ニンテンドーDSの新型機、ライバルはiPhone
Kenji Hall (BusinessWeek誌、東京支局テクノロジー担当記者)
米国時間2008年10月2日更新 「Targeting Apple, Nintendo Unveils Its Latest Device」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20081008/173165/?ST=world
任天堂(NTDOY)の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」シリーズに新型機が登場する――。そんな噂が何週間か前から、ゲーム関連のブログで飛び交っていた。そして10月2日、東京で開催された「任天堂カンファレンス2008秋」で同社は、「ニンテンドーDSi」を正式発表した。日本では11月1日から発売し、価格は1万8900円。海外での発売は2009年を予定しているという。
今回任天堂が新型機を発表した背景には、米アップル(AAPL)の存在がある。アップルは、7月に発売した「iPhone(アイフォーン)3G」で、ゲーム市場に名乗りを上げた。
任天堂は今年度の業績について、好調な伸びを予想している(BusinessWeek.comの記事を参照:2008年8月29日「Nintendo Forecasts: What downturn?」)。しかし一部アナリストからは、アップルの影響について懸念の声も聞かれていた。
これまでニンテンドーDSとソニー(SNE)の「プレイステーション・ポータブル(PSP)」がほぼ独占していた携帯型ゲーム市場にアップルが風穴を開け、かなりの規模の市場を奪われるのではないかとの懸念だ。そんなアップルの脅威に対して任天堂が出した答えが、新型機のDSiというわけだ。
専用ソフトをダウンロードできる機能を搭載
DSiを一見した限りでは、現行機と比べてハードウエアの技術面が大きく進化しているようには見えない。上下2つの画面が大きくなり、若干の薄型化と軽量化が実現されたほか、音楽プレーヤーやインターネット閲覧機能も搭載された。だが、さほど代わり映えしないデザインの一歩先に目を向けてみると、大きな変更点がある。データの保存機能だ。
DSiは、旧型の携帯ゲーム機「ゲームボーイアドバンス」のゲームソフトを利用するためのスロットを廃止した代わりに、SDメモリーカード用のスロットを搭載した。無線LAN接続を利用して、音楽、ポッドキャスト、写真、動画、ゲームなど、様々なデジタルコンテンツをダウンロードできる。ゲーム関連の出版や市場調査を手がけるエンターブレインの浜村弘一社長は、「ダウンロード販売の開始で、DSの可能性は大きく広がる」と話す。
この戦略によって、任天堂は方針を大転換した。これまでのDSシリーズは、基本的には昔ながらのゲーム機で、ゲームカートリッジは必須だった。DSiの無線LAN接続とSDカード機能で、同社はデジタルプラットフォーム事業への攻勢を強めることになる。
その先にあるのは、アップルとの真っ向勝負だ。アップルの「App Store(アップ・ストア)」は大手ゲームメーカーからの熱い視線を集めている。ヒット作のゲームをiPhone向けにダウンロード販売できるからだ。
一方、DS用のゲームカートリッジ製造に二の足を踏んでいたゲームメーカーも、今後はDS向けのオンライン販売が可能になる。大手の小売業者を通して販売するのに比べ、オンライン販売のコストははるかに安上がりだからだ。
米ハドソン・スクエア・リサーチのアナリスト、ダニエル・アーンスト氏は、「消費者向けのこうした直販に関して、任天堂は大きく後れを取っていた」と話す。
DSの売り上げは好調だが…
それでも任天堂に不安の色は感じられない。登場から4年が経つDSだが、現在でも一人勝ち状態にある。6月末時点で、全世界でのDSの累計販売台数は7700万台。4~6月期だけでも694万台を売り上げた。今年度(2008年4月~2009年3月)の予想販売台数は3050万台で、昨年度の3030万台を上回る。
一方、ソニーのPSPも機能面はDSに似ていて、米イーベイ(EBAY)傘下のスカイプ・テクノロジーズが提供する無料ネット通話サービス「Skype(スカイプ)」にも対応している。だが、4~6月期のPSPの販売台数は372万台にとどまり、年間の予想販売台数は1500万台だ(ちなみに、米市場調査会社アイサプライによると、据置型ゲーム機では、任天堂の「Wii(ウィー)」は米マイクロソフト(MSFT)の「Xbox(エックスボックス)360」やソニーの「PlayStation(プレイステーション)3」の倍以上売れているという)。
「任天堂は、これまでなかった新路線のゲームを常に開拓している。一方ソニーのPSPは、どちらかというと家電製品の延長線上にある。そこが両社の違いだ」とエンターブレインの浜村社長は指摘する。
だが、任天堂の岩田聡社長は、報道関係者や開発メーカー向けの講演の中で、DSの急激な販売の伸びは「いつまでも続くものではない」と発言している。DSiでは、一部のゲームでWiiとの連携が実現された。自宅のWiiでプレイしていたゲームの続きをDSiで楽しめる。また、Wiiで人気の似顔絵機能で作成した仮想キャラクター「Mii(ミー)」をDSiで利用することも可能になる。さらに、複数人で楽しむゲームを広めるために、日本の主要都市圏のマクドナルド(MCD)で無線LANスポットのネットワークを拡大する。
だが、新型のDSiの評価は100点満点というわけではない。JPモルガン証券(JPM)のアナリスト、前田栄二氏はこう話す。「このタイミングでの発表は、年末商戦を狙ったものだが、価格が2000円しか違わない現行機の売り上げに影響が及ぶ可能性がある。それに米国側からすると、新型機のニュースが出たのに、実際の発売は来年までお預けとなる」。
ともあれ、DSiの売り上げは、任天堂が送り出すソフトのラインアップに懸かっている。新ソフトの中には、写真やイラストをつなぎ合わせて音声付きのアニメーションを作成できる機能を持つものがあり、岩田社長はカンファレンスで、誇らしげに披露した。また、DSiは、写真に対して変形や落書きを加えられる機能や、音楽や音声の再生速度を変えられる機能も搭載している。
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