO PのWindows Vistaモデルで再生できた1080pのWMVファイルがコマ落ちしてしまう。ただし、SD解像度のWMVファイルが再生できるのはもちろん、720pのWMVファイルでもソフトウェアデコードにより実用レベルで再生できる場合もあった。
YouTubeやニコニコ動画といった動画共有サイトのコンテンツ視聴も試してみた。YouTubeではノーマル画質のコンテンツならば問題なく視聴でき、高画質コンテンツはものによって再生できたり、できなかったりといった具合だ。ニコニコ動画については、標準的なコンテンツならばコメント数が多くても意外に視聴できる(たまに再生がつかえることもあるが)が、やはり高画質のコンテンツでは再生が厳しいものも多い。
S/L/Xバッテリーの駆動時間
左からXバッテリー、Lバッテリー、Sバッテリー。LバッテリーとSバッテリーの外観は同じで、Xバッテリー装着時は底面が盛り上がる VAIO Xの大きなウリの1つであるバッテリー駆動時間もチェックした。レビュー前編で取り上げた通り、VAIO XはS/L/Xの3種類のバッテリーを用意している。各バッテリーの駆動時間は、標準仕様モデルの場合にLバッテリーで約10時間、Xバッテリーで約20.5時間、VAIOオーナーメードモデルの場合にSバッテリーで約4~5時間、Lバッテリーで約8.5~10時間、Xバッテリーで約17.5~20.5時間をうたう。Sバッテリーは単体で販売されず、VAIOオーナーメードモデルのCTOメニューのみで展開される。
ここでは3台のVAIO XにS/L/Xの各バッテリーを装着し、駆動時間を比較した。テストにはバッテリー駆動時間計測ソフトのBBench 1.01(海人氏作)を用いている。BBenchの設定は、10秒ごとにキーボード入力、60秒ごとに無線LAN(IEEE802.11g)によるインターネット巡回(10サイト)を行うというものだ。
VAIO Xの電源プランは「バランス」、ワイヤレス通信機能はオン(ワイヤレスWANはオフ)、液晶ディスプレイの輝度は最大、音量は半分(ヘッドフォン装着)といった状態で、満充電からバッテリー残量がなくなり、シャットダウンするまでの時間を計測した。動画再生などではもっと駆動時間が短くなるが、このテスト条件は比較的厳しく、駆動時間は公称値より大幅に短くなることが多い。
左からSバッテリー、Lバッテリー、Xバッテリーを装着した状態でのバッテリー駆動時間(BBench 1.01で計測)
テスト結果は、Sバッテリーで2時間14分~2時間19分、Lバッテリーで4時間33分~4時間43分、Xバッテリーで9時間20分~9時間33分というものだった。通常カタログに記載されるJEITA規格による測定法のバッテリー駆動時間は、実際より2倍程度長い時間になることも多く、テスト結果は予想範囲内だ。
64GバイトUltra ATA SSDを搭載した構成より、変換アダプタ経由で接続される128Gバイト/256GバイトSerial ATA SSDを搭載した構成のほうが、バッテリー駆動時間は少し短くなる傾向にある。ただし、SSDの消費電力の違いに比べて、液晶ディスプレイなどほかのデバイスの消費電力が与える影響のほうが大きいため、今回のテストではスペックの違いによる駆動時間の差は小さかった。
そもそも、VAIO Xは液晶ディスプレイの輝度が高く、室内で利用する場合、最高輝度ではまぶしく感じることも少なくない。液晶ディスプレイの輝度を下げて、より省電力効果の高い設定にすることで、バッテリー駆動時間をかなり延長できることが予想される。
そこで、BBench 1.01の設定はそのままに、VAIO X標準仕様モデルの電源プランを「省電力」にセットし、液晶ディスプレイの輝度を半分(5/9段階)まで下げ、「VAIO省電力設定」(表示色16ビット、リフレッシュレート40Hz、有線LANオフ)も適用した状態で、Lバッテリー装着時の駆動時間を計測してみた。
「VAIO省電力設定」では、表示色を32ビットから16ビットに、リフレッシュレートを60Hzから40Hzに、有線LANの電源をオンからオフに切り替えることで、バッテリー駆動時間をさらに延ばすことができる(写真=左)。VAIO Xの設定を変更した場合のバッテリー駆動時間(写真=中央)。「バッテリーいたわり充電モード」の設定では、バッテリーの充電量を約50%や約80%に抑えることで、バッテリー駆動時間と引き替えにバッテリー寿命の延長を図れる(写真=右)
結果はバッテリー駆動時間が4時間43分から7時間19分まで一気に延びた。VAIO Xはパフォーマンスが高くないため、性能より省電力を優先する「省電力」の電源プランを使うシーンは少ないだろうが、いざとなればバッテリー駆動時間をここまで延ばせるというのは安心感がある。
ちなみに、電力プランを「バランス」に、液晶ディスプレイ輝度を半分にした状態で、頻繁にWebブラウズやメールをしつつ、文書を作成してみたところ、Lバッテリーで5時間程度、Xバッテリーならば10時間程度は利用できた。ビジネスユースでは、この辺りがバッテリー駆動時間の目安になるだろう。極限まで薄型軽量を追求したボディで、ここまで長時間のバッテリー駆動が行えるのは見事だ。
薄型軽量ボディはどこまで発熱するのか?
薄型軽量ボディで懸念される動作時の発熱もチェックしよう。VAIO Xを樹脂製のデスクに置き、ボディ表面の温度を放射温度計で計測した。計測したのは、ACアダプタに接続し、Windows 7の起動から30分間アイドル状態で放置した場合と、そこからシステムに高い負荷がかかるPCMark05のCPUテストを30分間実行し続けた場合の2パターンだ。
電源プランは「バランス」、液晶ディスプレイの輝度は最大、ワイヤレス通信機能はオン、音量は半分(ヘッドフォン接続)、底面のツメは立てた状態とした。また、スクリーンセーバーはオフにし、アイドル状態から一定時間経過しても液晶ディスプレイの表示やSSDの電源がオフにならないように設定している。
ボディの温度は、キーボードの左半分/右半分、パームレストの左右、タッチパッド、タッチパッドの左右クリックボタン、ボディ底面の左半分/右半分を計測した。各部で最も高温になる部分を探して、温度を計っている。テスト時の室温は約25~26度だ。
動作時の発熱。左が起動後30分間アイドル状態にした場合、右がシステムに30分間高い負荷をかけ続けた場合の温度
計測結果は、放熱設計に余裕がない薄型軽量ボディながら、かなり健闘しているといえる。全体としては、Atom Z540(1.86GHz)と64GバイトUltra ATA SSD搭載の構成に比べて、Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSerial ATA SSD搭載の構成、Atom Z550(2.0GHz)と256GバイトSerial ATA SSD搭載の構成のほうが、温度が高めに推移した。Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSerial ATA SSD搭載の構成が最も高温になったのは、Atom Z550(2.0GHz)と256GバイトSerial ATA SSD搭載の構成では内蔵ファンがよく回転していたためと思われる。
いずれもユーザーが操作時に触れることが多いパームレストとタッチパッドは低温を維持しており、システムに高い負荷をかけても傾向は変わらない。また、グラフの値は各部の最高温度を採用したため、低温部の結果は反映されておらず、キーボードは「E」や「R」キーの周辺こそ高温だが、大部分はアイドル時で31~32度程度、高負荷時で33~34度程度におさまっていた。そのため、キーボードやタッチパッドの操作時に不快な熱を感じることは少ない。
ただし、底面は吸気口の周辺(CPUとチップセットが実装されている部分)が発熱しやすく、ヒザの上などに本体を置いて作業をすると、これをふさいでしまうため、高温になりやすい点は注意が必要だ。机上で使う場合も、ボディと設置面の間に空冷用のスペースを作るため、底面のツメは立てて利用したほうがいいだろう。
特別に作った薄型軽量ファンの動作音は?
手前がVAIO Xの冷却ファン、奥が「VAIO T」の冷却ファン。VAIO Xの冷却ファンは極薄に作られている VAIO Xは内部に空冷用のスペースがほとんどない薄型軽量ボディを効果的に放熱するため、特別に作った薄型軽量ファンを内蔵している。ここでは、その動作音も調べてみよう。VAIO Xをデスクに置き、一定の距離から騒音計で騒音レベルを計測した。騒音計のマイクは、使用時におけるユーザーの耳の位置を想定し、ボディ中央から約30センチ離し、設置面から約50センチの高さに固定している。室温は約25~26度、環境騒音は約28デシベル(A)となっており、周囲の雑音がほとんど聞こえない静かな部屋でテストした。
騒音レベルの計測条件は発熱のテストと変わらない。VAIOの設定ではファン制御を3段階に調節できるが、デフォルトの「バランス」(3段階の中間)とした。Windows 7の起動から30分間アイドル状態で放置した場合と、システムに高い負荷がかかるPCMark05のCPUテストを30分間実行し続けた状態の2パターンで計測している。
動作時の騒音レベル 計測結果は、左のグラフに示した通りだ。Atom Z540(1.86GHz)と64GバイトUltra ATA SSD搭載の構成、Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSerial ATA SSD搭載の構成はアイドル時にファンが一度も回転せず、環境騒音の28デシベルから騒音レベルが上がらなかった。一方、Atom Z550(2.0GHz)と256GバイトSerial ATA SSD搭載のハイエンドな構成では、アイドル時でもファンが低速回転することが多く、騒音レベルが少し上がっている。
もっとも、ファンは常時回転せず、システムの負荷やボディの発熱に応じて、回転したり止まったりしていた。VAIO Xは駆動部のないSSDを全面的に採用していることもあり、ファンが回転していなければ、動画音はほぼ無音だ。Atom Z550(2.0GHz)と256GバイトSerial ATA SSD搭載の構成はファンが回転しやすいため、前ページで取り上げた発熱テストでは部分的にAtom Z540(1.86GHz)と128GバイトSerial ATA SSD搭載の構成より低温になっている。
システムに高い負荷をかけた状態では、3台ともファンが高速回転し続けた。3台のうち動作音が最も大きかったAtom Z550(2.0GHz)と256GバイトSerial ATA SSD搭載の構成では、ファンの風切り音にブーンという小さな異音が混じることもあったが、これは試作機ゆえの個体差かもしれない。エアコンや家電が動作している室内では、VAIO X程度の動作音はかき消されてしまうが、静粛な環境でファンが高速回転すると、ファンの存在は確かに感じる。
あえてAtom Zを採用して、手に入れたものは非常に大きい
2回に渡ってVAIO Xを検証してきたが、これまたVAIO Pに負けず劣らず非常に“尖った”仕様のモバイルノートPCに仕上がっている。製品を選ぶうえで、メリットとデメリットをよく理解する必要があるだろう。
最も大きなメリットは、何といっても非常に優秀な携帯性だ。この点は実に満足度が高く、薄さ、軽さ、スタミナがこれほどハイレベルに融合したモバイルノートPCは他に類を見ない。薄い割に手に持つと、剛性がしっかりと保たれているのが分かるのも好印象だ。ボディの外装も美しく、ローズゴールドのVAIOロゴをはじめ、デザインにもプレミアム感があり、所有欲を満たしてくれるだろう。
もう1つ優れているのは、薄型軽量ボディと使い勝手の両立だ。1366×768ドット表示の11.1型ワイド液晶ディスプレイは広色域かつ高輝度で発色がよく、ハーフグレア処理により見栄えのよさと映り込みの少なさも兼ね備えている。その表示品質は、Netbookと一線を画すどころか、数ある高額なCore 2 Duo搭載モバイルノートPCの中で見てもトップクラスだ。キーボードはストロークこそ浅いものの、主要キーで約17ミリと十分なキーピッチがあり、キーレイアウトも自然なので、長文の入力にも耐えうる。この点は、同じAtom Z搭載のVAIO Pより優れており、VAIO Pユーザーにも訴求できる部分になるだろう。
一方、デメリットとなるのは、薄型軽量を実現するために採用したAtom ZとIntel SCH US15Wチップセットによるパフォーマンス不足だ。そもそもがMID/UMPC向けに作られたプラットフォームなので、この部分で妥協が求められるのは否めない。
とはいえ、プリインストールOSがVistaより軽いWindows 7に移行したことが幸いし、OSの基本動作は十分実用できるレベルとなった。ハイパフォーマンスなモバイルノートPCを求めるユーザーには向かないが、Webブラウズやメール、出先での簡単な文書作成やプレゼンといった程度の作業であれば、“これなら使ってみたい”と思わせてくれるパフォーマンスがある。また、法人向けの代行インストールサービスでは、OSにWindows XP Professional(32ビット版Windows 7 Professionalダウングレード)を選択できることに、食指が動くユーザーもいるだろう(WiMAXは選択不可になる)。
以上のメリットとデメリットをどう考えるかだが、パフォーマンスで優位に立つCLUVを含めたCore 2 DuoやデュアルコアCeleron搭載のモバイルノートPCでは、VAIO Xのウリである薄型軽量、ロングバッテリーライフ、使いやすい画面サイズとキーボードといった要素をすべて満たすことは不可能だろう。逆に、VAIO Xはパフォーマンスを少し妥協するだけで、そのほかの要素を満たすことができるのは非常に大きく、ここまで極限の作り込みがなされていれば、Atom Zの採用にも納得がいくというものだ。
これまで「パフォーマンスはそこそこでいいから、もっと薄くて軽く、長時間のバッテリー駆動が行える実用的なモバイルノートPCが欲しい」と思っていたユーザーや、そうした願いを持ちながら納得できない重さのモバイルノートPCを持ち歩くしかなかったユーザーにとっては、VAIO Xがまさにジャストフィットするだろう。万人におすすめできるマシンではないが、こうした層にとってはまさに待望の1台であることは間違いない。
価格は店頭向けの標準仕様モデルで11万円前後から、直販のVAIOオーナーメードモデルで8万9800円からとなっており、ボディの材質やVAIO X用に新たに作られたパーツ群、それらを組み合わせた細部に至るまでのこだわりまで考慮すると、かなり安価といえる。
最後にVAIO Xの魅力は、実物に触れてみないことには十分伝わらないと思う。その薄さと軽さ、Windows 7の使い心地はぜひ店頭で体感して、それをバッグに入れて携帯しているところまで想像してほしい。そうすれば、VAIO Xが実現する“持ち運びの負担が極端に減った”新しいモバイルノートPCの世界の一端に触れられるはずだ。