デジカメや携帯に新時代到来!? 新無線規格「Transfer Jet」の利便性
今回は、データ転送の規格について取材をしてきた。デジタルカメラや携帯電話などの使い方を変える可能性を秘めた新規格について、話題に乗り遅れないようにチェックしておきたい。
http://diamond.jp/series/digitrends/10042/
ソニーが提案する新しい規格は「Transfer Jet」という。年初の展示会でお披露目となった新しい通信の仕組みである。
ちなみに、現在デジタル機器市場では、新たな通信規格が大流行中だ。すでに「無線LAN」や「Bluetooth」といった通信サービスをお使いの方も多いだろう。今後USBは、HDMIを無線化する流れも見えてきている。つまり、ケーブルというケーブルがどんどん無線に置き換わってきているのだ。
ただし、これらの規格は使いこなすのが結構大変だった。各機器を設定して認証させる必要があるのだ。さらに、無線の場合にはセキュリティにも気を遣う必要がある。使い慣れてしまえば便利なのだが、エントリーユーザーにはハードルが高いのも事実だ。
たとえば、携帯電話にBluetoothを搭載しているモデルが増えているが、それを日常的に使っているユーザーはさほど多くないだろう。
従来と逆行する「超近距離通信」が主眼?
「Transfer Jet」の意外な利便性
そんな無線規格が乱立する中、ちょっと変わった位置づけにあるのが「Transfer Jet」だ。この規格は、「ケーブルをつながずに遠くまで情報を飛ばしたい」という、古くからある無線のあり方とは違うコンセプトで生まれてきた。
デジカメを通信アダプターに乗せるだけでファイルを転送できる手軽さはヒットの予感。
つまり、フェリカで改札を通るように、デジタルカメラなどの機器を各種の通信アダプタにかざすだけでデータを転送できる仕組みだ。わかりやすく言うなら、これまでパソコンとケーブルをつないだり、メモリカードを抜き差しして写真をやりとりしていたスタイルを変えようというチャレンジである。たとえば、デジカメに溜まった画像を通信アダプタにかざすだけで、パソコンに転送できるようになる。
Transfer Jetが従来の通信と違う点は、超近距離で使うこと。利用できる範囲は数センチに限られる。「データを減衰させずにできるだけ遠くまで通信しよう」と考えてきた従来の通信サービスのあり方とは、考え方からして違うのだ。
要は、距離に対する利便性ではなく、通信することでケーブルをつないだりメディアを差し替える面倒さから解放しようという目論見である。
「通信を取り巻く環境の変化もあって生まれた規格ですが、技術的には5年前でもできたかもしれません」とは、ソニーのオープンイノベーション部門「Transfer Jet事業化推進部」の小高健太郎統括部長。
Transfer Jetは、まるで逆の発想から生まれた。遠く離れたところまでデータを飛ばすのではなく、数センチ離しただけで通信が途切れるように作っているのだ。注目するべきは技術開発よりも「発想の転換」だ。
早い話が、機器をタッチすることでデータがやりとりできるようになる――使い方が限定されるのでセキュリティのリスクが減り、認証もわかりやすい、ということ。デジカメやビデオの写真を取り込むだけでなく、友達同士で携帯電話の写真をやりとりするといったファイルの交換も気軽にできるわけだ。また、パーツのサイズも小さく、普及すればコストも抑えられる。来期にも実装した製品が登場しそうだという。
デジカメや携帯のデータを「簡単転送」
コストやパーツセーブも強みアリ
ソニーが描くのは、タッチでデータを転送する「ユーザー文化」。シルエットの女性は、広告に携帯電話をタッチさせて情報を取り込んでいる。
実際に稼働しているデモを見せていただくと、なんともあっけない。ビデオカメラを通信アダプタの上に載せると、テレビでビデオが再生されるのだ。従来の機器との違いは、ケーブルをつないでいないことだけだ。
だが、実はこれ、大変な可能性を秘めていると思う。僕自身、いろいろな機器をパソコンやテレビにつなぐために、数種類のケーブルを使い分けなければならずに、非常に面倒な思いをしている。むろんケーブルとて安くはない。ついこの前まで、テレビとパソコンなどをつなぐHDMIケーブルは3000円以上もしたのだ。
今後、Transfer Jetが普及すれば、機器接続のための「ケーブルの呪縛」から解放されるのだ。結果として、できることがシンプルでわかりやすいからこそ、うまくいけば一気に普及する可能性も高い。
小高氏は、「タッチしてデータをやりとりするスタイルを含めてユーザーに訴求したい」と考えている。だが僕は、ケーブルのコストやパーツセーブだけを考えても、ビジネスチャンスは大きいと思っている。