番外編・家庭内PLCの使い勝手とセキュリティを考える
会社に潜む情報セキュリティの落とし穴を解説する本連載ですが、今回は連休に読んでもらうべく、家庭を中心に新たな通信回線として注目されたPLCの利便性とセキュリティを解説します。
[萩原栄幸,ITmedia]2009年09月21日 07時00分 更新
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0909/21/news003.html
今回は「シルバーウィーク」の長期休暇に読んでいただきたく、新たな通信手段として登場した「PLC」の使い勝手とセキュリティについて、わたしの体験を基に解説しましょう。
PLCとは?
PLC(Power Line Communications)は、2006年12月に初めて製品が発売されました。まだ3年ほどしか経っていないせいか、現在でもあまり認知度は高くないようです。わたしの周囲にいるPC初心者に尋ねても、知っている人は半数にも満たない状況でした。
PLCとは「電力線通信」または「電灯線通信」とも呼ばれ、家庭内に張り巡らされている電気配線を通信回線に利用します。家庭のコンセントを利用してインターネットが利用出来てしまうというわけです。LANケーブルを使わなくても家庭のコンセントにつなぐだけでインターネットが利用できる便利さから、現在は個人の住宅を中心に広がっているネットワークの利用形態の1つです。
携帯電話などの無線回線とは違い、PLCは家庭内で設置済のブロードバンド回線であるADSLや光ファイバをそのまま活用できるので、既に家庭内にインターネット環境があれば、PLCの機器を導入するだけで使えるのもメリットの1つになるようです。
筆者宅のネットワーク環境
わたし自身、自宅のインターネット環境は光ファイバを利用しており、有線LANと無線LAN、PLCの3つが混在している状況です。有線LANはメインのPCに接続しており、やはり有線ということで安定性が一番高いと感じています。また、ネットワークの途中にスイッチングHUBを設置しており、時折同じ有線LANを通じてサブPCの1(Windows Vista)とサブPCの2(XP)、そして、テスト用のサブPCの3(Windows 98)を動かすというような使い方をしています。
無線LANは子供たちのインターネット接続に利用しています。子供たちの部屋は3階にあるのですが、ケーブルを必要としない無線LANが一番便利な手段だと考えています。当初は2階の居間でも無線LANを使っていたのですが、なぜかここでは無線LANの電波が十分に届かず、ほとんど使えない状況でした。そこで登場したばかりのPLCに注目し、すぐに導入を試みたのですが最初は品薄で入手できず、2007年1月に導入にすることができました。
最初はコンセントがインターネットの出入口になるとは信じがたかったのですが、実際に接続できることが分かると、無線LANでは実現できなかった居間でのインターネット利用ができるようになったのは非常に喜ばしいことでした。
筆者が感じた長所と短所
実際にPLCを利用してみての長所と短所を取り上げると、以下のものがあります。あくまで私見で感じたことであり、参考としていただきたいと思います。
長所
PLC機器の設定はほとんど不要
コンセントがあれば基本的にどこでも利用できる(1階から3階まですべて利用できた)
通信速度が無線よりにも速い(わが家での環境です)
セキュリティは通常ではデフォルトでAES 128ビット強度の暗号化が設定されており、無線に比べるとセキュリティレベルが高い
PC側の設定は基本的に不要
無線が届かない場所でも利用できる
無線と同様にLANケーブルの敷設が不要であり、床や壁回りがすっきりする
PLCのための通信費用は発生しない
短所
現状では3種類の方式(HD-PLC 、Homeplug、UPA)が混在して流通しているため、種類が違うと通信ができない(混在できない)
一般的な戸建てはあまり問題にならないと思われるが、実際につないでみないと分からないトラブルも多い。例えば異なる分電盤のコンセントでは難しい
延長コードやタコ足配線でのPLCの実現は難しい。壁のコンセントに直付することが望ましい(PLC用ノイズフィルタを使うとある程度改善される)
同じコンセント内で冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどが利用していると、電圧の変動が原因と思われる接続トラブルが発生する(これもノイズフィルタで少しの改善効果は期待できる)
干渉状況によっては電波障害などの発生も考えられ、周辺環境や人体への影響などの可能性も考えられている(実際に悪影響があったという報告も存在するが、公式には認定されていない)
実際のところは?
PLCを実際に利用した長所と短所は以上のようなものですが、一般的には電波障害の問題、分電盤を超えた環境での盗聴問題(ろう電により盗聴が可能)、近隣とのノイズ問題、アマチュア無線との干渉などの短所が指摘されているようです。実際にはどのような状況なのでしょうか。
例えばWikipediaサイトのPLCの項目を見ても、ユーザーなどのさまざまな意見や指摘が乱立しており、これは関心の高さを表す一方で、逆に使用環境が安定しないという一面を浮き彫りにしているとも思われます。
ここでは電波監理審議会が承認した「便利な機器」としてのPLCをどのように活用すればいいのかという面にしぼって解説したいと思います。わたし自身、既に3年ほどPLCを利用した結果として、「自宅で有線LANや無線LANを検討して、どうしても無理ならPLCが有効な解決策になり得る」ということを実感しています。
人体への影響などは専門家がさまざまな調査を行っていますが、現状では明確な結果は得られていないようです。PLCは欧米でも広く使われている技術であり、これらに関してはわたしもその経緯を見守っているところです。機器の費用は必要ですが、便利にインターネットを使うために手段としてPCLを検討してみてはいかがでしょうか。
さて、セキュリティ対策の設定はどうでしょうか。実は作業の必要性はほとんどありません。大部分が自動設定であり、無線LANのセキュリティ設定で悩んだ方にとっては驚くほど簡単です。
通信内容はデフォルトでAES暗号が実施されており、この暗号化方式は極めて強力であるため、解読は至難のわざとなり、ユーザーは安心して使えます。(しかし、複数の同じ機器で同じ設定をしていることでの脆弱性は回避できません。あくまで暗号化は通信回線の中だけになります)。このようなセキュリティリスクは存在しますが、そのことを念頭に置いていくことで有用な通信手段として今後の普及を期待しています。