Pumaに衣替えした10万円を切る激安タブレットPC「HP Pavilion Notebook PC tx2505/CT」の実力は!?
低価格なタブレットPCとして人気が高い「HP Pavilion Notebook PC tx2000」シリーズ。最新モデルでは内部を一新しながら10万円以下の価格を実現。その実力に迫る。
AMDのPumaプラットフォームを採用
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0808/26/news040.html
Pumaプラットフォームを採用した「HP Pavilion Notebook PC tx2505/CT」 「HP Pavilion Notebook PC tx2505/CT」の大きな特徴は、AMDの新しいモバイルプラットフォーム(開発コード名:Puma)を採用していることだ。この「Pumaプラットフォーム」は、CPUのTurion X2 Ultra、AMD M780Gチップセット、およびGPUのATI Mobility Radeon HD 3800シリーズなどで構成されるノートPC向けのプラットフォームのことを指す。ただ、インテルのCentrinoシリーズのようなプラットフォーム単位でのブランド名は与えられておらず、満たすべき要件が定められているわけでもない。AMDの公式情報でも「次世代AMDノートブックPCプラットフォーム」とされているだけなので、開発コードネームの「Puma」の名のまま呼ばれている。少々わかりにくいが、要するに、CPUとチップセット、グラフィックスといった主要部分がまとめて新しい世代にリニューアルされたというわけだ。
CPUとグラフィックス機能がパワーアップ
Vistaロゴやペナブルのロゴとともに、Pumaプラットフォームを構成するシールが本体にはられている さて、本機のスペックはというと、同社おなじみのBTOに対応しており、CPUは、Turion X2 Ultra ZM-80(2.1GHz/2次キャッシュ2Mバイト)と、Athlon X2 QL-60(1.9GHz/2次キャッシュ1Mバイト)の2種類が選べる。
Turion X2 Ultraは、開発コード名「Griffin」の名で呼ばれていたモバイルPC向けの新ブランドで、先代機「tx2105」が採用していたTurion X2 TLシリーズと比べると、2次キャッシュが2倍の2Mバイト(1Mバイト×2)に増えたほか、システムバスと省電力関連の機能が強化されている。内蔵する2つのコアとメモリコントローラ部分は独立して電力制御できるようになり、2つのCPUコアは、コア単位で負荷に応じて動作クロック(9段階)とコア電圧(5段階)を細かく変化させることで無駄な電力消費を省く。また、システムバスはHyperTransport 3.0に対応し、データ転送速度が最大14.4Gバイト/秒(3.6GHz)に高速化されたほか、転送量によってバス幅を5段階に可変させることで消費電力を節約する機能も加わっている。
なお、Athlon X2 QL-60は、Turion X2 Ultraの廉価版として用意されているCPUだ。HyperTransport 3.0には対応しているが、省電力関連の機能は簡略化されており、2次キャッシュの容量も半分に減っている。
CPU-Z 1.46(写真=左)とGPU-Z 0.2.6(写真=中央)の画面。GPUはコアクロック500MHz、メモリクロック400MHzで動作しているのが分かる(写真=右)
一方、チップセットのAMD M780Gが内蔵する「Mobility Radeon HD 3200」グラフィックスコアはDirectX 10に対応しており、内蔵グラフィックスとしては高いレベルの3D描画性能を持つほか、H.264/MPEG-2/VC-1のハードウェアデコード機能を備えるUVD(Unified Video Decoder)を内蔵しており、Blu-ray DiscなどのHDコンテンツも少ないCPU負荷で再生できる。ただ、本機が内蔵する光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブであり、BTOでもBlu-ray Discドライブが選べないのは少々残念だ。HD動画の外部出力に必要な著作権保護技術「HDCP」にも対応し、Display Port出力やHDMI出力もチップセットレベルではサポートしているが、本機ではこれらのデジタル出力は使えない。
統合型チップセット内蔵のグラフィックスコアは、メインメモリをビデオメモリとして利用することが一般的だが、Radeon HD3200では専用のLFB(ローカルフレームバッファ)をサポートしており、本機でも64MバイトのDDR2 SDRAMを装備している。画面のリフレッシュなどをメインメモリにアクセスせずに行えるため、HyperTransportやCPU内蔵メモリコントローラの負担が減って省電力になる効果がある。
そのほか、メモリやHDDの仕様は従来機と同様だ。メモリはDDR2 SDRAMに対応し、底面カバーから2基のSO-DIMMスロットにアクセスできる。BTOでは1Gバイト(1Gバイト×1)/2Gバイト(1Gバイト×2)/4Gバイト(2Gバイト×2)の構成が選択可能だ。HDDはSerial ATAインタフェースの5400rpmモデルを採用しており、容量は120Gバイトと250Gバイトが選べる。
DVD+R DLに対応したDVDスーパーマルチドライブは着脱式だ(写真=左)。重量を軽減するウエイトセーバーも付属している。4セルバッテリー(リチウムイオン)の容量は7.2ボルト 37ワットアワーで、6セルバッテリー装着時は背面に21ミリほど出っ張りが生じる(写真=中央)。ACアダプタのサイズは45(幅)×110(奥行き)×29(高さ)ミリ、重量は約400グラムだ。3ピンタイプの電源ケーブルを採用する。2基のメモリスロットやHDDベイには底面からアクセス可能だ(写真=右)
「ZEN design」による美しいボディは健在
1280×800ドット表示の12.1型ワイド光沢液晶ディスプレイを搭載したボディのサイズは、308(幅)×224(奥行き)×37.5~41(厚さ)ミリと、従来のtx2105と共通だ。しかし、重量は100グラムほど増しており、着脱式のDVDスーパーマルチドライブを取り外してウエイトセーバーを装着した最軽量時で約2.05キロ、6セルバッテリー装着時は2.16キロとなっている。公称のバッテリー駆動時間は従来機とほとんど変わっておらず、4セルバッテリーで約2時間12分、6セルバッテリーで3時間14分となっている。
ボディのデザインもそのまま引き継いでいる。光沢感のある明るいシルバーとブラックのツートーンで仕上げられ、天面とパームレストには、「音や影響などが放射線状に広がっていく様」をモチーフにしたという「ZEN design hibiki(響き)」と呼ばれる独特のグラフィックパターンがプリントされている。これは成型過程でグラフィックをボディ素材の内部に転写する「HP Imprint」を利用したもので、このような繊細なパターンでも消えにくく、長期間保てるのがウリである。
12.1型ワイド光沢液晶ディスプレイは、やや映り込み激しく、タッチパネルゆえ視野角もあまり広くない(写真=左)。液晶ディスプレイ天面部分とタッチパッド面に「ZEN design hibiki(響き)」のデザインパターンが採用されている(写真=中央と右)
端子類の構成、種類も変わりがなく、3基のUSB 2.0ポート、ExpressCard/34スロット、SDメモリーカード/メモリースティックPROなどが使える5in1メモリカードスロットを装備している。さらにアナログRGB出力、S-Video出力、拡張ポートコネクタ(拡張ポート用オプションは国内未販売)などを用意する。通信機能も充実しており、1000BASE-T対応の有線LAN、無線LAN(IEEE802.11a/b/g/nドラフト準拠)、Bluetooth 2.0、56kbpsのFAXモデムを備える。
前面には電源スイッチや赤外線リモコンの受光部、2基のヘッドフォン(うち1基は光デジタル音声出力対応)、マイク、無線LANの電源スイッチが並ぶ(写真=左)。背面は排気口とバッテリー、FAXモデム、2基のUSB 2.0端子がある(写真=右)
左側面にはメモリカードスロットやExpressCardスロット、DVDスーパーマルチドライブが配置される(写真=左)。右側面にはUSB 2.0、ギガビット対応の有線LAN、独自規格のExpansion Port 3(日本では対応機器が未発売)、アナログRGB出力、S-Video出力端子がある(写真=右)
指でも専用ペンでも操作できるタブレット機能
入力環境、タブレット関連の機能に関しても前モデルを継承している。液晶ディスプレイの解像度は1280×800ドットで、中央の2軸ヒンジで180度反転させることができ、ピュアタブレットスタイルでも使うことが可能だ。
タブレット機能は、ワコムの「ペナブル・デュアルタッチ」技術を採用しており、指などで気軽に操作できるタッチスクリーン(抵抗膜方式)と専用ペンを利用する電磁誘導式の両方に対応する。専用ペンを近づけるとタッチスクリーン機能が自動的にオフになる仕組みで、ちょっとした操作をするだけの場合にわざわざペンを取り出す必要がない一方で、ペン操作時は手のひらを画面に乗せてじっくり描画できる点がメリットだ。ただ、現状ではこのような機能を備える液晶の宿命でもあるが、一般的なノートPCに比べると視野角が上下/左右方向とも狭いのが気になった。また、40ミリ前後の厚みがあって約2キロというボディは持ちやすいとはいえず、片手で持って長い時間使うのはつらい。
キーボードは、最上段にあるファンクションキーや半角/全角キー、カーソルキーなどはかなり小さいが、主要キーは縦/横ともに19ミリの正方ピッチを確保し、レイアウトにも変なクセは見られない。ポインティングデバイスは、パームレストと一体化しつつ、表面にディンプル加工を施したデザインのタッチパッドを装備する。シナプティクスの多機能ドライバが導入済みで、縦スクロール用の領域も物理的に区別されており、なかなか使いやすい。タッチパッド奥にはタッチパッド機能のオン/オフを切り替えるボタンも用意される。
2.5ミリのストロークを確保したキーボードは、主要キーこそ19ミリの正方ピッチを備えるが、上段のファンクションキーや最下段にあるファンクションキーなどで詰め込みが見られる(写真=左)。また、タッチパッドもホームポジション直下ではなく左右中央部分にあるため、慣れるまで違和感を覚えるだろう。ディンプル加工が施されたタッチパッドには、ワンタッチで機能のオン/オフが行えるボタンが用意される(写真=中央)。液晶部分を180度回転して折りたためば、ピュアタブレットとして利用できる(写真=右)
液晶ディスプレイのフレーム右側には、映像や音楽を再生できる「QuickPlay」の起動やDVD-Video/音楽CDといったマルチメディアコンテンツの再生操作に対応したボタンを装備する。下部右側部分には押すたびに画面表示を90度切り替えるボタンも用意され、タブレットスタイルで使う時に便利だ。また、電源オン/オフやカーソルキー、DVD/CD再生の操作が可能な赤外線リモコン(ExpressCardスロットに収納可)も付属する。また、画面上部にはWebカメラを標準で装備し、BTOで指紋認証ユニットも追加できるなど、低価格モデルながら、このあたりの操作性/機能は非常に充実している。
Windows Vistaには「Windows Journal」(写真=左)や「Snipping Tool」(写真=中央)など、タブレットPC向けの便利なツールが標準で付属している。手書きの文字や図をそのまま保存でき、汎用の画像フォーマットに出力も可能だ。また、ペンを高速に移動させることでブラウザの「戻る」「進む」などの操作を行う「ペンフリック」機能も利用できる(写真=右)
タッチパッドにはシナプティクス製の多機能ドライバが導入されている。コーナータップにさまざまな動作を割り当てたり、細かい設定が可能だ。パッドの端に指が届いた後もスクロールを続けるエッジモーション機能もサポートする。
新プラットフォームの採用で3Dの描画性能は大幅にアップ
評価機のWindowsエクスペリエンスインデックス画面 Pumaプラットフォームの実力はどの程度のものか、ベンチマークテストを実施してみた。評価機の構成は、CPUがTurion X2 ZM-80(2.1GHz)、メモリが4Gバイト(PC2-6400対応)、HDDが容量250Gバイト(5400rpm)、OSはWindows Vista Home Premium(SP1)である。PC USERでは2世代前のtx2005(NVIDIA C51Mチップセット搭載)をレビューしているが、それとの比較が興味深いところだ。
まずWindowsエクスペリエンスインデックスのスコアだが、グラフィックスで4.3(tx2005は3.4)、ゲーム用グラフィックスで4.0(tx2005は3.0)と、グラフィックス関連のスコアがかなりアップしているのが分かる。
PCMark05 1.2.0のスコアでも、Graphicsで2208と、チップセット内蔵型としてはかなり高いスコアをマークしている。CPUも若干ではあるがスコアがアップしており、トータルスコアも3722と12型クラスのノートPCとしてはかなりよいスコアだ。グラフィックス機能の強化は、3DMark06 1.1.0やFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3でもはっきり見られ、特にDirectX 8.1世代のゲームをベースにしているFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3ではHIGH(高解像度)で「3487」と公式サイトのガイドラインでは「とてつよPC」と表現されるスコアをマークした。このレベルのゲームなら十分快適にプレイできることが分かる。
CPUやチップセットの省電力機能が強化されたことで、騒音や発熱が低減されることも期待されたが、季節のせいもあって全体的にホットでノイジーな印象はあまり変わっていない。ベンチマークテスト実施中はかなり大きな騒音(冷却ファンの風切り音)があり、ボディ全体にかなりの熱を帯びていた。具体的には、室温28度の環境で、もっとも熱い右側面の排気口付近が60度前後、左側面が50度前後、手が触れる面では右パームレストがもっとも熱く45度前後、そのほかの部分も40度以上だった。
左からPCMark05、3DMark06(1280×800ドット)、FFベンチのスコア
より多くのユーザーにアピールできる製品に進化
本機は、従来機の設計を流用しつつ内部をPumaプラットフォームにリニューアルしたものなので、Pumaプラットフォームの機能をフルに生かしているとは言い難い。例えば、優れたHD動画再生機能があるのにBlu-ray Discドライブが選べないし、チップセットレベルでは対応しているHDMIやDisplayPort出力も用意されていない。その点は不満といえば不満だ。
しかし、性能面、特に3D描画性能は大幅にアップしているし、HD動画もBlu-ray Discだけではない。ハイビジョンビデオカメラの標準フォーマットであるAVCHDのムービーをストレスなく再生できる(UVD対応ソフトウェアを利用した場合)ことに大きな魅力を感じるユーザーも少なくないだろう。「Pumaプラットフォーム」ということを抜きにした一般的なマイナーチェンジモデルとして考えれば、十分すぎるほど進化しているといえる。コストパフォーマンスも相変わらず高く、同社の直販チャンネル「HP Directplus」での最小構成は9万9750円と10万を切る価格から用意されている。もともと低価格で買えるタブレット/ノートPCというだけでも大きな魅力があった製品だが、今回のバージョンアップでは、より多くの人にアピールできる存在になったといえるだろう。