最もフツーに使えるEee PC――「1000H-X」実力診断
「Eee PC S101」の陰に隠れてしまった感もあるが、高輝度10型ワイド液晶+160GバイトHDDが魅力の「Eee PC 1000H-X」も捨てがたい。その使い勝手をチェックした。
10型ワイド液晶+160GバイトHDD搭載のEee PC
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0812/19/news087.html
ASUS「Eee PC 1000H-X」。カラーは写真の「ファインエボニー」のほか、「パールホワイト」を用意 ASUSTeK Computer(ASUS)の「Eee PC 1000H-X」は、Eee PCシリーズのバリエーションとして、10月に国内販売が開始された。ほかのモデルと同様、CPUにインテルのAtom N270(1.6GHz)を採用した低価格ミニノートPC(いわゆるNetbook)だ。
海外ではLinuxと40GバイトSSDを搭載したモデル「Eee PC 1000」もあるが、国内で販売されているのはWindows XP Home Edition(SP3)と160GバイトHDDを備えた「Eee PC 1000H」の日本向けモデル「Eee PC 1000H-X」で、Eee PCシリーズではHDDを搭載した初の製品になる。
1000H-Xでまず触れておきたいのは、そのボディサイズだ。外形寸法は266(幅)×191.2(奥行き)×28.5~38(高さ)ミリとなっている。10型ワイド液晶ディスプレイを採用したことで標準的なB5ワイドノートサイズとなり、8.9型ワイド液晶ディスプレイ搭載の「Eee PC 901-X」より一回り大きく、重量も約1.45キロまで増加した。これは技術やコストの問題ではなく、より使い勝手を優先してディスプレイやキーボードを大型化した結果だ。
デバイスマネージャで主要デバイスを確認。HDDはSeagate Momentus 5400シリーズだった 10型ワイド液晶ディスプレイの解像度は1024×600ドットと変わらないが、キーボードのキーピッチは約17.5ミリと小型ノートPCのおおむね標準的なサイズまで拡大された。内蔵ストレージは160Gバイトの2.5インチHDDで、最大16GバイトのSSDを採用するEee PCの他モデルとは違って、ユーザーがシステムドライブの空き容量を気にする必要はほぼなくなっている。
なお、今回入手した機体を見たところ、HDDはCドライブが80Gバイト、Dドライブが69Gバイトに分割されていた。Cドライブは80Gバイトでも十分だとは思うが、個人的には1パーティションで出荷すべきというか、パーティションを分割しておく意味をあまり感じない。
上に挙げた点を除くと、ほかのスペックは国内で7月に発売された901-Xとほとんど変わらない。メインメモリは1Gバイトを搭載し、ネットワーク機能としては100BASE-TXの有線LANとIEEE802.11b/g/nの無線LAN、Bluetooth 2.0+EDRを装備。ステレオスピーカーや130万画素のWebカメラも内蔵している。
BluetoothスタックはWIDCOMM(Broadcom)製で、ThinkPadでも採用されているメジャースタックの1つだ(写真=左)。無線LAN機能のオン/オフは「Fn」+「F2」キーで行う(写真=右)。4パターンのトグル動作になっており、オフ、無線LANのみオン、Bluetoothのみオン、無線LANとBluetooth両方ともオンの選択ができる
拡張インタフェースとしては、USBポートを左右に分散して3つ、アナログRGB出力、SDHC対応のSDメモリーカードスロットを持つ。機能的には901-Xとほぼ同等で、Netbookとしてはネットワーク機能が特に充実しており、コネクタ類の配置も不満を感じるところはない。
前面にはインタフェースがなく、すっきりした外観だ(写真=左)。バッテリーパックを内蔵する背面部は38ミリと厚みがある(写真=右)
左側面には通風口、有線LAN、1基のUSB 2.0、サウンド関連、ロック用コネクタを配置(写真=左)。右側面にはSDHC対応のSDメモリーカードスロット、2基のUSB 2.0、アナログRGB出力、ACアダプタ接続用のDC入力が並ぶ(写真=右)
製品パッケージにはACアダプタに加え、ソフトケース、USB接続の光学式マウスが含まれる。ACアダプタは901-Xと同様にコンパクトサイズで、コンセント側のケーブルも一般的なメガネタイプのコネクタと携帯性がよい。日本向けにきちんとカスタマイズされているのは好印象だ。
付属のリチウムバッテリーは容量7.4ボルト 6600mAhの6セルタイプで、ACアダプタは突起部を除くサイズが35(幅)×85(奥行き)×26(高さ)ミリ、電源ケーブル込みの重量が約215グラムと小型軽量だ(写真=左)。本体サイズに合わせたソフトケース(写真=中央)や、USB接続の光学式マウス(写真=右)も付属する
キーピッチだけでなく、レイアウトも変更された打ちやすいキーボード
901-Xと比べてキーピッチが拡大されたキーボードは、キーボード全体で利用できる面積が拡大したこともあり、キーレイアウトも改善されている。Enterキーが日本語キーボードではより一般的な逆L字型になって大型化され、右寄りの変則ピッチのキーも1列に減らされた。また、「半角/全角」キーもEcsの隣りから下への変更となり、無変換キーが兼ねていた変換キーも独立し、一般的なノートPCにより近いレイアウトになった。「半角/全角」キーに関しては左端にあるという意識が染み付いている人も多いだろうから、細かい点だが大きな改良と感じる。
1000H-Xのキーボード(写真=左)は、901-Xのキーボード(写真=右)と比べて大型化され、キーレイアウトも改善された。キーボードの基本的な設計は上位モデルのS101と同様だ
というわけで、キーボードに関しては文句なしに901-Xより打ちやすい。キータッチは少し軽めになった印象だが、キーピッチの拡大はもちろん、レイアウトがより一般的になった影響も大きい。
タッチパッドはディスプレイに合わせたワイドタイプで、サイズも十分に確保されている。901-X同様に2フィンガーでのスクロール、3フィンガーでのページ操作などジェスチャー機能も豊富にサポートしている。ただし、タッチパッドの位置がキーボードのホームポジションに手を置いたときの中央ではなく、ボディの中央に配置されている点は変更されておらず、違和感を感じる人もいるだろう。
タッチパッドは多機能タイプ。2本の指を使ってのスクロール操作は、エッジ部分を1本指でなぞるタイプより分かりやすい
タッチパッドのボタンは左右が独立したタイプだが、使用した機体はタッチが少し硬めで押す場所によっては反応が鈍く、901-Xのシーソー式のほうが使いやすく感じた。個体の問題かもしれないが、キーボードが扱いやすいだけに気になった。
視認性は確実に向上、明るく発色のよい液晶ディスプレイ
では、液晶ディスプレイはどうだろう。10型ワイド液晶ディスプレイは、901-Xの8.9型ワイド液晶ディスプレイに比べて視認性が確実に向上しているし、最大輝度も高まっている。同じB5ワイドサイズの一般的なモバイルノートPCと比較すると、広めのフレーム部が気にはなるが、「Eee PC 701/4G」シリーズのように違和感を感じるほどではない。
一方で画面解像度はほかのNetbookと同じ1024×600ドットに据え置かれ、いざ使い始めるとやはり情報一覧性が低めで窮屈だ。モバイルユースであれば割り切れると思うが、これを低価格ノートPCとしてメインPC代わりに使うのはどうだろう、という疑問は感じる。これが現状のNetbookとモバイルノートPCで大きな差で出る部分だ。ニュースサイトなどでもニュース記事全体を閲覧するには、ほぼ必ず縦スクロールの操作が必要だった。
1000H-Xの液晶ディスプレイ(写真=左)は、901-Xの液晶ディスプレイ(写真=右)より大型化されたが、解像度は共通の1024×600ドットだ。ちなみにディスプレイ輝度は上位モデルの1000H-Xよりも明るい
もちろん、画面解像度のフォローも可能な範囲で行われている。タスクトレイのアイコンから画面解像度を1024×760ドットに簡単に切り替えることが可能で、画面全体が縦にスクロールする仮想スクリーン表示と縦方向を圧縮してのスケーリング表示を状況に応じて選択できる。
例えば、縦解像度が600ドットではウインドウ内の特定のボタンがクリックできないといった場合には、この機能を使えばよい。また、Webブラウザなどで必須の縦スクロール操作は、付属のホイール付きUSB光学式マウスを使うだけで、随分とストレスが軽減される。
Internet Explorer 6のツールバーの段数を減らして、メニューを小さいアイコンに変更し、文字サイズを標準(写真=左)と最小(写真=中央)に設定したディスプレイの見え方。文字やアイコンを小さくしてみても、600ドットの縦解像度はやはり狭い。タスクトレイのアイコンから簡単に表示解像度の変更が可能だ(写真=右)。1024×768ドット表示時の縦方向の圧縮表示もここからオン/オフできる
HDD搭載でもEee PCらしい長時間バッテリー駆動を維持
HDDと1基のSO-DIMMメモリスロットは、底面のネジ止めされたカバーを開けるだけで簡単にアクセスできる では、HDD搭載の影響はパフォーマンスやバッテリー駆動時間にどのような影響を与えているのだろうか。今回入手した機体に搭載されていたHDDは、2.5インチ/5400rpm/9.5ミリ厚のSeagate製「Momentus 5400.4」の160Gバイト(ST9160827AS)で、現在単体販売が行われている現行モデルだ。
ベンチマークテストは定番のPCMark05とFF XIベンチを実施した。PCMark05は内蔵ディスプレイでは一部の項目(Graphics)が実行できないため、外部ディスプレイを接続して1280×1024ドットで実行した。Graphics以外の項目はディスプレイ解像度の違いでほとんど変化がないことを確認済みだ。
総合スコアのPCMarksは1575となっており、これは901-Xよりも高い。ただし、この要因はHDDのスコアが高いことで、CPU、Memory、Graphicsはほぼ同等だった。同じくHDDを搭載したMSIの「Wind Netbook U100」に近いスコアだ。では、901-Xより速いかといわれると、そうとはいい切れない。901-XのSSDはライト性能は低いが、SSDが得意なランダムアクセス性能まで含めるとリード性能はそれほど悪いわけではないからだ。901-Xとの比較であれば、得意不得意がある程度に考えたほうがよい。
左からPCMark05、FF XIベンチの結果
バッテリー動作時間はカタログスペックで約6.9時間とされており、901-Xの約8.3時間より約1.4時間短い。同じ6セル(7.4ボルト 6600mAh)のリチウムイオンバッテリーを使用しているが、内蔵ストレージがHDDであることと、液晶ディスプレイのサイズ(厳密にはバックライトの影響が大きいと思われる)の違いが、バッテリー駆動時間に大きな影響を与えている。
試しに、ディスプレイ輝度が最大の状態で電源設定を「ポータブル/ラップトップ」に設定し、無線LAN(IEEE802.11g)でインターネットに接続。BBench 1.01(Web巡回60秒間隔、キーストローク出力10秒間隔)を使ってバッテリーの駆動時間を計測したところ、4時間18分の動作が可能だった。モバイルユースでも及第点といったところだ。
機を逸した感はあるが、使い勝手のよさが魅力の「最も普通なEee PC」
冒頭でも述べた通り、1000H-Xは国内で10月25日に発売されたが、台北ではEee PC 901と同時に6月に発表されている。Eee PC 901の国内向けであるEee PC 901-Xが7月に販売開始されたのに対し、1000H-Xは3カ月以上も国内への投入が遅れた形だ。直接の競合製品といえるMSIの「Wind Netbook U100」は7月から店頭に並び、その3カ月間にNECや東芝といった国内大手PCベンダーからもフォームファクターの近い競合製品が相次いで登場した。
Eee PCシリーズを見てもディスプレイやキーボードのサイズが同等で、より薄型軽量なプレミアムモデル「Eee PC S101」が11月22日に発売されたこともあり、発売時期としては少々機を逃した感は残る。Eee PCシリーズ内で見れば「最も普通のノートPCに近い仕様」といえるが、「1000H-Xでなければならない」という魅力は少々薄らいでしまったといえる。
とはいえ、Netbookの選択肢として有力候補の1つに挙げられることは確かだ。家電量販店での実売価格は5万台前半で推移しており、S101の6万9800円に比べると1万5000円程度も安い。ネットワーク機能の充実やバッテリー容量、さらには液晶ディスプレイに常時点灯ドットがある場合に交換を行ってくれるZBDサービスが付加することまで考慮すると、お買い得な「普通に使いやすいNetbook」であるのは事実だ。約1.45キロという重量は軽くはないが、これは6セルバッテリーとのトレードオフとして納得できる。
1000H-XはNetbookでも運用の手軽さや使い勝手重視、もちろんバッテリー動作時間も重要といった人にとっては、十分に魅力な製品といえるはずだ。ちなみに、ASUSは2009年1月18日までに1000Hシリーズを購入すると、抽選で毎週2000名(合計1万本)にバッテリーパックをプレゼントする「Eee PC 1000Hシリーズ バッテリープレゼントキャンペーン」を実施している。この機会に検討してみるのもいいだろう。