WXGA液晶+タッチパネルが強みのAtom搭載ミニPC「M912X」を試す
九十九電機が台湾GIGABYTEのAtom搭載ミニノートPC「M912X」を発売した。Atom搭載機としては後発だが、液晶ディスプレイで差を付けている。
新タイプのAtom N270搭載ノートが登場
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0809/03/news037.html
九十九電機が国内販売するGIGABYTEの「M912X」 新製品が続々と登場しているAtom N270搭載のミニノートPC(Netbook)は、5万円前後の予算で十分使える機能と性能を備えたサブノートPCを入手できるとあって、マニアだけでなく、一般ユーザーをも巻き込んだブームとなっている。
とはいえ、価格が安いだけにスペックが制限される部分も存在する。その最たるものが液晶ディスプレイだ。これまでAtom N270搭載ミニノートPCは、液晶パネルのサイズにかかわらず、解像度が1024×600ドットまでに抑えられてきた。横の解像度はともかく、600ドットという縦の解像度に物足りなさを感じるユーザーは少なくないだろう。
そんな中、九十九電機が9月3日より受注を開始した台湾GIGABYTEの「M912X」は、1280×768ドット(WXGA)表示の8.9型ワイド液晶ディスプレイを装備したAtom搭載ミニノートPCだ。画面サイズは先に発売された「Eee PC 901-X」や「Aspire one」と同様だが、解像度は大きく上回っている。また、タッチパネル式の液晶パネルを装備し、液晶ディスプレイを180度回転させて折り畳むことで、タブレットPCの形態に早変わりするコンバーチブル型ボディを採用しているのも魅力だ。
その半面、価格は7万9800円と値が張るが、新しいタイプのAtom N270搭載ミニノートPCとして注目できる。今回は9月中旬の出荷予定に先駆けてM912Xの実機を急きょ入手できたので、その実力をチェックしていこう。
160GバイトHDDをはじめ余裕のあるスペック
まずは基本スペックだが、プリインストールOSはWindows XP Home Edition(SP3)だ。CPUのAtom N270(1.6GHz)とチップセットのIntel 945GMS+ICH7Mを組み合わせた構成は、前述の競合モデルと変わらない。
メインメモリは1Gバイト(PC2-5300 SO-DIMM×1)、データストレージは160Gバイトの2.5インチSerial ATA HDDを採用しており、HDDの大容量が目を引く。これだけの容量があれば、当面はアプリケーションや個人データの置き場に困ることはないだろう。メモリスロットは底面に1基あり、ネジ止めされたカバーを外すだけでアクセスできるので、2Gバイトのメモリモジュールと交換するのは容易だ。
ネットワーク機能は100BASE-TXの有線LANとIEEE802.11b/gの無線LANに加えて、Bluetooth 2.0+EDRも標準搭載している。インタフェースは、3基のUSB 2.0ポート、アナログRGB出力、ヘッドフォン、マイク、ExpressCard/34スロット、SDメモリーカード/MMCスロットを装備。液晶ディスプレイの上部には有効画素数130万画素のWebカメラも備えており、ミニノートPCとしては充実した構成といえる。
前面には、1.5ワット+1.5ワットのステレオスピーカー、左側に各種インジケータを備えている(写真=左)。液晶ディスプレイはラッチレス構造だ。背面はリチウムイオンバッテリーで占有される(写真=右)
左側面には有線LAN、1基のUSB 2.0、ExpressCard/34スロット、SDメモリーカード/MMCスロットを配置(写真=左)。右側面には2基のUSB 2.0、ヘッドフォン、マイク、アナログRGB、ACアダプタ接続用のDC入力、電源スイッチが並ぶ(写真=右)。3基のUSB 2.0ポートは左右に分かれており、使いやすい
液晶ヒンジの関係で、バッテリーパックは中央がくぼんだ形状になっている。ACアダプタはEee PC 901-Xと同じサイズだ 付属の4セルリチウムイオンバッテリー(7.2ボルト 4500mAh)によるバッテリー駆動時間は約3.5時間をうたう。本体サイズは235(幅)×180(奥行き)×42(高さ)ミリ、重量は約1.3キロとなっている。持ち運びが苦にならないサイズではあるが、このクラスのミニノートPCとしては厚みがあって重い。タッチパネル式の液晶パネルなど、かさばるパーツを採用したとはいえ、「Wind NetBook U100」のように10型クラスのミニノートPCが1キロ程度にまとまっていることを考えると、もう少し軽量化してほしかったところではある。
デザインに関しては、黒を基調に薄くタイル状の模様を入れ、ラメもちりばめた光沢塗装の天板がユニークだ。ボディはブラックとシルバーのツートーンカラーを採用し、個性的な天板に対して、液晶ディスプレイを開くとシンプルな外観になる。タッチパネル搭載機ということで、液晶ディスプレイのフレーム部は太く、画面やキーボードの周囲にゴムキャップや小さな突起があるなど、少し武骨な面も見られるのは気になった。ボディの剛性は問題なく、パームレスト部を片手で握って持ち上げてもシャーシがたわむようなことはない。液晶ディスプレイのヒンジもしっかりした作りだ。
パッケージにはACアダプタとリカバリDVD、予備のスタイラス、キャリングケース、マニュアルが付属する。ACアダプタは突起部を除くサイズが35(幅)×85(奥行き)×26(高さ)ミリ、ケーブル込みの重量が約198グラムと小型かつ軽量にまとまっており、ACケーブルが日本のノートPCのように細身なことも相まって持ち運びやすい。
キャリングケースはセカンドバッグ風の見た目はともかく、クッションはしっかりしていてインナーケースとして安心感がある作りだ。購入時のリカバリについては、HDDリカバリとリカバリDVDの2通りに対応しており、融通が利く。
天板のデザインはよく見ると、黒字に四角形のパターンが印刷されている(写真=左)。本体サイズにぴったりのキャリングケースが付属する(写真=中央)。本体底面のネジを3本外してカバーを開けると、1基のSO-DIMMスロット、2基のMini PCI Expressカードスロット、2.5インチSerial ATA HDDが露出する(写真=右)。Mini PCI Expressカードスロットは1基が空いた状態だった
M912Xのデバイスマネージャ画面。入手した機材はHDDに富士通の2.5インチSerial ATA HDD(MHZ2160BH)を採用していた。厚さは9.5ミリ、回転数は5400rpmだ。無線LANモジュールはAtheros AR5007EGだった
1280×768ドット表示の8.9型ワイド液晶はタッチパネルも用意
タッチパネル式の8.9型ワイド液晶ディスプレイは1280×768ドット表示に対応。輝度は十分確保されている 冒頭で述べた通り、液晶ディスプレイはサイズが8.9型ワイド、解像度が1280×768ドットだ。画面サイズが小さい割に高解像度なので、ドットピッチは約0.151ミリと細かく、1024×600ドット表示(約0.19ミリピッチ)と比較して、小さな文字は少し読みにくく感じるかもしれない。特にM912Xはタッチパネルを装着していることで、外光の映り込みやコントラストの低下があるため、淡い色の壁紙に白色でファイル名を表示しているときなどは、目を凝らして見る必要があった。
とはいえ、1280×768ドットの解像度は、一般的な12.1型ワイド液晶搭載のモバイルノートPCや15.4型ワイド液晶の据え置き型ノートPCに採用例が多い、1280×800ドットの解像度とほとんど変わらない感覚で扱える。Webページや標準的な縦長の文書を閲覧する場合など、さまざまなシーンで重宝するはずだ。
液晶ディスプレイを反転させてタブレットPCとして使う場合、液晶ディスプレイ左上に収納されたスタイラスもしくは指で直接画面に触れて操作できる。タッチパネルの操作性に不満はないが、ソフトウェアキーボードや手書き文字認識の機能は実装されていないため、Webページや文書の閲覧、OSの基本操作といった用途がメインになるだろう。この際、両手で本体を抱えることになるが、側面の通風口を手で覆ってしまわないように注意が必要だ。
液晶ディスプレイの左上にスタイラスが収納されている(写真=左)。液晶ディスプレイを反転させてタブレット形状にした状態(写真=中央)。液晶ディスプレイをそのまま開けば、通常のノートPCとして利用可能だ(写真=右)
日本語キーボードの使い勝手は?
キーボードはEnterとカーソルキー周辺に特殊なキーレイアウトが見られる 国内販売用の日本語キーボードは、スペースバーが長い一方、Enterキーが小さく、アプリケーション、変換、無変換といったキーが省かれ、Enterやカーソルキーの周辺に特殊なキーレイアウトが散見される。主要キーのキーピッチは16ミリ程度あるが、使いこなすには慣れが求められる。今回入手した機材は、キーボードユニットが少しふらつくのも気になった。キーボードユニットの両脇にはスペースが余っているので、ボディの横幅いっぱいまでキーボードの面積を広げてほしかったところだ。
タッチパッドは51×40ミリと小さめだが、縦スクロール用の領域もあり、使い勝手は良好だ。キーボードのホームポジション直下ではなく、本体の左右中央にタッチパッドを配置しているが、パッド自体が小さいため、キー入力時に誤って触れてしまうようなミスは少なかった。左右のクリックボタンは一体化したパーツを使っているが、ボタン自体が小さいため、少し押しにくい。
なお、本体にワンタッチボタンなどは配置しておらず、無線LANのオン/オフや音量の調整はFnキーとファンクションキーの同時押しで行なう。
Atom N270の採用でパフォーマンスは十分
パフォーマンスに関しては、ベンチマークテストのPCMark05、FF XIベンチ、3DMark06を実行してみたが、Atom N270を搭載したほかのミニノートPCと同程度だった。回転数5400rpmの2.5インチ160GバイトSerial ATA HDDの内蔵により、HDDのテストは好結果だったが、体感上の大きな差はなく、当然ながらYouTubeやニコニコ動画などの動画共有サイトもコマ落ちが気になることなく実用できるレベルにある。
左から、PCMark05、3DMark06、FF XIベンチのテスト結果
テスト中はシステムに高負荷がかかる状態でも静音性は保たれていた。低めのファンノイズが本体左側面の通風口から聞こえてくるが、大きな風切り音や異音が発生することはなかった。ただし、本体が発熱しやすい点には注意が必要だ。室温25度の部屋で一通りのテストが終わった状態でボディの表面温度を放射温度計で計測したところ、キーボードとパームレストの右手側が42~44度、底面は43度まで温度が上がっていた。
バッテリー駆動時間については公称値で約3.5時間とのことだが、液晶ディスプレイの輝度を最大まで上げた状態で、無線LANに接続してWebページをチェックしつつ、文書を作成するなどの操作を行なったところ、2時間弱の駆動が可能だった。持ち運んでメールやWebサイトをざっとチェックする程度であれば問題ないだろうが、現状で大容量バッテリーのオプションなどは用意されていないため、バッテリー駆動で長時間使いたいといったニーズに応えるのは少々厳しそうだ。
やはり液晶ディスプレイをどう評価するかがポイント
M912XはAtom N270搭載のミニノートPCとしてはハイスペックにまとまっており、通常のコンバーチブル型タブレットPCに近い操作感を実現しているのが特徴だ。とりわけ1280×768ドット表示のタッチパネル式8.9型ワイド液晶ディスプレイは、Netbookの画面が狭いことに不満を抱いていたユーザーに朗報といえる。
人気の低価格ミニノートPCの中では「HP 2133 Mini-Note PC」も同じ解像度の8.9型ワイド液晶ディスプレイを備えているが、こちらはCPUにVIA C7-M ULVを用いている。VIA C7-M ULVはWebブラウズや一般的な文書作成などの用途ならば問題ないものの、動画コンテンツの視聴には少々物足りない。
こうして考えると、M912Xはなかなか落としどころがいい製品に思えるが、ネックとなるのはやはり価格だろう。7万9800円という価格は、ほかのAtom N270搭載ミニノートPCより1万5000円~2万円程度高く、これだけの予算があれば中古で状態がいいモバイルノートPCも含めて、選択の幅がかなり広がってくる。とはいえ、液晶ディスプレイの解像度に余裕がある低価格ミニノートPCを求めていたならば、M912Xは欠かさずチェックすべき1台といえる。