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MS出身者らが目指す小さくて美しいソフトウエア・NEO上場一号のユビキタス

 ジャスダック証券取引所が開設した先端技術を持つ新興企業向けの市場「NEO」に、第一号として11月13日に上場するのがソフト開発のユビキタスだ。人気の携帯ゲーム「ニンテンドーDS」の無線LAN機能を実現するソフトウエアを提供し、業績を伸ばしている。ユビキタスがNEOに上場する狙いや今後の展望を川内雅彦社長に聞いた。

http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMITzx000026102007

――ユビキタスの沿革は。

 現在の会長である中山佳久、専務の鈴木仁志、元取締役で主要株主の末松亜斗夢氏の3人が興した会社だ。末松氏は3人の中で唯一会社経営の経験があり、しばらく代表取締役CEOも務めていた。中山は営業担当、鈴木が技術担当という役割だ。鈴木はアスキー出身でマイクロソフトのビル・ゲイツにも一目置かれた技術者だ。

 ユビキタスという社名の通り、ユビキタスネットワークを実現することを目標にしている。ユビキタスを実現するには、あらゆる機器に通信機能を乗せられる小さなソフトウエアが必要だ。例えば創業して間もないころに開発したものとして、「Z80」と呼ばれる処理能力のそれほどないマイコンに乗せて動作するウェブサーバー(ウェブサイトを運用するためのサーバーソフトウエアのこと)を開発した。

――中山会長、川内社長、鈴木専務を含めてマイクロソフト出身者やマイクロソフトと仕事上関係があった人が多いようですが。

 マイクロソフトの出身者は従業員にもけっこういるが、全員がもともと知り合いだったわけではない。人づてに評判を聞いて、優秀な人材を一本釣りしている。

 マイクロソフトも確かにネットワークには取り組んでいたが、どうしてもパソコンが中心となってしまう。我々はそういう制約を離れて小さな機器でユビキタスネットワークを実現したいと考えている。

 マイクロソフトをはじめ北米のソフトウエア企業は強いがそれはパソコンなどのコンピューターの話だ。組み込み機器では日本が優位を持っている。その優位を発揮できる日本のソフト会社として確立したいと思っている。

ユビキタスのサイトの画面

――「ユビキタス」という社名をよく押さえることができましたね。

 他社より一足早く申請したのがよかった。海外展開するときにはすでに商標が取られているかもしれないので調査が必要だが。

――ビジネスモデルは。

 主には半導体メーカーをターゲットにしている。半導体メーカーに我々のソフトを提供し、その販売数に応じたライセンス収入を得る。ソフト開発の初期投資はかかるが、いったん我々のソフトを搭載した半導体の数量が出始めれば後はすべて利益になる。受託開発は基本的にはしない。

――今回ジャスダックのNEOに上場することにした理由は。

 今年の春ごろに先端技術を持つ企業を支援する市場ができるという話が出ており、検討していた。3年以上の中長期の計画を開示するマイルストーン開示という制度もある。ユビキタスネットワークの実現は短期で実現できるものではなく、5―10年という長い時間をかけて動向を見る必要がある。

――現預金は潤沢で、上場して資金調達する必要があったのでしょうか。

 現預金は十分にあるが、手元の流動性を残しつつ借入金を返済したかった。

 また、NEOの一号案件となることで広告宣伝効果が得られる。人材採用の面でも上場企業かどうかで、ずいぶん違ってくる。実のところ人材採用の面で有利になることが最も重要な狙いだ。大手企業にいる優秀な技術者の転職を促しやすくなる。

――DS関連の売り上げが業績をけん引しています。

 DS本体は無線LAN通信用のハードウエアを搭載しているが、通信のソフトウエア部分はゲームソフトの中にあり、その2つの組み合わせで通信機能を実現している。我々の製品はそのソフトのほうで、無線LAN通信対応のゲームタイトルの販売本数に応じて、ライセンス料を受け取るようになっている。DSは「お化けハード」ともいえる記録的なヒットが続いており、ソフトウエアもその何倍も売れていく。当面は安定した収入が見込めるだろう。

――DSの案件を獲得できたのはなぜでしょうか。

 社内に任天堂との人脈があったので、こちらのもつ通信用のソフトウエアを以前から任天堂に紹介していた。DSを開発する時点で、我々の製品ほど小さな容量で小さな処理能力のチップでも動かせるソフトウエアは他になかったと思う。TCP/IPの通信と「SSL」による暗号化の機能を合わせてわずか50キロバイト程度で済む。他社の10分の1のサイズだ。

 2005年の春ごろに開発が決まり、我々が持っていたソフトを半年ほどかけてDSの基本ソフト向けに書き換えて、同年9月にライセンス契約を結んだ。

――任天堂からユビキタスとの契約を解除して、他のソフトウエアに切り替えられる可能性はないのでしょうか。

 ユビキタスのソフトはDSが実用化するまでに相当な検証をしているし、また発売されてから世界中の相当な台数の無線LAN機器との接続が検証された実績がある。これを切り替えるのはリスクではあるし、間単に契約解除ということはないだろう。

川内雅彦社長

――DS向けのソフトで安定収入がある一方、DS依存脱却も必要です。

 我々が目指しているソフトウエアの形としては極限に小さいものと、極限に速いものの2つがある。DSには極限に小さなソフトを提供しているが、今後は極限に速いものの売り上げを伸ばしていきたい。

 力を入れていく分野としては、ネットワークを通じて映像を配信するシステムなどデジタルメディア関連だ。

 例えば、TCP/IPのネットワークでフルハイビジョン画質の映像を配信する場合、TCP/IPというのはけっこう処理が重いものなので、遅延などが発生することもある。我々のソフトを使えばIPネットワークを通じて、フルHDの映像2―3本を同時に配信するようなことも可能だ。今後デジタルメディアの分野はDSを超える収益を得られる可能性がある。

――大手企業に作れないソフトをなぜ、ユビキタスが開発できるのでしょうか。

 我々が目指しているのは4つの「S」で、「Small(小さい)」「Smart(優秀)」「Sharp(尖った)」「Software(ソフトウエア)」の頭文字を取ったものだ。このビジョンのもとに強烈に差別化できるソフトウエアを作り、ライセンス収入を得るというモデルだ。

 小さな企業だが、専門性を高めている。大手企業では30代になるとマネジャーになってしまいプログラム開発の現場からは離れるし、次から次へ新しいプロジェクトを担当するので1つのことの専門能力を高めにくい。我々は基本的には下請け企業に開発を発注せずに、1から10まで自分たちで開発する。コンパクトで美しいプログラムのコードを書くことを目指している。従業員の平均年齢は39.1歳と高いが、専門性の高い人員がいることの表れだ。

――上場すると売り上げ規模の拡大も求められるのではないでしょうか。

 従業員規模としては50人ぐらいまでは増やそうと思っている。その程度が、きちんと顔がわかってやれる限界だろう。売り上げを伸ばすやり方としては、一人ひとりが核となりパートナー企業と連携することでも達成できる。実際、すでに優秀な技術力を持つ何社かには出資して協力していく体制をとっている。

川内雅彦(かわうち・まさひこ)ユビキタス代表取締役社長

1980年アルプス電気入社。00年マイクロソフト入社。05年ユビキタス入社、同10月取締役。07年4月より現職

[2007年10月31日/IT PLUS]

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