転送速度と通信距離は11gよりも優れる
米国のコンサルタント会社であるoctoScope社は、次世代の無線LAN規格「IEEE 802.11n」の性能を評価するため、この規格のドラフト仕様に準拠した機器をテストした。IEEE 802.11nに準拠した機器は、「IEEE 802.11g」に準拠した機器よりも、データ転送速度と通信距離が大幅に優れていることが明らかになった。
http://www.eetimes.jp/contents/200708/23825_1_20070816175654.cfm
無線LAN機器の相互接続性に関する検証を手掛ける業界団体「Wi-Fi Alliance」は、IEEE 802.11nのドラフト仕様に準拠した機器の認証を2007年6月25日に始めた。その後、認証機器の数は着実に増加し、今や50機種を超えている。Wi-Fi Allianceは、これらの機器が相互に接続でき、既存のIEEE 802.11a/b/gと比べて2倍の通信距離と、5倍のデータ転送速度が得られるとみている。
IEEE 802.11nのドラフト仕様は、無線LANの物理層(PHY)に関する単なる新規格ではない。MAC層と物理層の性能を強化した、まったく新しい規格といえる。最も大きく向上したのはデータ転送速度で、これは空間多重(SM:Spatial Multiplexing)技術とチャネル幅の倍増によって実現したものだ。空間多重技術は、複数のデータ・ストリームを同一チャネルから同時に送信する技術である。2つのストリームを送信すると、データ転送速度を2倍にできる。チャネル幅を、IEEE 802.11a/b/gの2倍である40MHzに広げることでも、データ転送速度を2倍に高められる。さらに、効率がより高い直交周波数分割多重(OFDM)を使い、MAC層処理のオーバーヘッドを軽減できれば、さらに高いデータ転送速度が得られるだろう。
こうしたIEEE 802.11nの特徴を検証するため、octoScope社のテストでは、(1)家庭やオフィス環境におけるアクセス・ポイントとクライアントの間のデータ転送速度、(2)アクセス・ポイントやルーターでの、ビデオ映像データの優先転送性能、(3)ギガビット・イーサネットに対応したアクセス・ポイントやルーターにおける、WAN(Wide Area Network)ポートとLAN(Local Area Network)ポートの間のデータ転送速度、(4)ベンダーが異なる機器の間でのデータ転送速度の違い、(5)2-2や2-3、3-3の各MIMO(Multiple Input Multiple Output)構成を採ったときのデータ転送速度の違い、の5項目を調査した。
このテストは、台湾D-Link社や米Atheros Communications社、米Ubicom社の後援で行われ、IEEE 802.11nのドラフト仕様に準拠した機器の通信距離とデータ転送速度との関係を検証することに重点を置いた。IEEE 802.11nは、家庭内で複数のテレビにHD(高品位)ビデオ映像を配信するインフラとして期待されている。そのため、ネットワークが過負荷になった場合、機器がネットワークに流れる映像データを優先的に送信できるかどうかについて、明確な測定が行われた。テストは家庭およびオフィスの環境で実施され、米Netgear社やD-Link社、米Belkin社、米Linksys社の機器を使用した。これらの機器は、Atheros社や米Broadcom社、米Marvell社のチップセットを採用している。
IEEE 802.11nドラフト仕様に準拠した機器はすべて、長い通信距離において、高いデータ転送速度が得られた。近距離では、ほぼ140Mビット/秒というデータ転送速度が測定された。Atheros社のチップセットを使った機器は通信距離が最も長く、約55m(180フィート)の距離で7枚の壁をはさんだ状態でも30Mビット/秒以上のデータ転送速度を記録した。これはHDTV映像ストリームと同等レベル以上の転送速度で、MIMOを採用した新しい世代の無線LAN技術における真のブレークスルーを示す結果である。
テストした機器の通信距離はどれも一般の家庭を十分カバーできる長さで、複数の映像ストリームを送信でき、家庭でのビデオ映像配信に適しているとみられる。D-Link社のルーター「DIR-655」が内蔵するビデオ映像の優占順位決定アルゴリズム「WISH」を用いると、ビデオ映像に割り当てられる帯域幅が倍増し、画質と通信距離が向上した。IEEE 802.11nとギガビット・イーサネットとの間のルーティング機能についても、最も高い性能を示した。このルーターには、Ubicom社のチップセットが使われている。
3-3のMIMO構成を採る機器では、Atheros社のチップセット「AR5008E_3N」を使ったDIR-655が、データ転送速度や通信距離、ビデオ映像の配信性能について、最も高い結果が得られた。2-3のMIMOクラス構成を採る機器では、Broadcom社の「BCM2055」を採用したLinksys社の「WRT350N」が、2-2のMIMO構成を採る機器ではAtheros社の「AR5008-2N」を採用したD-link社の「DIR-625」が、最も高い性能を示した。テスト方法やそのほかのテスト結果に関する詳細な情報は、ウェブサイトを参照のこと。
(Fanny Mlinarsky:米octoScope社)