高速無線LAN規格「11n」 課題残しつつも離陸へ
従来の倍の速度で電波の届く範囲も広い新規格無線LAN「IEEE802・11n」がいよいよ普及し始める。
http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20070510nt0f.htm
新規格に対応した無線LAN親機やノートパソコンが続々登場しそうだが、11nにはちょっとした問題がある。まだ、通信規格がきちんと決まっていないのだ。同じ11nの機器同士でもつながらないことがあるという。当面、混乱が続きそうだ。
ギガビット級の光ファイバーが家庭に敷かれ、ハイビジョン映像をLANでやり取りする時代がすぐそこまで来ている。ただ、家庭内の通信インフラは通信速度54Mbpsの11aや11g規格の無線LANが主流で、今後対応できない場面も出てくる。そこで、新たに準備されたのが通信速度108Mbpsの11nだ。
親機と子機に複数の無線機を搭載する仕組みで、例えるなら、リビングにいる3人が「異なる単語」を「同時」に書斎にいる2人に向けて発するようなものだ。受ける2人はうまくすれば3単語を一度に理解できる。話者(送信機)を増やして一度に伝える単語数を増やすという原理を採用して速度を上げている。
結構な新規格なのだが、問題は規格策定中に製品が出始めてしまったことだ。メーカーごとに仕様が微妙に異なっており、互いにつながらないことがある。おまけにバリエーションはさらに増える気配なのだ。
無線LANの規格はIEEE(電気電子学会)が決め、決定までにドラフト(草案)を何回か発表する。IEEEが06年1月に11nの「ドラフト1・0」を決めると、数社が1・0規格の製品を発売した。これらの製品は必ずしも互換性がとれていない。そして3月には「ドラフト2・0」が決まった。今後、2・0規格の製品が登場するが、1・0機器との間や、他メーカーの2・0機器間の互換性は誰も保証してくれない。
法改正も混乱要因に
さらに話を複雑にするのが法改正の動きだ。総務省は11nの普及をにらみ、5月をめどに、5GHz帯の周波数開放と一対の通信に使える周波数幅の拡大(20MHzから40MHzへ)を準備している。現在の11nは、11b/gと同じ2・4GHz帯を使っているが、改正後は、空いていて干渉が少ない5GHz帯も使用でき、速度は200Mbps以上出せるようになる可能性もある。
11nの規格が正式に決まるのは来年春ごろ。見切り発車を続ける各社が、5GHz対応、40MHz幅対応機器の出荷をそこまで待つとは思えない。法改正後、ドラフト11nのバリエーションが増えるのは必至だ。
ドラフト1・0から2・0、2・0から正式版へは、ファームウエアという機器内蔵ソフトの更新で対応できる可能性はある。しかし、法改正を受けた5GHz帯電波追加や周波数幅の拡大は、法的にも機器構造面でも、ファームウエア更新での対応は不可能だ。
08年春の購入が安全
互換性に関しては、11n機器を親子セットで買ってきて使う分には問題ない。が、ノートパソコンと無線LANルーターといった組み合わせでは注意が必要だ。同じメーカーだからといって安心はできない。例えば、NECのLaVieの今春モデルはドラフト11n規格の無線LANを搭載するが、NECアクセステクニカのドラフト11n対応ルーター「Aterm」とは、11n規格では接続できない。Aterm側は「ファームの更新で対応したいが、可能かどうかはまだわからない」という。
無線LAN機器同士の接続認証を行う業界団体「Wi-Fiアライアンス」は6月から2・0製品の互換性テストを始める。また、インテルは自社の11nチップを内蔵したノートパソコンとつながる無線親機の認証プログラムを始めている。
完全な11n機器を買うなら08年春まで待つのがベストだが、それ以前に選ぶなら、こういった認定・認証プログラムも一つの目安になるだろう。しかし、毎度のことだが、メーカーはユーザーのことをもう少し考えてほしいものだ。(南部健司・フリーライター/2007年4月24日発売「YOMIURI PC」2007年6月号から)
(2007年5月10日 YOMIURI PC)
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