NTT、60GHz帯無線伝送用12mm角小型パラボラアンテナモジュールを開発
60GHz帯無線伝送用12mm角小型パラボラアンテナモジュールを開発
~ホームネットワークや小型携帯端末での10Gbit/s級高速伝送の実現に向けて~
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=219627&lindID=4
日本電信電話株式会社(以下、NTT 東京都千代田区 代表取締役社長:三浦惺)は、IEEE等で標準化作業が進展している60GHzミリ波帯(※1)を用いて光ファイバと同等の10ギガビット無線伝送を可能とする12mm角の小型パラボラアンテナモジュールの開発に成功しました。今回開発した、小型パラボラアンテナモジュールは、NTTの未来ねっと研究所(以下、NTTの研究所)が持つ広帯域/高利得アンテナ(※2)を集積化したミリ波システムインパッケージ(※3)技術と、信号を複数チャネルに分割して伝送する複数チャネル並列伝送技術を用いて10ギガビット信号伝送技術を組み合わせることで実現しています。
この成果は、ワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(WPAN)などの、端末・機器間での超高速データダウンロードや超高精細映像伝送や高速ホームネットワークなどを実現するために求められている、小型携帯端末・機器への搭載が可能な1cc級無線モジュールへの応用が可能な技術として期待されるものです。
本アンテナモジュールは、5月12日、13日に横浜で開催される「ワイヤレス テクノロジー パーク“WTP2009”(※4)」にて出展する予定です。
【 研究の背景 】
ブロードバンドの普及に伴い、現在、高速データ伝送が可能なミリ波帯と呼ばれる非常に高い周波数帯の使用が注目され、特に60GHz帯においてIEEEの標準化活動が最終段階に入っており、各機関で実用化が活発に行われています。60GHz帯を用いた無線システムは波長当たりの長さが5mmと短く、無線装置の小型化に有利であると共に使用可能帯域が9GHz(57GHz~66GHz帯)と広く,高速通信に極めて有効とされています。
しかし、光ファイバとロスなく接続できる60GHz帯10ギガビット無線伝送技術およびそれを実現する小型無線モジュールはまだ実現されていません。NTTの研究所では、小型携帯端末での超高速データダウンロードや超高精細映像の伝送を可能にする10ギガビット無線伝送システムを実現するため、小型無線モジュールなどの研究開発に取組んでいます。(図1)
【技術のポイント】
1.広帯域/高利得/小型化を実現した小型平面型パラボラアンテナ(※5)を開発
多層LTCC基板(※6)を用いて擬似鏡面を多層基板内に形成することで、12mm×12mm×1mmサイズで16dBiのアンテナ利得を実現しています(図2)。
2.アンテナ集積化ミリ波システムインパッケージ技術(図3)を用いた小型無線モジュールを開発(図4)
小型平面型パラボラアンテナを集積化したミリ波システムインパッケージです。12mm角に57GHzから66GHz(60GHz帯)で動作するアンテナ、高周波部を集積化したICを多層基板の表裏に搭載しています。本モジュールは小型・高集積のみならず、ミリ波信号の処理をモジュール内で完結するため、取扱いが難しいミリ波信号を気にせずにモジュール実装することが可能となり、実装そのものを簡易にすることができます。
3.60GHz帯での複数チャネル並列伝送技術を用いた10ギガビット無線伝送システムの実現を可能とする基本技術を開発
IEEE 802.15.3c(※7)で標準化が策定されている無線方式に準拠した方式を見据え、伝送するデータ信号を高周波帯(60GHz帯)の複数チャネルに分割し同時に無線伝送する技術で、今回のミリ波システムインパッケージでは1チャネル当たり2.5ギガビットの伝送速度を実現し、4チャネルを並列伝送しています(図5)。
【 今後の展開 】
1cc級の携帯端末搭載サイズ無線モジュールの実用化に向けて、一層の小型/高集積化/低消費電力化を進めると共に、端末系の近距離伝送からアドホック無線中継(図1参照)まで幅広く使える10ギガビット無線伝送モジュールの開発および、一層の高速無線伝送の実現に向けた研究開発を進めていきます。
【 用語解説 】
※1:60GHz帯:波長がミリメートル単位になるミリ波帯であり,世界中で高速無線伝送用に割り当てられている周波数帯.日本国内では57-59GHz帯(免許バンド),および,59-66GHz帯(免許不要バンド)が使用可能となっている.
※2:アンテナ利得:放射が最大となる放射角におけるエネルギーの強さ。指向性を持つアンテナでは、アンテナの利得としてデシベル(dB)で表します。半波長ダイポールアンテナを基準とするdBまたはdBd表記と、全ての方向に均等に電波を放射する等方向性アンテナを基準とするdBi表記があります。利得の大きなアンテナほど指向性は鋭く、特定の方向へ強く電波を放射します。
※3:ミリ波システムインパッケージ(System-in-Package; SiP):ミリ波帯の信号を扱うことが可能で1つのパッケージにシステムレベルの機能を集積化したもの。
※4:WTP2009 (Wireless Technology Park 2009):2009年5月12日から13日にパシフィコ横浜で開催される無線通信,技術分野の先端研究開発の展示会.
※5:小型平面型パラボラアンテナ:NTTが開発した小型アンテナ構造.多層基板上にパラボラ形状を擬似的に形成し,アンテナの小型化と高利得化を同時に実現できる.
※6:LTCC(Low-Temperature Co-fire Ceramic)多層基板:低温焼成されたセラミック基板であり,無線LAN(WiFi)用アンテナや自動車エンジン制御ユニット用実装基板として広く用いられている.
※7:IEEE 802.15.3c:IEEEの中に標準化グループの1つであり,ワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(WPAN)の標準化を行っている.