取材ノート08:無線LANでブロードバンド整備 離島、中山間地で注目 /鹿児島
◇低コストで実現の可能性
http://mainichi.jp/area/kagoshima/news/20080316ddlk46040369000c.html
インターネット社会の基盤はブロードバンド(高速大容量)通信だが、県内の整備は、世帯カバー率84・9%、普及率はわずか29%(昨年9月末)。いずれも全国平均を大きく下回り、ワースト1だ。離島や中山間地など条件不利地域の整備で、注目されているのが、家庭用の無線LAN。低コストが目玉で、「九州モデル」とも呼ばれ、県内でも実験が行われている。【神崎真一】
●海を越え
2月9日、鹿児島大学学術情報基盤センターが無線LANで、三島村・竹島と指宿市山川町の間47・5キロを結んだ。「無線LANの伝送距離では日本記録」という。
3分間の信号だけのやりとりだったが、電波は安定。映像など大量データの伝送にも耐えられる速度だったという。使ったのは、家庭用に普及している電波帯で、特別な免許は必要ない。それまでは「出力が弱く、一般には数百メートルが限界とされていた」(鹿大)。
升屋(ますや)正人教授は「離島のブロードバンドを低コストで実現する可能性を示せた」と意義を強調する。
主流は光ファイバーだが、村の試算では、整備費は約27億円にも。「財政負担が大きく困難だった」(大山秀人・総務課参事)。対して無線LANの実験代はアンテナなど約200万円だった。
技術的な課題はある。凪(なぎ)の場合、海面が鏡のように電波を反射させ、ノイズ(雑音)が生じて通信が不安定に。船などの障害も想定されるという。村や鹿大などは、4月から1年間、実証実験。課題を洗い出す構えだ。
●山も越え
「九州モデル」との呼び名は、九州総合通信局、九州経済連合会が中心に普及を進めるため。実証実験が本格化しているのが鹿児島市の錫山(すずやま)地区。県、市、鹿大なども含む産学官で「『九州モデル』推進協議会」を構成し、2月から実験中だ。
錫山地区は、鹿児島市の市街地から見ると、山の向こう側。市役所の谷山支所から7キロ先の山の頂上にある錦江高原ホテルで無線を中継し、さらに3キロ先の谷間にある錫山小中学校を結ぶ。リレー方式で山を越し、アンテナ4台を使う。
地区の公民館でインターネットを利用するが、「通信速度、安定性ともほぼ予定通り」(県情報政策課)という。
●10年に100%
無線LANでの整備は、九州では、長崎、宮崎両県の一部ですでに実用化。県内では三島村のほか、瀬戸内町が加計呂麻島での導入を検討している。
政府は10年までにブロードバンドゼロを目指すが、県内の未整備は10万世帯を超す。県がこれまで整備支援の主軸としたのは、電話回線を利用するADSL方式だが、過疎地では、コスト、技術の両面で困難という。
人工衛星も有望で、初期費用だけなら数十万円と無線LANよりも安い。が、通信速度が遅く、通信代も高いのがネックだ。
県は、無線LANを「万能ではないが、補完的なシステムとして有効。選択肢が広がった」とする。さまざまな選択肢から整備方法を探るという。
毎日新聞 2008年3月16日