日本のケータイ普及率は世界第50位!?「ワイヤレスジャパン」で探る成熟期の携帯市場の今後
2008年7月22日から24日にかけて行われた無線通信関連のイベント「ワイヤレスジャパン2008」では、最新の機器やサービスの展示のほか、カンファレンスにおいては携帯電話や無線通信に関連した多くの講演が行われた。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20080724/1016965/?P=1
そこで今回は携帯電話・PHSなど主要キャリアのトップがそろった23日の講演から、飽和に向かいつつある携帯電話市場における各社の取り組みやビジョンについて分析していこう。
「一台目キャリア」の取り組みは「行動支援」と「ネットワーク」
契約数が1億を超え携帯電話市場が飽和に向かいつつある中、その影響を大きく受けているのが最も規模が大きく、「一台目のケータイ」としての市場を押さえているNTTドコモとKDDI(au)だ。確かにNTTドコモは最近まで加入者数で伸び悩み「一人負け」という報道が多くなされたほか、auも6月の純増数シェアでイー・モバイルにも抜かれて4位に転落するなどあまり元気のいい報道を耳にすることがない。
そうした2社のトップによる講演において、共通していた項目が「行動支援」と「ネットワーク」の2つだった。最初の「行動支援」とは、ユーザーの嗜好や行動に応じた情報を携帯電話に配信するというもの。従来の携帯電話は、携帯電話の中に多くの機能を搭載することで、携帯電話を経由してさまざまな情報にアクセスするゲートウェイ型のサービス形態であったが、今後は携帯電話がユーザーに応じた情報を見つけ、適切なタイミングで提供するというエージェント型のサービスを提供していくという訳だ。
もう1つのネットワークは、携帯電話におけるネットワークの利用価値が広がる中で、それに対応するべくより高速、かつ低コストで通信できる手段を確立することが必要だとしている。そのためにはLTEをはじめとした3.9Gや、ITC-Advanced(4G)などの次世代高速通信方式の導入に加え、フェムトセルや無線LAN、高速赤外線など携帯電話網以外の通信手段も活用し、状況に応じた適切な通信手段が必要との認識を示している。
両社とも新しい市場開拓はもちろん検討しているが、やはり中心となるのは、現在の携帯電話の顧客に向けたビジネスであるといえる。既に多くの契約者を抱える「一台目」の満足度を高めることが、重要な鍵を握るという認識のようだ。
NTTドコモは「携帯電話が○○してくれる」という行動支援型のパーソナル・エージェントサービスを強化すると表明(画像クリックで拡大)
KDDIのウルトラ3G構想では、接続するネットワークに依存しないサービス展開が必要であり、携帯電話網に依存せず多くの通信手段を活用する必要性を訴えた(画像クリックで拡大)
市場開拓の余地はまだ大きい?「二台目キャリア」の戦略は
逆に最近元気がいいのが、音声定額や高速データ通信、スマートフォンなどによって主に二台目需要を開拓しているキャリアである。こうしたキャリアは今後どのような戦略を持って市場競争に取り組んでいくのだろうか?
特に二台目需要の開拓の必要性に注目しているのがイー・モバイルである。同社の代表取締役副社長兼CFOであるエリック・ガン氏は「日本の携帯電話普及率は79.6%で世界の50位。まだまだ成長できる余地がある」とし、同社が得意とするデータカード端末やプリペイド、さらに固定ブロードバンド回線の代替といった形で、二台目の需要を開拓していくと話した。
二台目需要開拓の先駆けともいえるウィルコムも、自社の強みを生かして新しい市場の開拓を進めるという戦略をとるようだ。シンプルで生活に密着した端末・サービスの提供や、スマートフォンや内線ソリューションなどによるビジネス需要の開拓、マイクロセルの特性を生かした災害用途や地方での利用などについて実例を紹介し、その取り組みをアピールしていた。
一方で「差別化できるのは料金しかない」(イー・モバイルのエリック氏)と話すなど、一台目需要の直接開拓は難しいとの認識を示している。まずは未開拓市場の開拓を進め、それをテコに音声端末市場へと広げていくというのが、二台目キャリアの戦略といえそうだ。
イー・モバイルは、データカードや公衆無線LAN、固定ブロードバンドのユーザーなどを中心に、一台目とは異なる需要の開拓に取り組んでいくという(画像クリックで拡大)
ウィルコムのマイクロセルは、高速・大容量だけでなく、基地局の多さが災害時のリスク軽減につながっているとアピール(画像クリックで拡大)
ソフトバンクモバイルは「ユーザー価値重視」で攻める
では、一台目と二台目、双方の市場を開拓して成長しているソフトバンクモバイルは、どのような考えを持って市場開拓に取り組んでいるのだろうか?
登壇した同社取締役副社長の松本哲三氏は、ユーザーに対する価値を最優先とし、あらゆるプレゼンスを発揮して市場開拓を進めているという。ホワイトプランや割賦制の導入や、アップルにライセンス料を支払いながらもiPhoneの導入したことなども、ユーザーへの価値を優先して行った結果であり、まずはユーザーの数を増やしてから、その上でユーザーに対する価値を向上させるというのが同社の戦略のようだ。
そうしたユーザー価値を向上させる上で、現在の日本における垂直統合型システムが決して悪いものではないと評価している。ユーザーに価値を与えるインフラ、端末、サービスの3つの価値を大きくするには、それぞれに密接な関係が必要であり、それをキャリアが中心としてまとめていく日本のエコシステムは、「問題いろいろあるが、いいものだと思う。逆に欧州のキャリアは日本をうらやんでおり、その動向に注目している」と話していた。
とはいえ、日本のメーカーが海外でプレゼンスを発揮できてないのもまた事実である。そのため、全ての仕組みをキャリアが取り仕切るという従来型のモデルをそのまま維持するのではなく、端末などはより柔軟性を持った「楽市楽座」の姿勢で取り組んでいくという。ディズニーモバイルやiPhoneの例を挙げ、メーカーに任せる部分は任せ、それに対して販売協力するという方針をアピールした。
全体として今回の講演を振り返ると、成長から飽和、キャリア数の増加といった市場動向の変化から、それぞれのキャリアの立ち位置や戦略がこれまでと大きく変化してきているということを強く感じた。一億総ケータイ時代の新たな競争に向けて、どのキャリアの戦略が市場の心を掴み、有効に働くのか、しっかり見届けていきたい所だ。
ソフトバンクモバイルは、キャリア中心となる日本のビジネスモデルを評価しながらも、端末に対してはメーカーの意見を取り入れ、柔軟性を持つ「楽市楽座」の姿勢をとるとした(画像クリックで拡大)
著 者
佐野 正弘(さの まさひろ)
ゲームやWeb、携帯コンテンツなどのデジタル・コンテンツを開発するエンジニアを経て、現在ではモバイル・携帯電話に関する執筆を中心に活動している。近著に「ケータイでGoogle」(技術評論社)、「携帯サイトSEO&SEM向上テクニック」(毎日コミュニケーションズ)など。