FMC(固定と携帯の融合)の導入準備
携帯電話の回線を自動的に無線LANに切り替え、それを経由して固定有線回線で通話ができるFMC。導入を検討するポイントを紹介する。
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/0709/03/news02.html
[Paul DeBeasi,TechTarget]
FMC(Fixed Mobile Convergence:固定と携帯の融合)については誰もが耳にしたことがあるだろう。FMCにより、携帯電話ユーザーは回線を自動的に無線LANに切り替え、それを経由して固定有線回線で通話ができる。しかし、FMCが実現するのは、携帯回線と固定回線間での音声通信の融合だけではない。以下のことも可能になる。
携帯電話とPBXの統合:携帯電話ユーザーを企業のPBXにリンクし、単一のメールボックスおよび電話番号の利用と、PBX機能へのアクセスを実現
ユニファイドコミュニケーション:企業アプリケーションに統合可能なプレゼンス対応の音声・ビデオ・テキストによるコミュニケーション
携帯電話の利用分数の削減:可能な限りWi-Fiネットワークを使って通話が行われるため、携帯電話の利用分数が減少する
導入の選択肢
FMCを導入するには2つの選択肢がある。1つは、VerizonやAT&Tのような通信事業者からFMCサービスを購入することだ。これはセントレックスサービスを購入するのと似ている。機器を管理するのは事業者だからだ。もう1つは、RIM、Cisco、Divitasといった企業からFMC機器を購入することだ。これはPBXを購入するのと似ており、購入した企業がFMC機器を管理することになる。
残念ながら、VerizonやAT&Tによる現行のFMCサービスは、携帯電話とPBXの統合に特化している。実際、Verizonが最近発表したPBX Mobile Extensionサービスでは、企業無線LANも利用できない。このため、企業がFMCの可能性を最大限に引き出すには、FMC機器を導入しなければならない。
FMCに備える
機器を購入する前に、企業LAN、ITスタッフ、管理ツールがFMCに対応できるようにしておかなければならない。そのためのポイントとしては次のようなものがある。
無線LANシステムの展開
FMCのほとんどの導入シナリオでは、企業が無線LANを使って、ビル内の音声・リアルタイムコミュニケーションを行う方式が想定される。このため、企業は十分なカバーエリア(廊下、階段吹き抜け、休憩室などを含む)を確保できるように、無線LANのアクセスポイント(AP)を設置しなければならない。さらに、無線LANシステム(集中管理される軽量APを高密度に展開することで構築される)は、ビジネスユーザーが有線電話に期待する一貫した音声品質を提供するように展開しなければならない。
Wi-Fi電話の使用
FMCのほとんどの導入シナリオでは、Wi-Fi電話の使用が想定される。現在のFMC製品は、既存のWi-Fi電話で携帯ネットワークにローミングできるようになっている。さらに重要なことに、Wi-Fi電話をある程度使ってみれば、企業無線LAN、ネットワークのカバーエリア、サービス品質、PBXサポートの問題点がすぐに発見できる。
携帯電話に関するポリシーの策定
一部の企業は、「携帯電話の選択や使い方は、社員個人の問題」という考え方から、携帯電話に関するポリシーを持っていない。しかし、FMCを利用する場合には、企業が携帯電話の選択に関与することが必要になるだろう。同様に、企業はPDAやスマートフォンの使い方に関するポリシーを正式に作成すべきだろう。ほとんどのPDAは、電話機能を持ったコミュニケーションデバイスとなってきているからだ。また、データの暗号化、携帯電話が盗まれた場合の対処、情報アクセス制御といったセキュリティの問題も、必ず考慮しなければならない。
ネットワーク管理ツールの評価
FMCを利用するには、リアルタイムのネットワーク管理が必要になる。残念ながら、ITスタッフはネットワーク管理ツールの評価を十分に行わない場合が多い。だが、無線干渉が発生すると音声品質が低下し、Wi-Fi電話で通話ができなくなる恐れがある。APの密度が十分でないと、ネットワークビジー通知が出される場合がある。(有線または無線の)ネットワーク負荷が過大になると、パケットロスによってお粗末な通話品質になりかねない。スタッフがこうした問題を迅速に診断し、原因を特定して修正するのに役立つように、適切なツールを確保しておかなければならない。
FMCに備えた有線ネットワークの整備
有線ネットワークは、パケットロスを最小限に抑え、音声通話を伝送するのに十分なキャパシティにしておく必要がある。また、低遅延の通話を保証できるように、QoS(Quality of Service)メカニズムを必ず適切に構成しておかなければならない。さらに大抵の場合、Wi-Fi電話を試す前に、有線VoIP電話の利用を評価しておくのが賢明だ。そうすれば、有線ネットワークでVoIPが利用可能なことを、別のレベルの複雑な要素(無線)を追加する前に確認できる。
まとめ
FMCは、携帯電話とPBXを統合し、ユニファイドコミュニケーションを可能にし、携帯電話の利用分数を削減する。しかし、FMC機器を導入する前に、企業LAN、ITスタッフ、管理ツールがFMCに対応できるように、準備を整えておかなければならない。あらかじめ計画を作成して取り組めば、FMCの導入をより適切に進めることができ、長期的に見て時間と労力の節約になるだろう。
本稿筆者のポール・デビーシ氏は、Burton Groupの上席アナリストで、ネットワーキング業界で25年余りの経験を持つ。Burton Groupに入る前には、無線コンサルティング会社のClearChoice Advisorsを設立したほか、無線スイッチ開発ベンダーのLegra Systemsで製品マーケティング担当副社長を務めた。その前には、新興企業のIPHighwayおよびONEX Communicationsで製品マーケティング担当副社長を務め、Cascade Communicationsではフレームリレー製品シリーズのマネジャーを務めた。同氏のネットワーキングシステム開発者としてのキャリアは、Bell Laboratories、Prime Computer、Chipcom Corporationでのシニアエンジニアとしてスタートした。ボストン大学でシステムエンジニアリングの理学士およびコーネル大学で電気工学の工学修士の学位を取得。