普及拡大する無線IP電話 ただし導入には対応準備が必要
今日、企業に配備されている無線LANの大多数は、シームレスな音声通信をサポートするのに必要な通話可能エリアをカバーしていない。
[Shamus McGillicuddy,TechTarget]
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/0811/11/news01.html
無線IP電話(VoWLAN:Voice over Wireless LAN)は、今後2~3年で爆発的に普及する見込みであり、ネットワーク担当者は社内の無線ネットワークの対応準備を整えなければならない。
Frost & Sullivanの最近の予測によると、北米における企業向け無線IP電話機器の市場は、2007年の1億1050万ドルから2014年には21億5000万ドルに拡大する見込みだ。これには、専用回線とWi-Fiのデュアルモードの携帯電話、シングルモードのWi-Fi卓上電話、医療業界で普及している専用のページング/メッセージング端末などが含まれる。
Frost & Sullivanのリサーチアナリスト、アラー・サーイェド氏は、「デュアルモードの無線IP電話端末は、2009年から市場で目立つようになり、今後2~3年でエンタープライズ分野にかなり浸透し、2012年にはシングルモード端末の市場を追い抜くだろう」と語る。
Forrester Researchのアナリスト、クリス・シルバ氏によると、無線IP電話には非常に明らかなコストメリットがあるという。
「自分のデスクの前に座っているときでも携帯電話を使うユーザーが増えてきた」とシルバ氏は話す。「彼らは、比較的高価な機器である卓上電話の横に座っているときも、BlackBerryを使っている。こうした利用形態をサポートするために、PBX(回線交換装置)機能、5けたダイヤリング、カンファレンス機能などをモバイルOSに統合したデュアルモード製品を検討する企業もあるだろう。これらの端末では、Wi-Fiの範囲を超えて通話が行われることになるだろう。つまり、既に起きている利用形態をサポートするようにインフラを修正するプロセスの中で、携帯電話からの発信によるコストを毎月削減することができるのだ」
シルバ氏は、このトレンドに伴う問題として、今日、企業に配備されている無線LANの大多数が、シームレスな音声通信を十分にサポートするのに必要な通話可能エリアをカバーしていないことを指摘する。一般的なオフィス環境では、何カ所かの区域でデータ接続を提供するために無線LAN技術が導入されていることが多い。すなわち、建物内の数カ所にアクセスポイント(AP)が配備され、そのほかの区域には配備されていない場合が多いのだ。
「こういった企業では、APの追加配備は慎重に行われている。場合によっては、通常はAPをオフにしておき、必要に応じてアドホックモードで使用するという利用形態もある」とシルバ氏は話す。
Burton Groupの上席アナリスト、ポール・デビーシ氏によると、企業がVLANを音声通信用に拡張するに当たって、APの設置密度も考慮しなければならないという。
「十分な範囲をカバーしていても、建物内に通話量が多い個所があるかもしれない。このため、ネットワークへの着信時間や通話時間に注意する必要がある。ユーザーが長時間の通話をしたり、通話が集中したりするような場合にも対応できる通話可能エリアとAP密度を確保しなければならない」とデビーシ氏は語る。
シルバ氏によると、企業は広範な無線LANの配備によって無線IP電話に向かって進み始めたという。「2010年か2011年までには、約50%の企業が無線IP電話をサポートできるようになるだろう」と同氏は話す。無線LANの導入を検討している企業や、既存の設備を拡張しようと考えている企業は、音声のサポートも考慮に入れるべきだ。たとえ、それを利用するのが2年先であってもだ。また、無線LANベンダーに対しては、データと音声をサポートする通信エリアのマップを作成するよう要求する必要がある。
「無線IP電話を使うのがまだ先のことであっても、音声通信をサポートできるような配備をしておけば、データネットワークのパフォーマンスの改善が期待され、また、実際に音声通信に移行する時点でネットワークを修正しなくて済む」とシルバ氏は話す。「Wi-Fiネットワークを配備する企業では、それを全社にくまなく配備することによるROI(投資収益効果)を説明するのが困難な場合もあるかもしれない。だがVoWLANであれば、IT運用グループはCIOやCFO(最高財務責任者)に対して、“無線APの数を増やせば、5万ドルの追加コストが必要になるかもしれない。しかし、今後1年間で携帯電話の通信費の節約分として7万5000ドルあるいは10万ドル取り戻せる”と言えるのだ」
ネットワーク担当者は、音声をサポートするよう求められたら、十分なインフラを構築するのに加え、ネットワークを注意深く管理する必要がある。
「管理ツールが不可欠になる。問題をリアルタイムで診断する必要があるからだ」とデビーシ氏は話す。「無線IP電話で問題が発生した場合、それは通話に影響するため緊急の問題であり、直ちに解決されなければならない。電子メールだけを運用している無線LANであれば、干渉が起きてもユーザーはそれに気付きさえしないかもしれない」
デビーシ氏によると、企業は物理層に対する見通しを良好にする必要もあるという。それには、干渉を引き起こすAPや無許可のAPなどを監視する専用のセンサーなども必要だ。ネットワーク担当者は、物理層だけにとどまらず、AirMagnetやWildPacketsなどのベンダーの製品を使って、リアルタイムでパケット監視を行う必要があるという。例えばAirMagnetでは、音声パケットの分析が行える無線IP電話専用製品を提供している。
「無線音声通信に関していえば、無線インフラがQoS(Quality of Service:サービス品質)を備えている必要がある。それを監視するツールも不可欠だ」とデビーシ氏は付け加える。
「わたしがいつも最後に人々に言うのは──いつもそれが忘れられるからだが──これらのツールの使用法と無線LAN技術に関するトレーニングをスタッフに施す必要があるということだ。ネットワーク担当者にCWNP(認定無線ネットワークプロフェッショナル)などの資格を取らせることも検討すべきだ」(同氏)