【第1回】基礎編 そもそも高速データ通信とは何か?
いつでもどこからでもインターネットを利用したい! そんな要望に応えてくれるのが「データ通信」サービスだ。3Gケータイ(第3世代携帯電話)などの通信網を利用して、パソコンをインターネットへと接続する。データ通信を利用する魅力はどこからでもネットに接続できることだ。パソコン本体だけでは、ハードディスク内に保存したファイルの閲覧や編集が関の山。しかし、データ通信を利用することで、パソコン活用の幅は大幅にアップする。既にパソコンとインターネットは切っても切れない関係になっているため、モバイル化でパソコンを使うにも、ネット接続サービスへの加入が不可欠なのだ。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/special/20090415/1025498/
モバイル下でのネット接続サービスには「公衆無線LAN」という選択肢もあるが、こちらは急なネット接続には向いていない。理由は単純で、エリアが限られているためだ。公衆無線LANは、その名称からも分かるように無線LANと同じ仕組みを使っている。このため、通信エリアはアクセスポイントを設置しているファーストフード店や駅構内など、特定の場所に限られる。もし、急な仕事でメールチェックをしなければいけないとき、その場でネットに接続することはできない。必ず最寄りのエリアを探す必要があるため、いつでも利用できるネット接続サービスとはいえないのだ。
昨年以降、データ通信サービスへの注目度が高まった。背景には、5万円パソコンと呼ばれる低価格ミニノートブームがあげられる。高額だったモバイルノートが安価で手に入るようになり、パソコンを自宅外で利用することが容易になっている。さらに拍車をかけたのがデータ通信端末とのセット販売だ。イー・モバイルを始め、データ通信端末とセットでパソコンを購入すると受けられる割引サービスに影響で、パソコンと一緒にデータ通信サービスへと加入する人が急増した。さらに利用者が増えたことで、データ通信サービスを手がけるキャリアも、データ通信サービスへの新規参入・サービス拡充を進めている。
今からデータ通信サービスへ加入するなら、どのキャリアを選んだらいいのか。キャリア別のサービス内容と必要なコスト。そもそもデータ通信サービスを利用するべきかどうか? 勢力争いが激化している今だからこそ知りたい、「データ通信サービス選びのポイント」を解説していこう。
パソコンのモバイル利用に欠かせない「データ通信サービス」。エリア内にいれば、屋外からメールチェックやウェブの利用できる(画像クリックで拡大)
昨年登場した「100円パソコン」。イー・モバイルのデータ通信端末とセット販売することで、本体価格を約4万円割り引く(画像クリックで拡大)
データ通信事業者選ぶ前に知っておきたいこと
そもそもデータ通信サービスとは、どのようなものなのか。普段、パソコンを自宅や会社だけで使っている方だと、データ通信といわれてもピンと来ないだろう。読者の多くは、自宅で利用しているフレッツADSLやフレッツFHHTサービスなどのインターネット接続サービスを利用しているはずだ。これら一般的な接続サービスとの違いは、利用できる場所にある。
自宅で利用するインターネット接続サービスは、言い換えるなら「固定電話」と同じだ。設置した場所からでないと、インターネットに接続できない。対するデータ通信サービスは、固定電話に対する「ケータイ」と置き換えられる。外出する際に持ち運ぶことで、いつどこからでも、パソコンをインターネットへと接続できる。固定電話とケータイをどちら利用するなら、当然毎月の料金が2サービス分必要なる。また、固定電話をやめてケータイだけにする人がいるように、パソコンのインターネット接続環境をデータ通信サービスに一本化することもできる。
現在、商用サービスをしているデータ通信サービスには2タイプある。自社で通信網を持っている移動体通信事業者(MVO)と、MVOの通信網を借り受けてデータ通信サービスを提供する「MVNO」(Mobile Virtual Network Operatorの略)と呼ばれる仮想移動体通信事業者だ。MVOには、前述した3Gケータイの事業者、以前は定番サービスだったPHSの事業者があるため、MVNOにも3Gケータイを利用するサービスと、PHSを利用するサービスの2種類が展開されている。
自社で敷設した3Gケータイ網を利用するMVOの代表格は、NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルなど。PHS網を利用する事業者には、ウィルコムとケイ・オプティコム。そして近年、数を増やしているMVNOには、NTTドコモの「FOMA-HIGHSPEED」網を利用する日本通信の「b-mobile 3G」。イー・モバイル網を利用したものでは、プロバイダーのIIJが提供する「IIJモバイルサービス/タイプE」や、BIGLOBEの「BIGLOBE高速モバイル」、ソネットの「bitWarp(EM)」。3月からはソフトバンクモバイルが自社の通信網とイー・モバイルの通信網を切り変えて利用できる「データ定額ボーナスパック」のサービスも始めている。
データ通信事業者に直接契約するなら、選択肢が絞り込めて分かりやすいのだが、MVNOを含めると急にややこしくなる。MVNOは、微妙に利用料金やサービスが異なるからだ。イー・モバイルのMVNO事業者には、データ通信端末をレンタルできる仕組みを用意していたり、イー・モバイルと直接契約するより月額料金が安くなるケースもある。ただし、自宅でのプロバイダー契約が前提条件もあるため、誰もがすぐに入れるというわけでもないからやっかいだ。
利用者としてスタンスは、まず利用する通信事業者を決め、次はどこで契約するのかを考えることしかないだろう。事業者と直接契約か、それとも自宅で利用しているプロバイダーが用意したMVNOによるデータ通信サービスか。選択肢をくまなくチェックして、自分に適した事業者を選ぶことが大切だ。
利用サービス インターネット
接続サービス データ通信
サービス
利用場所 契約した自宅や会社内 利用エリア内ならどこでもOK
契約先 回線事業者、およびプロバイダー ケータイ事業者、またはプロバイダー
接続できる台数 複数台(ルーター利用時) 原則は、1端末につき1台
料金システム 月額固定が大半 従量制(上限額無い場合も)と、月額固定の2タイプ
通信速度 光回線なら数十Mbps以上と高速 ADSL並みか、それ以下。とくに上り回線が遅い
ココが○ 通信速度が速く、複数台の利用も簡単 自宅、外出先関係なくインターネットを利用できる
ココが× 利用できる場所が限られる 通信速度と、料金がネック
自宅で利用するインターネット接続サービスと、モバイル向けのデータ通信サービスの違いを示した。利用場所や事業者、価格などが
事業形態 移動体通信事業者(MVO) 仮想移動体通信事業者(MVNO)
通信方式 3Gケータイ PHS 3Gケータイ PHS
通信設備 自社 MVOから借り受ける
加入条件 なし 接続会員が対象
加入特典 パソコンと同時購入で、本体価格の割り引くサービスなどを用意 月額料金の割引、データ端末のレンタルなど独自のサービスを用意
主な事業者 NTTドコモ/au/ソフトバンクモバイル/イー・モバイル ウィルコム/ケイ・オプティコム ■FOMA:日本通信/ウィルコム■イー・モバイル:ソフトバンクモバイル/ソネット/IIJ/BIGLOBEなど 日本通信/ソネットなど
データ通信事業者をタイプ別に示した。通信方法と、自社の通信網を持っているか否かで3つに分けられる
手持ちのケータイでもOK! データ通信の始め方
では、データ通信サービスの導入方法について見ていこう。データ通信を利用するには、データ通信に対応した端末をパソコンと接続することが必要になる。このデータ通信端末、大きく2種類に分けられる。1つはデータ通信専用に設計された端末。もう1つは、ケータイ本体を専用のUSBケーブルやBluetoothを使ってパソコンと接続し、通信端末として利用する方法だ。データ通信に利用できるケータイは、NTTドコモのFOMA端末やauのWIN端末、ソフトバンクモバイル3G端末、イー・モバイルなどのケータイ端末。キャリアによっては、パソコンとの接続ケーブルが別売となるものの、機器の購入費用やサービス利用の月額基本料金といった、コストを抑えることができる。ただし通信料金は、イー・モバイルを除き、専用端末利用時より高額になる。とくにauの対応端末以外や、ソフトバンクモバイルでは、パケット通信料の上限額がないので要注意だ。また、古いケータイでは通信速度が遅いものもある。
一方、専用のデータ通信端末は、端末の購入費用や毎月の月額利用料金はかかるものの、上限額が決まっているので安心だ。最新のデータ通信端末では、通信速度も速い。種類も豊富で、USBタイプからPCカードタイプ、ExpressCardタイプなど、キャリアによっていろいろな端末が用意されている。データ通信に利用するパソコンに応じて、接続できる通信端末を選ぶことができる。
人気の低価格ミニノートと一緒に使うなら、USBタイプを選ぶのが無難。このUSBタイプのデータ通信端末なら、デスクトップパソコンでの利用もできるので使い道が広い。例えば一人暮らしの人など、契約したネット通信サービスをたった1人で使っている場合は、自宅とモバイル下でのネット通信サービスを2つ加入するのは無駄。片方の接続サービスは、常に使わないことになるためだ。高速回線が必要だったり、自宅のパソコンをサーバーに使う必要がなければ、利用するネット通信サービスをデータ通信に一本化することもできるのだ。
ケータイを使ったインターネット接続例。ケータイとパソコンを専用のUSBケーブルで接続している(画像クリックで拡大)
ケータイ主要3キャリアのデータ通信料金
事業者名 NTTドコモ au ソフトバンクモバイル
通信料金
(1パケット) 0.0126円~(データプランLLパケットプラス利用時) 0.0126円~(WINシングルLL利用時) 0.105円~
月額料金上限額 1万3650円(パケ・ホーダイ ダブル利用時) 1万3650円(対応端末で、ダブル定額ライトまたはダブル定額利用時) なし
プロバイダー料金 必要 必要 不要
最大通信速度※
(下り) 7.2Mbps/3.6Mbps/
384Kbps、64Kbps 3.1Mbps/2.4Mbps/
144kbps 7.2Mbps/3.6Mbps/
1.8Mbps/384Kbps
最大通信速度※
(上り) 384Kbps、64Kbps 1.8Mbps/64kbps 384Kbps/64kbps
※通信速度は、エリアや利用機種、契約内容によって異なる
ケータイ主要3キャリアのデータ通信料金がこちら。NTTドコモとau(対応端末のみ)は上限額を用意。auの対応端末以外やソフトバンクモバイルは通信量に応じて通信料が際限なく上がっていくので注意したい
イー・モバイルが用意するUSBタイプのデータ通信端末「L12LC」と「L12HW」(画像クリックで拡大)
スマートに装着できるPCカードスロットタイプも用意している(画像クリックで拡大)
■変更履歴
初出では本文と表にauのデータ通信サービスに上限額がないような記述がありましたが、誤りでした。auの対応端末(→「モバイルデータ通信定額 対応機種一覧」参照)を使用し、ダブル定額ライトまたはダブル定額の契約時には1万3650円の上限額があります。お詫びして訂正いたします。本文と表は修正済みです。[2009/4/20 17:40]
FOMAとイー・モバイル! 2大データ通信サービスを比較
データ通信サービス選びのポイントに話を移したい。まず取り上げるのはNTTドコモの「定額データプランHIGH-SPEED」とイー・モバイルの「スーパーライドデータプラン」だ。どちらも3Gケータイ網を自社で敷設して、データ通信サービスを提供している。それぞれのメリット、デメリットを見ていこう。
NTTドコモが手がける定額データプランHIGH-SPEEDの特徴は、対応エリアの広さにある。いち早く人口カリー率は100%を達成。地方でも利用できる安心感がある。最高通信速度は下り7.2Mbps、上りが384Kbpsと、データ通信サービスとしては標準的だ。ネックは利用コスト。標準の月額料金が4200~1万500円(ベーシックコースの場合)と高く、さらに接続時に利用するプロバイダー料金も必要になる。現実的な最安利用プランを考えると対象機種を新規購入した場合に加入できるバリューコースと、年間割引サービスの「定額データ割」を併用して月額3465~5985円。さらにNTTドコモ運営のプロバイダー「mopera U」(月額840円)を利用したと想定すると、実際に支払う月額料金は4305円~6825円となる。
次は、データ通信サービスとして躍進を続けるイー・モバイル。魅力は月額料金と通信速度にある。標準的な「スーパーライドデータプラン」の場合、月額料金は2000~5980円。さらに端末本体を新規購入した場合に加入できる「新にねん」を利用すると、月額料金は1000円~4980円へと下がる。FOMA HIGH-SPEEDと異なり、プロバイダー料金を支払う必要がないのも魅力だ。注意点は、契約期間途中で解約した場合に支払う契約解除料。契約内容によっては数万円の手数料を支払うことになる。また、新にねん契約は、100円パソコンなど、パソコン本体価格の割引されるセット販売時には非適応。月額料金2900~6880円の「にねんMAX」しか選べない。
最高通信速度は下り7.2Mbps、上り5.8Mbps。下りはFOMA-HIGHSPEEDと変わらないものの上りは15倍以上も速い(4月17日時点で5.8Mbps対応地域は東京都内の一部地域に限られる)。デジカメ写真など、数MB以上の添付ファイルをメール送信する方は、上りの速いイー・モバイルの通信端末が一推しだ。
イー・モバイルのネックは通信エリア。大都市圏中心にエリアを展開してきたため、地方での利用にはやや難がある。実際にFOMA-HIGHSPEEDではつながっても、イー・モバイルではダメだったということがあった。地方でも利用したいという人には、料金や速度より、接続できることを優先してFOMA-HIGHSPEEDを選ぶべきだろう。
会社名 イー・モバイル NTTドコモ
製品名 D12LC/D12HW/
D02HW D21LC/D21HW FOMA A2502
HIGH-SPEED L-02A
プラン名 スーパーライトデータプラン 定額データプラン
HIGH-SPEEDD
(ベーシックコース) 定額データプラン
HIGH-SPEEDD
(バリューコース)
端末料金
(2年契約時) D12LC:9980円
D12HW:9980円
D02HW:5980円 D21LC:
1万2980円
D21HW:
1万2980円 1円
(新規契約時) 5460円
(新規契約時)
月額使用料
(2年契約時) 新にねん:1000円~4980円
にねんMAX:2900円~6880円 4200円~6720円 3465円~5985円
プロバイダー料金 なし 月額840円(mopera U利用時)
通信速度
(下り) 最大7.2Mbps 最大7.2Mbps
通信速度
(上り) 最大384Kbps 最大1.4Mbps 最大384Kkbps
人口カバー率 90%
(東名阪:97%) 100%
NTTドコモの定額FOMA-HIGHSPEEDとイー・モバイルのスーパーデータプランのサービス比較
NTTドコモ「FOMAデータ通信」サービスの公式ページ
イー・モバイル「スーパーデータプラン」の公式ページ
格安&通信網も選べる! 新興データ通信サービスをチェック
NTTドコモ、イー・モバイル以外の通信サービスはどうか? 実は、これら2大データ通信サービスもうかうかしていられない状況になってきた。そのワケは、MVNOを巧みに利用した新興サービスの対抗と、次世代データ通信を担う新サービスの登場にある。
まず注目したいのは、データ通信サービスに力を入れ始めた。ソフトバンクモバイルだ。3月にはイー・モバイル通信網と自社の通信網を使い分けられる「データ定額ボーナスパック」をスタート。2枚のSIMカードを使い分けることで、月額料金の安いイー・モバイルと利用エリアの広いソフトバンクモバイルの3Gケータイ網が利用できる。ソフトバンクモバイル網は月額料金の上限額がない従量制のため、普段はイー・モバイル網を使い、エリア外のみソフトバンクモバイル網に切り替えて利用するというのが、このサービスのメリットだ。
同じくNTTドコモのFOMA-HIGHSPEED網を利用するのが日本通信の「b-mobile 3G」。利用開始から16カ月間、最大150時間までインターネットへと接続できるサービスだ。特徴は、月額料金ではなく、端末代金と150時間分の通信料を含めた3万9900円を一括で支払う方式を採用していること。利用の目安は1カ月あたり約9時間、1日19分弱となる(16カ月利用する場合)。メールチェックができればよく、できるだけ毎月のコストを抑えたい人に向いている。
これら3Gケータイに変わる新しいデータ通信方式として注目されているのが、「モバイルWiMAX」だ。下りが最大40Mbps、上りが最大10Mbpsという高速データ通信サービスとなる。運営母体のUQコミュニケーションズでは、2月26日から東京23区、川崎市、横浜市の一部で無料の試験サービスを実施している。7月からはエリアを首都圏、名古屋、大阪へと拡大して商用サービスへと移行する。こちらもほかの通信事業者同様、MVNO形式のサービス展開が予定されている。7月まで待てないという人は、同社のUQお客様サポートセンターでデータ通信端末の購入を受け付けている。
また、このところ影を潜めていたウィルコムの動向にも注目したい。FOMA-HIGHSEED網を利用したMVNOサービス「WILLCOM CORE 3G」を、3月から法人向け開始したほか、次世代PHSと呼ばれる高速データ通信「WILLCOM CORE XGP」も秒読み段階になってきた。WILLCOM CORE XGPでは、通信速度が20Mbpsへと向上する。正式サービスの開始時期は、今年10月を予定している。
ソフトバンクモバイルは3月から、イー・モバイルと自社のデータ通信を選択利用できる「データ定額ボーナスパック」を開始している
長年、MVNOによるデータ通信サービスを手がけている日本通信。FOMA網を利用する「bi-mobile 3G」は、1日あたりの利用用に換算すると割安になる
話題の高速データ通信サービスといえば、この「モバイルWiMAX」。最大40Mbpsの通信速度と、月額上限額は4480円という低料金が魅力だ。商用サービスは7月から
PHS網を利用した定額データ通信サービスを手がける、ウィルコム。通信速度の遅さがネックだったが、高速データ通信サービスの「WILLCOM CORE XGP」の登場が間近に迫り、注目が高まっている