ウィルコム無線LANオプションでつなぐ、N700系の無線LAN
東海道新幹線 N700系車内での無線LANサービスも、2009年3月14日にスタートしてはや1カ月。やっと東京駅から京都駅まで利用する機会を得た。「実際にどうなのか?」をいろいろと試してみた。このほか、新設された駅のコンコース待合室についてと、同じく新設されたウィルコム無線LANオプションの新プラン「エクスプレスエリアコース」もあわせて紹介する。
http://ascii.jp/elem/000/000/413/413432/
まだまだ本数の少ないN700系
筆者はウィルコム端末(WX320K)のユーザーではあるものの、パソコン用のデータ通信サービスではイー・モバイルも併用している。イー・モバイルが新幹線でもそこそこつながるのは今までの経験で知っていたが、天敵である「トンネルが多い区間」では、ほとんど役に立たないのもまた事実。そんなわけで、トンネル内でも安定して使えるという東海道新幹線 N700系の無線LANサービスは早く試してみたいと思っていた。
今回乗車したのぞみ13号を東京駅にて。まだまだお目にかかるのが難しいN700系である
ただ、N700系に乗車しようと思って時刻表を調べてみると、現状ではまだまだ利用しづらい面があることに気がついた。無線LANサービスを利用できるのは、東海道新幹線の東京駅~新大阪駅だが、東京駅から出発する場合で見ると、N700系は博多行きと広島行きののぞみ号に割り当てられることが多く、2009年3月14日のダイヤ改正では1時間あたり3本程度の運転に留まる。
新大阪までの乗車でも敢えて広島行きや博多行きを選択しなければならないこと。復路で新大阪始発の新幹線にはN700系があまり充当されていないことなどを考えると、現状では、成り行きで乗車券を買うのではN700系に当たりづらく、時間を決めて事前に指定席を確保する必要がある(そうしないと、電源コンセントのある窓側席を確保しづらいので)。
ただ、JR東海のプレスリリースによれば、2009年度中に新たに16編成のN700系を投入するとのことなので、いずれ解決する問題ともいえそうだ。
なお、JTB携帯時刻表3月号によると、下りでは早朝の名古屋6:30発広島行きのひかり491号、新横浜6:00発広島行きのひかり493号、東京22:00発名古屋行きのひかり533号、東京22:47発三島行きのこだま809号の4本、上りでは浜松6:46発東京行きのこだま706号、名古屋6:20発東京行きのひかり500号、広島19:51発名古屋行きのひかり490号の3本にもN700系が充当されるので、「のぞみ」以外のこれらの列車でも無線LANサービスが利用できるようだ。
東海道新幹線 全17駅の待合室でも無線LANが利用可能に
N700系車内での無線LANサービスと同じタイミングで、東海道新幹線 東京~新大阪間の全17駅コンコース待合室でも無線LANが利用できるようになっている。しかし、一部の主要駅では今までも利用することができていたわけで、いわば従来のサービスが拡張されたともいえる。そこでまずは、今回のダイヤ改正前後で何が変わったのかを実際にサービスを提供する事業者ごとに整理してみたい。
三島駅にて。三島駅は、新幹線改札内の待合室(改札階)で無線LANが利用可能になった(左)
2009年3月14日のダイヤ改正以前は、ドコモ公衆無線LANサービス(Mzone/mopera U)、BBモバイルポイントが主要6駅(東京駅、品川駅、新横浜駅、名古屋駅、京都駅、新大阪駅)で利用可能だったが、これが改正後は全17駅に拡大。フレッツ・スポットも主要6駅で利用可能だったが、こちらは全駅で利用可とはならず、特に変更点がない。ホットスポットとUQ Wi-Fiについては、改正前に全く使えなかったのが、新たに全17駅で利用可能となった。ホットスポットはウィルコム無線LANオプションのベースとなるサービスなので、ウィルコム的に見ると東海道新幹線関連のエリアは大幅に強化されたことになる。
アクセスポイントは待合室内のカフェ前の天井に設置されている(パナソニック製 ES-7HD4)。このアクセスポイントは共用型で、mobilepoint(BBモバイルポイント)、0033(ホットスポット)、docomo(ドコモ公衆無線LANサービス)、UQ_W-Fi(UQ_Wi-Fi)の4つのSSIDをブロードキャストしていた。待合室はそれほど広くないので、1つのアクセスポイントでも十分カバーできるものと思われる
静岡駅にて。静岡駅は、改札階から階段を上がった(=ホーム階から下がった)フロアにある待合室で無線LANが利用可能になった(左)。待合室にはスターバックスコーヒーや駅売店が併設されていて、三島駅と比べると座席の数も多い。正面入口から見て、左手奥の壁面にアクセスポイントが設置されている(右)。アクセスポイントは三島駅と同じパナソニック製のES-7HD4(右)
新幹線停車駅のうち、東京駅、品川駅などの主要6駅のコンコース待合室では、車内で見える4つのアクセスポイントに加えて、フレッツ・スポットのアクセスポイントも確認できる
イー・モバイル VS E700系の無線LAN 新幹線乗車中のデータ通信速度対決!
N700系の無線LANサービスはトンネル内でも安定した接続ができるのがセールスポイントだが、実際にワイヤレスWANサービスと比べてどのくらい優位性があるのだろうか。今回は、4月12日(日)の東京駅8:30発博多行き、のぞみ13号の16号車に乗車して、イー・モバイルのデータ通信サービスと比較してみた。なお、当日の車内の混雑状況は、指定席の窓側席はすべて埋まっていたが、通路側や中央の3人掛け席は空席が目立つレベルであった。
2人がけ窓側席のテーブルを広げ、2台のノートパソコンを並べてスピードテストを実施した N700系車内の窓側席足下には電源コンセントが設置されている。ノートパソコンの電源としても、携帯電話の充電用にも心強い限りだ
速度比較の方法は、似たような性能の2台のノートパソコンを並べて、一方ではN700系の無線LANサービスに、もう一方ではイー・モバイルに接続。東京~京都間でおよそ5分おきにブロードバンドのスピードテスト(「gooスピードテスト」)を同時に実施し、下り速度を記録した。今回は5分おきの測定なので、テスト開始から4分経っても終了しない場合はタイムアウト扱い(0Mbps)としている。
測定に用いた機材は、パナソニック製の「Let's note CF-R3F」(イー・モバイル:D01NE)と東芝製の「NB100/H」(内蔵無線LAN:Atheros AR5007EG)。無線LANサービスは、BBモバイルポイントを利用した。
変動の激しいイー・モバイル、低速だが安定した無線LAN
グラフの内容を詳しく整理しよう。まずイー・モバイルの測定結果だが、走行場所や走行の状態によって激しく変動していることが明らかだ。
新横浜、名古屋、京都の各駅の停車中、あるいは駅停車前後の低速走行中では1.5Mbpsを越える速度を示し、トンネルのない区間を高速走行している時も1.0Mbps前後の速度が記録された。
【グラフ】左のグラフが測定した結果。縦軸が東京駅を発車してからの経過時間、横軸がgooスピードテストの測定値である
しかし、トンネルが連続する神奈川県大磯町・二宮町付近から小田原市、熱海駅通過後の新丹那トンネル通過中などはまったくデータ通信ができない状態であった。
同じように、新富士駅通過後の富士川鉄橋~蒲原トンネル付近、大井川を越えたあたりからの第一高尾山トンネル(静岡空港直下)~牧ノ原トンネルに至る連続トンネル区間、滋賀県-京都府の県境にある音羽山トンネルといった長大トンネルでも電波状態が圏外となりやすく、データが流れづらい状態となった。
これに対し、N700系の無線LANは、東京駅を出発した直後から京都駅に到着するまで、必ずしも高速ではないが、0.42~0.48Mbpsという常に安定した速度が記録されている。実際に測定をしているときも、測定開始直後からすぐにデータが流れていたようで、いわゆる「パケ詰まり」のような現象は全く見られなかった。
今回は日曜朝の比較的空いている時間帯での測定で、たまたま乗車した新幹線内の無線LANサービス利用者が少なかった可能性がある(逆に同サービスの最大速度2Mbpsよりはかなり低いので、利用者が多かった可能性もある)。とはいえ、イー・モバイルのように電波状況に依存して全くデータが流れなくなるタイミングがなかったことは好印象である。
また、京都駅で下車したので、京都駅~新大阪駅についてのデータはないが、この区間にはトンネルがないこと、平行するJR京都線、阪急京都本線ではイー・モバイルでも概ね安定したデータ通信が可能であることから推測すると、双方とも新幹線車内では安定した速度で接続できると予想される。
ウィルコム無線LANオプションで新幹線の無線LANを使おう!
N700系の無線LAN接続にメリットが見えたところで、いよいよ本題。今度はWILLCOM 03やパソコンで「ウィルコム無線LANオプション」のサービスを使ってみる。なお、ウィルコム無線LANオプションには、N700系の無線LAN接続サービス開始にあわせ、「エクスプレスエリアコース」というリーズナブルなプランが新設されている。今回はこれを利用してみよう。
N700系車内で無線LANアクセスポイントを検索すると、このような4つのアクセスポイントが発見される。実際に利用するサービスのアクセスポイントに接続しないと正常にログインできないので注意しよう
エクスプレスエリアコースは、利用可能エリアをN700系車両内と東海道新幹線17駅のコンコース待合室に限定。通常のウィルコム無線LANオプションのように料金プランで月額利用料が変化するのではなく、どの料金プランも一律「初期登録料0円、年額3000円」で利用できる。つまり、月額に換算すると250円というリーズナブルな価格になる。
ウィルコム無線LANオプション設定ソフトの起動画面。このソフトのセットアップ課程で、アクセスポイントへの接続情報が既に登録されているので、この画面ではログインID、パスワードを入力して「ログイン」ボタンをクリックするだけでいい
なお、1年経過後は1年ごとの自動更新で、申し込み月の利用料金に合算して年額が請求されるしくみだ。なお、申し込みはウィルコムの電話機、または、PRIN接続したAIR-EDGE端末からエクスプレスエリアコース専用サイトへアクセスする必要がある(Willcom 03、Advansed/W-ZERO3[es]では、後述する無線LANツールでも可能)。
N700系車内でログイン後に表示されるウェルカムサイト。乗り換え、駅の時刻表など、新幹線関連の各種情報が提供されている
では、実際に利用してみよう。Windows XP SP2以降、Windows Vistaを搭載したパソコンでは、ウィルコムのサイトから無償でダウンロードできる「ウィルコム無線LANオプション設定ソフト」を使用すれば、アクセスポイントへの接続、ログイン処理が簡略化できる。また、同ソフトを利用しなくても、エリア内でホットスポットのアクセスポイント(SSID:0033)に接続し、ウェブブラウザを起動して表示される画面でログイン処理をすれば、利用することが可能だ。
ウィルコム無線LANオプション設定ソフトを使用しない場合は、ブラウザを用いたログイン方法となる。従来のホットスポットのエリアでは、ログイン画面はオレンジ色を配色としたもの(左)であったが、エクスプレスエリアでは青色をベースとしたカラーリングに変更されている
Willcom 03、Advansed/W-ZERO3[es]では、W-ZERO3向けポータルサイトからダウンロードできる「無線LANツール」を利用すると、簡単に接続・ログインできるほか、無線LANツールを使ってウィルコム無線LANオプション エクスプレスエリアコースの利用登録も可能となっている。
無線LANツールは、W-ZERO3向けポータルサイトからダウンロードできる。サイトに接続してダウンロードボタンをタップ、ダウンロード画面でファイルを開いて本体にインストールする 無線LANツールをインストールすると、待ち受け画面に「無線LANオプション申込」と書かれたアイコンができあがる。このアイコンをタップすると、申し込みを開始できる
エクスプレスエリアコースを新規で申し込む場合は「新規申込」ボタンをタップする。既に申し込んでいる場合は「再設定」ボタン、解約する場合は「サポートサイトを開く」ボタンをそれぞれタップ 申し込みプランの選択画面。エクスプレスエリアコースを申し込む場合は、一番上のボタンをタップする
利用規約を確認したら、「利用規約に同意する」のチェックをオンにして「申込」ボタンをタップする 申し込みが完了すると、ID、パスワードが表示されるので、控えを取っておこう。なお、無線LANツールにはこのIDとパスワードがすでに設定済みになっているので、特に再設定する必要はない
N700系無線LANが利用できる場所に入ったら、待ち受け画面にある無線LANツールの灰色のアイコンをタップすれば、接続・ログインを行ってくれる(アイコンが緑色に変わる) N700系無線LANが利用できる場所でWillcom 03の無線LAN機能をオンにすると、このように複数のアクセスポイントが検出されるが、特に気にせずダイアログは消去して構わない
まとめ
今回のスピードテストの結果は、見る人によって感じ方が大きく異なるのではないかと思う。ワイヤレスWANとしてはエリアに明らかな課題のあるイー・モバイルが、意外に高速移動中も使えるじゃないかと感じる人もいるだろうし、あまりトンネルのイメージがない東海道新幹線でも、トンネルの区間が結構長いのだなと再認識する人もいるだろう。
ただ、筆者の経験からすると、東京駅を出発して30~60分後という時間帯は、とりあえずは腹ごしらえして、いざパソコンに向かおうという頃合いである。ここに接続が安定しない区間があるのは、実にタイミングが悪い。N700系の無線LANなら、速度は遅くともこの時間帯が安定して接続できるので、ストレスを感じずに済む。
逆にいえば、浜松駅から西側のトンネルが少ないエリアでしか東海道新幹線には乗らないという人なら、イー・モバイルでも十分だろう。まぁ、N700系はのぞみ号が中心なので、実際は名古屋駅~新大阪駅なら、ということになるだろうが。
また、このレベルの使い勝手が得られるならば、よりトンネル区間が長い東北・上越・長野新幹線に無線LANサービスが導入されれば、その効果はさらに大きいはずだ。こちらは他社であるJR東日本の管轄なので同じ方式というわけにはいかないかもしれないが、期待せずにはいられない。
今回の内容でもう一つ注目に値するのは、エクスプレスエリアコースのようなエリアを限定したプランをウィルコムが新設したことである。これはすでに述べたように、東海道新幹線関連のエリアのみに限定して料金を年間3000円(月額250円)に抑えたリーズナブルなプランだ。新幹線でそれができるならば、例えばモスバーガー限定、プロント限定、タリーズコーヒー限定といったプランも実現できないはずはない。
無線LANサービスは、多くのエリアで使えることが重要ではあるものの、利用できるエリアを特定のファーストフード店やカフェのチェーン店に限定する代わりに低料金でサービスを提供できれば、今まで価格面で二の足を踏んでいた人を新たな利用者として獲得できるかもしれない。また、無線LANエリアを提供する飲食チェーン側からしても、ユーザの囲い込みができるのだから、メリットも大きいはずだ。今回のN700系の無線LANサービスは、そういう可能性も見せてくれたと思う。
【参考】東海道新幹線N700系乗車中のデータ通信速度(Mbps)
測定開始時刻 イー・モバイル 無線LAN メモ
8:34 1.55 0.46 浜松町駅付近低速移動中
8:39 1.04 0.44
8:44 0.34 0.46 測定中に日吉トンネル、大倉山トンネルを通過
8:48 1.57 0.42 新横浜駅停車中
8:54 0.86 0.45 相鉄西谷駅付近
8:59 0.29 0.46 大磯町、二宮町のトンネル群を通過
9:04 TimeOut 0.45 小田原駅通過後の連続トンネル区間
9:09 TimeOut 0.48 熱海駅通過後の新丹那トンネル通過中
9:14 0.69 0.45 三島駅通過後、沼津市付近
9:19 TimeOut 0.46 富士川鉄橋~蒲原トンネル
9:24 0.50 0.43 静岡市清水区付近
9:28 0.54 0.44 日本坂トンネル(短い)~焼津市内
9:33 TimeOut 0.46 第一高尾山トンネル~牧ノ原トンネルのトンネル群
9:39 0.46 0.45 袋井市~磐田市付近
9:44 0.93 0.45 浜松駅通過
9:49 1.02 0.45 湖西市付近
9:54 1.31 0.45 豊橋駅通過
9:59 1.02 0.47 幸田町~羽角トンネル~岡崎市付近
10:04 0.72 0.47 知立市~刈谷市付近
10:09 0.82 0.47 名古屋市熱田区付近
10:13 1.84 0.47 名古屋駅停車中
10:19 1.03 0.46 稲沢市付近
10:24 1.33 0.47 大垣市付近
10:29 1.20 0.46 関ヶ原トンネル~米原市長岡付近
10:34 0.42 0.47 彦根市~豊郷町付近
10:39 0.68 0.48 近江八幡市~野洲市付近
10:44 TimeOut 0.47 大津市付近~音羽山トンネル
10:48 1.45 0.46 東山トンネル~京都駅手前