無線LAN対応のデータ集録装置,日本NIが無線センサ計測用途向けに発売
日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)は,IEEE802.11b/g準拠の無線LAN機能を搭載したデータ集録(DAQ:data acquisition)装置「Wi-Fi DAQ」を発売した。センサを使ったリモート(遠隔)監視用途に向ける。具体的には,ビル全体の環境(温度や湿度など)監視や,生産ラインにおける製造装置の状態監視,橋梁の振動観測などの用途である。「これらの用途は,いずれも広い範囲のさまざまな地点を監視/観測する必要がある。このため,イーサネットやUSBなどの有線伝送方式では,ケーブル自体のコストが高くなる上に,ケーブルの敷設に手間が掛かるという問題があった。無線伝送方式を使えば,こうした問題を解決できる。さらに,移動体や回転体へのデータ集録装置の取り付けが可能になったり,生産ラインのレイアウト変更に柔軟に対応できるようになるといったメリットも得られる」(同社 プロダクト事業部 テクニカルマーケティング マーケティングエンジニアの岡田一成氏)。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080819/156507/?ST=measurement
発売したデータ集録装置は,二つの要素から成る。一つは,無線LANの通信機能を内蔵した「キャリア」。もう一つは,キャリアに挿入するセンサ接続用モジュールである。外形寸法は,キャリアにモジュールを挿入した状態で約207mm×約95mm×約37.24mmと小さい(「WLS-9234」の場合,BNCコネクタは含むがアンテナは除く)。
モジュールは,信号調節回路とA-D変換器から構成されており,接続するセンサ別に複数の品種を用意した。例えば,熱電対や加速度センサ,圧力センサ,歪みゲージ,電圧センサ,電流センサなどに向けたモジュールである。従って,キャリアに挿入するモジュールを変更すれば,さまざまな状態の監視/観測に対応できるわけだ。対応するモジュールは同社既存品の「C Series」である。このため,C Seriesのモジュールを既に所有しているユーザーは,キャリアを購入するだけで無線LANを使ったデータ伝送に対応できる。
無線LANとZigBeeはすみ分ける
日本NIの米国本社であるNational Instruments社が,無線伝送機能を搭載したデータ集録装置を製品化したのは今回が初めてとなる。ただし競合他社は一足早く,同様の製品を市場投入している。具体的には,NI社と同様に無線LANを採用した品種や,各社独自の通信方式を採用した品種,IEEE802.15.4(ZigBee)を採用した品種などである。
NI社は,この市場では後発企業だ。しかしシェア獲得に自信を見せる。先行企業の製品は,いずれも一長一短があるからだ。「今回発売した製品は,既存品が抱えている問題点をすべて解決できる」(岡田氏)と主張する。
例えば,競合他社の無線LAN採用品や独自方式採用品は,接続できるセンサの種類が限定されるという問題があった。従って,複数のセンサーを使うリモート監視システムを構築する場合は,異なるベンダーの製品を組み合わせなければならない。ところが監視用ソフトウエアの開発プラットフォームはベンダーごとで違うため,リモート監視システム全体を制御するソフトウエアの開発が非常に困難だった。
今回,NI社が発売した製品は,さまざまなセンサに対応すべく,複数のモジュールを用意した。同社の製品だけで,複数のセンサを使うリモート監視システムを構築できる。「しかも,ソフトウエアの開発プラットフォームには,計測/制御業界で広く普及している『LabVIEW』が使える。従って,ソフトウエア開発が比較的簡単になる」(同氏)。
一方,ZigBee対応品は,データ伝送速度が低いという問題を抱えている。データ伝送速度は最大で250kビット/秒しかない。このため,橋梁の振動などをリアルタイムで計測し,異常の有無を監視する用途には使えない。今回の無線LAN対応品であれば,データ伝送速度が最大54Mビット.秒と高いため,十分に対応可能だ。
ただし,ZigBee対応品には1000日を超える電池駆動時間を実現できるというメリットがある。今回の製品も電池駆動が可能だが,その駆動時間は最長で5日程度に過ぎない。このため,「無線LAN対応品とZigBee対応品は市場ですみ分けるのではないか」(同氏)とみているが,同社はZigBee対応品の市場規模は比較的小さいと判断しており,現時点では製品を投入する予定はない。
キャリアの製品型番は「WLS-9163」で,無線LAN機能のほかにEthernet端子も備えている。このほか,Ethernet端子だけを備えるキャリア「ENET-9163」も用意した。価格は,WLS-9163が5万2000円,ENET-9163が4万1000円である。
センサ用モジュールとのセット品もある。例えば,熱電対の接続に向けたモジュールとWLS-9163を組み合わせたセット「WLS-9211」の価格は8万1000円,IEPE(integrated electronics piezoelectric)タイプの加速度センサや計測用マイクロホンの接続に向けたモジュールとWLS-9163を組み合わせたセット「WLS-9234」の価格は28万4000円である。
山下 勝己=日経エレクトロニクス