「LOOX R」のSSD+WWANモデルで近未来を先取りしてみた
富士通の直販サイトで購入できる「FMV-BIBLO LOOX R/A70N」(HIGH-SPEED対応モデル)は、先進的な仕様が魅力のモバイルノートPC。その実力やいかに!?
SFFパッケージのCPUを採用したバランスのよいモバイルPC
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0808/18/news068.html
「FMV-BIBLO LOOX R/A70N」(HIGH-SPEED対応モデル) 2008年春モデルから富士通のノートPCラインアップに加わった「FMV-BIBLO LOOX R」は、12.1型ワイド液晶ディスプレイを搭載しつつ、1.2キロ前後の軽量と長時間バッテリー駆動を実現した魅力的なモバイルノートPCだ。
今回は2008年夏モデルの中から、同社の直販サイト「WEB MART」でオーダーできるカスタムメイドモデル「FMV-BIBLO LOOX R/A70N」(HIGH-SPEED対応モデル)に64GバイトのSSDを搭載した、ハイスペックな評価機を試用してみた。
LOOX Rの基本的な構造やスペックは、初代機からまったくといっていいほど変わっていない。初代機については、すでにフォトレビューや詳細なレビューを掲載しているので、ここでは基本的な部分は簡単に触れるにとどめ、無線WAN対応、SSD搭載というカスタムメイドモデルならではの特徴にフォーカスして見ていくことにする。
CPU-Zで見たLOOX RのCPU。Core 2 Duo SL7100(1.2GHz)は、最新のPenrynコアの一世代前となるMeromコアだが、2次キャッシュは4Mバイトを内蔵する LOOX Rの大きな特徴として見逃せないのが、CPUに現時点では限定されたメーカーのみに提供されている低電圧版Core 2 Duo SL7100(1.2GHz)を採用していることだ。これは「MacBook Air」や「ThinkPad X300」に採用されているものと同じで、通常のCore 2 Duoよりサイズの小さいSFFパッケージ(22×22ミリ)で提供されている。
チップセットのIntel GS965 Express/ICH9MもCPUと同様にSFFパッケージを採用しているため、マザーボードのサイズを大幅に小型化することができている。CPUやチップセット、マザーボードの写真はこちらの記事を参照してほしい。
MacBook AirやThinkPad X300は、このSFFパッケージのメリット生かしてインパクトのある薄型ボディを実現したが、LOOX Rは極端な薄型化や小型化にはこだわらず、機能の割り切りを極力避け、バッテリー駆動時間や価格も含めたトータルバランスに優れたモバイルノートPCに仕上げている。薄型化にこだわっていないぶん、熱設計に余裕があり、負荷時の発熱の低さ、静音性への評価が高いのも特徴だ。
液晶ディスプレイはLEDバックライトを採用(写真=左)。サイズは12.1型ワイドで、解像度は1280×800ドット。表面に光沢処理がなされたスーパーファイン液晶が標準だが、光沢処理をしていないノングレア液晶も選択可能だ。無線WANモデルは、ノーマルモデルに比べて液晶フレーム上部が太くなっている。キーボードはクセのないレイアウトだ(写真=中央)。キーピッチは主要キーで横18ミリを確保するが、縦が16ミリと少し短いため、やや慣れが必要な印象。キーストロークは2ミリだが、クリック感はしっかりある。PC2-5300 DIMMに対応するSO-DIMMメモリスロットが本体底面に2つ用意されている(写真=右)。BTOでは2Gバイト(1Gバイト×2)、4Gバイト(2Gバイト×2)の構成が選べる
前面には、SDメモリーカードスロット(SDHC対応)とワイヤレス通信のスイッチが配置されている(写真=左)。背面には、リチウムイオンバッテリーと通風口がある(写真=右)。液晶ディスプレイのヒンジは光沢シルバーで塗装され、デザインのアクセントになっている
右側面には、9.5ミリ厚のDVD±R DL対応DVDスーパーマルチドライブ、PCカードスロットTypeII、USB 2.0ポート1基を用意(写真=左)。無線WAN選択時はFAXモデムが非搭載になる。左側面には、ACアダプタ用のDC入力、アナログRGB出力、1000BASE-Tの有線LAN、2基のUSB 2.0ポート、4ピンのIEEE1394、ヘッドフォン、マイクといった端子が並ぶ(写真=右)。左右に分けて搭載された3基のUSB 2.0をはじめ、端子類はひととおりの内容を備えている
どこでもインターネットに接続できる便利さがウリ
今回入手したカスタムメイドモデルは、1000BASE-Tの有線LAN、Bluetooth 2.1+EDR、IEEE802.11a/b/g/n(11nはドラフト2.0)の無線LANといった通信機能に加えて、無線WAN(WWAN:Wireless Wide Area Network)機能を備えているのが大きな特徴だ。
無線WANとは、携帯電話やPHSなどの無線通信機器を利用してインターネットにアクセスできる機能のことだ。屋外でインターネットアクセスをする手段としては公衆無線LANサービスなどがあるが、それと比べてはるかにカバーしているエリアが広く、ほとんど「どこでもつながる」安心感があるのが無線WANのメリットだ。
本機の場合はNTTドコモのFOMA通信(HIGH-SPEED 7.2Mbps)に対応した無線WANモジュールとアンテナを内蔵しており、別途携帯電話やデータ通信カードを接続することなく、スマートに無線WAN機能が利用できるようになっている。
FOMAの通話範囲内ならどこでもインターネットアクセスが可能で、さらにHIGH-SPEEDエリア(HSDPA対応エリア)内なら下り最大7.2Mbps(上りは常に384kbps)という高速での通信が可能だ。HIGH-SPEEDエリアもすでに全国人口カバー率が約90%にまで拡大しており、ほぼどこでも高速通信が利用できるのがうれしい。なお、7.2Mbpsというのは最大値なので、実際の速度は電波状況によって左右される。
無線WANでの通信を利用するためには、NTTドコモとのFOMA回線契約が必要だ。NTTドコモは「定額データプランHIGH-SPEED」という2段階定額サービスを用意しており、1カ月の利用パケットが50万パケット未満の場合は月額4200円、50万パケット以上100万パケット未満の場合は月額4200円+超過パケット料金、100万パケット以上は月額1万500円という料金体系となっている。この定額プランを使ってインターネットアクセスするには対応プロバイダ(mopera Uなど)と契約する必要があり、mopera Uなら月額840円がかかる。
底面のバッテリーを外すと、FOMAカード用のスロットが現れる さて、無線WAN対応モデルの本機は、アンテナ収納の関係でノーマルモデルより液晶フレーム上部のスペースが大きくとられ、天板のデザインもそれに合わせて一部変更されているが、ボディ全体のサイズは274~280(幅)×207(奥行き)×27.3~37.4(高さ)ミリと、ノーマルモデルと同じだ。
また、ボディ底面のバッテリーを外した部分に小さなスロットが用意されており、そこにFOMAカード(NTTドコモとFOMAの回線契約をすると送られてくる)を差し込んで利用するようになっている。
無線WANでの接続は、プリインストールされているユーティリティ「ドコモコネクションマネージャ(ドコモ定額データプラン接続ソフト)」から簡単に行える。通信パケット量、定額プランの課金段階なども表示されるので、課金を4200円以内(50万パケット以内)に抑えたいユーザーも状況をすぐに確認できて便利だ。ちなみに、東京都杉並区の自宅での通信速度は1.5~4Mbpsの間で変動していたが、画像の多いWebページでもストレスを感じることなく閲覧でき、YouTubeでの動画再生も特に問題なかった。
ただ、1つ注意したいのが、「定額データプランHIGH-SPEED」には通信内容の制限があることだ。通常のWebページの閲覧やメールの送受信、YouTubeなどのFLV動画の閲覧はできるが、P2Pでのファイル交換や一部ストリーミング動画の再生、Skype、メッセンジャー、オンラインゲームなどは規制されている。詳細はドコモのWebサイトで確認してもらいたいが、すべてのインターネットサービスを利用できるわけではないことに注意したい。
プリインストールされているユーティリティ「ドコモコネクションマネージャ(ドコモ定額データプラン接続ソフト)」を使えば、簡単に無線WANに接続できる(写真=左)。ダイヤルアップにかかる時間は数秒で、パケット量、定額プランの課金段階なども表示される(写真=左)。杉並区でいくつかのスピードテストを行ったところ、かなりバラつきがあったが、最低でも1.5Mbps以上での通信が可能だった。gooスピードテストでは4.22Mbpsをマークした(写真=右)
SSDのメリットとデメリットを改めて理解する
本機のもう1つのポイントが、SSDの搭載である。SSDとは「Solid State Drive」の略。直訳すれば可動部分がないドライブという意味で、広義ではUSBメモリなどもSSDに含めることができてしまうが、現在一般に「SSD」といえば、「HDD互換のインタフェースを持つ高速なフラッシュメモリドライブ」のことを示す。
SSDの最大のメリットは、ヘッドやモータなどの可動部品がないことだ。データの読み書きの際にHDDのようなヘッドシーク、回転待ちなどの動作が不要で、メモリセルにかける電圧を制御するだけで済むため、読み書きの速度、特にランダムアクセスを高速にしやすい。実際、高速な製品では、HDDの10倍前後のランダムアクセス性能を誇る。
ランダムアクセスの高速さは、OSの起動やスタンバイからの復帰、Webブラウズやアプリケーションの起動といった動作のレスポンスに大きく影響し、キビキビとした体感速度につながる。
また、構造上、小型化するほど速度面で不利になっていくHDDと違い、SSDの場合はサイズと速度に直接の関係がないのも特徴だ。1.8インチサイズでも2.5インチHDD以上の高性能が得られるというのは、小型軽量ノートPCの設計上において非常に大きい。
さらに、機械動作がないということは、動作音も実質的に無音であることを意味する。さらに電力消費が少なく、衝撃や振動に強いというメリットもあり、ノートPCにとっては理想のストレージといえるだろう。
一方で、SSDのデメリットとして指摘されるのは、HDDに比べて容量が少なく割高なこと。本機の場合もBTOメニューでSSDを選択すると、120GバイトHDDと比べて16万8000円も高くなる。また、フラッシュメモリの構造上、書き換え回数に上限があるということもよく知られている。
フラッシュメモリには、フラッシュ1セルに1ビットを記録するSLC(シングルレベルセル)と1セルに複数ビットを記録するMLC(マルチレベルセル)があり、書き込み回数の制限は、SLCで10万回前後、低コストで大容量化しやすいMLCでは1万回前後に減る。しかし、この書き換え回数の制限はあくまでも1セル(1ブロック)に対してであって、同一ブロックに偏って書き込まないようにすれば、寿命は延ばすことができる。そのような操作を「ウェアレベリング」という。
書き換え上限が1万回のフラッシュメモリを完璧に均等に利用できたとして、1日あたり50Gバイトの書き換えを行った場合、単純計算で64GバイトのSSDなら約35年、128GバイトのSSDなら約70年の耐久性があるということになる。
これはあくまでも理論値で、実際に完璧なウェアレベリングができるかどうかは難しいと思われるものの、逆に2~3年の使用で問題になることもまた考えにくい。まだPC用のストレージとしての実績が少ないだけに断言はできないものの、平均的な寿命はHDDよりむしろ長いのではないかと思われる。
また、速度については製品ごとのバラつきが大きいということも注意しておきたい。前述したように、単なるUSBメモリであっても「SSD」を名乗ることは可能であるし、速度も製品によってバラバラである。国内の大手メーカーのPCに採用されるSSDは高速なモデルがほとんどのため、「SSD=高速」というイメージが定着しているが、秋葉原で単体売りされているような製品は同じSSDでも性能はピンキリである。
SLCタイプのほうが書き込み性能が速いという傾向はあるが、「SLCタイプだから絶対速い」というわけでもない。コントローラチップの設計などの違いで性能は大きく変わり、製品ごとの差が大きいのだ。「SSD=高速」と決めつけてしまうのは危険で、それぞれのモデルごとに判断することが必要になる。
サムスンの高速SSDを搭載
デバイスマネージャではサムスンの「MCCOE64G8MPP-0VA」と確認できる。ThinkPad X300にも採用例がある高速SSDだ 前置きが長くなったが、本機はサムスンの「MCCOE64G8MPP-0VA」というSLCタイプのチップを採用したSSDを搭載していた。これはThinkPad X300にも搭載されているモデルで、公称のスペックは、シーケンシャルリードが100Mバイト/秒、シーケンシャルライトが80Mバイト/秒。実際の性能は後ほど詳しく見ていくが、SSDの中でも高速な部類に入る製品だ。製品版でこれとまったく同じドライブが搭載されることが保証されるわけではないが、本機の場合は「SSD=高速」というイメージで問題ないだろう。
SSDを搭載するにあたっての外見上の変化はまったくないが、カタログスペックを比較すると、重量はHDDモデルに比べて500グラムほど軽い約1.2キロになっている。そして、実際の操作感はまるで違う。起動、再起動、Webブラウズなど、何をやらせても実にキビキビしており、プリインストールのWindows Vista Business(SP1)でもストレスがない。CPUの動作クロックが1.2GHzであるということは、動画のエンコードでもしない限り意識することはないだろう。
ただ、気になったのがSSDの空き容量だ。本機の場合は、リカバリ用と思われる不可視領域が1Gバイト+10Gバイト確保され、ユーザーが利用できる容量は実質50Gバイト程度しかなかった。それを2つのパーティションに分けていたが、空き容量はほぼ初期状態でそれぞれ10.6Gバイトと18.2Gバイト、合計で28.8Gバイトとなっていた。それほど少ないというわけではないが、「64Gバイト」という感覚でいるとすぐになくなってしまう。付属ツールでリカバリ領域を削除してしまうのも1つの手だろう。
マイコンピュータで確認できるSSDの標準の空き容量は、10.6Gバイト+18.2Gバイト=28.8Gバイト(写真=左)。「ディスクの管理」で確認してみると、不可視領域が1Gバイト+10Gバイト確保されていた(写真=右)
ベンチマークテストでSSDの高性能を実証
Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア SSDを搭載した本機の実力はいかほどのものか、ベンチマークテストの結果を見てみよう。評価機の構成は、CPUがCore 2 Duo SL7100(1.2GHz)、メインメモリが4Gバイト、64GバイトSSDである。電源プランの設定は「バランス」だ。
Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアは、Intel GS965 Expressチップセットに統合されたグラフィックス機能が少し足を引っ張っているものの、SSDの採用によりプライマリハードディスクのサブスコアは最高点の5.9をマークした。
PCMark05でもHDDの項目だけが飛び抜けてよく、初代機のスコアと比べると4倍以上となっている。ほかのスコアは初代機とほとんど変わらないが、総合スコアはHDDの影響でよくなった。また、3DMark06、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3は初代機とほぼ同スコア。これらはストレージの影響がほとんどないテスト内容なので、当然の結果だろう。
左からPCMark05、3DMark06、FFベンチの結果
HDD関連のテストも実施してみた。ひよひよ氏作の「CrystalDiskMark 2.1.6」におけるシーケンシャルリードとランダムリード512Kバイトのスコアがほぼ同じというのは、いかにもSSDらしい。標準的な5400rpmの2.5インチHDDと比べると、ランダムリードに関しては、512Kバイトで約4倍、4Kバイトで約45倍という強烈なスコアだ。
PCMark05/HDD Test Suitesでもランダム性能が大きく反映される「XP Startup」「Application Loading」「General Usage」では、標準的な5400rpmの2.5インチHDDと比較して、すべて10倍前後というHDDの限界を超えた数値をマークしている。
左からCrystalDiskMark、PCMark05/HDD Test Suitesの結果
また、騒音、発熱の印象も相変わらず優秀だった。夏のこの時期(室温28度)だけに一連のテスト終了後にはキーボード左に若干生暖かい感じ(放射温度計で41.5度)はあったが、パームレスト部分は35度前後とクールさを保っていただけに、不快さはほとんどなかった。
バッテリーのテストは海人氏作の「Bbench 1.01」を利用して行ったが、「バランス」の電源設定(輝度40%)の状態で、10秒おきにキーボード押下、60秒ごとに無線WANによるインターネット巡回(10サイト)を行う設定で、駆動時間は219分だった。実際の利用シーンと比べて、かなりムダが多い設定でテストしたことを考えると、バッテリー駆動時間は優秀といえるだろう。
標準で7.2ボルト5800mAhのリチウムイオンバッテリーを備えており、7.2ボルト8700mAhの大容量バッテリーも用意されている(写真=左)。公称の駆動時間は、標準バッテリー使用時で約7.4時間、大容量バッテリー使用時で約11.5時間だ。ACアダプタはスティック型で、持ち運びがしやすい(写真=右)。サイズは30(幅)×132(奥行き)×29(高さ)ミリ、重量が約248グラム
未来のエクスペリエンスを少しだけ先取りできる1台
以上のように、ベンチマークテストのスコアは極めて優秀。温度、騒音も文句はない。実際の使用感も前述したように快適そのものだ。SSDのメリットに加えて、無線WANによりいつでもどこでもインターネット接続できる安心感もあり、モバイルノートPCの1つの理想型ともいえる。
しかし、ネックとなるのは価格だ。WEB MARTで本機の無線WAN、SSD、メモリ4Gバイトという構成を選ぶと45万5800円だった。コストパフォーマンスはどうかと問われれば、言葉に詰まってしまう。PCという製品の性質上、時間とともに性能や機能が急速に陳腐化してしまうことは避けられないからだ。
特にSSDというデバイスはまだまだ成熟していないだけに、進化の余地が十分残されている。価格はここ半年ほどで大きく下がり、また時間がたてば、さらに下がることも明らかだ。また、軽量化、快適性に大きく貢献しているSFFパッケージのCPU/チップセットも、近いうちにPenrynコアにリニューアルして本格展開されることが分かっている。
もっとも、逆にいえば、45万円払うことで1年先に主力となっているような構成のモバイルノートPCを今すぐ手に入れられると考えることもできる。未来のエクスペリエンスを先取りできるプロトタイプ的な存在としてとらえるべきであり、高額であっても、そのメリットをいち早く享受したいといったユーザーにとっては見逃せない存在だろう。
これまでの製品リリースのペースから考えて、秋冬モデルの登場は近いと予想されるが、LOOX Rがどのような進化を遂げるのか楽しみだ。