「“ゼネコン形式”で本社移転プロジェクトを半年で達成」、ユニ・チャーム 知名俊郎 情報システム部長
生理用品「ソフィ」「チャーム」、紙オムツの「ムーニー」「マミーポコ」などで特に女性によく知られるユニ・チャーム。ここ数年はアジア進出を加速させているうえに、子会社が手がけるペットケア事業も好調だ。グループ社員数が6000人を超すこの大規模企業は2006年10月、本社など東京都内に分散する3拠点の約1000人を、港区に建設された高層ビル内へ移転させた。
ユニ・チャームのIT戦略の遂行責任者である知名俊郎・情報システム部長は、「当社と同規模の企業が本社を丸ごと移転する際は、準備期間を1年から1年半は設けるとよく聞く。半年先に引っ越すと聞いてびっくりしたが、いい機会なのでIT環境を強化することにした」と当時を振り返り苦笑する。
移転を円滑に進めるため、ユニ・チャームはまず全社プロジェクトチームを結成。同チームが打ち出した方針を受けて、情報システム部内にインフラ部会を立ち上げた。ここで、セキュリティの強化、情報インフラの集約、コミュニケーション・インフラの強化の3つの目標を打ち出した。
これらのうち例えばセキュリティ強化面では、(1)ビル内のエリアごとに3段階でセキュリティレベルを定義してICカードで管理、(2)全社員に指紋認証機能付きのノートパソコンを配布、(3)複合機の利用の是非もICカードで管理、(4)四国など他の拠点から持参したノートパソコンの本社LAN への接続時の認証機能の強化---などといった施策を考えた。
また、情報インフラの集約に関する具体的な施策としては、各拠点・各フロアにあった共有ファイルサーバーを1台に集約。情報システム部による一元管理をしやすくした。もちろん、外部のデータセンターにある大容量のバックアップサーバーも使う。
コミュニケーション・インフラの強化面では、専用のPHS電話機や携帯電話機を使った無線IP内線電話システムを導入することを決めた。併せて、本社に10台程度あったテレビ会議システムを倍増させることにした。ユニ・チャームは「SAPS」と呼ぶ独自の経営管理手法を2003年10月から段階的に導入してきており、この手法は部長・室長クラス以上の幹部会議、各部門・各室ごとの会議、現場チームごとの会議など毎週多数の会議を要求する。遠隔地にいる社員も含めて会議への欠席者が1人も出ないよう、テレビ会議システムを積極的に活用しているのだ。
さらに、新本社内では社員一人ひとりが固定の席を持たない「フリーアドレス・オフィス」を実現することにした。情報システム部としては、情報漏えい防止に徹底的に配慮しながら、新本社の至るところに無線LAN装置と有線LANの接続口を設けなければならない。
以上のような多数の施策を実現するために、知名部長は適材適所で多数のITベンダーを使い分けようと決めた。しかし、短時間で移転計画を進めなければならないのに、多数のベンダーとやり取りし続けるのは不安があった。加えて、移転先のビルは引っ越す直前まで工事が終わらないので、工事会社との細かな折衝が頻繁に必要となる。
そこで知名部長は、「今回の移転プロジェクトでは、“ゼネコン形式”を採用しよう」と考えた。幹事会社を1社選んで、その会社に多数のベンダーを取りまとめてもらうのである。建設業界の専門用語が飛び交う工事会社との協議も代行してもらう。
数社にプレゼンテーションをしてもらい、幹事会社を決めた。「移転プロジェクトの在り方について、当社と考え方やスタンスが似ていて、しかも提案内容に対して質問したときにレスポンスのよかったITベンダーを幹事会社として採用した」と知名部長はいう。もっとも、幹事会社に任せっきりにしてしまうと、ITベンダー同士の利害関係の調整に手間取るのではないかと危惧した。
そこで、知名部長をはじめ情報システム部門のスタッフは必ずITベンダー同士の会議に参加するようにした。「エンジニア同士が細かな技術をすり合わせるときはあまり問題なかったが、各ITベンダーの営業担当者同士が話し合わなければならないような場面では意見調整に苦労した」と知名部長は明かす。
Profile of CIO
◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・当たり前のことですが、ITの専門用語を使わないという点です。私自身もコンピュータプログラムを書かなくなって何年もたつので、最新のIT用語の中には分からないものもあります。部下には、「決裁を仰ぐ書類を作る時は、読み手がすんなりと分かるようなビジネス文書にするよう心がけなさい」と言っています。そもそも、専門用語で言われると、聞き手は「こいつは何かをごまかそうとしているのか」と思われかねません。自分がやりたいことを深く理解していれば、専門用語など使わずに、平易な言葉で説明できるはずです。例えば、ITベンダーからの提案をそのまま鵜呑みにして上司に報告しようとすると、専門用語を羅列してしまいかねません。
◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・ ITベンダーが提供する商品やソリューションのパッケージには、年間保守料などいろいろな料金が含まれているが、実際のところ何の費用かさっぱり分からないものもあります。料金体系をもっと明確にしてほしいと思っています。
◆普段読んでいる新聞・雑誌
・「日経ビジネス」を昔からよく読んでいます。網羅的にいろんな話が出てくるのがいい。「日経コンピュータ」と「日経情報ストラテジー」も購読していますが、こちらは見出しをまず見て、興味をひかれた記事を重点的に読んでいます。ただし、どの記事でも書いてあることをそのまま鵜呑みにしないように心がけています。記事はある1つの方向からの見方を示しているものだからです。
◆ストレス解消法
・この3年間は毎週1回はジムに通って、マシンを使って有酸素運動をしっかりやっています。おかげで中性脂肪が改善されました。たいていは土曜日にジムに行って汗を流し、日曜日はのんびりしているのですが、最近は日曜日にSAPS(同社独自の経営管理手法)のためのドキュメントを書いていることが多いですね。
(杉山 泰一=日経情報ストラテジー) [2007/04/09]