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FONやPlaceEngine、慶應大学村井教授らが「ネットワーク 2.0」を議論

 9月25日・26日の両日、未来のWebの姿について考えるイベント「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2007」が開催された。2日目には慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授、フォン・ジャパンの千川原智康Chairman、ソニーコンピュータサイエンス研究所の暦本純一インタラクションラボラトリー室長らが「ネットワーク 2.0」というテーマでパネルディスカッションを行なった。

http://bb.watch.impress.co.jp/cda/event/19567.html

■ 家庭のインターネットトラフィックから読み解く人間の行動

ビデオチャットで参加した慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授

 パネルディスカッションの前半は、村井氏がビデオチャットでイベントに参加。モデレータを務めたデジタルガレージ共同設立者兼取締役の伊藤穰一氏が会場から受け答える形で議論が進められた。

 村井氏は、日本の主要ISPから協力を受けた行なった家庭におけるインターネットトラフィックの分析結果を紹介。1週間のトラフィック量を示したグラフから「ブロードバンドのトラフィックの主流と思われているP2Pは、定常的なトラフィックとしてコンスタントに発生している」と指摘した上で、そうした定常的なトラフィックの上に1日ごと波形となって発生するトラフィックを指し、「朝起きて夜に寝るという、人間の生活感もトラフィックに表われている点が興味深い」とした。

 また、FTTHとADSLのトラフィック比較では、「ADSLではダウンロードのトラフィックが多いが、FTTHではアップロードのトラフィックが多くなっている」とのデータを紹介。「人間の活動として双方向の通信が使われ始めている」との考えを示した。

 さらにオンキヨーがソーテックを子会社化したという事例にも触れ、「音響会社が新たな広がりを求める時、コンピュータとネットワークが必要になっている」との考えを披露。オンキヨーが提供する24bit/96kHzエンコードでの高品質音楽配信サービスを「一度聴くとやめられなくなる」と高く評価した上で、「CDの時代はCDプレーヤーが普及するまでメディアが発展しないが、デジタルメディアはネットワークがあれば普及する。アプリケーションベースでインターネットの世界が広がるといういい例だろう」とした。

2004年と2006年のトラフィック比較 左がFTTH、右がADSLのトラフィック。FTTHはアップロードトラフィックが多い



■ 日本は新たなインターネットビジネスを考えるのに面白い時期

モデレータを務めたデジタルガレージ共同設立者兼取締役の伊藤穰一氏

 今後の活動目標としては「Co-Mobility Society」という考え方を長野県を例として説明。「長野県では少子化が進み、14学区が4学区にまで減っている」との現状を紹介した上で、「学区が減ればそのぶんだけ通学時間が増える。その通学時間の中で子供の教育に何か役立てないかと考えたとき、インターネットが移動中でも自由に使える社会が必要だ」とし、「人間と社会が何を必要としているか、という視点が今までよりも大きく変わっている」とした。

 村井氏は「みんなで作ってきたのがインターネットの歴史で、その創造性は無限大」とコメント。パネルディスカッションのテーマである「ネットワーク 2.0」に対し、「新しい発想がいかに形になって人の役に立ち、マーケットを助けていくのかは大変な期待を持っている」とした。

 モデレータを務める伊藤氏が「インターネットはみんなで作ってきたが、放送や周波数の問題やインフラの問題になるとコスト面など課題が大きいのでは」と質問すると、村井氏は「重くて動かしにくい課題はあるが、昔に比べれば理解は進んでいるのではないか」とコメント。また、「他の国がそうした課題を乗り越えることで日本が影響を受けたり、逆に日本の先進性が海外に影響を与えるといった、“外圧組合”的に横でつながっていくことの影響力も大きい」とした。

 「海外ではGoogleなどがインフラにも投資するなどインフラの重要性が理解されているが、日本のインターネットベンチャーはインフラに対する理解が少ないのでは」との質問には、「ビジネスを考える人はそういうことも考えて欲しいという願いを込めて、この場で発言している」とコメント。「日本はそうしたビジネスを考えるのにはちょうど面白い時期ではないか」とした。



■ 日本でのFONアクセスポイント数はまもなく世界一に

フォン・ジャパンの千川原智康Chairman

 パネルディスカッションの後半では、フォン・ジャパンの千川原氏とソニーコンピュータサイエンス研究所の暦本氏が、それぞれが手がける無線LAN関連サービスを紹介しながら「ネットワーク 2.0」に対する議論を展開した。

 フォン・ジャパンが運営する「FON」は、ユーザー宅に設置したアクセスポイントをエリアとするユーザー参加型の公衆無線LANサービス。千川原氏は「日本では2006年12月にサービスを開始し、アクセスポイント数は22,000カ所、ユーザー数は40,000弱に達した」とし、「世界でもっともFONのアクセスポイントが多いのはドイツだが、日本は10月初旬にもこれを抜いて1位になるだろう」とした。

 千川原氏はFONを「無線LAN業界のYouTube的な存在」と説明。「世界中どこにいても無料かつワイヤレスでネットワークを接続できる。そのための手段を無線LANの共有とコミュニティという2つの手段で実現している」とした。

 住宅地などを中心にエリア展開するFONにとって次の狙いは集客力のある場所でのエリア展開。伊藤氏が「FONのアクセスポイントは比較的不便な場所にある」と指摘すると、千川原氏は「人間の動線上にFONを展開するのが次のステップ、パートナーシップなども重要視している」と語った。

 「FONの展開で一番心配していた法規制の問題も、あまり規制されずに動けているのでは」と伊藤氏が質問すると、千川原氏は「総務省とは何度もディスカッションを重ね、サービス展開において斬新な事業法上のレギュレーション解釈をしていただくなど感謝している」とコメント。「オンラインメディアからは法的にプレッシャーがかかっていると取られがちだが、決してそうではなくきちんと法律面でも整理ができている」とし、アクセスポイント設置ユーザーが課金できるシステムも「日本ではできないと言われているが、法整備さえ進めば十分展開できる」とした。

日本におけるFONのAP数とユーザー数 無線LANデバイスの普及で広がるFONのニーズ



■ 位置情報化が進めば世の中は大きく変化する

ソニーコンピュータサイエンス研究所の暦本純一氏

 暦本氏は、自身が特別顧問を務めるクウジットの技術「PlaceEngine」を紹介。PlaceEngineは無線LANアクセスポイントを利用した位置情報検知技術で、屋外の利用に限られるGPSと比べて屋内でも利用できる、最短1秒で検索できる高速性などをアピール。地下にあるコンファレンス会場からPlaceEngineで現在位置を表示するデモも行なった。

 PlaceEngineのデータベース構築は、「インターネットで言われるFolksonomyに近く、我々はSensonomyと呼んでいる」と、その手法を説明。ユーザーが位置を検索した際、DBには登録されていないがユーザーが実際に検知したアクセスポイント情報などを取得することでDB構築に役立てているとし、「検索サービスも検索キーワードが運営者にとっては重要。我々も検索した人からアクセスポイント情報を教えてもらっている」とした。

 こうした位置情報化が進むことで世の中はさらに変化するだろうと暦本氏は指摘。人の移動ログを活用して行動パターンを把握することで次に行くであろう場所を検知する、普段の行動パターンとは異なる特別なイベントをカレンダーで表示するといった例を示し、「究極的にはあらゆる物体がすべてのロケーションを記録できる」とコメント。「鍵に持ち主の行動パターンを記録しておけば、盗まれた時にも持ち主と行動パターンが異なるため鍵が使えない、というセキュリティも実現できる」との可能性を訴えた。

 暦本氏はPlaceEngineを動作させたままW-ZERO3を宅配便で送ったという実験も公開。宅配便のルートがすべて地図上に表示でき、「どの倉庫でどれだけ止まっていたかも計測できる」。暦本氏は「ヒューマンコンピュータインターフェイスという言葉があるが、コンテンツだけでなくロケーションやエネルギーなど、今まで情報と思わなかったものもインターネットに組み込めるだろう」との考えを示した。

 伊藤氏が「FONとPlaceEngineのコラボレーションの可能性はあるのか」と質問すると、暦本氏は「FONを使いたいけれどアクセスポイントの場所がわからないとき、PlaceEngineで近くのアクセスポイントを検索する、ということは可能ではないか」とコメント。千川原氏が「FONのルータが取得した位置情報をAPI公開するという方向性もある」と語った。

 API公開について暦本氏は「PlaceEngineもAPIを公開しているが、日本だとmixiのような本当に肝心なサービスが積極的にAPIを公開していない。そうしたところが公開すればあらゆるサービスがつながるのでは」と語ると、伊藤氏も「米国ではFacebookがオープンAPIで成長している」と指摘。「Yahoo! JAPANなどはAPI公開も試みており、そういうサービスに対してフィードバックを返すことも重要だろう」とした。

PlaceEngineの概要 位置情報をユーザーからも集める「Sensonomy」

空白の部分はPlaceEngineのDBに無く、ユーザーが検索して送ってきたデータ PlaceEngineを動作したまま宅配便に出した際の移動履歴


■ URL

  THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2007

  http://www.garage.co.jp/ncc2007/

■ 関連記事

・ FONが1,000万ユーロの追加出資を受ける。日本の有料サービスは夏を予定

・ So-net、PlaceEngineなどソニーの要素技術を用いた新会社の説明会


(甲斐祐樹)

2007/09/26 19:42

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