レノボ・大和事業所エンジニアが説く、WiMAX内蔵ThinkPadの可能性
レノボ・ジャパンは「ThinkPad T400s WiMAX内蔵モデル」とモバイルWiMAXに関する技術説明会を実施。「WiMAX普及は、“内蔵”がカギ」と、モジュールを内蔵することによるメリットを説明した。
WiMAX普及のカギは、「PC内蔵」
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0907/29/news048.html
ThinkPad T400s WiMAX内蔵モデル(製品番号:2808A12) 「モバイルWiMAXの普及は、“PC内蔵”がカギ」──。WiMAX内蔵内蔵ノートPC「ThinkPad T400s WiMAX内蔵モデル」を発売したレノボ・ジャパンはこのほど、同社大和事業所(神奈川県大和市)のエンジニアによるWiMAXテクノロジー・ブリーフィングを開催し、「モバイルWiMAXに対する期待」と「“WiMAX内蔵ThinkPad”に関するユーザーメリット」を説いた。
ノートPCのモバイル通信手段は、無線LAN(IEEE802.11b/最大11Mbps)と携帯電話/PHS網を用いた2G/PHSデータ通信、あるいはPANによるBluetooth(1Mbps)やモデム接続程度だった2000年頃と異なり、2009年現在は最大450Mbpsまで高速化した無線LAN(IEEE802.11nの場合)のほか、3G/3.5G(HSPA)データ通信(2009年7月現在、最大21Mbps)、モバイルWiMAX(UQ WiMAXは2009年7月現在、最大40Mbps)などが存在し、UWB(Ultra Wideband/最大480Mbps)やSuper3G(LTE)、4Gなど、将来の通信通信技術も含め、通信速度の向上はもちろん、利用可能エリアが大きく広がった。
ThinkPad T400sを含め、19年ThinkPadの開発に携わっているというレノボ・ジャパン ノートブック開発研究所無線通信技術担当部長の藤井和夫氏 2009年現在のモバイル通信手段は、無線LANを補うかたちで、携帯電話網を利用した3GないしPHSデータ通信を“外付け”で利用するシーンが一般的に普及している。無線LAN(公衆無線LANサービス)は契約体系や料金体系がシンプルで、通信環境は高速で安定、かつ無線LAN機能を内蔵するPCであればそのまま使える高い利便性がある半面、サポートエリアが狭い欠点がある。かたや3Gデータ通信は、サポートエリアが広大である半面、契約や料金体系が複雑で、事実上の“年数縛り”やポート/通信速度の制限を設ける通信キャリアも存在する。モバイルWiMAXは、これらの欠点を解消する役割を担う通信手段であり、Windows 7とともにユーザーがPCを購入、リプレースする機会も創造するとレノボ・ジャパンは期待する。
「モバイルWiMAXは、いままでの手段の欠点やユーザーの不満点を解消でき、無線LANと3Gデータ通信の“いいところ取り”である特徴が期待する理由の1つ。なにより契約や料金体系がシンプルで簡単ながら、無線LANと組み合わせて“どこでもインターネットを利用できる”ようになるシーンが大きく広がる。現時点の欠点はサポートエリアが狭いことだが、これは次第に解消されていくと思っている」(レノボ・ジャパン ノートブック開発研究所無線通信技術担当部長の藤井和夫氏)
3Gデータ通信、モバイルWiMAX、無線LAN(公衆無線LANスポット)を比較した2009年現在のメリットとデメリット(左)。モジュール内蔵型は、外付け型端末より優れたユーザーメリットがあると説明する(右)
日本も含めたWiMAXのワールドワイド戦略を示すインテル プラットフォーム&ソフトウェア・マーケティンググループマネージャの梅野光氏。多くのベンダーがIEEE標準の機器を低コストで製造・提供できることから、新たなビジネスモデルを開拓できる可能性も高く、カバー人口は2012年に13億まで達するほどに成長すると予測する
そして、かつてCentrinoプラットフォーム展開(2003年)をトリガーの1つに、無線LANがモバイルノートPCに“ほぼ標準搭載”となったように、インテルはモバイルPC向けモバイルWiMAX+無線LANモジュール「WiMAX/WiFi Link 5150」を含む、Centrino 2のワールドワイド展開を推進することで、“モバイルWiMAXも標準搭載”にしていく考えだ。PCメーカーが「“PC内蔵”がカギ」と述べる理由の1つは、ここにある。
インテルのWiMAX+無線LANコンボモジュール「WiMAX/WiFi Link 5150」(1×2 MIMO)。同等性能の、両面チップ実装型のHalf Mini Card型(小型だがやや厚め)と片面実装型のMini Card型(やや大型だが薄め)を用意する
外付けより「内蔵」、アンテナ性能を高めるメーカー独自の工夫
レノボ・ジャパンのモバイルWiMAX内蔵“1号機”となる「ThinkPad T400s WiMAX内蔵モデル」は、インテルのモバイルWiMAX+無線LANコンボモジュール「WiMAX/WiFi Link 5010」(Half Mini Card型)を内蔵し、アンテナ性能を高めるためのボディ素材や機構、煩雑な設定なしにネットワークにアクセスできる機能を盛り込んだ。6種類のワイヤレス通信規格(無線LAN、モバイルWiMAX、Bluetooth、UWB、ワイヤレスWAN/3G、GPS)をサポートするため、7つのアンテナをボディに内蔵する。
6種類のワイヤレス通信規格をサポートし、計7つのアンテナを内蔵する(3G内蔵モデルは国内では未発売)
もう1つの「カギ」は、通信に特化したこの設計にある。
アンテナを内蔵する天板(ディスプレイカバー)は、軽く薄く、強度のある炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とアンテナ特性に影響を及ぼさない非伝導性のガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を使用したハイブリッド構造を採用した。
さらに、ディスプレイ上部に2つのアンテナ(メイン/aux)を内蔵し、混合することで、無線信号の放射時に電界強度の強い部分がきれいに分布し、結果としてアンテナゲインが強くなるよう設計されている。既存のUSB接続型モバイルWiMAX端末と比較し、グローバルゲインの値は3.5dbほど良好となるという。
天板は軽く薄いCFRPと非伝導性のGFRPのハイブリッド構造。アンテナ部分に用いるGFRPは、アンテナ特性に影響を及ぼさない(左)。ThinkPad T400sのWiMAXアンテナ電界強度分布(中)と2つ(メイン、aux)のアンテナによる3Dミックスゲインパターン(右)。分布が赤色に近く(ゲインが強く)、球状であることがよい特性であることを示す
「片側のアンテナゲインを見ると、ディスプレイの外側方向は良好だが、内側方向は液晶ディスプレイが悪い影響を及ぼし、ゲインが若干落ちている。そこで、2つのアンテナを同時に使い、混合することで、ゲイン放射パターンが良好となるよう調整した。WiMAX内蔵モデルは外付け機器と比べて、外的要因による破損の心配が少なく、利便性がよいメリット以外に、アンテナ特性に関しても大きな優位性があると考えている」(藤井氏)
なお、2009年7月現在、UQ WiMAXの公開サービスエリアではぎりぎり“圏外”の位置にあるという同社大和研究所で圏外表示されたUSB接続型端末に対し、ThinkPad T400sのWiMAX内蔵モデルは正常に基地局へ接続でき、1.5M~2.1Mbpsの実測値を示したという。このように、アンテナ性能の高さは、サービスエリアの拡充期であり、サービスエリアがまだ一部に限られる2009年現在のモバイルWiMAXにおいては「利用できるか否か」の範囲も広げられる可能性もあるようだ。
USB接続型は、アンテナの周りにきれいに電界強度の高い部分が分布し、正面方向は強い放射パターンを示すが、背面(後方)は液晶ディスプレイの影響でゲインがかなり落ちてしまうという。サービスエリアぎりぎりの場所では、「そもそも接続できるか否か」の差も出るという
「Access Connections」で、さらに利便性を高める
WiMAXをサポートするAccess Connectionsのバージョン5.3 ThinkPad T400sは、通信環境制御ユーティリティ「Access Connections」にモバイルWiMAX環境のサポートを追加したバージョン5.3(以下、Access Connections)をプリインストールする。自動的にWiMAX基地局を検出する機能(オンラインサインアップ用接続を含む)に加え、契約したWiMAX通信環境をロケーションプロファイルとして保存できる。
なお、モバイルWiMAX+無線LANコンボモジュールのWiMAX/WiFi Link 5010は、モバイルWiMAXと無線LANを同時には有効にできない仕様となっている。ユーザーが明示的に(手動で)モバイルWiMAXか無線LANかを切り替えて利用する仕組みとなる、インテル純正ユーティリティのみが付属するWiMAX内蔵PCも一部に存在する。
この点、(インテルの提供APIをもとに)同社が独自開発したAccess Connectionsは、電波状況とユーザーが設定したロケーションプロファイルの優先順位に準じ、利用する通信環境をシームレスに切り替えられるのがメリットの1つだ。例えば、外ではモバイルWiMAX、無線LANスポットではIEEE802.11gの公衆無線LANサービス、家ではIEEE802.11nの無線LAN、会社ではIEEE802.11x認証を有効にした1000BASE-Tの有線LAN……といったように、ユーザーはそのときに応じて最も適切かつ高速な通信環境を自動選択する制御が行える。
状況に応じてプロファイルを自動で切り替えられる(左)。モバイルWiMAXエリア内でオンラインサインアップも可能だ(右)。初回は、接続契約なしでアクセスできる「WiMAX総合ポータル スタートページ」からWiMAXサービス提供社を選ぶ仕組み
2009年の後半はWindows 7発売という“大きなイベント”を10月に控え、これに合わせて企業、個人問わず、ユーザーがPCをリプレースする機会も多く生まれると期待されている。
特にノートPCの購入を予定する人にとっては、すでにモバイルWiMAX対応エリアで使用する人はもちろん、そうでない場合も今後のエリア拡充を見据え、今後、CPUやメモリ・ストレージ容量、ディスプレイ解像度、ボディサイズ、バッテリー駆動時間といった基本仕様とともに、“モバイルWiMAX内蔵か否か”も重要な比較ポイントになってくるといえそうだ。