[5]コンテンツの未来はケータイの外にある
過去10年にわたり,通信事業者がコンテンツ業界や端末メーカーとのエコシステムを築き上げてきた。今後は,全く異なる業界のプレーヤが参入,通信事業者のように課金システムを構築する動きが加速する。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090318/326826/?ST=network
ゲーム機や専用端末も配信の対象に
新規参入者としては,iPhoneを擁して参入してきたアップルが好例だ。モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)の岸原事務局長は「アップル以外にも,携帯コンテンツのプラットフォームは増えていくだろう」という。コンテンツ・プロバイダから見れば,有力なプラットフォームを見抜く力が必要になる。
MCFの岸原事務局長がiPhone以外の携帯コンテンツのプラットフォームとして注目するのはニンテンドーDSだ。「端末が普及しており,ユーザー・インタフェースも優れている。無線LAN以外の通信機能が加われば,コンテンツ・プロバイダにとって携帯電話と同等以上の条件が整う」。
実際,任天堂は最新版の携帯ゲーム機「ニンテンドーDSi」にブラウザ・ソフトを標準搭載して,インターネットを利用しやすい環境を整えている。ソフトを流通させる基盤「ニンテンドーDSiショップ」も開設した。
インターネット・サービス提供ベンチャーのはてなはこの動きをいち早く察知した。はてなは任天堂と組み,新サービス「うごメモはてな」などを展開。これを機に各種コンテンツ・サービスの提供は容易に想像がつく。
普及台数や認知度から,プレイステーション・ポータブル(PSP)を擁するソニー・コンピュータエンタテインメントなどゲーム機メーカーが,MVNO(仮想移動体通信事業者)として名乗りを上げるかもしれないとの声は少なくない。
ゲーム機以外にも,米アマゾン・ドットコムが提供する電子書籍専用端末「Kindle」なども注目されている。ここ数年,端末の価格低下は著しく,MVNOに規制緩和の追い風が吹いていることも,プラットフォームの多様化に拍車をかける。
不動産や鉄道会社も乗り出す
経済産業省もプレーヤの多様化を促している。経済産業省が推進しているのが,空間をIT化して新しい事業を創造するためのプロジェクト「eクリエーション空間」である(図1)。ここで積極的なのは,地域に密着した不動産会社や鉄道会社だ。例えば東京急行電鉄は,自由が丘を舞台に二つの実証実験を進める。
図1●経済産業省が提唱する「eクリエーション空間」の実現方法
位置情報を記録するPI(place identifier)サーバーと,専用のPIモジュールを搭載したブラウザなどが必要になる。経産省の資料を基に作成。
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どちらの実験も,自由が丘の来訪者の滞在時間を増やしたり店舗での消費を促したりするためのもの。近く来訪者が消費活動を行った際の購買データをひも付けて,「マーケティング・データとして蓄積された各種データを店舗間で共有する展開も視野に入れている」(東京急行電鉄の金山明煥情報・コミュニケーション事業部事業推進部課長)という。
実験の一つは,地域情報を来訪者の携帯電話にメールで配信するサービスで,NTTドコモなどと共同で行っている。もう一つは,街の店舗に設置されている非接触型ICカードの読み取り機で取得した来訪者データを基に,駅前に設置したデジタル・サイネージに来訪者情報を視覚化して表示する「盛り上がりアップ」の展開だ。こちらは通信事業者が関与しない情報サービスである。
eクリエーション空間プロジェクトを推進する経済産業省の村上敬亮・商務情報政策局 文化情報関連産業課長は「空間のIT化は,地域の活性化につながる」として,地域情報を持っている新たなコンテンツ・プロバイダの活動を後押ししている。
経産省の実証実験は,四国や九州でも実施している。不動産会社や鉄道会社はもちろん,地域の小売店などの集客が増えて潤えば,そこに商品・サービスを提供するメーカーや代理店も潤い,それが旅行業界などにも波及する可能性は高い。
ただ,現行の法制度上では,空間のIT化に限界がある(図2)。例えば,ワンセグは2~3mと狭いエリアなら免許無しで電波を出せるが,街全体をカバーするには専用免許の取得が必要になる。このほか,放送用の電波をMVNOのように第三者が2次利用するといった活用もできない。
図2●「eクリエーション空間」で利用が想定される無線通信技術
様々な無線技術などを駆使して空間のIT化を目指している。ただ現行法では実現できない技術もあり,法整備の必要がある。
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そこで,総務省の電波政策懇談会は,2010年代の電波有効利用政策について検討している。同懇談会が空間のIT化を視野に入れた大胆な周波数再編策を提示すれば,空間のIT化は実現に向けて大きく動き出す。
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(島田 昇=日経コミュニケーション) [2009/03/27]