[特別レポート]検証! ついに登場したモバイル無線LANルーター「PHS300」
コミューチュアは2008年10月23日、持ち歩ける無線LANルーター「PHS300 Mobile WiFi AccessPoint」(PHS300)を発売する(写真1)。電池で動作し、携帯電話の電波が届く場所であればどこでも無線LANアクセスを可能にする(関連記事)。当初は8月末に発売する予定だったが2カ月遅れの登場となった。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20081022/317542/
PHS300は米クレードルポイント・テクノロジーズ製のIEEE 802.11b/gに準拠した無線LANルーター。WAN回線への接続口にUSBポートを搭載する。第3世代携帯電話(3G)対応の携帯電話やモデムをこのポートにつなげてインターネットに接続する。
「かんたん設定」はない、事前設定は多少の専門知識が必要
事前設定はやや面倒だと感じられる。事前設定は大きく2ステップ。(1)無線LAN搭載端末をPHS300に無線LANで接続、(2)3GモデムでPHS300をインターネットに接続、となる。これらの設定はほとんどブラウザ上で行える。
ただし、現時点では英語の設定画面しかない。加えて設定画面には専門用語が多く、ネットワーク知識が浅いユーザーにはややハードルが高い。「日本語での設定画面を準備中。ファームウェアのアップデートで対応する」(川野氏)という。
実際に接続までの流れを見ていこう。まずはPHS300の電源をオンにして、無線LAN搭載のパソコンでPHS300のSSIDを選択して接続する。SSIDはPHS300本体の電池収納部に記載されている。初期状態では暗号化がされていない。SSIDを選択すればDHCPでIPアドレスが割り当てられてそのまま接続できる。その後、ブラウザを起動するとパスワード(初期設定ではMACアドレスの下6桁)の入力を求める画面になる(写真5)。入力するとPHS300の設定画面が表示される。
次に3Gモデムの接続設定を行う。設定画面の「BASIC」タブ内から「WAN」を選択して、ユーザー名とパスワードを入力する(写真6)。これらは携帯電話事業者やMVNO(仮想移動体通信事業者)ごとに異なる。携帯電話事業者のWebサイトのサポートページや契約時の書類などで確認する必要がある。正しく設定できていれば、PHS300を再起動するとインターネットに接続できる。
写真5●パソコンのブラウザでパスワードを入力
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写真6●3Gモデムのユーザー名とパスワードを入力
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3Gモデムによるインターネット接続は一度設定すれば、特別なことがない限り変更は不要だ。次回からはPHS300のスイッチを入れるだけで、インターネットに接続できる。
ブラウザ非搭載の端末を接続するには一工夫
写真7●iPod touchで接続する例。
(1)SSIDを指定して接続、(2)ブラウザでパスワードを入力、(3)正しいパスワードを入力するとポップアップが表示、(4)接続許可を記憶する場合は「Remember Me」をクリック
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写真8●通常の方法で接続できない端末は管理画面で接続許可を行う
[画像のクリックで拡大表示] 通常の利用時には(1)PHS300の電源を入れる、(2)端末側でSSIDを指定して無線LANでPHS300に接続する、(3)端末のブラウザでパスワードを入力する、の3ステップでインターネットに接続できる。パスワード入力が面倒ならば、接続を許可する端末をPHS300に記憶させる方法もある。接続時に「Remember Me」というボタンをクリックすれば、次の接続時からパスワード入力が不要になる(写真7)。
一部の端末ではブラウザを搭載していなかったり、ブラウザを搭載していてもパスワード入力を正しく受け付けないことがある。例えばニンテンドーDSはブラウザを搭載していないし、PSPとWILLCOM 03はブラウザで正しいパスワードを入力しても接続できなかった。こうした端末は、管理画面から「接続許可を記憶する」という設定にすれば正常に接続できた(写真8)。
ニンテンドーDSを例に説明しよう。まず、ニンテンドーDSとパソコンを用意。パソコンにはPHS300の管理画面の「STATUS」のタブにある「WIRELESS(WI-FI)」を選択して表示させておく。管理画面には接続している端末の一覧(MEMBER OFWIRELESS(WI-FI) CLIENTS)が表示される。この一覧の右にあるチェックマークのアイコン(二つ並んだアイコンの左側)をクリックすると、接続許可を記憶した状態にできる。
ニンテンドーDSでPHS300への無線LAN接続を選択し、パソコンの管理画面でニンテンドーDSが表示されたら、すかさずチェックマークのアイコンをクリックする。この設定をしておけば、以後はニンテンドーDSから接続先(SSID)を指定するだけでPHS300によるインターネット接続が可能になる。PSPやWILLCOM 03も同様の手順でインターネット接続が可能になる。
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PHS300を使うと、無線LANを搭載した端末が3Gデータ通信モデムを接続した場合と同じように利用できる。iPod touchやニンテンドーDS、PSPなど3Gデータ通信モデムを接続できない端末が、外出先や移動中に利用可能になる。Web閲覧やメールはもちろん、ホームサーバーにアクセスしたりとエンターテインメント端末の可能性を広げるかもしれない。
法人利用では、自動車に搭載することで「移動可能なオフィス」を実現できる。自動車のシガーライターから電源供給できるオプション製品もある。PHS300のような製品は企業の拠点を銅線や光ファイバの制約から解放する。シンクライアントなどのセキュリティ技術と組み合わせれば、「営業拠点」や「保守拠点」のあり方まで変えるかもしれない。
とはいえ、電池の持ちや設定の難しさなど課題は多い。この点は今後の技術開発に期待したい。ウィルコムとバッファローがPHS300同様の製品を来春発売に向け準備中(関連記事)。「モバイル無線LANルーター」というジャンルの製品が増加すれば、おのずと使い勝手は向上してくる。今後のモバイル無線LANルーターの進展から目を離せない。
(白井 良=日経コンピュータ) [2008/10/22]
写真2●本体側面に電源スイッチ、ACアダプタ接続口、USBポートを搭載
[画像のクリックで拡大表示] サイズは122×73×18.5mm、重さは250g。ポケットに入れるにはやや大きいが、カバンに入れて邪魔になる大きさではない。本体には電源切り替え専用のハードスイッチを用意。スイッチをオンにするだけで、PHS300の周囲一体が無線LANスポットになる(写真2)。移動中や外出先で、米アップルの携帯音楽プレーヤ「iPod touch」や携帯ゲーム機などでインターネット接続する用途に向きそうだ。
コミューチュアが運営するWeb上のショッピングサイトで10月23日から予約を受け付け、11月初旬に商品の発送を開始する。価格は1万9800円。送料735円と代金引換手数料420円が別途必要になる。まずは個人向けに販売するが、法人向けの販売も検討する。「自動車をオフィスにしたいなど法人固有のニーズもあるだろう」(コミューチュアPHS-300サポート窓口の川野清氏)。
発売が2カ月遅れたことについて、川野氏は「電気通信事業法や電波法、電気用品安全法などにかかわる各種の認証制度をクリアするため、開発元とのやり取りに時間がかかっていた」と説明する。10月にすべての認証を取得。日本国内で販売できる準備が整った。
無線LAN搭載端末でどこでもインターネット接続
今回、PHS300をコミューチュアから借り、様々な端末を接続して使い勝手を検証した。利用した端末はパソコン(パナソニックのLet’s Note W4)、アップルのiPod touchと携帯電話機「iPhone」、任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」、ソニーの携帯ゲーム機「PSP」、携帯コミュニケーション端末「mylo」、ウィルコムのスマートフォン「WILLCOM 03」の7機種(写真3)。インターネット接続する3Gデータ通信モデムにはイー・モバイルの「D02HW」を利用した(写真4)。
写真3●PHS300によるインターネット接続を検証した端末
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写真4●イー・モバイルのUSB型3Gデータ通信モデム「D02HW」をPHS300に接続
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その結果、すべての端末で問題なくインターネットに接続できることが確認できた。通信速度は3Gデータ通信の接続状況に依存する。場所や時間によるが300kビット/秒~2Mビット/秒と“遅めのADSL”程度の速度で通信できた。
無線LAN接続の安定性はおおむね良好。電波が弱いのか、たまに速度が低下したが、無線LAN側が通信速度のボトルネックとなることはなかった。無線LAN接続が突然切れる現象は、利用した範囲ではなかった。メールやWeb閲覧では特に不満を感じることなく利用できる。ただし、時間帯や場所によって3Gデータ通信の通信速度が不安定になることはあった。
myloを使ってIP電話「Skype」で通話したが、特に問題は感じなかった。SkypeOutを利用した一般の電話への発信でも、音声が途切れることなく利用できた。今回は検証しなかったが、ほかのIP電話ソフトでも問題なく通話できるだろう。
動画閲覧では、不安定な3Gデータ通信が通信速度のボトルネックとなってストリーミング再生はやや厳しい。端末にデータをため込みながら再生する「YouTube」のような動画投稿サイトなら快適に視聴できた。
iPhoneでは外出先でiTunesから楽曲をダウンロードできた。iPhoneは3Gデータ通信機能を搭載しているが、iTunesでの楽曲ダウンロードは無線LAN接続時にしかできない。PHS300と併用すれば、いつでもどこでも楽曲ダウンロードが可能になる。
難点は電池の持ち時間だ。頻繁にデータをやり取りする使い方をしていると、2時間もしないうちに電池が切れてしまう。必要な時だけ電源を入れるような使い方にしておくのが賢明だろう。どうしても外出中に常時接続したいユーザーは、予備バッテリーや外部バッテリーを別途用意したほうがよい。