“多機能”で“スタイリッシュ”な複合機――キヤノン「PIXUS MX860」という選択
キヤノンの「PIXUS MX860」は、守備範囲がとにかく広いA4インクジェット複合機。プリント、スキャン、コピー、ダイレクトプリントに加えて、カラーFAX、ADF、有線/無線LANなど、ビジネスユースに十分対応できる機能をスタイリッシュなボディに凝縮している。この夏、仕事にも遊びにも使える手ごろな複合機を探しているならば、避けて通れない1台だ。
ビジネスにもインクジェット複合機の恩恵を
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0905/11/news002.html
キヤノンのA4インクジェット複合機「PIXUS MX860」 インクジェット複合機は、ここ数年間で家庭向けプリンタ製品の主役となり、近ごろはビジネスユースにもそのすそ野を広げている。無論、オフィスではレーザー複合機が主流だが、少人数のワークグループやSOHO、あるいは自室に置く仕事兼用プリンタを探しているユーザーにとっては、そこまでの出力性能を必要としないケースも多い。こうした場面では、レーザー複合機に比べて、「低価格でカラー印刷が可能」「小型軽量」「省エネ」というメリットがあるインクジェット複合機が積極的に選ばれている。
もっとも、インクジェット複合機をビジネスでも利用するには、相応の機能も必要だ。家庭向けの複合機は、写真用紙へのフォトプリントや年賀状作成が主な用途だが、仕事で使うとなると、普通紙の印刷品質をはじめ、両面印刷や両面コピー、書類のデータ化、FAXといった機能が重視される。各社から数多くのインクジェット複合機が発売されているが、SOHOや一般家庭のニーズに合致した、ホームユースとビジネスユースを同時に満たせる製品となると、非常に少ないのではないだろうか。
そこで、キヤノンの「PIXUS MX860」である。同機はインクジェットプリンタ製品の人気ブランドである「PIXUS」の豊富な製品ラインアップにあって、特に多機能なA4複合機。プリント、スキャン、コピー、ダイレクトプリントといった複合機の基本機能にとどまらず、カラーFAX、ADF(自動原稿送り装置)による原稿の自動両面読み取りと自動両面印刷、有線/無線LANによるネットワーク接続、写真も文書も美しく印刷できる染料+顔料インクシステム、前面と後部の2系統給紙機構(普通紙専用の前面給紙カセット+後トレイ)など、実に多彩な機能を備えている。それでいて、ボディを洗練された上質なデザインにまとめ上げているのも見逃せない。今回はその魅力を5つのポイントに分けてチェックする。
Point 1:ADF+自動両面印刷+2系統給紙によるペーパーハンドリング
PIXUS MX860の大きな特長が、A4用紙を最大35枚まで積載できる両面対応のADFだ。両面対応のADFは、業務用のコピー機では標準的な機能だが、インクジェット複合機で搭載する製品は数が限られる。これにより、両面印刷された複数枚の書類を1枚ずつ手で裏返すことなく、コピー、スキャンをすることが可能だ。
また、自動両面印刷ユニットを内蔵しているため、片面原稿から用紙両面へのコピー、両面原稿から用紙片面へのコピーに加えて、両面原稿から用紙両面へのコピーも一度の操作で行えるのがありがたい。ADFと自動両面印刷の組み合わせは、ビジネスシーンにおける作業効率の向上と用紙の節約に大きく貢献してくれる。
ADFはA4/レターサイズの普通紙に対応。折り畳んだ状態では圧板と一体化している上面のトレイを右側に開いて利用する(写真=左)。ADFは自動両面読み取りに対応しており、こうした両面印刷の書類も一回の操作でコピー、スキャンが行える(写真=右)
普通紙用の前面カセットとさまざまな用紙を扱える後トレイの2系統給紙に対応。写真のように、両方にA4普通紙をセットすれば、合計300枚まで給紙できる 給紙機構はPIXUSシリーズおなじみの2系統給紙に対応。写真用紙やはがきなど、さまざまな用紙を給紙できる後トレイと、普通紙(A4、A5、B5、レター)専用の前面カセットを柔軟に使い分けられる仕様だ。
文書印刷やカラーコピー、FAX受信用の普通紙は、本体内にすっぽり収納できる前面カセットに常備できるため、設置面積が広がったり、紙にホコリが付着したりすることなく、スマートに給紙したままの状態を保てる。写真用紙やはがきに印刷したいときは、前面カセット内の用紙を交換せずに、後トレイを引き出してセットすれば済むので、使い勝手はすこぶるよい。
給紙容量にも余裕があり、後トレイと前面カセットに普通紙を150枚ずつ、合計300枚セットできる(はがきは後トレイに40枚セットできる)。仕事で使う配布用資料など、たまに大量の普通紙印刷を行いたいときも、2系統給紙のおかげで用紙交換の手間が省けるというわけだ。
Point 2:セキュリティ機能を備えたスーパーG3対応FAX
家庭向けの複合機はFAX機能を備えていない製品が主流だが、PIXUS MX860はビジネスにも十分通用するFAX機能を持つ。高速な送受信が可能なスーパーG3規格に対応した普通紙カラーFAX機能を搭載しているのだ。
前面の操作パネルには、FAX用に5つの独立したワンタッチダイヤルボタンや短縮ダイヤル表示ボタン、リダイヤルボタン、テンキーなどを配置。最大5件のワンタッチダイヤル、最大100件の短縮ダイヤル、最大104件のグループダイヤルを登録でき、最大106件の同報送信にも対応する。SOHOや一般家庭では十分なメモリ件数といえるだろう。
操作パネルはFAX機能を備えた複合機としては、シンプルにまとまっている。FAX用に5つのワンタッチボタンやテンキーなどを配置しており、メニューは2.5型のカラー液晶モニタに表示する。モニタには広視野角のTFT液晶を採用し、視認性は良好だ
また、送信先の番号を2回繰り返して押すことで入力ミスを防いだり、ダイヤルした番号と送信先のFAX番号が一致しない場合に送信を中止する誤ダイヤル防止機能、迷惑FAXの受信を拒否する機能、テンキーを使った送信先のダイヤルサーチ機能、Windows PCからのPC FAX送信機能(1宛先、モノクロのみ)といった、ビジネスFAX機に見劣りしない機能をそろえている。モノクロ送信時にテキストの画質を向上させる「ファインEX」モードを追加することで、FAXの品質を高めているのも好印象だ。
電話回線の状況に応じて、FAX専用、FAX優先、電話優先といった受信モードが選択できる(写真=左)。ワンタッチダイヤルや短縮ダイヤル、グループダイヤル、通信拒否番号を登録できる(写真=右)
Point 3:スタイリッシュボディ+有線/無線LANによる設置性
キヤノンは昔からプリンタの質感向上と小型化に積極的だが、PIXUS MX860のボディもデザインに定評があるPIXUSシリーズの一員にふさわしい完成度だ。
ADFやFAXを装備した複合機は大型で不格好になりがちだが、PIXUS MX860ではADFのトレイを折り畳むと上面がフラットになるよう設計され、操作パネルを圧板の上部に配置することで、全体のまとまり感がよいBOX型フォルムに仕立てている。落ち着きのあるマットなシルバーとブラックのツートーンカラーは、インテリアにこだわった部屋に置いても違和感がない。豊富な機能を備えつつ、これほどスタイリッシュなデザインの複合機は貴重な存在といえる。
このデザイン変更が功を奏し、本体サイズは491(幅)×437(奥行き)×226(高さ)ミリ、質量は約11.8キロとなっており、前モデルの「PIXUS MX850」と比べて、奥行きは46ミリ、高さは34ミリも短縮された。MX850と同様にADFや自動両面印刷など、かさばる機能を内蔵しているが、設置性は確かに向上している。操作パネルの位置が圧板の下部から上部に移動したことで、大きい書物などをスキャンするときに、操作パネルが隠れないで済むようになったのもポイントだ。
左から、前面、背面、側面。いずれもADF、給排紙トレイ、カードスロットのカバーを開いた状態だ。このように、トレイを開いても本体の占有スペースは大きく変わらず、スタイリッシュな外観の印象も保たれている
洗練されたボディに、ネットワーク機能を標準装備している点にも注目したい。100BASE-TX/10BASE-Tの有線LANとIEEE802.11b/gの無線LANの両方に対応しており、離れた場所にある複数台のPCでプリンタとスキャナのネットワーク共有が行える。ネットワーク対応によって、本体をPCから離れた場所へ自由に置けるため、手狭なSOHO環境や書斎などで使いたい場合でも設置場所の融通が利く。
背面の左端に有線LAN、PC接続用のHi-Speed USB、FAX用のモジュラージャックを配置している(写真=左)。各端子は背面のくぼんだ場所にあるため、本体を壁面に近づけて設置する場合に、ケーブルが干渉することはない。無線LANを簡単にセットアップできるように、WPSやWCNといった規格に対応している(写真=右)。なお、オプションでBluetooth v2.0機能も追加できる
Point 4:写真も文書も美しく印刷できる染料+顔料インクシステム
プリンタの本分である画質も申し分ない。専用紙への写真印刷に適した染料4色インク(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)と、普通紙への文書印刷が得意な顔料ブラックインクで構成される5色独立インクカートリッジを採用しており、色鮮やかで高コントラストの写真印刷とシャープなモノクロ文書印刷を両立している。
キヤノン独自の高密度プリントヘッド技術「FINE」が実現する最高9600×2400dpiの解像度、最小1ピコリットル(1兆分の1リットル)という極小のインク滴により、印刷の粒状感が気になることもない。カラー写真とモノクロ文書をいずれも高画質に印刷できるのは、PIXUSならではのアドバンテージだ。
さらに純正写真用紙に印刷すれば、「ChromaLife100+」技術でアルバム保存300年以上、耐光性約40年の保存性が得られ、思い出を色あせずに保存できるのもうれしい(保存性の年数は「キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド」を使用した場合)。
Wordのモノクロテキストを普通紙にドライバ設定「標準」で印刷したサンプル(写真=左)。カラー画像を「キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド」にドライバ設定「きれい」で印刷したサンプル(写真=右)。以上のサンプルはいずれも300dpiでスキャンしたファイルの縮小画像で、各画像をクリックすると実寸のスキャンサンプルを表示する。普通紙へのモノクロテキスト印刷は画数が多い漢字でも輪郭が整っていて、専用紙への写真印刷は発色がよくカラーバランスもとれている。なお、画像の色域はsRGBなので、実際のカラー印刷はもっと色鮮やかな印象になる
印刷解像度を高め、インク滴を小さくすると、そのぶん印刷には時間がかかるが、PIXUSではプリントヘッドの高密度化、多ノズル化、長尺化、そして印刷するデータによって3サイズ(1ピコ/2ピコ/5ピコリットル)のインク滴を的確に打ち分ける「3サイズドロップレット」技術を用いており、印刷速度にも妥協がない。
公称の印刷速度は、L判フチなしカラー写真1枚が約35秒、A4普通紙カラーが約5.6ipm、A4普通紙モノクロが約8.4ipmで、このクラスのインクジェット複合機としては不満のないスピードを確保している(ipmの意味は以下の囲みを参照)。PIXUSシリーズの中ではモノクロ文書印刷が速いほうなので、ビジネスにウェイトを置いた利用にはうってつけだ。A4普通紙カラー印刷時のインクコストは1枚あたり約8.4円で、こちらもPIXUSシリーズの中では比較的低コストとなっている(コスト算出方法はキヤノンのホームページを参照→「PIXUS 測定環境について」)。
5色の独立インクタンクは正しく装着されているかどうか判別できるLEDが付いている(写真=左)。左の4つのインクタンクが染料インク、右の大きめのインクタンクが顔料ブラックインク(写真=右)。ちなみに、プリントヘッドのノズル数は、シアンとマゼンタが各768ノズル、イエローと染料ブラックが各256ノズル、顔料ブラックが320ノズルだ
Column:印刷速度の新基準「ipm」とは?
「ipm」とは「image per minute」の略語で、ISO(国際標準化機構)が新しく策定したプリンタ/複合機の生産性規格に従い、1分あたりにデフォルト設定で印刷可能な枚数もしくは面の数を示す。上記のA4普通紙印刷速度は、ISO/IEC 24734のオフィスカテゴリーテストによる片面印刷ESAT(Estimated Saturated Throughput)の平均値だ。Excel、Word、PDFのファイル(各4ページ)を用いて、1セットを印刷した後、30秒を超える最低セット数の印刷にかかる時間から、毎分の連続印刷枚数を算出する(1セット目の印刷時間は除く)。
現状のプリンタ市場において、A4普通紙印刷速度のカタログ表記はppm(pages per minute)が標準的だが、これは各社独自の測定チャート(つまりは高速に印刷しやすいデータ)を使用した最速設定時の値がほとんどで、異なるメーカー/製品間で正確な速度比較ができないという問題があった。
キヤノンはPIXUS MX860の投入とともに、メーカー間で統一した基準による公平な速度比較を可能とすることを目的に、ISOの新規格をPIXUSシリーズ全体に採用している。いち早く、キヤノンが同規格を全面的に採り入れたことは、PIXUSシリーズのスピードに対する自信の表れといえる。今後、他社もこの規格を採用すれば、異なるメーカー間や製品間において、印刷速度の比較がしやすくなるだろう。
Point 5:充実のスキャン/コピー/ダイレクトプリント機能
PIXUSシリーズが磨き上げてきたスキャン、コピー、ダイレクトプリントの機能はPIXUS MX860にも継承されている。機能は豊富にそろっており、枚挙にいとまがないほどだ。ここでは主要な機能にフォーカスして取り上げよう。
スキャナは光学解像度2400×4800dpiのCISタイプを搭載しており、ADF使用時の光学解像度は600×600dpiとなる。高解像度が必須となるフィルム(透過原稿)用スキャナではなく、紙焼き写真や文書などの反射原稿用なので、通常は300~600dpiの読み取り解像度で満足できる品質が得られるだろう。
スキャンしたデータは自動でPCへ保存したり、メールへ添付できるほか、PCと接続しなくても、本体に装着したUSBメモリやメモリカードにJPEG/PDF形式で直接保存可能で、PDF形式で保存する場合、最大100ページのファイル保存が行える。ADFを使った自動両面スキャンや、ネットワーク経由でのスキャン、最大10枚までの反射原稿を一度に読み取れるワンパスマルチスキャン、ゴミ傷低減など各種の画像補正、複数ページのPDF作成、パスワード付きのPDF作成、OCR機能によるテキストデータ変換など、スキャンしたデータを活用するための機能は盛り沢山だ。
A4対応のフラットベッドスキャナ機能は、読み取り部の周辺に平らなスペースが十分にあり、原稿をセットしやすい(写真=左)。スキャンしたデータを直接USBメモリやメモリカードに保存する機能も持つ(写真=右)
コピー機能については、1枚の用紙に2面を割り付ける2 in 1、4面を割り付ける4 in 1に対応し、先に紹介した自動両面印刷の機能と使い分けることでコピー枚数を節約できる。ADFで複数枚の原稿を複数部コピーする際、1部ずつ電子ソートして仕分けの労力を省いてくれる機能も便利だ。また、日付やページ数を印刷しながらのコピーや、とじ代のスペースを自動で空けて印刷する「とじ代コピー」、指定した幅を空白にしてパンチ穴を消す「パンチ穴消しコピー」も行える。印刷の向き、とじ方向、表/裏面といった印刷位置の設定も柔軟にでき、コピーの使い勝手はオフィスのレーザー複合機並みだ。
2面や4面の割り付けコピー機能は用紙の節約になる(写真=左)。パンチ穴やバインド用にとじ代のスペースを空けてコピーする機能など、コピー機能は豊富にそろう(写真=右)
デジタルカメラやメモリカードからのダイレクトプリント機能も充実している。デジタルカメラを直接つないで印刷できるPictBridge対応インタフェースのほか、SDメモリーカード(SDHC対応)/MMC、メモリースティックPRO、コンパクトフラッシュの各種メモリカードスロットを装備しており、2.5型の液晶モニタで画像をプレビューしながら印刷設定が行える。
さまざまなレイアウト印刷をはじめ、4分割や16分割などのシールプリント、35ミリフィルムで一般的なベタ焼き風の35面インデックス印刷、EXIFの撮影情報(カメラ名、レンズ名、撮影モード、シャッター速度、絞り値など)を付加した20面インデックス印刷といった機能が利用できるため、PCを使わない家族でも写真印刷が存分に楽しめるだろう。おまけに、ノートや方眼紙などのけい線があるフォーム紙をPCいらずでダイレクトプリントできる機能まで備えている。
各種メモリカードスロットは、前面の右下にあるカバーを開くと現れる(写真=左)。前面の込み入ったインタフェースをカバーで隠すことで、未使用時の外観に配慮している。メモリカードから読み込んだ画像は4面のサムネイル表示が可能で、個別に印刷部数を指定できる(写真=右)
ビジネスを中心に多方面で活躍できるスタイリッシュ複合機
多機能とスタイリッシュさの融合が所有欲をそそる このようにPIXUS MX860の特長を一通りチェックしてみると、PIXUSシリーズで好評を博してきたスタイリッシュなボディや、ホームユースでの便利さというDNAを受け継ぎながら、高機能なADFやFAXを搭載することで、ビジネスユースでも活躍できる“懐の深い”インクジェット複合機に仕上がっていることに感心した。ADFとFAXを装備したPIXUSは、2006年に発売された「PIXUS MP830」から世代を重ねてきただけあって、外観も中身も洗練されている。
最後に気になる価格だが、キヤノン直販サイト「キヤノンオンラインショップ」での販売価格は3万4980円に設定されている(標準価格はオープンプライス 2009年5月11日現在)。多様な機能を網羅しつつ、スタイリッシュなボディをまとったA4インクジェット複合機としては手ごろな価格で、コストパフォーマンスは高い。この低価格は、深刻な不況が叫ばれる昨今でも財布に優しい1台といえるだろう。
低コストでビジネスを中心に、家庭での写真印刷やファンプリントにも利用できるとあって、まさにSOHO環境や自宅で仕事をする場合にうってつけの複合機だ。特に、家庭内のインクジェットプリンタを仕事にも使っているが、ADFやFAXを搭載した製品ではないというユーザーは、PIXUS MX860を導入することで作業効率の改善が図れるに違いない。