デル謹製AtomノートPC「Inspiron Mini 9」の日本語キーボード版を試す
出る出る、といわれ続けたデルの低価格ミニノートPC「Inspiron Mini 9」。まずは日本語キーボード+Windows XPの上位モデルを触ってみた。
2色のカラバリを用意したデルの低価格ミニノートPC
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0809/05/news040.html
デルの低価格ミニノートPC「Inspiron Mini 9」 安価で小型なミニノートPCは、本来のターゲットであった新興国市場ばかりか、日本や米国といった先進国市場でも幅広く受け入れられ始めている。その需要の高まりは、主要な半導体供給元の予想さえも超えてしまったらしく、店頭に並んでもアッという間に完売し、次回入荷のメドが立たないモデルも少なくない。世界最大の半導体メーカーであるインテルは、ミニノートPCの市場に対し、Atomプロセッサを供給しているが、需要を完全には満たせない状況が続いている。
世界有数のPCベンダーであるデルでさえも、Atomの調達には苦労しているようで、同社製ミニノートPCの存在が明らかになったものの、なかなか発表/発売にならず、われわれをやきもきさせてきた。ようやく日本でも9月5日に発表になったのが、このInspiron Mini 9というわけだ。
外観は白(パール・ホワイト)もしくは黒(オプシディアン・ブラック)を基調としたシックなもの。今回試用したのは黒のモデルだが、指紋が目立つことを除けば、質感も高く安っぽさはない。キーボード面は、黒いキーボードの周囲をシルバーで囲んだデザインだが、こちらも高級感がある。サイズは232(幅)×172(奥行き)×27.2~31.7(高さ)ミリ、重量は約1035グラムとやや重量感はあるが、カバンへの収まりはよい。
意外なのはLEDインジケータが、電源とバッテリー切れの警告表示の2つしかないことで、一般的なノートPCでおなじみのアクセスランプや無線LANのインジケータはない。アクセスランプがないのはSSDを採用したから、とも考えられるが、PCの動作状況を知るのに役立つだけにちょっと残念だ。無線LANについてはインジケータ、ハードウェアスイッチ共に省かれており、Fnキーとの組み合わせで提供される。
カラーバリエーションとして、パール・ホワイト(写真=左)とオプシディアン・ブラック(写真=中央)が用意される。前面左側にインジケータランプがあるが、HDDのアクセスや無線LANの状態は表示せず、電源オン(スタンバイ状態のときは点滅)と充電中を示すのみだ(写真=右)
日本エイサーのAspire oneよりも横幅が17ミリほど小さく、重量も70グラムほど軽い(写真=左)
SSDは3つの容量を、OSは2つのモデルを用意
1.6GHz駆動のAtom N270を搭載する Inspiron Mini 9のベースとなるのは、インテルのAtom N270(1.6GHz/2次キャッシュ512Kバイト/FSB 533MHz)にIntel 945GSE Expressチップセットの組み合わせだ。現時点で、インテルが展開するNetbook(インテルの定義によるミニノートPC)にはほかの選択肢はなく、どのベンダーの製品を選んでも基本的な機能や性能に大きな違いはないことになる。
本機が搭載可能なメモリは512Mバイトあるいは1Gバイトだ。本体底面のフタを取り外すとそこにDIMMスロットがあり、どちらかの容量のSO-DIMMがインストールされている。Intel 945GSEそのものは2Gバイトのメモリをサポートできるが、そのオプションは提供されていない。この底面には、本機の特徴の1つであるSSDと無線LANモジュール(IEEE802.11b/g対応)も格納されている。
この底面にはもう1枚、モジュールを装着できる物理的スペースがあり、WWANとマーキングされているものの、コネクタ類は実装されておらず、このスペースを活用するオプションが提供される具体的な予定はない。ほかにオプションとしては液晶ディスプレイ上部に内蔵するWebカメラ(130万画素)、Bluetooth(V2.1+EDR、WIDCOMMスタック)があるが、いずれもメーカー出荷時はオプションであり、ユーザーが後から追加することができない。
用意されるSSDは4Gバイト、8Gバイト、16Gバイトの3種類だ。4GバイトはOSにLinux(Ubuntu 8.04 Dellカスタマイズ版)を選択した場合のみ利用可能となる(Ubuntu版の製造開始は9月下旬予定)。すでにミニノートPCは多数リリースされているが、日本語化したLinuxのプリインストールを選択できるのは、このInspiron Mini 9が初めてではないかと思う。8Gバイトあるいは16GバイトのSSDを選択することで、OSにWindows XP Home Edition(SP3)が選べるようになる。
今回試用したのは、16GバイトのSSDにWindows XP Home Edition(SP3)をプリインストールした日本語キーボードモデルである。使われているSSDはSTEC製のもので、型番にDellの文字が見える(おそらくは専用品だろう)。コネクタはASUSTeKが採用しているSSDのものに酷似しているが、SSDの表面は樹脂製のカバーで覆われており、コントローラやNANDチップの型番を読み取ることもできなかった。
ファンレス仕様で、キーボードユニットを外すと、CPUやノースブリッジ、サウスブリッジの熱をボディ全体に分散させているのが分かる(写真=左)。底面のネジを2本外すとメモリスロットとMini PCI Expressスロットが現れる(写真=中央)。評価機に内蔵されていた16GバイトSSDのモジュールと、1Gバイトのメモリモジュール(写真=右)
独特な配列が目立つ日本語キーボード
8.9型のワイド光沢液晶ディスプレイを搭載 一方、ディスプレイには8.9型のLEDバックライト液晶パネル(光沢タイプ)を採用する。解像度はNetbookとしては標準的なWSVGA(1024×600ドット)だ。日本ヒューレット・パッカードの「HP 2133 Mini-Note PC」やギガバイトの「M912X」が採用しているように、この大きさでXGAを超える解像度(1280×768ドット表示)のパネルも存在するのだが、AtomベースのNetbookではまだ採用例が少ない。インテルはNetbookと価格帯の近いバリューノートPC(Celeronベースの安価なノートPC、インテル的にはNetbookより上位)との差別化に腐心しており、Netbookのディスプレイ解像度がPCの標準であるXGAを超えることがないよう「指導」しているのかもしれない(あくまでも筆者の邪推であるが)。
Inspiron Mini 9では、8.9型ワイド光沢液晶ディスプレイを比較的狭い額縁でフレームに収めており、本体はコンパクトに仕上がっている。大きさ的にはEee PC 901-Xとほぼ同じだが、Eee PCの6セルバッテリーに対し、本機は4セルバッテリーを採用しているため、不要な出っ張りもなくスマートな外観だ(バッテリー駆動時間では当然不利になるが)。バッテリー駆動時間は公称値で約3.4時間となっており、大容量バッテリーは用意されていない。
左が日本語キーボードで、右が英語キーボード。どちらもキーの詰め込みが目立ち、キーピッチも一定ではない。特に日本語キーボードでは不規則な配列が目立つ
一方、コンパクトなボディはどうしてもキーボードにしわ寄せが来る。特にキー数の多い日本語キーボードの場合、かなりのキーがハーフピッチの小型キーになっているほか、「半角/全角」や「む」キーは“あさって”の位置に移動している。さらに4セルバッテリーをコンパクトなボディに収めるため、ファンクションキーの列を省略した5列キーボードとしたことも、キー配置が変則的になる理由となっている。日本語キーボードモデルは店頭販売もされるから、購入前に一度キー配列を確認することをおすすめする。
直販モデルでは、日本語キーボードだけでなく、英語キーボードを選ぶことも可能だ(OSは日本語OSのみ)。日本語キーに比べればまだゆったりとしているが、英語キーボードでもすべてのキーが均等ピッチではない点に、注意が必要だ。
ACアダプターは重量こそ約175グラムと軽いが、サイズは33(幅)×110(奥行き)×57(厚さ)ミリ、ケーブル長は255センチもあり、持ち運びにはかさばる(写真=左)。バッテリー容量は14.8ボルト 34ワットアワーで、駆動時間の公称値は約3.4時間となっている。タッチパッドは62(幅)×34(奥行き)ミリと小型ボディのわりに大きめ(写真=中央)。シナプティクス製のシンプルなドライバが導入済みだ(写真=右)
前面左側に2つのLEDランプがある(写真=左)。背面はバッテリーのみだ(写真=右)
主な端子は両側面にまとまっており、左側面にはケンジントンロック、ACアダプター接続端子、2基のUSB 2.0、SDメモリーカード(SDHC対応)/メモリースティックPRO/MMC対応のメモリカードスロットがある(写真=左)。右側面にはヘッドフォンとマイク、USB 2.0、アナログRGB出力、100BASE-TX対応の有線LAN端子が配置される(写真=右)
ファンレス仕様で抜群の静粛性を実現
このようにキーボードは相当つらい本機だが、逆に本機ならではの長所もある。それは本機がファンレスである、ということだ。これまで発売されてきたミニノートPCでファンレスの製品はほとんどなく、逆に動画再生などを行うと猛然とファンが回り出すものが少なくなかった。それに対しInspiron Mini 9は、回転部品を持たないSSDを採用したことに加え、ファンレスだから、何をしようと動作ノイズに悩まされることはない。図書館や病院の待合室、夜間飛行中の機内など、どこで開いても騒音で周囲に迷惑をかけないで済む。逆にファンレスだと、本体が熱くなることが懸念されるが、多少動画を再生したくらいでは、ほんのりと暖かくはなっても、熱いというレベルには達しなかった(空調された屋内での利用の場合)。
逆に、ファンレス化するために、性能を抑えている可能性もまったく考えられないわけではないが、どうやらその心配もなさそうだ。簡単なベンチマークテストを実行してみたが、CPU、FPU、メモリアクセスといった部分で、ほかのNetbookと大きく変わることはなかった。
一番大きな違いが生じたのはストレージのテストで、非常に高速な読み出しに対し、書き込みが遅いという結果になっている。価格からいっても、この結果からいっても、本機の16GバイトSSDはMLCチップを採用したものだと思われるが、並列読み出しなどの高速化技術により読み出し性能を大幅に改善していることがうかがえる。ちょっとしたアプリケーションの起動でもたつく感じはほとんどない。
左からCrystalMark 2004R3、HDBench 340b6、CrystalDiskMark 2.1.5のテスト結果
あくまでセカンドマシン用だがファンレス動作は大きな魅力
Inspiron Mini 9は、インテルの標準的なプラットフォームを採用しながら、ファンレス化を実現しているという点で特筆できる。SDDの採用も含め、ほぼ無音のオペレーションが可能ということに魅力を感じる人は少なくないだろう。一方、最大で16Gバイトというストレージ容量は、Windows XP(SP3)を利用するのに十分ではあるものの、アプリケーションをどんどんインストールしたり、音楽や動画、あるいはメールなどのデータを蓄積していくといった使い方に向かないのも事実だ。やはりセカンドマシンとして、Webメールやインターネットコンテンツを中心に利用する、という使い方がふさわしい。
最大の難点であるキーボードは、直販モデルに限られるとはいえ、英語キーボードを選択することで緩和される。できれば、この英語キーボードを、店頭で実際に見て触る機会があればよいのだが……。
価格的には、16GバイトのSSDと2つのオプション(Webカメラ+Bluetooth)を追加した「Inspiron Mini 9 プラチナパッケージ」で6万4980円、4GバイトSSDを搭載したLinuxモデル「Inspiron Mini 9 ベーシックパッケージ」で4万9980円で、それほど安い感じはしない。しかし、デルのこと、実際に販売がスタートすれば、割引きキャンペーンなどもあるのではないかと期待する。小型と静音性を重視するユーザーには注目すべき1台といえるだろう。