4本のHD映像を無線LANで同時伝送、イスラエルの新興企業がチップを発表
イスラエルの新興企業であるCeleno Communications社は、複数本の高品位(HD)映像ストリーム信号を無線伝送できるという5GHz帯対応無線LANチップの新製品「CL1300」に関する詳細を初めて明らかにした。この無線LANチップは、キャリア・クラスのセットトップ・ボックスやゲートウエイ機器に向ける。同社によれば、この無線LANチップは最大4本の高品位映像ストリーム信号を同時に、送受信間に複数の壁が存在していたり、階数が異なっていたりしても、パケットを失うことなく無線伝送できるという(英文の発表資料)。
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これまでもいくつかの新興企業が、家庭内ネットワークで映像信号を無線伝送する用途に向けた無線LANチップを開発してきたものの、必ずしも成功には至っていなかった。そうした新興企業の無線LANチップは、映像信号の伝送品質を確保するため、標準規格に定められていない独自の技術を投入しており、映像信号をやりとりする機器の両方にその無線LANチップを採用しなければならないという制約があった。
これに対し、Celeno Communications社は異なるアプローチを採る。すなわち、無線LANの標準規格であるIEEE 802.11 a/b/g/nに対応するチップセットとの互換性を確保した。従って、他社が供給するあらゆる品種の無線LANチップセットと組み合わせても、前述の映像伝送性能を達成できるという。
同社が詳細を公表したCL1300は、複数の技術を使って、ベスト・エフォート型の無線インターフェースである無線LANの特性を最大限に高めている。例えば物理(PHY)層では、MIMO(Multiple Input Multiple Output)構成のアンテナを最大8本使って、映像信号をやりとりする相手側機器の位置を検出して無線信号の指向性を調整する。
さらに、無線伝送品質を監視し、それに応じてMIMO用の複数のアンテナのうち送信に使う本数と受信に使う本数を切り替える「スイッチトMIMO」と呼ぶアルゴリズムを採用した。また、無線伝送用のチャネルについては5GHz帯で20MHzの帯域幅だけを使う。このため、40MHzの帯域幅を専有する場合や、5GHz帯よりも混雑が激しい2.4GHz帯を利用する場合に比べて干渉を受けにくいという。
プロセッサ・コアとしてARM9を集積した。このプロセッサが10msごとに伝送品質を評価して、無線送受信回路の機能を制御することで伝送品質を維持している。さらに、独自に開発したパケット・プロセッサを搭載しており、伝送信号のパケットを解析してサービス・クラスに関するデータを収集する役割を果たす。
130nm技術で製造する。MAC(Media Access Control)層処理回路とPHY層処理回路を集積しており、外付けメモリーは16Mバイトと小容量のDDR2対応品で済む。
同社が実施したテストによると、CL1300は、送信側と受信側の無線伝送距離が最大23mで、その間に壁が最大5つ存在する場合でも、UDP(User Datagram Protocol)で35Mビット/秒のスループットを達成したという。一方で競合他社のIEEE 802.11n対応チップセットを使った場合は、無線伝送距離が13mを超えて壁の数が2つになるとスループットが低下し、無線伝送距離が21m、壁の数が4つになった地点で接続が切断されてしまったという。
Celeno Communications社でマーケティング担当バイス・プレジデントを務めるLior Weiss氏は、「IEEE 802.11n規格では、キャリア・グレードの映像ストリーム信号を伝送するために必要な要件を満たしていない」と述べている。
同社はCL1300を、オランダのアムステルダムで2008年9月12~16日の日程で開催される映像関連の展示会「International Broadcast Conference (IBC 2008)」で正式に発表する。この展示会では、このチップを搭載した試作機として、少なくともセットトップ・ボックスとゲートウエイ機器の2つを出展する予定である。米Cisco Systems社はこれらの試作機を使って、IPTVサービスの家庭内ビデオ・ネットワークのデモを披露するという。
Cisco社は、複数の投資会社とともに、Celeno Communications社に出資している。Celeno Communications社は2005年に設立された新興企業で、これまでに3000万米ドルを調達している。CL1300の量産は2009年10月に開始する予定である。
(Rick Merritt:EE Times、翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan)