07年夏モデル総覧(3)・ビスタ時代のモバイルノート
パソコンの新製品の中でも、このところ注目度が高まっているのが、モバイルノートだ。まだまだA4ノートの出荷水準には及ばないものの台数は増加の傾向にあり、各社とも製品の魅力を打ち出すことに再び積極的になってきている。【田村安史のパソコン進化論】
http://it.nikkei.co.jp/pc/news/index.aspx?n=MMIT0w000030072007
かつて、ソニーの「バイオノート505」が薄型デザインで一世を風靡し、三菱、シャープ、東芝といったメーカーがスリムさを競ってブームとなったのは約10年前のことだ。まだ携帯電話にiモードもない時代でインターネットは普及途上、無線LANはおろか有線LAN端子さえないパソコンがほとんど。当時のモバイルはバッテリーで使える時間も短く、USBメモリーもないためデータの引き渡しも手間がかかる。つまり、使いこなしに苦労をしてまで出先で持ち歩いても、文書作成くらいの仕事しかないアイテムといっても過言ではなかった。
しかし、今のモバイルは違う。無線LANもあれば、DVDドライブ搭載モデルも当たり前に選べる。いくらかキーボードや画面が小さめになり、USB端子の数が控えめになることを除けば、少なくとも低価格のA4ノートと比較して性能も機能も遜色はない。小型軽量で、バッテリー駆動も実効で3時間以上が常識的にできるのだから、むしろ価値は上ともいえる。
外出先でインターネットにアクセスしたり、デジタルカメラとともに持ち歩いて画像の確認やハードディスクへの保存をしたりといったニーズがいっそう高まるなかで、今や初心者層もパソコンを持ち歩くことに意味を見出し、進化したモバイルノートの有用性に気付き始めている。
「Windows Vista(ビスタ)」の登場は手持ちのノートの買い替えを検討する機会をもたらし、どうやらそれがモバイルノートへ目を向けるきっかけにもなっているようだ。
■堅牢性とSSDによる高速化をアピールするメーカーが増加
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インテルのデュアルコアCPU「コア2デュオ」。ただ、今回紹介するモバイルで搭載している超低電圧版のコア2デュオは、もっとパッケージが小さいタイプだ
今季のモバイルノートは、インテルの量産出荷を受けて多くの製品が新たな省電力CPU「コア2デュオU7500」を搭載。ビスタでは省電力の制御方法が変わったことや他の複合的な要因などから、XP搭載時よりも駆動時間が短くなる傾向にあるが、同CPUでは懸念されたほどの低下はなく、標準装備のバッテリーで3時間以上の駆動時間を確保しているモデルが多数。なかなか軽快な動きをもたらすことも知られ始め、市場に好感されている印象だ。
また、丈夫で壊れにくいのは松下電器産業だけではないとばかりに、堅牢ボディーを売りの1つとする新製品攻勢にも拍車がかかっている。持ち歩いて使うモバイルは、なにかと衝撃や圧力を受けやすい。外力を受ければ、ハードディスクなどは簡単に故障するし、液晶は割れたりつぶれたりもする。肝心な場面で故障で使えなくなったり、大事なデータを消失してしまったりするわけだ。実際にそういう憂き目にあっている人も少なくないのが現実で、広く受け入れられるには堅牢性や保護の手厚さが重要になるとの判断だろう。
今季はモバイルにとって追い風となる好材料があることも見逃せない。1つには、ワンセグ放送が予想以上の注目を集めている点。もう試してご存知の人も多かろうが、この放送は屋外や平屋建ての飲食店などでこそ受信がしやすく、まさにモバイル向け。この夏の新製品ではワンセグチューナーの内蔵モデルやカード型チューナーの添付モデルが増えている。
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ソニーのVAIO type G、VAIO type TのBTOモデルで実装している32ギガバイトのSSD。OSやソフトウエアの起動が高速になる
もう1つは、メモリーメーカーのSSD(Solid State Drive)への参入が活発化し始めた点だ。SSDは、メモリーカードなどに使われているフラッシュメモリーを主に利用し、ハードディスクであるかのように振る舞う形に構成した記録デバイスだ。
ハードディスクが回転するディスク上で浮いているヘッドを動かし、磁気で読み書きするのに対して、SSDではフラッシュメモリーに電気的に読み書きをする。可動部分がなく、ハードディスクの故障の大きな原因となるディスクとヘッドの接触(クラッシュ)もないため、衝撃に強く壊れにくい。また、読み書きにあたって、ディスクの回転の上げ下げやヘッド位置の移動を待つ必要がないため、作りや状況にもよるがハードディスクよりも速い動きが期待できるのが大きな特徴だ。
国内製品では、ソニーが昨夏受注を開始した「VAIO type U」にサムスン電子製の容量16ギガバイトのSSDを初搭載。OSや各種ソフトの起動時間を大幅に短縮している。
以降はしばらく搭載例がなかったが、ここにきてソニーがSSDの搭載機種を拡大したほか、デルも国内のモバイルよりも大きなボディーとなるがBTOでSSD搭載を選択できるモデルを発表した。そしてメモリーメーカー各社が6月にSSDそのものの発表を相次いで始めるなか、サムソンが64GBのSSDの量産を開始すると、東芝が7月末の発売予定で店頭販売モデルとして初のSSD搭載機を発表するというように、動きが急加速している状況だ。
■「変わらない安心感」がLet's note LITEの魅力
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Let's note LITE W5。12.1型液晶ディスプレーと光学ドライブを搭載。防水機能はサポートしない
では今季、ここまでにどのような製品が登場し、出来栄えや評判はどのようなものなのか。
かねてボディーの堅牢さからモバイルの代名詞のように扱われてきたのは、松下電器産業の「Let's note LITE」シリーズだ。いたずらに薄くせず、あえて一定の厚みを持たせて、折れやねじれ、つぶれに対する強度をとる。同時に柔らかさを持たせることで、厚みをとってできた空間ともあいまって衝撃を吸収しようというのが、その設計スタンスだ。
今季も実績あるその作りは堅持されている。カバンに入れたときなどに外部から受ける面圧力への耐性を向上。その一方で、飲料などをキーボード面にこぼしても被害が最小限ですむように、キーボード下に防水シートと排出孔を設けた作りの採用も拡大している。
リチウムイオン電池は満充電にすると化学的に不安定な傾向があるため、電池寿命を延ばすべく8割程度の充電にとどめるエコモードの装備も健在だ。
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Let's note LITE Y7。14.1型液晶を搭載するハイパワーモバイル。最新のセントリーノデュオプラットフォームに対応し、防水機構を装備
全体の方向性としては、軽快で長時間のバッテリー駆動ができ、壊れにくく信頼性が高いという基本を重視。ワイヤレスのヘッドセットやマウスなどが使えるブルートゥースやワンセグチューナーなどはやはり装備しない。職人気質の作りだ。
また、ラインアップがA4サイズで14.1型高精細液晶(1400×1050ドット)の「Yシリーズ」、B5サイズ(液晶は12.1型)で長時間駆動の「Tシリーズ」、B5サイズでDVDドライブ内蔵の「Wシリーズ」、より小型の「Rシリーズ」(液晶は10.4型)の4本立てなのも変わらないが、プラットフォームが必ずしも共通ではなくなっている。
Yシリーズでは新セントリーノデュオ対応をうたい、チップセットが新しく表示性能にも優れる「モバイルインテルGM965エキスプレス」、CPUも比較的速めの選択で低電圧版のコア2デュオのL7300を使う。A4サイズで、出先のみならず比較的高い頻度でオフィス内でも使う利用者が多いことに配慮してのものだろう。
一方、処理性能を考えれば同じ965系を多用したいところではあるが残念なことに965系には実装面積が小さなGMS版がない。そこで、ほかの3機種ではチップセットに「モバイルインテル945GMSエキスプレス」を採用。回路のレイアウトなどを見直し、より省電力となるように細かな改良を加えている。超低電圧版のCPUの採用と合わせて、限りあるバッテリー容量でもより長時間使えるようにする方向だ。