電波周波数の再編から業界の地殻変動を読み解く
仲里 淳(編集部)
米国では、2008年1月にテレビ放送がデジタル化されるため、2009年にそれまで使用されていたアナログ電波利用権が返還される。これをめぐるGoogleなどのネット企業の動きに注目が集まっている。日本でも2011年にアナログ放送が終了するが、その電波の利用動向は抑えておく必要がある。
米国の電波再編で動き出すネット業界の注目企業
http://i.impressrd.jp/e/2007/10/04/159
「Googleが独自ケータイを発表!」
「Appleがケータイ事業に参入か?」
これまで噂になったり、ニュースで報じられたりしてきたネタだが、ここ数か月で現実味を帯びた話題として注目されている。
きっかけは、7月に米連邦通信委員会(FCC)が開催する700MHz帯の周波数割り当てオークションに、Googleが参加すると表明したことだ。
Googleが米国カリフォルニアで提供している無料の公衆無線LANサービス。Googleマップを使ってアクセスポイント情報が確認できる。
Googleは、2006年からその本拠地である米国カリフォルニア州のマウンテンビューで、公衆無線LANサービスを展開している。
また、コミュニティ型の公衆無線LANサービスであるFONにも資本参加していることから、「(いつものように無料で)無線LANサービスによるネットアクセスを提供し、ユーザーに自社のサービスを利用してもらう」という戦略なのだろう考えられてきた。
電話の通話機能にしても、Skype端末のようなものがあれば、実現できてしまう。噂の「Googleケータイ」とは、Skypeやウェブブラウザーが搭載されたネット端末なのだ予想する声も多い。
そのGoogleが、無線LAN以上に広域サービスが可能な700MHz帯の周波数取得に動いたということは、無線インターネットサービス事業を本気で考えている証であると言ってもいいだろう。無線LANで「いつでもどこでも接続できる」サービスを提供するのは、まだまだ簡単ではない(WiMAXなどのポスト3G規格もあるが、実用化と普及にはもう少し時間がかかる)。
さらに言うと、Current TVやGoogle Video、YouTubeを有するGoogleとしては、放送的な事業も視野に入れているのかもしれない。
iPhoneとブランド力を武器にケータイ事業参入を目指すApple
AppleのiPhoneは、米国に続き、英国(キャリアはO2)とドイツ(キャリアはT-Mobile)で発売が開始された。アジア圏は2008年を予定しているとのことだが、日本で発売されるかはiPhoneの3G化が鍵となる。
一方、このオークションにはAppleも興味を持っており、入札参加を検討していると米国メディアが伝えている。
Appleは、言うまでもなくiPhoneである。
発売から74日で100万台を販売したiPhoneの人気は、間違いなくiPodで築き上げられたAppleのブランド力のたま物である。
クローズドな囲い込み戦略は成功しないと言われる昨今だが、ユーザーの利便性を阻害しないバランス感覚を持ち合わせていれば、必ずしもマイナスとはならない(ここ数年のAppleはこれに成功している)。“Appleらしさ”がふんだんに盛り込まれたものとして無線(ケータイ?)サービスを提供できるなら、iPhoneやiPod(touch)、そしてMacの魅力を高める強力な武器になるだろう。Googleと同じく、iTunesやApple TVで展開している音楽/映像サービスの拡張としても、電波取得は大きな可能性を持つ。
米国における今回の周波数割り当てオークションは、2008年1月のテレビ放送デジタル化にともなって、翌2009年に700MHz帯のアナログ電波利用権が返還されることを受けてのもの。
もともと有限資源であることや、さまざまな法律や規制によって成り立っている放送すなわち電波事業だが、今回のような再編によって業界構造も大きく変わってくる可能性がある。
メディア産業として大きな影響力を持つテレビとラジオ。そして、いまやネット産業の大きな構成要素であるケータイ。電波の権利が動き出す今は、さまざまな業界、ビジネスの大きな転換期であると言えるだろう。
2011年に日本の業界地殻変動が起こる?
地デジの普及も進み、屋根のアンテナも対応したものに変わりつつある。ちなみに写真のアンテナはアナログ用で、編集部のあるビルの隣のビルに立っていたもの。
日本においても、地上波アナログテレビ放送が2011年に終了し、地上波デジタル放送に完全に置き換わる。その電波跡地をめぐっては、総務省などを中心にすでに議論が進められている段階だ。
無線LAN、3G、WiMAX、HDSPA、W-OAM……などなど、無線や電波に関するキーワードは、いまやネット業界にとっての重要キーワードとなっている。2005年には、ソフトバンク、イー・アクセス、アイピーモバイルなどがケータイ事業新規参入をめぐる電波取得合戦が注目を集めた。今後も、電波はワイヤレス・ブロードバンドや放送にとって生命線であり、さまざまな展開が予想される。業界の地殻変動を予見するには、今からその動向を注目しておくべきだろう。
WBB Forumで連載中の「活発化する電波/周波数の割り当て」では、放送・通信の融合に関わる具体的事例の紹介をはじめ、新しいビジネス・モデルなど標準化から派生する様々な話題を取り上げている。
「第7回 地上テレビ放送のデジタル化後の電波の跡地利用の方向」では、先述の2011年アナログ放送終了後にともなう再割り当てについて、総務省の小泉純子氏が解説している。電波再編をより深く理解できるのであわせて読んでほしい。
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第7回 地上テレビ放送のデジタル化後の電波の跡地利用の方向 [WBB Forumより]
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