ニフティのモバイルWiMAX戦略を聞く
2009年最大のトピックスのひとつ「WiMAX」
http://ascii.jp/elem/000/000/401/401863/
「接続のデパートを目指す」──ニフティ ISP事業本部 ISP企画部の黒政敦史部長はそんな風に話す。
ニフティ ISP事業本部 ISP企画部の黒政敦史部長
2009年は、2.5GHz帯の周波数を利用するモバイルブロードバンド通信が本格的に始動する1年である。すでにUQコミュニケーションズが、下り最大40MbpsのモバイルWiMAXサービスを使用した「UQ WiMAX」のモニターサービスを開始(正式運用は7月1日から、関連記事)。ウィルコムも上下実効20Mbpsの次世代PHSサービス「WILLCOM CORE」(関連記事)を近く開始する見込みだ。
昨年は、「Netbook」に代表される低価格ノートパソコンが一躍注目を浴びた。それに高速な通信が加われば、モバイルの快適性がさらに一歩改善されるのは間違いない──そんな期待が膨らむ。
特にモバイルWiMAXは、パソコンと親和性の高い技術だ。現状ではUSBドングルタイプの端末が主だが、無線LANの技術を応用しており、アンテナなどの共用が可能。無線LANモジュールに、WiMAX用のチップを追加すれば、比較的簡単に対応パソコンが開発できる。国内でもゴールデンウィーク過ぎには発表が始まり、7月ごろには各社の製品が市場に並ぶはずだ。
モバイルWiMAXとこれからのニフティについて、黒政氏に聞いた。
モバイルでもADSL並みの速度、光より安く
── モバイルWiMAXの期待値に関してはいかがでしょう。
現在のサービスエリア(UQコミュニケーションズのウェブサイトより)。現在の段階では首都圏の一部
モバイルWiMAXに関しては、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIの3キャリアが免許取得のために動いていましたが、このうちソフトバンクとNTT系の企画会社に関してはニフティも出資する意思を示して、状況を見ていた感じですね。そういう意味ではニフティも早期からWiMAXに取り組んでいました。
(技術的には各社ほとんど違いがないのですが)このときは総務省がどこに免許を下ろすかが勝負で、結局、KDDI系のUQコミュニケーションズがサービスを開始することになったのですが。
── モバイルWiMAXに関しては当初は山手線周辺、徐々に接続エリアを広げていくというイメージだと思います。
いまはエリアが限定されていますが、一度エリアに入ってしまったユーザーの立場では、つながることが当たり前になるはずです。そのために豊富な選択肢を用意しておく必要があります。
── ニフティの会員でモバイルを楽しんでいる割合はどのぐらいになるのでしょうか?
当社が公表している数字としては、ブロードバンド会員が全体で175万人。イー・モバイルの回線を利用する「@nifty Mobile BB」会員が約1万人です。
── モバイルの割合は1%に満たない計算ですね。
JR山手線に関してはほぼカバーできているようだ
@niftyの会員ならインターネットを接続する方法を自由に選べるというのが、長い目で見れば重要だと考えています。
今回はいち早くモバイルWiMAXへの取り組みを始めましたが、肩入れせずに、新しいサービスには対応していきたいと考えています。例えば、サービス開始が予定されているWILLCOM COREに関しても、エリア的に補完する部分があると思うので対応していきたいですね。
── キャリアの色がない点は@niftyの強みと言えそうです。
キャリアのプロバイダ事業ではやりにくい面もあるでしょう。そういう意味で、われわれの立場は中立で、開通できるサービスをあまねく提供していきたい。
── UQ WiMAXの料金(月額4480円)に関してはどう考えていますか?
高くはないが、安くもないという印象ですね。これに対して@niftyがどう値付けしていくかを考えなければなりません。料金的には、ADSLと光の間ぐらいというイメージですが、可能であれば、ADSLと同じぐらいにしたいなとは思っています。現在ADSLで一番安いプランは約2000円(12Mbps)。50Mbpsなら4000円のレンジになる。光だと6000円程度になってしまいます。
ADSLには局舎からの距離に依存する部分があって、地域によっては高速な接続ができない。かといって光にすると接続料が高価になりすぎる──そんなジレンマもあるでしょう。(仮に2Mbps程度の速度が出るとして)モバイルWiMAXでもADSLの中速帯程度の速度は出ているわけです。自宅で使うにも十分と感じるユーザーがいるかもしれません。
早ければゴールデンウィーク明け? WiMAX搭載パソコン
── 早々に内蔵パソコンが登場してくるという話もあります。
内蔵パソコンが出てきたり、必須なスペックとして捉えられるようになると、普及は加速していくでしょう。富士通など、WiMAX内蔵モデルを出すメーカーともうまくコラボレーションしていきたい。まずは、露出競争になると思うんですが。ダイヤルアップの時代の接続ツールのように、ユーザーが気軽に始められる仕組みを用意していきたいと考えています。一回契約してしまえば、次は通信品質や料金プランをどうするか、という話になってくると思います。
WiMAX対応の無線LANモジュール「Intel WiMAX/WiFi Link 5350」。サイズはWiFi版と同じようだ。日本で搭載パソコンが登場するのはいつだろう?
── モバイルWiMAXの本格的な普及はいつごろになると考えていますか?
2010~11年ごろになると予想しています。装置が普及するまでにはそのぐらいかかるでしょうね。まずは先進的なユーザーが外付けタイプの機器を探していって、2009~10年の間に行き渡る。そんなイメージです。Wi-Fiはすでにさまざまな機器に載っていますが、これらがWiMAXにも対応してくると、ブレイクするという可能性はあると思います。
── WiMAXは、無線LANのアンテナが共用できるなど、パソコンとの親和性が高い部分がありますから、予想以上に早く普及するということも考えられますね。
料金プランとして、まだ国内で実現できていないものに、デイリーの接続プランがあります。米国のSprintでは、2000円程度と若干高価ですが、デイリーのプランがあります。WiMAX搭載機器が増えてくれば、そういうビジネスモデルもあり得ると思います。もっとも米国の場合、フリースポットが山のようにあるので、こういったインフラと戦っている部分はあります。一方で日本人はよりセキュリティーを重視しているので、WiMAXのようなモバイル回線を利用したサービスの需要が高いかもしれません。
UQ WiMAXの基地局とアンテナ
── 10Mbpsでの接続を謳うUQ WiMAXですが、編集部の実測では、駅の近くの屋外では、1~3Mbpsの間程度というケースが多いようです(関連記事)。速度に関してはどういう印象を持たれていますか?
電波の状態でかなり変わってきますが、大森のオフィスの場合、窓際なら状態が悪くても2Mぐらいは出ていますね。10Mを超える速度が出るケースもあります。5本のアンテナのうち1本でも捕まえていれば、1.5~2Mbps程度の速度は出ます。ただし、窓際や開けている場所ならいいというわけではなく、ビル内でも3~4Mbps程度の速度が出たりと、条件が読めない面はあります。指向性が高いので、アンテナの向きにも大きく左右されるようです。
直進性の高いのにはいい面も悪い面もある気がしますね。UQ WiMAXのアンテナは高所から地上に向けて設置されているようですが、ビル陰に入ると接続が難しかったりもするようです。
会社と同じ環境を外でも、が変革を生む
── 消費電力に関してはいかがでしょうか。
仕組みは無線LANと大きく変わらないため、現在のノートで無線LANを使うのと大きな違いはないと考えています。
── WiMAXを利用したサービスやコンテンツに関してはどうでしょうか?
ブロードバンドが普及する中、高速な転送速度を想定したコンテンツが増えています。こういったリッチコンテンツを外出先でも使いたい──それが、モバイルWiMAXのようなサービスへのニーズの源泉になるのだろうなと考えています。会社や自宅で使っているのと同じ環境が外出先でも実現できる。そうすれば、会社の営みが変わり、サイクルが変わる。そこに新たな市場が形成されます。ノートパソコンやUMPCのマーケットの広がりが、それを加速するかもしれない。
モバイル通信に関しては、選任チームを置いてどういうことができそうかと検討している最中です。@niftyとして、モバイルに特化したコンテンツは提供していませんが、WIMAXをきっかけにして何か始められないかと考えています。すぐに思い付くのは、地図を利用したサービスですが、みんなが最初に考えるので、競争としては激しくなる分野でしょう。違う切り口のサービスが必要です。
みんなでつくるUQ WiMAX
── 今後回線のバリエーションが増えてくれば、複数の回線から最も条件のいいものを選択して接続できるソフトへのニーズが高まるでしょう。接続の管理から、コンテンツのサジェスチョンまで一貫した環境で出すようなソフトの開発に興味はありますか?
今後モバイルWiMAXや、WILLCOM CORE、LTEといった「品揃え」が増えると、これらをトータルにマネージメントするソフトが必要になってくるだろうなとは思っています。しかしそれにコンテンツまで載せるかどうかまでは分かりません。
極端な話をすると、コンテンツは@niftyユーザー以外にも使ってもらいたい。足回りまで束縛されてしまうと厳しい部分があります。そのバランスをどう取っていくかが難しいところですね。
── 普及のタイミングであるという現状を利用してみるというのも面白いかもしれません。地図上に喫茶店や打ち合わせスペースなど、モバイルが可能な場所の情報と一緒に転送速度を書き込んでいくようなサービスはどうでしょう?
現状はテストマーケティング的に、いろいろな情報を収集して、ウェブサービスとしてどう展開していくかを考えているところです。「みんなでつくるUQ WiMAX」(関連サイト)といったサービスもありますが、こういったサービスエリアが広がっている時期だから楽しいところかもしれませんね。