地域WiMAXとは
全国の「ブロードバンド・ゼロ地域」の解消(いわゆるデジタル・デバイドの解消)に向けて、2010年度を目標とした官民連携の取り組みが総務省により推進されています(デジタル・ディバイド解消戦略)。その中で、ブロードバンド普及の障害要因の1つとなっていたラスト・ワンマイル(注1)問題を、これまでのような有線回線ではなく無線化することによって解決を図ることが検討されています。その実現手段として、今年度より利用が始まった「地域WiMAX」が注目されています。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Keyword/20081127/320078/
「WiMAX(Worldwide Interoperabidtty for Microwave Access)」そのものは、無線LANの国際的な標準規格の1つです。パソコンやPDA等で利用しているいわゆる無線LANの規格であるWi-Fiとは違い屋外での利用を想定しており、データの伝送距離は約10km、伝送速度は最大75Mビット/秒(条件にもよるが実際のサービスではADSL並み)となっています。
このWiMAXが利用する周波数帯域として、電波利用を管轄する総務省では全国バンドと地域バンドを設定しています。地域バンドとは、市区町村単位で割り当てられる10MHz幅の周波数帯のことです。この地域バンドを活用した無線LANサービスのことを地域WiMAXと呼んでいます。この地域バンドを各地域でブロードバンド事業を営む通信事業者に割り当て、ラスト・ワンマイルの通信手段として利用できるようにすることによって、ブロードバンド・ゼロ地域の解消に役立てることが目論まれています。電波の到達範囲が広い等の特徴を持つため、固定無線LANとしてだけではなく、移動通信体としての利用も着目されています。
このように地域WiMAXの応用によって、デジタル・デバイドの解消だけではなく、携帯電話網の利用以外のモバイルIPネットワーク構築手段として、訪問介護や防災等への利用することによって、公共の福祉増進への応用も期待されています。事業者は免許制になっており、2008年度から事業者の免許付与が開始されました。
注1)インターネットへの接続口を提供する通信事業者と利用者との間を結ぶ回線のこと、最後の1マイルを接続するという意味で比喩してラスト・ワンマイルと呼んでいる。
地域WiMAXの概要
[利用帯域]
WiMAXの元の規格であるIEEE802.16が使用する周波数帯として、我が国では2.5GHz帯の周波数を使用することになっています。具体的には、2545MHzから2625MHzの80MHzの帯域が割り当てられています。
そのうち、2545MHzから2575MHzはウイルコムの次世代PHSとして割り当てられています。また、2595MHzから2625MHzはKDDIグル-プのUQコミュニケーションズがMobile WiMAXを提供するために割り当てられています。
この2つの帯域に挟まれた20MHzのうち、各片のガードバンドである5MHzを除いた10MHzの帯域を地域バンドと呼んでいます。この地域バンドを使用したサービスが地域WiMAXです。地域WiMAXでは、10MHzの帯域を市区町村単位でのサービス提供のための免許が事業者に交付されています。この制度を地域WiMAX制度と言います。なお、UQコミュニケーションズが提供するMobile WiMAXが使用する帯域を全国WiMAXと呼んでいます。
図1●WiMAXが使用する帯域
[免許制度]
地域WiMAX制度では、「免許」と「予備免許」の2つの免許があります。免許はその字の通り、交付を受けた事業者は即サービスが開始可能となります。一方、予備免許は落成検査という無線設備が技術基準に適合をしているかを確認する検査が終わっていない事業者に交付される免許です。この予備免許が交付されている事業者は、予備免許が付与されてから6カ月以内に落成届けを提出した後、落成検査を受ける必要があります。もし、この期間内に落成届が提出されない場合は、予備免許が無効になります。
[対象区域]
地域WiMAX制度では事業免許は市区町村単位で交付されますが、その対象とする区域は、市区町村の一部から全域、複数の市区町村をまたがる区域など様々なバリエーションがあります。ただし、都道府県全域をカバーする区域を地域WiMAXの対象区域として免許の交付を受けることはできません。
図2●地域WiMAXの対象とする区域の例
また、免許の単位は市区町村単位ですが、その市区町村における独占的な営業権に対する免許ではないため、同じ市区町村で複数の事業者が免許を受けることが可能です。その場合は、電波を使うという無線サービスの性質上、営業エリアが重ならないことが必要となります。
図3●1つの市区町村に複数の事業者が免許を交付されたイメージ
[背景と目的]
電波を監理する総務省では、全国展開する事業者に向けたWiMAXの免許を交付する一方で、市区町村単位での電波利用を考えている事業者に向けた免許を交付しています。このように市区町村単位での利用を想定した地域WiMAX専用の周波数帯を確保することによって、小規模な単位での無線事業の事業化を実現しやすい環境を整備しました。これまでは携帯電話やブロードバンド事業のように人口密集地域から優先的に情報通信インフラ整備が進められてきましたが、この地域WiMAX制度の実現により小規模な事業でも無線インフラ利用の実現とそれを活用したサービスを提供する事業者の増加が期待されています(注2) 。「ブロードバンド・ゼロ地域」でサービスを行う事業者が増加すれば、これまでコスト的な理由から実現が難しかったラスト・ワンマイル問題の解消が期待できます。
図4●地域WiMAXによるデジタル・デバイド地域の解消のイメージ
注2)全国バンドの免許を取得するためには、サービスエリアの人口カバー率を短期間で高めるという事業計画を求められている。そのため、事業計画達成のハードルが高いこととそれをクリアするためにどうしても人口密集地優先となる可能性が高いという問題が指摘されている。
地域WiMAXの利用シーン
前述の通り地域WiMAXの普及により、デジタル・デバイド地域の解消が見込まれると同時に、地域の特性に応じた多様なサービスの提供も検討されています。総務省の資料で紹介されているサービスの例として、以下のようなものが挙げられています。
[防災対策への活用]
――災害時の地域内回線の優先確保:災害時に断線等によって有線回線が使用不能となった場合に、緊急回線やバックアップ回線として無線ネットワークを利用する。
――IPライブカメラによる監視:災害現場や河川、山間部等の有線回線の確保が難しい場所にIPライブカメラを設置するにあたって、無線ネットワークを利用する。
[児童・高齢者見守り]
――児童・高齢者の動態通知:児童や高齢者の安心・安全確保のための動態監視用のセンサーを地域内に設置する際に無線ネットワークを利用する。
[地域情報の提供等]
――交通情報、バス・電車運行情報や地域のイベント情報の配信に無線ネットワークを利用する。
[地域医療への活用]
――往診先で利用する電子カルテシステムが病院内のカルテシステムと通信する際の通信を無線ネットワークで行う。
――農作物盗難監視:IPライブカメラと同様に農作物の盗難を防止するセンサーや監視カメラの設置にあたり、有線回線よりも容易に構築が可能である無線ネットワークを利用する。
これまでは、無線によるIPネットワークを構築には携帯電話のパケット通信網やPHS網を使う必要がありました。しかし、これらの手段では、通信費の問題や通信速度の問題があり、高度なIPアプリケーションの利用が困難でした。しかし、地域WiMAXの普及によって、その通信速度や低コストでのネットワーク構築の特徴を生かして、上記のような公共の福祉増進のためのサービスの実現が可能になると期待されています。
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[2008/12/01]