アイデア満載のキーボードとsafariの機能性に驚く・「iPod touch」レビュー(後編)
アップルの「iPod touch」レビュー前編では音楽機能とルック&フィールを中心に紹介したが、iPod touchが本当に面白いのはここからだ。まずは多機能なウェブブラウザー兼ビューワーソフトの「Safari」、そして動画共有サイト「ユーチューブ」にダイレクトでアクセスできる「YouTube」を見てみよう。(観音寺研二)
http://it.nikkei.co.jp/pc/news/index.aspx?n=MMIT23000012102007
■Safariは指を開けば画面拡大、表示は驚きのクリアさ
ホーム画面で「Safari」アイコンをタップ(指で一度押す)すると、MacやWindowsで使い慣れたSafariと見た目や操作感がそっくりのアプリケーションに切り替わる。この時、近くに無線LANのアクセスポイントがあると「Wi-Fiネットワークを選択」ダイアログが表示される。この画面では、アクセスポイントの名前、セキュリティーがかかっているかいないか、電波の強さなどの情報がコンパクトに表示されるので、無線LANの電波が飛んでいるかどうかを調べる高機能な「Wi-Fiファインダー」にもなる。
セキュリティーを設定していないオープンネットワークであればそのまま繋がるが、セキュリティーがかかっている場合は「“○○○(SSID名)”のパスワードを入力」という画面が出るので、パスワードを正しく入力し、「参加」ボタンをタップすれば接続できる。一度パスワードを入れて「参加」したアクセスポイントは、接続するためのパスワードがiPod touchに記憶されるので、接続の度に何度も入力する必要はない。
他の多くの無線LAN機器に比べ、設定はたやすいという印象だ。アクセスポイントがSSID(識別用ID)の隠蔽機能をサポートしている場合には、「Wi-Fiネットワークを選択」画面に表示されることはないが、この場合でも手動でSSIDを入力すれば接続することは可能。
後はパソコンのSafariと同じく、URLを入れてやるかブックマークを選ぶかすれば、目的のサイトが表示される。誰でも最初に驚くのは、自由自在な拡大・縮小機能と、表示の美しさだろう。ページの全体表示ではさすがに文字が小さくて読めないので、見たい部分を拡大するため、iPod touchの特徴的操作である「ピンチアウト」を行なう。親指と人さし指など指2本を揃えて画面上に置き、そのまま指を広げるようにして画面上でスライドさせるのだ。
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左の状態から右のように指を広げると、文字や写真がググッと拡大されて読みやすくなる。これがピンチアウト。文字にギザギザ感がないのもポイントだ
すると、一瞬粗い画面が出た後でスッと高精細な画像・文字表示に変わる。この拡大表示した画面が、文字にギザギザ感がないこともあってかなり綺麗なのだ。そのままの拡大率を保ったまま指先だけで画面をスクロールすることもできるし、戻る/進む、ブックマークするなどの操作もほとんど指先だけで可能。ピンチアウトとは逆に、画面を指2本で「つまむ」操作によって、表示の縮小ができる。これを「ピンチイン」と呼ぶ。
その上、加速度センサーにより本体を90度傾ければ横長表示にも瞬時に切り替えられるので、場合によってはパソコンのSafariより触っていて楽しいかもしれない。とにかくこの種の機器でいつも感じる「小さな端末で無理してウェブブラウジングしているストレス」がほとんどないのだ。
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ある一つの囲みをダブルタップすると、それが画面一杯になるように計算して拡大表示してくれる
見たい部分を拡大するにはもうひとつ方法がある。リンクの張ってある部分を避け、「地」の部分をダブルタップするのだ(再度のダブルタップで全体表示に戻る)。すると驚いたことに、タップした部分のコンテンツがそれぞれ画面一杯になるように、一気に拡大してくれる。
つまり、タップした箇所を中心にしてただ大きく表示するのではなく、写真なら写真、一つの囲みなら囲みをダブルタップすると、それがちょうど画面一杯になるように計算して拡大してくれるのだ。このインテリジェントな処理には正直驚いた。
ギザギザのない美しい書体を何カ国語分も内蔵しているので、欧米のサイトは勿論、韓国のハングル文字サイト、中国の繁体字・簡体字サイト、ロシア文字のサイト等々、主要国のサイトならたいてい表示できる。
画面サイズの制約があるため、本家Safariと同じ形でのタブブラウジングはできないが、「複数ページ」ボタンを使えばそれに近いことは可能。幾つかのサイトを縮小表示させておき、指をすべらすだけでそれらを次々切り替えられるのだ。この時、日本語のサイトとロシア語のサイトを同時表示して行ったり来たりなどということも簡単にできてしまう。とても3~4万円台で買える厚さ8ミリの機器のすることとは思えない。
■エクセル、ワードファイルまで表示でき仕事にも使える
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企業サイトにある決算資料の.xlsファイルもご覧の通り。上のタブを押すとシート切り替えも可能(画面はNECのサイト)
しかも、このSafariで表示できるのはHTMLファイルだけではない。グーグルで「.pdf」「.doc」「.xls」「.ppt」など拡張子でサイトを検索して試してみた。PDFファイルを難なく表示するのは予想通りだったが、ワードファイル、エクセルファイルも複雑なものでなければ表示できた。エクセルファイルの場合、画面上部にタブが出てきたのでそれを押してみたらシート切り替えまでできた(!)。
これでパワーポイントのファイルまで表示できれば、PDAはおろか、超小型パソコンとしての使い勝手も出てくるのだが、残念ながら.pptは「このファイルをダウンロードできません」というアラートが出て表示不可能だった。
Safariの設定の中で「プラグイン」をONにしていても、FLASHはどうやら表示できないなど、やはり本家Safariより機能が劣る部分はある。だが表示できるものに関しては、充分以上に高品位。3.5型の液晶で細かい文字がどこまで読めるのかと思われるだろうが、前述のピンチイン・ピンチアウトによる拡大縮小、美しい書体、明るい画面の相乗効果で、これがかなり実用になるのだ。
iPhoneには搭載されているメーラーや「Map」がiPod touchでは削られているため、PDAとして使う場合には機能が制限される部分も確かにある。ただSafariさえあれば大部分は自力でカバーできる。gmailなどのウェブメールサービスを使えばメールの送受信は可能だし、地図はsafariを使って「グーグルマップ」にアクセスすればいい(ただしタッチパネルの動作と干渉するため、地図のスクロールは多少やりにくい)。
最近は自分のパソコンにインストールせず、ウェブベースで呼び出して使うアプリケーションが注目されているが、今後はこれらにも「iPhone&iPod touch対応」を謳うものが増えてくるかもしれない。一方、仕事に使う気のない趣味のブロガーでも、キーボード(後述)が良くできており、慣れれば携帯電話より指に負担のない形で効率的に更新できるので、最強のブログ端末として使えるはずだ。とにかくこのSafariだけで、価格の半分くらいの価値はある。
■「うまい具合に小さい」画面でユーチューブが更に楽しく
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小さい画面だからこそ映えるユーチューブの画面
次に、Safariを抜け「YouTube」アイコンをタップすると、パソコンで見るユーチューブの画面とは違い、無駄な要素を削ぎ落としてかなり整理されたインターフェースの画面が現れる。出てくる動画は同じものなのだが、広告がなく画面もすっきりしているので「見るだけだったら、こっちの方がいいや」という気になってくる。日本語での検索も可能だ。
「YouTube」を見ていて気づくのが、液晶の3.5型というサイズが「うまい具合に小さい」ということ。前編で書いた通り、携帯機器として考えると3.5型というサイズは「大きい」のだが、パソコンモニターや液晶テレビと比べれば「極小」と言える。
一方、たいていのユーチューブビデオは画質が粗いので、24型など大きなパソコンモニターを使っている人では、とてもフルスクリーンモードで見る気にはならないだろう。最悪のケースだと「何が動いているか分からない」こともあるため、筆者はパソコンのユーチューブでは逆に「縮小」ボタンを押し、わざと小さくして見ている。
要するにユーチューブは、むしろ小さめの精細感の高い液晶で見るのにふさわしいコンテンツで、その意味ではiPod touchの画面サイズくらいがちょうどいいということだ。しかもそこに無線LAN接続という手軽さも加わる。
自室で寝転がったままお気楽な動画を見たり、外出先でフリースポット経由の暇つぶしができたりするのもiPod touchならでは。この辺に魅力を感じる人でないと、この製品はいささか高いものについてしまうだろう。少なくとも家に無線LANのアクセスポイントを設置していない人は、魅力半減になってしまうのでご一考を。
■予想を裏切る「簡単で、軽快に入力できる」キーボード
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日本語キーボードでの入力例。吹き出しのように入力候補が出てくるので、小さなキーボードでも間違いは少ない。上に出ているのが変換候補
SafariでもYouTubeでも、URLや検索語などの文字入力は避けられない。しかし一体横幅が5センチしかないタッチパネルでどう文字入力するのだろう、と最初は半信半疑だった。アルファベットのキーを並べるだけでも相当小さいものがぎっしり並ぶことになるのは容易に想像できるからだ。だが、触ってみてその謎は解けた。それどころかこのキーボードに感心したといってもいい。
まずキーボードは日本語、英語が切り替えられる。どちらも画面の下半分を使うが、文字配列はパソコンと同じqwerty3列なのでたいていの人にとって見覚えがあるものになっている。入力したいアルファベットに指を持っていくと、押さえている文字の上に漫画の「吹き出し」のような感じで大きい字が出るので、合っていれば指を離す。するとその文字が入力される。
一方、「K」と入れたいのに隣の「J」が吹き出しに出ているようなら、指をわずかに右にスライドさせて「K」を出し、そこで離す。離した瞬間に入力されるというのが感覚としてつかめれば、後は簡単だ。
こんな機能もある。英語キーボードで、AならAの文字を多少長めに押してみよう。すると指の上に、Aにアクセント記号のついた文字や髭のついた文字など、Aのバリエーション一覧が吹き出しで表示される。後は入力したい字まで指先を滑らすだけ。ドイツ語のウムラウト記号なども、この方式なら比較的簡単に入力できるわけだ。
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入力部分を長押ししていると拡大鏡の表示が出る
日本語キーボードの時には携帯電話のように、1文字入れるごとに次の変換候補が出てくる予測変換方式になっている。東京と入力すべくtokyまで打つと、「と」「東京」「都教委」「トーキョー」「徒競走」「tokyo」などが表示される。たった2文字、sqと入れただけで「スクワッド」「スクエア」「square」「squat」「スカッシュ」と出てくる便利さだ。URLを入力する時も、ドットや@を1つ入れれば「.co.jp」「.or.jp」「.ne.jp」「.com」などが候補として表示されるので長々と打たずに済み、効率が良い。
キーボード画面に文字/数字の切り替えボタンはあるが、カーソルボタンはない。では入力の途中で戻って1文字だけ消したいなどという時に、カーソル移動はどうするのか。入力部分を長押ししていると拡大鏡の表示が出るので、それを見ながら指を滑らせてカーソルを動かしたい所まで持っていく、というやり方だ。こんなことをよく考えついたものだ。
唯一の欠点は「M」とバックスペースが近過ぎて、せっかく打ったMをしばしば消してしまうことくらい。いずれにせよタッチパネル+吹き出しというアイデアは秀逸で、試してみれば誰でも10分くらいで使えるようになる面白いキーボードだ。
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