FOMAハイスピード内蔵Netbookの実力を試す - ASUS「Eee PC 1003HAG」
ASUSのEee PC 1003HAGは、ドコモの通信ユニットを搭載したネットブックだ。CPUには、Atom N280を採用し、液晶は、ネットブックで標準的な1,024×600ドット10インチである。また、無線LANがIEEE 802.11n(Draft 2.0)に対応しており、ネットブックとしては、比較的高機能な部類に入るだろう。メーカー参考価格は、69,800円である。
http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/07/25/1003hag/?rt=na
液晶が10インチで、かつ額縁部分も大きいため、キーボードやタッチパッドの配置に余裕がある
スペック等
このASUS Eee PC 1003HAG(以下1003HAGと略す)は、同社の1002HAEとスペックやデザインがよく似ている。このモデルをベースに、W-CDMAのデータ通信モジュールを搭載したのではないかと思われる。主なスペックを表1に示す。
■表1
CPU Intel Atom N280
クロック周波数 1.66GHz
メモリ容量 1GB
LCD 10インチTFT 1,024×600ドット
グラフィックス Intel GMA 950
HDD 160GB
LAN 100Base-T/10Base-T
WLAN IEEE 802.11b/g/n(draft 2.0)
Bluetooth 2.1+EDR
バッテリ駆動時間(充電時間) 4.3時間/2.1時間
サイズ W264×D181×H28mm
重量 1.4kg
USB USB 2.0×3
その他I/F RGB、カードリーダ、ヘッドホン、マイク
Webカメラ 130万画素
CPUは、1.66GHzのAtom N280。従来のN270よりもわずかにクロックが向上しており、クロック比程度の性能差はある。また、バス速度も向上している。チップセットは、945 Expressチップセットで、グラフィックスは、GMA 950。この点では、従来機種とほとんど変わりがない。
液晶は1,024×600ドットであり、通常のネットブックの範疇を越えるものではないが、10インチで多い1,024×576ドットと比べれば、この解像度での24ドットには大きな価値はある。
USBポートやRGBコネクタなど、装備しているインターフェース、コネクタ類は、ネットブックとしては標準的なものだが、無線LANに802.11nを採用している機種はそれほど多くない。最近では、11nを搭載した無線LANルータも価格がこなれてきたし、多くのユーザーが使っていると思われる。速度や到達距離的に有利な11nを使えるというのは、メリットといえるだろう。
バッテリ駆動時間は、4.3時間。一日持ち歩いて使うには、少し容量不足を感じる。モバイルでも、ACが使えるファーストフード店などでの利用が中心になりそうだ。ただ、充電時間が2.1時間と短いのはメリットだ(長時間動作が可能なネットブックでは、充電時間が半日近いものもある)。また、ACアダプタも小型のタイプで持ち運びに苦労することはないだろう。本体重量が1.4kg軽量でもあるし、どちらかというと、ライトなモバイル利用が中心となるだろう。
デザインなど
筐体は、直線ベースで、辺の角を落としたようなデザインだ。液晶部分と本体の端には、銀色のラインがあり、閉じたときに、きちんと閉まっているような感じがある。もしEeePC 1002HAEがベースであれば、筐体にはアルミが使われているはずだ。
なお、液晶部分を止めるラッチなどはなく、手前の少し出っ張っている部分に指をかけて、開くようになっている。液晶の角度は、無段階に変えることができる。適度な堅さがあり、一度開いたら、自然に倒れてしまうようなことはなさそうだ。
この機種は、バッテリを本体底面、手前、右側にはめ込むようになっているため、本体後部にコネクタが配置されている。イーサーネットやRGBコネクタが後部につながるというは、ケーブル取り回しの点で悪くない。ただ、本体後部にメモリカードスロットがあるのは、どうかと思う。本体側面には、USBコネクタ(左2つ、右1つ)とヘッドホン、マイク端子のみである。バッテリを底面に埋め込む形なので、おそらく基板形状からこのようなコネクタ配置になったのだと想像される。
また、後部には、排気のためのスロットがある。Atomプロセッサは、低消費電力ではあるが、ノートブック筐体に入れると、ヒートシンクを大きくできない関係で、冷却ファンが必須となる。1003HAGは、底面から吸気し、後部から排気する。場所の関係もあるのかもしれないが、排気音はほとんど気にならない。なお、ファンは、CPU温度などに連動した制御になっているようだ。
筐体は、本体と液晶部の合わせ目にラインが入り、曲線を入れてソフトな感じにしたデザイン。光沢のあるプラスティックが使われているが、安っぽい感じはない
本体、右側面、こちら側には、USBコネクタと、ヘッドホン、マイク端子のみ
左側面。こちら側にはUSBコネクタが2つあるだけ
本体、後部には、RGB端子、イーサネットコネクタ、電源コネクタ、Kenginton Lockホールと排気スリットがある。写真左側のヒンジ下にあるのが、メモリカードスロット
キーボードまわり
キーボードは、キートップの間が空いたセパレートタイプである。ストロークも十分あり、軽いクリック感がある。押し心地は悪くはない。ただ、配列として右側下のカーソルキーのあたり、逆スラッシュキー(カナの「ろ」)があるあたりに少し無理が感じられる。なぜか「/」キーが少し大きく、「ろ」キーが小さい。また、右側のシフトキーがカーソルキーの右側に来ていて、遠く、幅も狭い。そのほか、バックスペース左側の「\」キーも小さい。シフトキーはカーソルキーを凸型に配置するためにしかたないとしても、「/」と「ろ」の部分には、解せないものがある。コストを掛けずに英語キーボードをJIS配列にするためなのだろうが、配列的には窮屈で、人によっては打鍵間違いが出やすい可能性がある。せめて、カーソルキー横の2つは、同じサイズにしてほしいところだ。程度としては、マシなほうだが、国産機種では、もう少しまともな配列のものもあることを考えると、改善の余地を感じる。
充電やディスクアクセスのインジケータ類は、キーボードとヒンジの間にあり、視認性はよい。また、天板側にも、充電と電源状態を表す2つのLEDが配置されているので、液晶を閉じていても充電状態や、本体がサスペンドモードにあるかどうかは簡単に判別できる。
ここには、電源ボタン(右側)と、動作モードを切り替えるボタンがある。動作モードは3種類。「Power Saving」、「Auto High Performance」、「Super Performance」である。ボタンを押すと、モードが画面に表示され、通知領域にある「Eee Super Hybrid Engine」のアイコンが切り替わる。XPのバッテリ動作モードは、わかりにくいため、こうしたユーティリティはあるほうが便利だ。なお、動作モードは、このボタンだけでなく、FNキー+スペースでも切り替わる。
液晶が10インチで、額縁部分も小さくないので、本体奥行きは、8インチクラスのマシンより長く、そのため、タッチパッドも、ボタンを手前に配置できる。やはり、パッドの左右にボタンを配置している機種よりは格段につかいやすいが、ボタンとパッドの間に空きがなく、ボタンを押そうとして、指が一部パッドに触れてしまうことがあった。少し間隔を開けるなりの工夫は欲しいところ。ノウハウ的には、ボタン手前の筐体部分にボタンを押す親指の端を掛けるような感じで使うと、パッド側に指がはみ出さない(もっとも、指の大きさなどにもよるのだろうが)。
キーボードは、キートップが分離したタイプ。右側下のカーソルキーの周辺を除けば、キーピッチも十分あり、それほど打ちにくくない。ただ、「ろ」や「\」(最上段)、右シフトキーが小さく、少し無理を感じる
本体底面、液晶部
本体底面には、3つのカバーがある。それぞれ、メモリ、HDDとバッテリ(カバーと一体)である。HDDは、緩衝材が付いており、それなりの保護はされているようだ。また、メモリの横には、ドコモ用の無線モデム(後述)がある。なお、SIMカードは、バッテリパックの下にあり、バッテリを外さないと交換できないようになっている。これは、GSM携帯電話でのルールで、SIMカードの交換時には、電源をオフにすることになっているためだ。携帯電話でもほとんどがバッテリを外さないとSIMカードが交換できないようになっているので、特にこの機種だけがへんな場所にSIMカードスロットがあるわけではない。
また、珍しく、この機種には、リセットスイッチがある。底面にある小さな穴から細いピンなどを使って押すようになっている。最近のノートブックでは、電源ボタンの長押しで強制的に電源が切れるようになっているため、リセットスイッチが付いているのは珍しい。
ハードディスクは、見たところ2.5インチのSATAで、デバイスマネージャによれば、シーゲートのST9160310ASである。容量は、500GB、5,400rpmで、SATAは3Gbpsに対応したものだ。緩衝材があり、通常の扱いならば問題はなさそうだ。また、メーカー保証の問題もあるが、交換も不可能ではない。
液晶は、前述のように10インチだが、この機種は、液晶のまわりの額縁が大きめにとってある。このため、キーボードやパームレスト部分に余裕がある。また、液晶の下には、マイク(デジタルアレー方式)と、上部には、Webカメラ(130万画素)が配置されている。
液晶自体の解像度は、1,024×600ドットだが、付属のユーティリティで、デスクトッフの解像度を1,024×768ドットに設定できる。画面をスクロールさせるモードと、縦方向に圧縮表示するモードの2つがある。また、この設定は、いつでも変更できるので、常にオンにしておく必要もない。対症療法的だが、画面が小さく、ダイアログボックスがはみ出してしまい、ボタンが押せないといった問題を心配する必要はない。
本体底面。左上がメモリ、左下がバッテリ、右側がHDDの収納部になっている。後部に排気スリットがあるため、底部からは吸気するだけと思われる
メモリとHDD収納部のカバーを開けたところ。左上側のメモリの隣にあるのは、WAN通信用の無線モデム。、HDDは、青い緩衝材にくるまれて配置されている
バッテリを取り外したところ。ネットブックには珍しく、矩形のバッテリを本体底面にはめ込むタイプ
無線通信
1003HAGの最大の特徴は、NTTドコモのHSDPAサービスに対応したワイヤレスモデムを内蔵していることだ。サービスとしては、FOMAハイスピードであり、規格としてはW-CDMAのHSDPAに対応する。受信速度は最大で、7.2Mbpsだが、エリアや、同じ基地局を利用する他の端末数などにより変わってくる。
ワイヤレスモデムは、Sierra WirelessのMC8781で、HSDPA、HSUPAに対応している。このモデムのHSUPAは、2Mbpsまでのものであり、FOMAハイスピードは、HSUPAに関しては、5.7Mbpsを現在採用しているため、送信に関しては、非HSUPA時の384kbpsまでなのだと思われる(これについては今回の評価では確認することができなかった)。
このワイヤレスモデムを使った通信では、専用の「ドコモ 定額データプラン接続ソフト」を利用する。これは、通信料金の概算機能などを持つソフトウェアだ。
また、これとは別に、電波状態などを表示する「3G Watcher」というソフトウェアもインストールされている。ASUSのロゴが入っているが、おそらくモデムを開発したSierra Wireless社のソフトウェアだとおもわれる。
筆者宅で、速度を測定したところ、2Mbps程度の速度が出ていた。この程度の速度が利用できるなら、モバイル通信としては十分だろう。ドコモは、サービスエリアも広いため、よほどの場所にいかないかぎり、通信ができないことはないと思われる。そのため、常時接続可能と考えてもいいだろう。
通信料金を気にしなければ、この1003HAGでは、常にインターネットに接続できるので、いわゆるクラウドやWeb系アプリケーションは、常に利用できることになる。原理的には、外付けのUSBモデムと同じではあるが、モデムが内蔵されており、すぐにでも利用できるというのは、使い勝手の点で違いがある。また、USBポートを使うこともないし、取り付け、取り外しも不要だし、余計なものが付かないというのは、持ち歩きなどでも便利だ。一般的に、USBのコネクタは、基板に接続されているため、USB機器を接続したまま持ち歩くと、コネクタに力がかかって、壊れてしまう可能性がある。なので、USB機器は、カバンなどに入れる場合には、外しておくべきで、そうなると、いちいち取り外し、取り付けをやらねはならない。
欲を言えば、定額接続なのだから、無線LANやイーサーネットなどの状況を見て、自動で接続してくれると良かった。
また、無線機能のオンオフだが、無線LANやBluetoothのオンオフは、FNキーの組合せで行う。キーー押すたびに、それぞれのオンオフが切り替わっていく。また、無線モデムのほうは、付属の3G Watcherでオフにすることができる。設定により、3G Watcherを終了させるときに無線モデムをオフにすることができる。
ただ、飛行機に乗るときなど、キーボード操作やソフトの操作などを複数行うのはちょっと不便だ。できれば、一カ所でまとめてオンオフできるといいのだが。
付属の「ドコモ 定額データプラン接続ソフト」。通信を行うには、このソフトを使って接続を開始する必要がある
電波状態などを表示する「3G Watcher」。このソフトで、無線モデムのオンオフが可能
「ドコモ 定額データプラン接続ソフト」には、通信料金を概算する機能や、通信履歴を記憶する機能がある
そつのないネットブックだが
モバイルで常時接続を必要とするなら、悪くない選択だと思われる。ネットブックとしてもそつのないまとめ方だし、特に大きな欠点はみあたらない。気になるのは、販売方法で、契約不要の単体販売が行われている点だ。すでにNTTドコモの契約があるユーザーなら、なんの縛りもなく購入できるので便利ではあるが、新規に契約込みで買おうとするなら、2年縛りなどがあるものの、他のキャリアなどの本体価格を安価に設定している契約込みの機種のほうが魅力的な価格となる。購入にあたっては、このあたりを勘案してということになるだろう。