新幹線でネット接続 東京―新大阪でさっそくテスト
東海旅客鉄道(JR東海)は3月14日のダイヤ改正に合わせ、新幹線の車内で無線LANを使いインターネットに接続できるサービスを開始した。サービス区間は東京から新大阪まで。通信スピードは最大2Mbpsという。出張の多いビジネスマンにとっては重宝する新サービス、さっそくテストに出かけた。(竹内亮介)
http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMITbd000016032009&landing=Next
■最新車両の「N700系」で利用可能に
まず新サービスの内容をおさらいしておこう。JR東海は、車両の乗務員と中央センターの指令員の連絡や文字ニュースなどの情報伝送に使用していた列車無線をデジタル化した。これに伴って送受信できるデータ容量が大きく増え、余ったデータ通信帯域をインターネット接続に使えるようにしたのが、今回のサービスである。
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N700系
ネット接続に対応しているのは、07年1月のダイヤ改正から営業を開始した最新車両の「N700系」。ただ東海道新幹線はN700系を全ダイヤで採用しているわけではない。無線LANを使いたいなら、N700系の運行状況をあらかじめ調べておいたほうがいい。
また、公衆無線LANサービスに加入しておく必要もある。現在利用できるのは、NTTコミュニケーションズの「ホットスポット」、NTTドコモの「mopera Uの公衆無線LANコース」と「Mzone」、ソフトバンクテレコムの「BBモバイルポイント」(UQコミュニケーションズの「UQ Wi-Fi」も今秋に開始の予定)。あとはノートパソコンと無線LANカードなどのモバイル機器を用意すればOKだ。
【使用したノートパソコン】
「ThinkPad X200s」: 液晶ディスプレーは12.1型ワイド、CPUはデュアルコア(駆動周波数(1.86GHz)、メモリーは4GB、HDDは250GB、無線LANはIEEE802.11a/b/g/n対応
■グリーン車は全席に電源コンセント
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JR東海、および西日本のウェブサイトの時刻表では、新幹線の編成状況を確認できる。無線LANを使いたいなら、「N700」とあるダイヤを選ぼう
テストに出かけたのはダイヤ改正直後の3月14日。せっかくの機会なので東京―新大阪のすべてのサービス区間で試してみることにした。JR東海やJR西日本のウェブサイトには、新幹線の発着駅や希望の日時を入力すると発着時刻や車両まで調べられる検索サービスがある。チェックしてみると、N700系はだいたい1時間に2~3本程度が組まれているようで、さっそく午前11時台に東京を出発する普通車両の通路側に席を取った。
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今回は普通車両に乗車した。普通車両では、窓側と車両の前後に電源コンセントを用意する
N700系は車内に電源コンセントを装備しているのも便利な点で、バッテリーを気にせずにノートパソコンを思う存分利用できる。ただ、すべての座席に電源コンセントが付いているのはグリーン車両だけ。普通車両の場合は、窓側、あるいは先頭か最後尾の席でないと電源コンセントを確保できない。
今回はそこまで計算せずに出入りしやすい通路側に席を取ったが、そのせいで電源コンセントが遠くなってしまった。幸い、乗り合わせた方に頼んで電源コンセントを借りることができたが、普通車両に乗るときは窓側の席を選ぶことも忘れないでおこう。
■メールや動画視聴などで速度をテスト
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JR東海のリリース。車内での利用者向けに専用のポータルサイトを用意するということだが、今回のテストでは見当たらなかった
今回のテストは、新幹線内でどの程度快適にインターネットを利用できるかが第一の目的である。前述したとおり、通信速度は最大2Mbpsだが、実はこれを1編成の乗客すべてで分け合うことになる。JR東海のリリース文によれば、「高速の回線速度を必要とする動画の閲覧はできませんが、メールやインターネット等のビジネスユースには十分対応できる速度となっています」ということだが、16両で編成する場合の乗客の定員数は1323人にもなる。
もちろん乗客全員がインターネットに接続するわけではないだろうが、さすがにちょっと寂しい気はする。実際の通信状況はどの程度なのかが、第一のチェックポイントになる。
そこで、比較的負荷の低いメールの送受信やウェブ閲覧、自宅に設置したFTP(ファイル転送サービス)サーバーを使った大容量データの送受信、動画共有サイトの視聴の3点についてテストすることにした。さらに高速で走行中に通信が途切れないか、大容量データの送受信中に通信帯域の制限が行われるかどうかもチェックすることにした。
公衆無線LANサービスはBBモバイルポイントが扱っているプリペイドIDを用意したのだが……。
■思わぬトラブル 急きょ別サービスに変更
まずノートパソコンを開いて無線LANをオンにしてみると、BBモバイルポイントをはじめ車両内で利用できる無線LANのアクセスポイントが表示された。車内に設置するアクセスポイントはひとつ、あるいは最小限に抑え、ローミングサービス(通信インフラなどを共有する仕組み)を利用するのかと考えていたので、これはちょっと意外。UQコミュニケーションズの無線LANサービスは14日時点ではまだサービスが始まっていないのだが、そのアクセスポイントもすでに準備されていた。
用意したBBモバイルポイントのプリペイドIDは、ファミリーマートに設置されている「Famiポート」で購入可能なチケット式だ。1日限定が500円、2週間が1000円。今回は2週間のチケットを購入し、念のため、自宅近くにあるマクドナルドで接続できることを確認しておいた。
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バックアップとして用意しておいたイー・モバイルでインターネットに接続し、ホットスポットに加入。これで新幹線内の無線LANアクセスポイントからインターネットに接続できるようになった
ところが、新幹線に乗ってからのアクセスでは、IDとパスワードを何回確認して試しても、何をどうやっても、インターネットに接続できない。
このままではテストにならないため、なんとかして新幹線の車中から別の無線LANサービスに加入できないかと、持参したイー・モバイルのデータ通信端末(下り最大7.2Mbps)でインターネット接続を試みた。すると、意外にもリンクはすんなりと進み、通信が途絶するトンネルに入らないことを祈りながら、NTTコムのホットスポットのアクセスIDを取得することができた。ホットスポットでは、何のトラブルもなくネットに接続できた。
新大阪に着いてからBBモバイルポイントのサポートセンターに確認してみると、BBモバイルポイントを東海道新幹線の車内で利用できるのは、特定のプロバイダー(ソフトバンクモバイル、@ニフティ、ODN、ぷらら、ソネット、ビッグローブなど)のユーザーに限られるという。今回購入したプリペイドIDでは利用できないというのだ。ウェブサイトなどでもう少しわかりやすく説明があればよかったのだが……。
■体感速度はISDNや初期PHS並み
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FTPやスカイプ、動画共有サイトなど重いデータを扱うソフトウエアも問題なく利用可能。通信プロトコルに制限は加えていないようだ
ここまで思わぬ回り道をしてしまい、ようやくテストに入った。残された時間はわずか約45分。
まずウェブを閲覧したりメールを送受信したりしてみた。反応はかなりゆっくりとしている。ISDNやPHSで通信をしていたころを思い出す使用感だ。
次に、自宅のFTPサーバーからファイルをダウンロードしてみると、転送速度はなんと毎秒15~18キロバイトしかない。ビットレートに直してみるとだいたい120~144Kbpsであり、これはまさにISDNやPHSの初期の頃の通信速度だ。
2.8メガバイトの写真データ1枚をダウンロードするまでにかかった時間は3分11秒、逆に同じ写真データをFTPサーバーにアップロードするには8分かかった。ただ、インターネットのブロードバンドのスピードを計測するサイトでは、いずれのテストにおいても0.8~1.2Mbps程度の結果が出ており、使用実感やFTPサーバーを使った転送テストの結果とそぐわない。原因はわからないが、帰りの新幹線で同じテストを行っても傾向は同じだった。
FTPでの転送は時間はかかるものの普通に行うことができ、特にプロトコルを制限しているようではなかった。スカイプでの通話、ニコニコ動画やYouTubeなどインターネットの動画共有サイトへのアクセスや動画の視聴も行えた。ただし、こちらも通信速度の問題なのか、動画はほとんどまともに視聴できないという状況だった。
ホットスポットのアクセスIDを購入するためにイー・モバイルを使ったのは前述したとおりだが、トンネルや風防付きのエリアが多い新横浜までの辺りをのぞくと、実はイー・モバイルも新幹線の車内でそれなりに使うことができた。イー・モバイルで同じ2.8メガバイトの写真データをダウンロードするためにかかった時間は、山間部でだいたい1分くらい、京都駅に停車中は20秒くらい。アップロードは山間部で2分くらい、京都駅に停車中は1分30秒くらいだった。
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新大阪駅
■通信が途切れない安心感が魅力
通信帯域の問題なのか、その通信帯域を分ける利用者の数の問題なのか、実際の使用感は快適とまでは言いがたい。携帯電話キャリアが提供する3G対応のブロードバンド通信でも、実質0.8~1.2Mbpsで通信できることを考えると、速度の点では正直魅力は薄いだろう。
とはいえ、通信が途切れないという安心感があるのは大きかった。「通信が切断されました」と無情のメッセージが流れる可能性がある携帯電話キャリアの3Gブロードバンド通信環境とは、そこが大きく異なった。検索や画面表示に多少時間はかかるが、待てばきちんと通信できる。旅を楽しみながら、ゆったりした気持ちで使うのがよさそうだ。
[2009年3月17日]
- 筆者紹介-
竹内 亮介(たけうち りょうすけ)
フリーライター・エディター
略歴
パソコンやパソコンの自作に関する雑誌の編集に関わったのちにフリーランスライターへ。得意分野はモバイルノートパソコンと情報機器、デジタル家電など。基本的に電気で動くものならなんでも扱う。迷ったら、とりあえず買ってみてから考えるタイプ。