無線LAN編 第1回 無線LANの概要
現在のLANでは,ケーブルを使う有線LANに加え,電波を使ってデータ転送をする無線LAN(Wireless LAN:WLAN)も一般的に使われるようになってきました。そのため,CCNA試験でも出題範囲になっており,WLANの基本的な概念を理解しておく必要があります。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080715/310880/
無線LANの概要
無線LAN(WLAN)は,有線LANと比較していくつかの特徴があります。
ケーブルの施設が不要のため,容易にLANを構築できる
ケーブルの配置とは関係なく,自由に機器を配置できる
電波の特性上,干渉やスループットを考えなければいけない
電波が届いてしまう関係上,セキュリティを強固にしなければいけない
WLANは,干渉やスループット,セキュリティの問題はありますが,手軽にLANを構築でき,さらにケーブルなどに縛られない自由な配置が可能という利点から一般的に使用されるものとなっています。LANを構築する立場としては,下の2点をよく考え,慎重にWLANを使用することが求められます。
まず,WLANの規格を理解しましょう。WLANの規格はイーサネット(IEEE802.3)と同様にIEEE802委員会が規定しており,WLANはIEEE802.11という規格になります。また,WLANの機器などのベンダーで構成され,WLANの普及を目指す団体であるWi-Fiアライアンスもあります。この団体は機器間の相互接続を保証しており,Wi-Fiアライアンスが認定した機器には「Wi-Fi」ブランドとして販売されています。
イーサネット(IEEE802.3)とWLAN(IEEE802.11)を比較は次のようになります。
イーサネット WLAN
規格 IEEE802.3 IEEE802.11
アドレス MACアドレス
伝送媒体 ケーブル 電波
アクセス制御 CSMA/CD CSMA/CA
伝送方式 半/全二重 半二重
IEEE802.11によるWLANの規格は主に3つの規格が存在します。それぞれ,IEEE802.11a,IEEE802.11b,IEEE802.11gと呼ばれます。現在4番目の規格(IEEE802.11n)を策定中ですが,これはCCNAの範囲外になるためここでは説明しません。それぞれの規格の違いは次のようになります。
802.11a 802.11b 802.11g
使用周波数帯 2.4GHz 5GHz
最大伝送速度 54Mps 11Mbps 11M/54Mbps
チャネル数 23 11
変調方式 OFDM DSSS/CCK OFDM
IEEE802.11bとIEEE802.11gは同一の周波数帯を使いまが,変調方式が異なるためそのままでは互換性がありません。そのため,IEEE802.11gの機器がIEEE802.11bの機器に合わせる下位互換を持つことで,IEEE802.11bとIEEE802.11gは互換しています。ただし,下位互換のため最大伝送速度などはIEEE802.11b側の設定になります。また,IEEE802.11aとIEEE802.11b/gの機器同士に互換性はありません。
WLANでは2つのモードが存在します。アドホックモードとインフラストラクチャモードです。この2つはAP(Access Point:アクセスポイント)の有無による違いです。APは基地局,ステーションとも呼ばれますが,WLAN端末を相互に接続させたり,WLANと無線LANをつなげるブリッジとして動作する機器です。一番近い機器としては有線LANのハブ/スイッチでしょう。アドホックモードはAPを使用しない,WLAN端末同士の接続を行うモードです。一方,インフラストラクチャモードはAPを使用し,WLAN端末同士の接続はAPを中継する格好になります(図1)。
図1●WLANのモード
インフラストラクチャモードで同一のAPに接続するWLAN端末のグループをBSS(Basic Service Set)と呼びます。BSSはAPの電波の範囲内に収まります。BSSを識別する値として,BSS-IDが使用され,一般的にはAPのMACアドレスがこの値となり,同一のBSSに所属するためにはAP,WLAN端末とも同一のBSS-IDをセットしておく必要があります。
複数のBSSを使いWLANを構築する時,AP同士を接続し,WLAN端末はどのAPに接続しても通信できるようにする場合はこのBSSの組をESS(Extended Service Set)と呼びます。この場合すべてのAP,WLAN端末で同一のID(ESS-ID)をセットします。ESSを利用すれば,WLAN端末はあるAPから別のAPの範囲に移動しても,引き続き無線通信が可能(ローミング)になります(図2)。
図2●ESS(Extended Service Set)
ESSを利用すると,広い範囲をカバーできるWLANが構成できます。そのため,WLAN構築時はにESSが使われるケースが一般的です。
WLANのレイヤ1
WLANではレイヤ1の通信媒体として電波が利用されます。具体的には,2.4GHzまたは5GHzの周波数帯が使われます。IEEE802.11bで利用されるDSSS/CSKでは82MHz幅の帯域を利用し,2.4GHz(24.02GHz~24.84GHz)帯が実際に利用されます。IEEE802.11bではこの帯域幅を11個のチャネルに分割しており,APとWLAN端末が通信するには,同一のチャネルを利用しなければなりません(図3)。
図3●IEEE802.11bのチャネル
IEEE802.11bでは11個にチャネルを分割しているますが,このチャネルは使用する帯域が重複しつつ分割されています。そのため完全に重複しないチャネルは図の1,6,11番チャネルだけとなります。重複したチャネルを利用するBSS(ESS)が近距離にある場合,相互に干渉し合ってスループットが低下する場合があるため,利用するチャネルを検討する必要があります。
また,BSS(ESS)でAPと接続できる範囲をカバレッジエリア(またはセル)と呼びます。WLANではカバレッジエリア内はどこでも同一の伝送速度で伝わるわけではなく,APからの距離によって最大伝送速度が変わります。APからの距離が離れれば離れるほど,伝送速度は低下していきます。カバレッジエリアはAP(WLAN端末)の電波の発信の強さにより範囲が変わっていきます(図4)。
図4●カバレッジエリアと最大転送速度
距離(電波強度)により最大転送速度は段階的に変更されます。802.11a/b/gそれぞれの転送速度は次のようになります。
規格 最大伝送速度の段階(Mbps)
802.11a 6,9,12,18,24,36,48
802.11g
802.11b 1,2,5.5
WLANのレイヤ2
WLANのレイヤ2と有線LANのレイヤ2(イーサネット)との違いは,まずフレームフォーマットがあげられます(図5)。
図5●イーサネットフレームとIEEE802.11フレーム
図5の上がイーサネットフレーム,下がIEEE802.11フレームになります。IEEE802.11フレームでは同期と変調方式などの通知(PLCP)の後ろがIEEE802.11ヘッダとなっています。IEEE802.11ヘッダは電波やフレームの制御情報(フレーム制御),アドレスからなります。アドレスには送信元とあて先のMACアドレスの他にもAPのアドレス(BSS-IDまたはESS-ID)などが入ります。
またイーサネットでは半二重方式のCSMA/CDまたは全二重方式ですが,WLANでは半二重方式のCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance:キャリア検知多重アクセス/衝突回避)方式が使用されています。現在のイーサネットではスイッチを利用した全二重方式ですので,WLANの方がスループットが低めになることになります。さらに,全二重方式のイーサネットでは衝突が発生しないため,帯域を占有することになりますが,WLANでは電波という伝送媒体をすべてのAP,WLAN端末で共有(帯域の共有)が行われるため,接続台数が多くなると使用帯域が少なくなることになります。
WLANで使われるアクセス制御方式はCSMA/CAです。WLANで使用される伝送媒体である電波は,衝突を検出することができないため,衝突検出(CD)ではなく,衝突が起きないようにする衝突回避(CA)を使用します。CSMA/CAの手順は次のようになります(図6)。
WLAN端末が送信を希望する
現在,送信中でないことを確認
ランダム時間待機
データ送信
受信側は確認応答(ACK)を送信
ACKを受信できたら終了。できない場合は再送する
図6 CSMA/CA
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[2008/12/16]