Eye-Fi創立者に聞く--無線LAN内蔵SD型カードの誕生と未来
無線LAN機能が内蔵されているSD型カード「Eye-Fi」をご存じだろうか。無線LANアクセスポイントを経由して、あらかじめ設定したパソコンやオンライン写真サービスに自動的に写真を転送できる。SDカードを使用するほぼすべてのデジタルカメラで使えるのが特徴だ。
http://japan.cnet.com/interview/story/0,2000055954,20386148,00.htm
左:アイファイジャパン代表取締役の田中大祐氏、右:Eye-Fi Chief Product OfficerのYuval Koren氏 このSD型カードを手掛ける「Eye-Fi」は、2005年に米国で設立されたベンチャー企業だ。日本でもブログを中心に話題となり、日本国内での発売が待たれていた。
2008年8月、アイファイジャパンが設立され、2008年12月22日より発売開始となった。日本での取り組みについて、Eye-Fiの創立者であり、Chief Product OfficerのYuval Koren(ユーバルコーレン)氏に話を聞いた。
- SDカードに無線LANを搭載するというアイデアは、どんな時に思いついたのでしょうか。また、製品を作ったときのコンセプトをお聞かせください。
カメラにカードを差し込んだまま、Picasaなどあらかじめ指定したサイトやPCにアップロードできる まず、アイデアとビジョンは2004年に思いついて、2005年に会社を立ち上げました。アイデアは、結婚式で思いつきました。私のではなくて、友達の結婚式です(笑)。
たくさん友達が集まって写真を撮っていたのですが、結婚式が終わったあと、だれもその写真を共有してくれなかったのです。私たちのグループには、ITベンチャー、技術者やカメラマンがいました。なにかいいソリューションができるのではないかと思ったのです。
われわれが製品に対して取り組んでいることは、人々にできる限り簡単に、まったく手間がかからない形で写真を保存して、整理して、シェアする、という経験をしてもらうことです。
- 米国では、4つの製品が販売されています。販売状況はどうでしょうか。
実際の売り上げ数は公表していません。ただ、1つ言えるのは、日本で発売する「Eye-Fi Share」がもっとも人気のある機種であるということです。
- 実際に日本で販売を開始してみて、反響はどうでしょうか。
限定の「スライダーボックス」 いまのところは非常によいです。ブログを見ていると、この価格なら買うとか、待っていましたという声が多いようです。
どのサイトと連携するかディスクローズしていないので(※)、ウォッチしてくれる人もたくさんいます。もっと上位機種がでるのではないかと待っている人もいますが、米国では製品を購入した後にアップデートできる機能をリリースしています。それを知る人は、この製品をいち早く手に入れてがっかりすることはないから、早めに買った方がいいと促してくれているようです。
もう米国では製作していないのですが、日本では初回限定で「スライダーボックス」と呼ばれるパッケージで展開をします。
これは、日本のブロガーさんがパッケージについて書いていただいていたからです。多少コストはかかったのですが、ファンを裏切らないためにパッケージにこだわりました。同じものではありません。復刻版ということでつくりなおし、日本語に翻訳したものになっています。限定品なので、喜んでいただけるのではないかと思っています。
オレンジの部分をスライドさせると、Eye-Fiカードが登場する。この開けたときのワクワク感も人気の1つ
※現在、はてなフォトライフ、30daysAlbum、Movable Type、TypePad、Voxとのオンラインパートナーシップを発表している。
- 米国に続いて、日本での展開を選んだのはなぜでしょう?
Eye-Fiカード 正確に言うと、カナダでも展開をしていて、日本とカナダは同時に進出しました。米国でプロダクトを始めたときから、日本からの反応が非常によくて、日本からの注目を集めているのを感じていたからです。
- 日本ではデジタルカメラも普及していますが、携帯電話をデジタルカメラとして使う文化も着しています。中には、携帯電話で済むから、デジタルカメラを買ったことがないという人もいます。簡単な市場ではないと思いますが、日本市場をどう見ていますか。
なぜ若い世代の人たちが携帯電話で写真を撮るかといえば、友達に見せたい、共有したいなど、コミュニケーションの手段として使いたい機能を携帯電話が持っているからでしょう。
Eye-Fiという製品は、デジタルカメラにコミュニケーション機能をもたらします。しかも既存の製品に対してコミュニケーション機能を付けることができるので、デジタルカメラを買ったことがないという世代にもアピールできると思っています。
もし、コンパクトカメラや一眼レフカメラにそういったシェアできる機能が付けば、ここではデジカメで撮ろう、ここでは携帯電話で撮ろう、一眼レフで撮ろうというように、消費者にとってはシチュエーションに応じた選択肢が増えると思います。
- 携帯電話を脅威とは思いませんか?
携帯電話とかデジタルカメラの登場以前を思い出してもらうと、現在のようにすべての人が写真を撮るという世界ではなかったと思います。携帯電話は、すべての人を写真家に変えてしまったと言えるかもしれません。
携帯電話によって、確かに写真を撮るという行為は多くの人ができるようになったのですが、その中でも30%~40%の人はもっといい機材でいい写真を撮りたいと変化していくと考えています。
米国の市場では、まず携帯電話のカメラで写真を撮り始めて、写真を撮ることがおもしろいと思った人は、もっとハイエンドなデバイスで写真を撮りたくなるという傾向が見られます。ですので、携帯電話の後にコンパクトカメラや一眼レフカメラに自分の機材をアップデートしていくという方向には、Eye-Fiはフィットしていると思います。
- 現在のラインアップは、SD型カードのみです。徐々に状況は変わりつつありますが、まだ一眼レフにはコンパクトフラッシュ(CF)搭載モデルも多くあります。CF版のリリースは考えていないのでしょうか?
エントリー向けのEOS Kissシリーズなどは、SDカードに対応してきています。米国、ワールドワイドでも、一番シェアを持っているのはSDカード対応のカメラということで、SD型から始めています。
現在は、SD型カードで展開していますが、CFでのソリューションは継続して開発しています。CF版のEye-Fi、もしくはコンバージョンできるものは考えていますが、いまのところ詳細は決まっていません。継続的にCFのソリューションも考えているということだけは明らかにできます。
- SD型カード版と同じ機能をCF版で出すのは、技術的に難しいことなのでしょうか?
電波的な問題があります。非常に一眼レフはボディがしっかりしていますので、電波を通すことが難しいのです。
そしてハードウェアは大事ですが、ソフトウェアも大事にしています。実はわれわれの会社のエンジニアは、ハードウェアエンジニアよりもソフトウェアエンジニアのほうが多いのです。それは、ユーザーにとって使いやすいソフト、アプリケーションの提供に注力していることの表れでもありますし、そういったエクスペリエンスをユーザーに持ってもらいたいという会社としての哲学があるのです。
- 日本では、デジタルカメラ本体にWi-Fiを搭載したものがありました。しかし、それほどポピュラーにはならなかったようです。
2つのポイントがあると思います。1つは、無線LANの機能を付けたことによって、それらのデジタルカメラは難しくなったということ。もう1つは、アップロードサイトの自由度です。そういった製品に興味がある多くのユーザーは、どのサイトにアップロードしたいとか、どういうふうに使いたいなど、自分がなにをしたいかというのをすでに知っているのだと思います。
それを実現するには、このサイトにしかアップロードができませんよ、という制限をかけてしまってはいけない。Eye-Fiのソリューションは、2点ともクリアしていると思います。
- 日本では、安いところを探せば2GバイトのSDカードは数百円で売られています。それに対して1万円近くするEye-Fiですが、どのようにEye-Fiのよさをアピールしていきますか?
写真を撮るまでの行為としては、いままでのSDカードもわれわれのSD型カードも同じなのですが、撮った後ユーザーにもたらす利便性はまったく違います。
撮った写真がカメラの中に留まってしまうのに対し、カメラから解放されてパソコンに自動的に保存されたり自動的にみんなで共有できたりすることに価値を見出せる人は、それを値段以上の価値だと感じていただけると思っています。
- SD型カードの速度について教えてください。
SDカードと同じ構造ではないので、速度は非公開なのですが、Class4レベルの速度を持っており、コンパクトカメラでは十分な速度で通信できると考えています。
- 日本独自での展開はどんなことを考えているのでしょうか?
オンラインサービスの対応は、日本独自のサービスも予定しています。米国は、10社から12社ぐらいで始めまして、今は25社と提携しているのですが、日本でも提携先は順次増やしていきたいと思っています。また、ユーザーさんの意見を聞きながら、ここにつないで欲しいという声に真摯に応えていきたいと思っています。
- カメラメーカーとの連携はどうでしょうか?
Eye-Fiカードを挿すと、ニコン「D60」「D90」では、準じたメニューが表示されるようになっています。特にD90では、Eye-Fiのカードを認識すると準じた動きをするようになっています。たとえば、Eye-Fiカードが入っているときは、オートパワーオフが長くなります。飛行機の中などで無線通信をしてはいけないとき、オフにしてくれる「フライトモード」なども搭載していただいています。
Eye-Fi対応のデジカメとして、画素数競争だけでないアドバンテージを提供できると思っています。どの機能がもっともユーザーに受け入れられるか、始めたばかりなのでなんとも言えないのですが、各カメラメーカーさんが独自の機能を提供していくことで、ユーザーさんからの支持をどう受けていくか見ていきたいところです。
- 公衆無線LANに対応する予定はありますか?
まずわれわれれがこのEye-Fi Shareを出したのは、これに対してどんな機能を付けて欲しいか、日本のユーザーのリアクションを見たいからです。数カ月以内には、もっとも大きな要望が見えてくると思っていますし、それに応えていきたいと思っています。
日本に支社を作ったということからわかっていただけると思いますが、長い期間をかけて日本の環境に合わせたソリューションを提供していくことを考えています。たとえばホットスポット、公衆無線LANの提携や、オンラインサービスの提携や、カメラメーカーとの連携ですね。そういったことも含めて日本という拠点を作ったと捉えてください。
- 今後の展開をお聞かせください。
まずはカメラの業界で、しっかりと浸透していけるようにがんばります。もちろんその後、カメラ以外のデバイスにもつないでいくことを考えて行ければと思っています。
近い将来のプランでは、正しいオンラインパートナーと提携するということです。次に、米国ではいろいろなプロダクトを出していますが、その中でもカメラメーカーさんと連携なども含めて、正しいプロダクトを日本に投入することを目標にしています。さらには、日本独自の製品を考えてもいいのではないかと思っています。米国では、展開していないものを日本独自で展開することも長期的には考えています。
Twitterにアップロードしたことを知らせてくれる 米国では、Eye-Fiがネットワークにアップロードした「通知」としてTwitterを使っているのですが、日本ではまだTwitterはそれほど有名ではないと思います。米国では一般的ではないのですが、携帯電話でメールを受け取ることは日本のほうが優れていると思います。日本向けに、携帯電話に特化した通知機能を行うこともサービス面では考えられますね。
- どうもありがとうございました。