ITpro EXPOで見えた「一歩先のモバイル」
ウィルコムが次世代PHSの端末モックアップを日本初公開
2008年10月15日から17日まで、東京ビッグサイトで行われた「ITpro EXPO 2008 Autumn」では、携帯電話を使ったソリューションや、モバイル通信関連の展示もいくつか行われた。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20081016/1020021/
イベント的にビジネス向けの内容が中心となるため、コンシューマー向けの展示は決して多くはない。だがそうした中でも注目だったのは、「ネットワーク最先端」ブースで展示を行っているウィルコムだ。同社は今回、次世代PHS「WILLCOM CORE」の端末コンセプトモデルを、日本で初めて公開しているのだ。
展示を行っているのは、今年9月にタイで行われた「ITU TELECOM ASIA 2008」にて展示されたコンセプト端末の数々。当初はデータ通信を主体としたサービスを行うことを想定していることから、端末もデータ通信専用のものが主体となっている。
特徴的なのは、USBで接続するタイプの端末も存在するものの、ほとんどがBluetoothや無線LANで接続するタイプであるということ。既存の無線通信の仕組みを使うことで、PCに限らない幅広い端末での利用を想定しているようだ。先日「東京ゲームショウ2008」で展示された「どこでもWi-Fi」に近いイメージといえるが、コンセプト的に想定する利用者層はやや異なるという。
コンセプトモデルということや、無線での利用が中心でデザイン的柔軟性が高いこともあってか、端末のデザインも十徳ナイフ型やキューブ型など形状は非常にユニークだ。このままの形で市場に投入されるかどうかは不明だが、説明員によると「可能性がないとは言い切れない」とのことであった。
ただ1つ気になったのは、全般的に端末のサイズが大きいこと。これは無線での接続を想定しているため、本体にバッテリーを備える必要があるというのが大きな要因と思われる。また端末の消費電力も課題となっているようで、USB接続タイプの端末が少ないというもその影響を受けている可能性が高い。省電力・小型化には取り組んではいるというが、USBタイプでそこそこ小型な端末も多く揃え、先行しているモバイルWiMAXと比べると端末面での課題はやや大きいといえよう。
USB接続タイプの「XG007」(右)と、Bluetooth接続タイプの「XG008」(左)。いずれもアンテナ部分を開いて利用する形となる(画像クリックで拡大)
Bluetoothで接続するタイプの「XG010」。アンテナ部分が伸縮するようになっている(画像クリックで拡大)
無線LANで接続する、キューブ型の「XG011」。55(w)×52(h)×52(d)と、サイズ的には大きめ(画像クリックで拡大)
「XG009」は、無線LANとBluetoothでの両方接続できることを想定したモデル。厚さを除くとExpressCard大で、L字型に立てて利用することも可能(画像クリックで拡大)
「XG012」は、十徳ナイフをイメージしたユニークなデザインが特徴。こちらも無線LANとBluetoothの両方での接続を想定している(画像クリックで拡大)
モバイルだけじゃない?「日本Androidの会」の取り組みを見る
また同じ「ネットワーク最前線」ブースでは、Googleが主導する携帯電話向けソフトウェアプラットフォーム「Android」の開発者コミュニティ、「日本Androidの会」の展示も行われている。Androidはモバイル向けに開発されたプラットフォームで、米国で既に対応のスマートフォンが発売されていることから、当然ながらモバイル向けとして注目を集めている。だが会場では意外にも、モバイル以外でのAndroid活用事例が多く提示されている。
例えばIP Vision社では、ビジネスフォン、いわゆる内線電話にAndroidを導入し、特定のベンダーやプロトコルに依存しないオープンなビジネスフォンの提示を行っている。またアットマークテクノ社は、ウィルコムのW-SIMにも対応し、コンビニやカラオケなどの業務用端末に搭載されることを想定したタッチパネル液晶付きプラットフォームを展示している。これらは全てモバイルではなく「組み込み機器」としてAndroidを活用することを想定しており、通信機能を備え、しかも無償で利用できるプラットフォームであるということが評価されているようだ。
もちろん、本来のモバイル向けアプリケーションやコンテンツとして、Android上で呼び出し画面のカスタマイズやナビゲーション、コミュニケーションを行うアプリケーションなども展示されている。その内容を見ると、やはり既存の携帯電話にはないAndroidの柔軟性と、Googleが備えた機能を活用したものが多いようだ。
もう一つユニークという意味で挙げておきたいのが、日立ソフトウェアエンジニアリングの展示だ。展示内容は、AndroidのカーネルにSELinuxを採用し、OSレベルでセキュリティを強化するというというものなのだが、なんとシャープのPDA「ザウルス」にAndroidをインストールしてデモを行っているのだ。説明員によると動作環境的には「ギリギリ」とのことであったが、こうした所からもAndroidの柔軟性の高さを見ることができるだろう。
ビジネスフォンや業務用端末など、モバイル機器以外にAndroidを活用するという取り組みが多く行われている(画像クリックで拡大)
Androidの柔軟性を生かした、モバイル向けアプリケーションの展示ももちろんなされている(画像クリックで拡大)
会場では、シャープのザウルスにAndroidをインストールしてデモを行っている所も。筆者が確認した時はブラウザなど一部機能がうまく動作しなかったが、本来は全ての機能が動作するとのこと(画像クリックで拡大)
もう1つのモバイルブロードバンド「地域WiMAX」はどうなっている?
先に紹介したウィルコムの次世代PHS「WILLCOM CORE」や、UQコミュニケーションズによる全国区を対象とした「モバイルWiMAX」は、既に多くの展示や発表が行われていることから、現状について知っている人は多いと思う。だがもう1つのモバイルブロードバンドである「地域WiMAX」に関してはあまり情報がなく、現状どうなっているかということを知らない人も多い。そこで「ネットワーク最前線」ブースにて、地域WiMAXに向けた取り組みを行っているフジクラの展示内容から、地域WiMAXの現状を確認してみた。
地域WiMAXはモバイルWiMAXや次世代PHSと同じく、2.5GHz帯を用いたネットワークサービスであり、通信方式的にはモバイルWiMAXと同じである。唯一異なるのは、全国区ではなく地域ごとに免許が付与されるという所で、現在ケーブルテレビ事業者を中心に42の事業者が免許(予備免許含む)を取得している。フジクラでは、そのうち福井や岐阜など6つのケーブルテレビ事業者に実証実験用の機器を導入しており、2008~2009年にかけてのサービス開始に向けて取り組んでいるという。UQコミュニケーションズは2009年のサービス開始を予定していることから、地域WiMAX事業者が先行してサービス開始する形となるようだ。
会場には、実際のモバイルWiMAX基地局と端末が用意され、実際に通信を行うことができる環境が整えられていた。会場での通信速度は約2Mbpsとのことであったが、実際には5M~6Mbps程度の速度を実現するとのこと。低~中速のADSL並みとイメージすれば分かりやすいだろうか。
ちなみに基地局に中国のHUAWEI製のものを、PCに接続する端末には韓国のINFOMARK社製のUSBモデムを採用していた。これらは実証実験や試験サービスに利用しているものと同じセットであり、モバイルWiMAXならではのグローバル性を生かしてコストを削減できることが魅力の1つであるという。
端末はほかにも、無線LANで接続するルータータイプのものやUMPC、PNDタイプのものなどいくつか展示がなされていた。だがWiBro(韓国版のモバイルWiMAX)で先行する韓国でもUSBタイプのものが人気であることから、サービス開始時は展示されているものと同種の端末が提供される可能性が高いという。
地域WiMAXは元々、固定ブロードバンドサービスが提供されない地域にも、無線という特性を生かし低コストでブロードバンド環境を提供するのが目的である。それゆえ、PCなどに接続して固定ブロードバンド回線の代わりとして利用することを想定されることが多い。だがどちらかというと、監視・観測カメラや子供向け防犯ブザーに組み込んで利用するなど、地域に密着したサービスとして使われることが中心になっていくのではないか、と説明員は話している。
しかし一方で、地域が限定されるが故に近隣の地域に移動すると利用できなくなるなど、事業者間ローミングやサービス提供地域の問題を抱えているのも事実。こうした問題をどのように解決しながらサービスの運用が行われていくのか、今後も注目していきたい所だ。
フジクラの展示パネルより。既にいくつかの地域で地域WiMAXの実証実験を行っており、UQコミュニケーションズより先にサービスが開始される所もあるという(画像クリックで拡大)
同社が導入しているモバイルWiMAXの基地局とアンテナ。イー・モバイルにも機器を導入している中国のHUAWEI社製である(画像クリックで拡大)
PCに接続するUSBタイプの端末は、韓国のINFOMARK社製。大きさは3GのUSBモデムと変わらない(画像クリックで拡大)
会場には他にもモバイルWiMAX対応機器が展示されていた。ぱっと見だが、WiBroで先行する韓国の端末が多いように感じる(画像クリックで拡大)
著 者
佐野 正弘(さの まさひろ)
ゲームやWeb、携帯コンテンツなどのデジタル・コンテンツを開発するエンジニアを経て、現在ではモバイル・携帯電話に関する執筆を中心に活動している。近著に「WILLCOM 03入門ガイド」(翔泳社)、「ケータイで稼ぐアフィリエイト 最新情報版」(技術評論社)など。