ソニー入魂の最高峰モバイルノート「VAIO type Z」に迫る(前編)
見た目からして、羊ならぬオオカミ、そして中身はモンスター級。ソニーの小型化技術を結集した「VAIO type Z」を隅々までチェックする。
VAIOの威信をかけた最上級モバイルノートが登場
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0807/22/news071.html
「VAIO type Z」 “一切の妥協をしないモバイル”をコンセプトに開発されたソニーの「VAIO type Z」は、パフォーマンス、携帯性、デザインの3点を高いレベルでまとめあげた13.1型ワイド液晶搭載のモバイルノートPCだ。2008年7月に国内販売11周年を迎え、20周年に向けてさらなる飛躍を目指すVAIOブランドの新しいフラッグシップモデルとなる。
これまでVAIOのモバイルノートPCは、12.1型スクエア液晶搭載のビジネス向けモデル「VAIO type G」、バイオノート505の流れをくむ11.1型ワイド液晶の10周年記念モデル「VAIO type T」、13.3型ワイド液晶の性能優先モデル「VAIO type S」、4.5型ワイド液晶の携帯性優先モデル「VAIO type U」の4タイプがラインアップされていた。
7月16日に発表されたtype Zは、type Sの直販専用ハイグレード機「VAIO type S<プレミアムバージョン>」の進化型で、高級志向をさらに強めている。通常電圧版のデュアルコアCPUを採用し、外付けGPU/内蔵グラフィックスの切り替え機能を持った高性能なモバイルノートPCというコンセプトを継承しつつ、最軽量の構成で約1.35キロという軽さと大幅なスペックアップを実現しているのが持ち味だ。type Zの追加によって、type Sはエントリークラス寄りのモバイルノートに変更された。
今回は8月9日の発売に先駆け、ハイスペックな構成の直販モデル「VGN-Z90US」と店頭販売モデル「VGN-Z70B」の試作機を入手したので、2台の比較も交えながらtype Zの実体に迫っていきたい。
新型Core 2 Duo、SSD RAID 0など最新スペックづくし
まずは、軽量モバイルノートPCとしては出色の基本スペックから見ていこう。CPUは45ナノプロセスルールのCore 2 Duo(開発コード名:Penryn)で、FSBは1066MHzに対応する。直販モデルで搭載できるCPUは、TDPが25ワットのCore 2 Duo P9500(2.53GHz)/P8600(2.4GHz)/P8400(2.26GHz)、もしくはTDPが35ワットのCore 2 Duo T9600(2.8GHz)だ。2次キャッシュは9000番台が6Mバイト、8000番台が3Mバイトなので、購入時には9000番台を狙いたい。
メインメモリも1066MHz動作のDDR3 SDRAM(PC3-8500)をいち早く採用しており、type S<プレミアムバージョン>が装備していたFSB 800MHzの65ナノ世代Core 2 Duoと667MHz動作のDDR2 SDRAM(PC2-5300)メモリの組み合わせから進化した。メモリ容量は4Gバイトの拡張までサポートしており、プリインストールの32ビット版Windowsが使用可能な領域は最大約3Gバイトになる。
グラフィックス機能については、外付けGPUがNVIDIA GeForce 9300M GS(グラフィックスメモリ128Mバイト)、内蔵グラフィックスがIntel GM45 Expressチップセットに内蔵されたIntel GMA X4500HDだ。こちらもNVIDIA GeForce 8400M GS(64Mバイト)とIntel GMA X3100(Intel GM965 Expressチップセット内蔵)の組み合わせだったtype S<プレミアムバージョン>から順当に世代交代した。
CPUは通常電圧版のCore 2 Duoを採用する(写真=左)。チップセットはグラフィックスコアのIntel GMA X4500HDを統合したIntel GM45 Expressだ(写真=中央)。外付けGPUのNVIDIA GeForce 9300M GSも搭載している(写真=右)
液晶ディスプレイは、従来のtype Sがアスペクト比16:10の13.3型ワイド(1280×800ドット)だったのに対し、type ZではHD映像コンテンツとの親和性が高いアスペクト比16:9の13.1型ワイド(1366×768ドットもしくは1600×900ドット)としている。直販モデルで1600×900ドット表示の液晶を選ぶと、グラフィックスメモリは256Mバイトに倍増する仕様だ。画面をわずかに小さくすることで本体の小型化と軽量化を助けつつ、解像度を高めることで操作性は向上した。表示品質も向上しているが、こちらは後述する。
type Zのハイエンド仕様を象徴するのがデータストレージの構成だ。320Gバイト(5400rpm)/250Gバイト(5400rpm)/200Gバイト(7200rpm)/200Gバイト(5400rpm)の2.5インチHDDに加えて、64GバイトSSDの1基構成と、64GバイトSSDを2基搭載してのRAID 0構成(ストライピングで合計128Gバイト)が選択できる。
省電力で軽くて衝撃にも強いSSDは、モバイルノートPCでの採用例が増えつつあるが、どうしても割高になる。type Zでは非常に高額になってしまうことを承知のうえ、パフォーマンスで差異化できるSSDのRAID構成を投入した。こうした構成が可能なモバイルノートPCは他に類を見ない。
光学ドライブはDVD±R DL対応DVDスーパーマルチか、1層BD-R/REに2倍速、2層BD-R/REに1倍速で書き込めるBlu-ray Discを内蔵可能だ。モバイルノートPCながらBlu-ray Discドライブを載せられるのはフラッグシップモデルならではといえる。
ただし、Blu-ray DiscドライブはDVD±R DLへの書き込みができない点、SSDを搭載する場合はBlu-ray Discドライブを選択できない点に注意したい。SSDと同時に選べない理由は、SSDは容量が小さいため、最大50GバイトあるBD-R/REメディアにデータを書き込む際の一時領域が確保できなくなってしまうからだという。
モバイルノートPCでBD-R/RE書き込み機能が必要というケースは少ないだろうが、type Zは1080pの映像出力が可能なHDMI端子も備えているため、どうせならBD-ROM対応のDVDスーパーマルチドライブも選択肢に加えてほしかったと思う。
アスペクト比16:9の13.1型ワイド液晶ディスプレイは、1366×768ドットもしくは1600×900ドットの解像度に対応する(写真=左)。本体の左パームレスト直下には、2.5インチHDDを格納できるスペースがあり、直販モデルで2基のSSDを選択すると2枚重ねて搭載される(写真=中央、右)
もちろん、性能と軽さにこだわったからといって拡張性は妥協していない。ネットワーク機能は、1000BASE-Tの有線LAN、IEEE802.11a/b/g/nの無線LAN(11nはドラフト準拠)、Bluetooth 2.0+EDR、FAXモデムを標準で備え、直販モデルではFOMA HIGH-SPEED対応通信モジュールによるワイヤレスWAN機能も内蔵可能だ。
ちなみに、無線LANモジュールはIntel WiFi Link 5100シリーズ(1×2 MIMOで最大データ転送量は約300Mbps)で、ハーフサイズのPCI Express Miniカード(512AN_HMW)を採用。45ナノ世代の新型Core 2 Duo、Intel GM45 Expressチップセットとともに、インテルのモバイルプラットフォーム「Centrino 2」に対応している。
本体の左側面にはExpress Card/34スロット、有線LAN、USB 2.0、4ピンのIEEE1394、ヘッドフォン、マイクの各端子、右側面には光学ドライブ、アナログRGB出力、HDMI出力、USB 2.0、そして前面にはメモリースティックPROスロットとSDメモリーカード(SDHC対応)スロット、無線LAN/Bluetooth用スイッチが並ぶ。また、指紋センサとTPMセキュリティチップ、FeliCaポート、有効31万画素Webカメラ(MOTION EYE)も装備する。
USBポートはもう1基あってもよかったが、左右に1基ずつ振り分けられているので使い勝手はよい。type S<プレミアムバージョン>と比べて、PCカードスロットを省きつつ、HDMI出力を追加しており、全体的なインタフェースの構成は充実している。
前面には、メモリースティックPROスロットとSDメモリーカード(SDHC対応)スロット、無線LAN/Bluetooth用スイッチを用意(写真=左)。液晶ディスプレイはラッチレス構造だ。背面はバッテリーで占有されている(写真=右)
左側面にはプラスチックのキャップで覆われた有線LANとFAXモデムのポート、シャッター式のExpress Card/34スロット、USB 2.0、4ピンのIEEE1394、ヘッドフォン、マイク、ACアダプタ接続端子、通風口が並ぶ(写真=左)。右側面には光学ドライブ、アナログRGB出力、HDMI出力、USB 2.0が配置されている(写真=右)。光学ドライブのトレイをわざわざ削ってHDMI出力端子を押し込んでいるところに、VAIOらしい機能の凝縮ぶりを感じる
直販モデルのパフォーマンスは天井知らず!?
店頭向けモデルのVGN-Z70Bは、CPUがCore 2 Duo P9500(2.53GHz)、メインメモリが2Gバイト、データストレージが200GバイトHDD(5400rpm)、光学ドライブがDVDスーパーマルチ、液晶が1366×768ドット表示、OSがWindows Vista Home Premium(SP1)といったスペックだ。HDDの回転数が7200rpmでないのは少し気になるが、実売価格は26万円前後と無難なところにおさまる。
店頭向けモデルVGN-Z70Bのデバイスマネージャ画面
一方、今回入手した直販モデルのVGN-Z90USは、CPUがCore 2 Duo T9600(2.8GHz)、メインメモリが4Gバイト(2Gバイト×2)、データストレージがSSD RAID 0(合計128Gバイト)、光学ドライブがDVDスーパーマルチ、液晶が1600×900ドット表示、OSがWindows Vista Ultimate(SP1)というハイエンドな仕様だった。これに、指紋センサとTPMセキュリティチップ、FeliCaポート、有効31万画素Webカメラを追加した構成で、直販価格は45万4800円と非常に高い。さすがはソニーが“エグゼクティブビジネスパーソン”向けをうたうモバイルノートPCだ。
直販モデルVGN-Z90USのデバイスマネージャ画面
店頭モデルのスペックと比較した場合の差額は、Core 2 Duo T9600(2.8GHz)が1万6000円、64GバイトSSDを2基搭載してのRAID 0構成が16万4000円、1600×900ドット表示の液晶が1万円だ。そのほか、64GバイトSSDの1基構成は7万5000円、Blu-ray Discドライブは5万円、英字キーボードへの変更は5000円、FOMA HIGH-SPEED対応通信モジュール(受信最大7.2Mbps)の追加は2万円、3パターンのプレミアムデザインが5000円に設定されている(価格はすべて7月22日現在)。
VAIOオーナーメードモデルで選択できるプレミアムデザイン。左から、ゴシック・アラベスク、ボタニカル・ガーデン、ライン・フォーレストだ。どれもブラックを基調にしたデザインとなっており、カラー天板は用意されない
なお、直販モデルのOSはWindows Vista Ultimate/Business/Home Premium(いずれもSP1)から選択できるほか、法人向けカスタマイズモデルに限りWindows XP Professional(SP2)のダウングレード権を利用可能だ。購入時にプリインストールOSとしてWindows XP Professional(SP2)を選ぶこともできる。
今回入手した試作機の主な違い
製品名 VGN-Z90US(直販モデル) VGN-Z70B(店頭モデル)
OS Windows Vista Ultimate(SP1) Windows Vista Home Premium(SP1)
CPU Core 2 Duo T9600(2.8GHz) Core 2 Duo P9500(2.53GHz)
メインメモリ 2Gバイト×2(PC3-8500 DDR3 SDRAM) 2Gバイト×1(PC3-8500 DDR3 SDRAM)
チップセット Intel GM45 Express
外付けGPU NVIDIA GeForce 9300M GS
外付けGPU使用時グラフィックスメモリ 256Mバイト 128Mバイト
液晶ディスプレイ 13.1型ワイド(1600×900ドット) 13.1型ワイド(1366×768ドット)
データストレージ 64GバイトSSD×2(RAID 0) 200GバイトHDD(5400rpm)
光学ドライブ DVDスーパーマルチドライブ
本体サイズ 314(幅)×210(奥行き)×24.5~33(高さ)ミリ
実測での重量 1.393キロ 1.445キロ
価格 45万4800円(直販価格) 26万円前後(実売価格)
再起動せずにグラフィックス機能の切り替えが可能に
ヒンジ部にグラフィックス機能の切り替えスイッチがある 冒頭でも簡単に触れたが、type Zが持つ大きな特徴の1つは、パフォーマンスで有利な外付けGPUと消費電力が少なくて済むチップセット内蔵グラフィックスコアを、状況に応じてスイッチ1つで切り替えられる機能を備えていることだ。
これは従来のtype S譲りの機能だが、type Sではグラフィックス機能の切り替え後に再起動が必要だったため、外出先で積極的に利用するのをはばかられることもあった。しかし、type Zでは起動中でも瞬時に切り替え可能な「ダイナミック・ハイブリッドグラフィックス」機能に進化しており、使い勝手が大幅に向上している。
グラフィックス機能の切り替えは簡単だ。キーボード左上の液晶ヒンジ部に切り替え用のスライドスイッチがあるので、外付けGPUを使う場合は「SPEED」モードに、チップセット内蔵グラフィックスを使う場合は「STAMINA」モードにスイッチの位置を合わせればよい。
Windowsの起動中にスイッチを切り替えると、「以下のパフォーマンス設定に切り替えます」というダイアログが表示されるので、その内容に従って起動中のアプリケーションをすべて終了してから、「OK」ボタンを押す。すると、画面が一瞬ブラックアウトした後にグラフィックス機能が切り替わる仕組みだ。試作機における切り替えの所用時間は14秒程度と短く、いったんアプリケーションをすべて終了する必要はあるものの、操作に面倒はない(状況に応じて、切り替え時間は短くなったり、長くなる場合もある)。この仕様であれば、急いでいるときでも利用する気になる。
スイッチを切り替えると表示されるダイアログ(写真=左)。「SPEED」モードから「STAMINA」モードに切り替えると、デバイスマネージャのディスプレイアダプタの項目からもGeForce 9300M GSの表示が消える(写真=中央、右)
※記事初出時、グラフィックス切り替え機能の実測値の記載に誤りがありました。おわびして訂正させていただきます。
パフォーマンスを向上しつつ、小さく軽くなったボディ
type Zで本当に驚かされるのは、これほどハイスペックな構成でありながら、本体サイズを314(幅)×210(奥行き)×24.5~33(高さ)ミリ、重量は直販モデルの最軽量構成で約1.35キロ、店頭モデルで約1.45キロという小型軽量を実現していることだ。今回入手した試作機の本体を実測したところ、直販モデルのVGN-Z90USは1.393キロ、店頭モデルのVGN-Z70Bは1.445キロだった。
type S<プレミアムバージョン>は本体サイズが315(幅)×234.3(奥行き)×21.8~33(高さ)ミリ、重量は約1.75キロで、モバイルノートPCとしては少々大きく重いイメージがあった。しかし、type Zではフットプリントを約10%、重量を約20%削減することで、携帯性を飛躍的に向上させている。
約1.35キロという重量は、13.3型ワイド液晶ディスプレイを搭載したアップルの「MacBook Air」(約1.35キロ)や、レノボ・ジャパンの「ThinkPad X300」で光学ドライブを内蔵した場合(約1.42キロ)よりも軽い。特にMacBook Airを意識して、約1.35キロに重量を絞り込んできたのだろう。
これらと比較して、type Zは厚みがかなりあり、画面サイズが13.1型ワイドとわずかに小さいものの、スモールフォームファクタのCore 2 Duoではなく通常電圧版のCore 2 Duoを採用し、外付けGPUや1600×900ドット表示の液晶、SSD RAID 0、Blu-ray Discドライブといったハイスペックなパーツを搭載でき、インタフェースも充実している点で優位に立つ。
液晶ディスプレイ部は約5ミリと薄いが、たわみは少なくなっている 堅牢性については、動作時72センチ、非動作時90センチの落下試験をクリアしたほか、加圧振動、一点加圧、衝撃、温度特性、ディスプレイ開閉などの品質試験を行っている。満員電車の車内を想定した、天板からの加圧振動試験の結果は明らかにされていないが、開発時の試験では十分に高いレベルが得られたという。
実際に触ってみたところ、LEDバックライトを採用した液晶ディスプレイ部は約5ミリと薄いが、天板のカーボン素材を5層から6層構造に強化したこともあり、同じくディスプレイ部が薄いtype Gやtype Tよりも開閉時のたわみは少なかった。
ボディは右手で右側のパームレスト部分を持つと、光学ドライブを内蔵した底面がわずかにへこむ程度で、全体的にしっかりした作りだ。耐久テストの結果は保証対象に含まれるものではないが、小型化と軽量化に注力したからといって、ボディの頑丈さに手を抜いてないのは安心できる。
グラフィックス切り替え機能の搭載や、容量が大きめのリチウムイオンバッテリーを採用することで、長めのバッテリー駆動時間を確保しているのも見逃せない。直販モデルは標準の6セルバッテリー(10.8ボルト 5400mAh)で約7.5~約11時間、オプションの9セルバッテリー(8100mAh)で約12時間~約17時間、店頭モデルは標準の6セルバッテリーで約9時間、オプションの9セルバッテリーで約13.5時間の連続駆動をうたう。実際のバッテリー駆動時間については後編でテストする。
一方、ACアダプタは従来のtype Sと同じ19.5ボルト用の「VGP-AC19V25」を使う。かつてのVGP-AC19V10と比較して、容積を約30%ダウン、重量を約100グラム軽量化したACアダプタだが、突起部を含まないサイズは49.5(幅)×121.5(奥行き)×30.2(高さ)ミリ、重量は約320グラム(ケーブル込みの実測での重量は約359グラム)と、モバイルノートPC用にしては少し大きい。せっかく本体を小さく軽くまとめているので、今後はACアダプタももう少し持ち運びやすい形状にしてほしいところだ。
標準バッテリーの容量は10.8ボルト 5400mAhだ(写真=左)。ACアダプタはやや大ぶりになっている(写真=中央)。背面のネジを1本外してカバーを開くと、2基のメモリスロットにアクセスできる(写真=右)。HDDやSSDにアクセスするにはかなり分解が必要だ
13.1型ワイド液晶パネル搭載のボディで小型化と軽量化を追求
type Zの内部構造。PCI Express Miniカードスロットは2つあり、写真ではハーフサイズの無線LANカードとフルサイズのワイヤレスWANカードが装着されている(ワイヤレスWANはオプション) 軽量ボディに高い性能と拡張性を凝縮するため、各種パーツを徹底的に小さく軽く仕上げているのもtype Zを語るうえで欠かせない部分だ。マザーボードは12層構造の高密度基板を新開発し、type Sのマザーボードと比較して約40%も小型化した。
CADソフトの自動配線ではここまでの小型化はできないため、技術者が7500本におよぶ配線作業をミクロン単位で最適化したという。こうした基板を作れたのは、ソニーがこれまで積み上げてきたVAIOの小型化技術が土台としてあったからだ。
また、小型軽量ボディの背景には、TDP 25ワットの新型Core 2 Duo(P型番)の登場もある。P型番のCore 2 Duoは、TDPが通常のT型番より10ワット抑えられた「省電力版」として、インテルがCentrino 2の発表と同時に投入したものだ。通常電圧版のラインアップなので、既存の低電圧版Core 2 Duo(TDP 17ワット)と比べて消費電力や発熱面で不利になるが、それでもT型番よりは放熱機構に余裕を持たせやすくなる。
左がtype S、右がtype Zのマザーボード。新開発の12層基板によってtype Sから約40%小型化した。type Zのマザーボードは、いちばん長い部分の幅が156ミリ、高さが108ミリだ
type Zのマザーボードは底面側にCPU、チップセットのノースブリッジ、2基のメモリスロットを用意(写真=左)。CPUはモバイルノートPCで多いMicro-FCBGAパッケージによる接着ではなく、Micro-FCPGAパッケージをソケットに装着する仕様だ。キーボード側には、外付けGPUやサウスブリッジ、2基のPCI Express Miniカードスロットが配置されている(写真=右)
冷却機構については、type Sのクーリングシステムより約40グラム軽量化しながら、ブレード中央に仕切りを設けた新型の冷却ファンを採用することで、空気の流れがファン内で滞るのを防ぎ、不快な音質をカットしつつ、静音性と冷却効率をアップした。これにより、モバイルノートとしては発熱量の多いCPUや外付けGPUを効率的に冷却できるボディを実現している。
さらに直販モデルではTDP 35ワットのCore 2 Duo T9600(2.8GHz)まで搭載できるが、T9600を選択するとファンのブレードやヒートシンクが一部変更されるという。冷却機構をわざわざカスタマイズしてまでT型番のCore 2 Duoに対応する姿勢に開発陣の意地を感じる。
左がtype S、右がtype Zの冷却ファン。冷却性能を効率化しつつ容積も削減し、約40グラム軽量化した。TDP 35ワットのCore 2 Duo搭載時は冷却機構が大型化する
光学ドライブも可能な限り軽量化された。通常のドライブユニットからトップカバーを排除し、裏面には多数の穴を開けることで、type Sのものから約50グラム軽量化している。DVDスーパーマルチドライブの性能やBlu-ray Discドライブの搭載を視野に入れ、薄型軽量の7ミリ厚ドライブではなく、通常の9.5ミリ厚ドライブをベースに軽量化している点にも注目したい。
左がtype S、右がtype Zの光学ドライブ。トップカバーを排除して、裏面に多数の穴を開けることで約50グラム軽量化した
底面のCFRPカバーを2辺折りして耐久性をアップ ボディの素材は、天板と底面はソニーがマルチレイヤーカーボンと呼ぶCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)、液晶ディスプレイのフレーム部分がモールド、パームレストとキーボードパネルがアルミニウムの1枚板となっている。
type Zではボディを小型化したこともあり、type Sと比較してCFRPのハウジング部分だけで約25グラム軽量化したという。カーボン素材は軽くて耐久性が高い半面、折り曲げるのが難しい素材だが、加工技術の向上によって底面のCFRPカバーを2辺折りして強度を高めた。
アルミの1枚板で構成されたキーボードが美しいtype Zのデザイン
キーボードパネルはヘアライン加工のアルミが質感を高めている エグゼクティブなビジネスユーザーにも納得してもらえるようにコストをかけたというデザインにも注目したい。type Zは7月16日に発表されたVAIOノートの新モデルに共通するデザインとして、「シリンダーフォルム」と「アイソレーションキーボード」を採用している。これら2つはtype Tで好評を博したデザインで、これを“VAIOノート共通の顔”として広めていこうという狙いだ。
シリンダーフォルムとは、キーボードと液晶ディスプレイを結ぶ本体中心部に位置するヒンジに、バッテリー、電源ボタン、ACアダプタ端子といった電源関係の機能を集中させたデザインだ。本体の薄型化とバッテリー容量の確保、本体を閉じて持ったときの握りやすさに配慮しつつ、一目でVAIOと分かる個性的な外観を演出している。
アイソレーションキーボードは、キーとキーの間隔を離したデザインのキーボードを格子状のカバーにはめ込んで接着し、キーボードのたわみをなくしたものだ。キーとキーの間隔が離れていることからタイプミスが少なく、キートップの周囲にすき間がないため、長いツメでもキーに引っかかりにくい、キーの間にゴミやほこりがたまりにくいなどのメリットをうたう。
特にtype Zのアイソレーションキーボードは、VAIOとしては初めてアルミニウムの1枚板から成型。パームレストからキーボード上部までをカーブを描きながら継ぎ目なく覆っており、全面にさりげないヘアライン加工が入った高級感あふれる仕上がりだ。
前述した3パターンのプレミアムデザインも含め、デザインの好みは人それぞれだが、少なくとも高級志向のモバイルノートPCにふさわしく、見た目にもハイグレードなモデルであることが明確に分かるデザインといえる。
シリンダーフォルムを構成する電源ボタンは、状況に応じて緑色やオレンジ色に光る(写真=左、中央)。シリンダーフォルムによって、背面のデザインはすっきりしている(写真=右)
広色域×クリアソリッド液晶で表示品質を強化
左が1600×900ドット表示、右が1366×768ドット表示。一度に表示できる情報量は、これだけ差がある type Zのこだわりは液晶ディスプレイにも現れている。HD映像コンテンツとの親和性と作業領域の拡大、本体の小型化を考慮して、アスペクト比16:9で解像度1366×768ドット/1600×900ドットの13.1型ワイド液晶ディスプレイを搭載した。店頭モデルの1366×768ドット表示でも不満のない解像度だが、直販モデルで選べる1600×900ドット表示はモバイルノートPCとは思えない作業領域の広さだ。
ドットピッチは1366×768ドットの場合で約0.212ミリ、1600×900ドットの場合で約0.181ミリで、前者は1280×800ドット表示の12.1型ワイド液晶を搭載した標準的なモバイルノートPCと、後者は1366×768ドット表示の11.1型ワイド液晶を備えたtype Tとほぼ同じになる。
1600×900ドットの表示はかなり細かく、人によっては見づらく感じるかもしれないが、type Tの高解像度表示が許容できるならば問題ない。1600×900ドット表示の液晶に変更しても差額は1万円なので、個人的には1600×900ドット表示に大きな魅力を感じた。
また、単に新型の液晶パネルを用いるだけでなく、屋内外で十分な視認性を確保できるように、適度な光沢感と外光の映り込み低減を両立したうえで、表面にひっかき傷がつきにくいハードコーティング処理を施した「クリアソリッド液晶」を初めて採用しているのも特筆したい。
左がtype Zのクリアソリッド液晶、右がtype BZのクリアブラックLE液晶。ランプの光を当ててみたところ、右はランプの形がはっきり分かるほど映り込んでいるが、左は光が拡散されている ハーフグレアともいえる表面処理は、完全な光沢のクリアブラック液晶と比べて、外光の反射が気にならず、ユーザー自身の顔が画面にはっきり映り込むこともない。それでいて、光沢パネルのように映像コンテンツをメリハリある表示で楽しめるため、グレアタイプとノングレアタイプのいいとこ取りといえる。今後はぜひVAIOノートの他機種にも採用してほしい表面処理だ。
さらに、モバイルノートPCとしては色域が非常に広く、従来のtype Sと比べて約2倍、広色域をうたうtype Tと比べてもさらに広い色域を確保し、u' v'色度域でNTSC比100%を実現した「リッチカラー」としているのもポイントだ。モバイルノートPCでは色域がNTSC比で50%程度にとどまるものも少なくない中で、表示の鮮やかさ、特に深紅や濃い青、エメラルドグリーンといった色の表現は群を抜いている。
実際に1366×768ドットと1600×900ドットの液晶ディスプレイを見比べてみたが、どちらも輝度や発色がほとんど変わらず、明るく鮮やかな表示が可能だ。BTO対応ノートPCの場合、高解像度の液晶パネルを選択すると、液晶の開口率が下がり、ピーク輝度が低くなったり、発色傾向が異なるものも少なくないが、type Zの場合は1600×900ドットになるとわずかに暗くなる以外、見え方がほとんど変わらないのに感心した。
一般的なモバイルノートPCと同様に液晶パネルはフルカラーではなく、ディザリングによる約1619万色表示なので階調再現性は低いだろうと思いきや、カラーやモノクロのグラデーションを表示してもトーンジャンプが目立つことはなく、かなり健闘している。ただし、色域はNTSCの定めるRGBの座標から特にGとBの値がずれているほか、sRGB表示モードのような色域固定はできないため、厳密なフォトレタッチを行うのには向いていない。
輝度を最大にして、カラーとモノクロのグラデーションを表示した例。左が1600×900ドット表示、右が1366×768ドット表示の液晶パネルだが、輝度や発色の傾向はほとんど変わらない
ノートPC用のTNパネルにしては視野角も広いので、ユーザーの姿勢に合わせて厳密にチルト角度を調整しなくても画面が見づらくなることはない。逆にモバイルシーンで視野角が広すぎることで、周囲から画面をのぞかれやすいのは困るというユーザーのために、オプションで視野角を狭めるプライバシーフィルターも用意されており、至れり尽くせりだ。総じてtype Zの液晶ディスプレイは、現状のモバイルノートPCで最高峰の表示品質を誇るといっても過言ではない。
液晶ディスプレイに角度を付けた場合、左右方向では表示が黄ばみ、上下方向ではコントラストと色度が変化するが、上下のチルト角度を正確に調整しないと、すぐに白黒が反転して色が判別できなくなるようなことはない
意外に入力しやすいアイソレーションキーボード
type Zのキーボードとタッチパッド 入力環境はフルピッチのキーボードとタッチパッドの組み合わせだ。独特のアイソレーションキーボードは、主要キーのキートップが14×14ミリの正方形で、整然とキーが並んだ姿が見た目に美しいだけでなく、きちんと約19ミリのキーピッチと約2.5ミリのキーストロークを確保している。
キーとキーの間隔は約5ミリも離れているため、最初はキーの位置を目で追って正確に中央を押すように注意が求められるが、キーのレイアウト自体には無理がなく、カーソルキーが1段下がっているなど、見た目よりは随分入力しやすい。
キータッチは軽いほうで、力を入れずに入力できる。キーボードユニットはネジやツメで固定しているわけではなく、カバーに接着してあるため、キーボード全体がしなるような不具合は皆無だ。静音ゴムを利用したキートップは、入力音が比較的静かなので、静粛な場所でも使いやすいだろう。
ただし、入力時にキートップが少し傾く点、スペースバーが45ミリと短いので打ち損じることがある点、そして最下段のキーを押す際に親指がパームレスト上部の段差に当たってしまう点は、ストレスを感じた。特にパームレスト上部の段差は、長文入力時に親指に負担がかかるので、今後改善してほしいところだ。直販モデルではスペースバーが長い英語キーボードも選択できるので、英語配列に慣れたユーザーであれば、こちらを選ぶといいだろう。
日本語キーボードは、主要キーのサイズが14×14ミリ、スペースバーが45×14ミリ、Fキーが12×10ミリだ(写真=左)。直販モデルで用意される英語キーボード(写真=中央)。キーボードの裏面を見ると、パームレスト部と一体化したキーボードカバーと接着されていることが分かる(写真=右)
タッチパッドはアルプス電気製の多機能ドライバを組み込んだVAIOおなじみのインテリジェントタッチパッドを採用する。タッチパッドのサイズは80×40ミリと広めに確保してあり、小さく感じることはない。左右のボタンは押すのに少し力が必要で、ストロークが浅いものの、しっかりしたクリック感がある。横長の細いボタンだが、押した際にボタンが左右にぐらついたりしないのは好印象だ。
タッチパッドの使い勝手は標準的で問題ないが、欲をいえば、キーボードが大きく変わったのだから、タッチパッドもそろそろMacBook Airのようなマルチタップに対応するなど、次の展開がほしいところではある。
なお、キーボードの左上には「S1」「S2」と2つのプログラマブルボタンが用意され、それぞれ任意のアプリケーションや動作が割り当てられる。初期設定ではS1を押すと「VAIO プレゼンテーションサポート」、S2を押すと「Windows Meeting Space」が起動する仕組みだ。
VAIO プレゼンテーションサポートは、16:9のワイド画面を生かしてプレゼンをしやすくするためのユーティリティで、起動するとデスクトップ右上に外部ディスプレイに表示されている画面が子画面表示される。これにより、プレゼン時にプロジェクターに映っている内容を手元で確認しながら、映っていない領域で資料を調べるなど、作業を効率的に進めることが可能だ。
タッチパッドは上下/左右のスクロールに対応し、左コーナーのタップに機能を割り当てられるVAIOおなじみの仕様だ(写真=左)。2つのプログラマブルボタンは、アプリケーションの起動や、消音、明るさ最大、放熱制御、省電力設定の表示などの動作を割り当てられる(写真=中央)。外部映像出力の画面をPinPのように子画面表示できる「VAIO プレゼンテーションサポート」(写真=右)
以上、type Zの特徴と使い勝手をチェックした。実際に触れてみると、VAIOノートのフラッグシップモデルとして、細部までこだわり抜いた製品であることが、至るところからヒシヒシと伝わってくる。後編ではSPEEDモードとSTAMINAモードでパフォーマンスやバッテリー駆動時間がどのように違ってくるのか、ベンチマークテストを中心にその実力に迫っていきたい。