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無線LANデジカメのマイルストーンになれるか・ソニー「DSC-G1」

デジタルカメラの進化は、とどまるところを知らない。手ブレ補正はもはや当たり前、高感度撮影機能や顔認識AFなど、次々と新たな機能を搭載する最新モデルが登場している。こうした流れの中、ソニーがリリースしたのが無線LAN機能を搭載する「DSC-G1」だ。これまでにもニコン、サンヨー、キヤノンが無線LAN搭載デジカメを投入したが、いずれも「業界標準」には至っていない。DSC-G1は本流となれるのだろうか。

●内蔵メモリー以外は一般的なスペック、「手持ち夜景」が面白い

3.5型の非常に大きな液晶モニターを搭載。多数の画像を閲覧するのにも向いている

 まずは基本スペックからみていこう。有効画素数は約600万画素、光学ズームは最高で3倍、手ブレ補正機能、ISO1000までの高感度撮影機能に加え、9点AF機能(顔認識機能は非搭載)と、最近のコンパクトデジカメでは一般的なラインだ。ボディーの背面いっぱいに展開する3.5型の液晶モニターと、2ギガバイトの内蔵メモリーが、いくらか気を引くかというところである。

 液晶モニターの画面は、精細感が高く確かに見やすい。内蔵メモリーを2ギガバイト搭載することで、メモリースティックを差さなくても高画質のモードで600枚以上撮れる。動画も640×480ドットの解像度で約90分も撮れる。人に見せたい写真などを内蔵メモリーに入れて持ち歩くことも可能だ。メモリー内に撮りためた画像は、日付などで自動的にグループ分けされる。

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「手持ち夜景」機能で撮影したサンプル。通常の夜景撮影ならブレてしまう場面だが、手持ちでもブレない

 面白いのは新機軸の「手持ち夜景」という撮影機能。1度のシャッターで長い露光をせず、短い露光を2~6回繰り返してそれを合成するという機能だ。十分な露光量を得つつ、手持ちの夜景撮影につきもののブレを低減するという仕組みである。

 試してみると、およそ0.5秒間隔で6回ほど露光していた。つまり、シャッターを押してから3秒程度、構図がそのままになるように持っていなければならないのだが、効果は上々。もっと輪郭が甘くなるかと思っていたが、被写体さえ動かなければ、かなりビシッと写る。これなら夜景の撮影もぐんと手軽に行えそうだ。

 では問題の「無線LANの機能性」はどうか。

 「カメラに無線LAN」と聞いたとき、プロやハイアマチュアが期待するのは、撮影した画像をワイヤレスでパソコンに即時転送する機能だろう。シャッターを切り、メモリーに保存されると同時に、傍らに置いたパソコンへと画像をすみやかに転送。パソコンの大きなディスプレーに表示させることができれば、微妙な露出の具合や、ライティングの状況、色かぶりの有無、被写体の人物の表情や雰囲気などがすぐに確認でき、効率的な撮影が行えるからだ。カメラとパソコンをUSBやIEEE1394ケーブルで接続して画像を転送するシステムもあるが、機動性やセッティングのしやすさに難がある。

 一般ユーザーであれば、撮影した画像を無線LANで飛ばし、すぐにテレビなどに映し出せれば、パーティーの席などでおもしろい使い方ができると考えるだろう。無線でLANにつながるのだから、携帯電話のカメラ機能と同じように、画像をメールに添付して送付したり、プリンターに転送して印刷できたりすれば便利だと期待するのではないか。

 結果から先に言うと、DSC-G1の無線LAN機能はそれらに近い要素は持つが、そのいずれとも違う仕上がりだ。そうした既存の活用法をフォローするよりも、技術的に無理のない範囲で新提案をしたい、ということなのかもしれない。

●無線LANでできることは3つ、複数台で使うのが大原則

 

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DSC-G1で公開する画像を選択しているところ

できることは、具体的には3つだ。1つめは、DSC-G1内の画像を「DLNA規格」(厳密にはガイドライン)に対応した機器を使って見ること。DLNA規格とは、ホームネットワークで結ばれたパソコンやAV機器の間で、相互にコンテンツをやりとりする規格のことだ。多くのメーカーパソコンのほか、ソニーの「ブラビア」シリーズや東芝の「レグザ」シリーズの一部など、薄型大画面テレビでもこのDLNA規格に対応するものが増えてきた。

 使い方は、まずDSC-G1側で、無線LANの親機(アクセスポイント)と接続するための設定を行う。そのうえで、DSC-G1の「ホームメニュー」から「ツール内の画像公開」を選択。ここから「どの写真をDLNA対応機器から見られるようにするか」を選ぶと、上記のテレビやパソコンでDSC-G1内の画像を表示できるようになる。スライドショー形式での画像表示も可能だ。この機能の利点は、メモリーカードリーダーやケーブルで接続してパソコンに転送したり、フォトビューワーなどを用意しなくても、より身軽な状態でパソコンやテレビに画像が映し出せることだ。

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パソコンソフトのneroに搭載されているDLNA規格対応のソフトからDSC-G1の画像を表示しているところ

 難点は、アクセスポイントとDSC-G1の接続など、ある程度の「仕込み」が必要なことや、無線の状態によってはレスポンスが鈍くなりがちなこと、画像公開の作動中は撮影ができないことなど。またこの機能では、DSC-G1を画像の公開モードで待機させ、DLNA対応機器側から画像を呼び出す形式を取っているので、カメラマンにパーティー会場を練り歩いてもらい、撮ったそばからスクリーンに映し出す、というような使い方は不可能だ。

 2つめは「ピクチャーギフト機能」。文字通り、ほかのDSC-G1に、無線LANを通じて撮った写真を転送してプレゼントする機能である。DSC-G1同士で、それぞれホームメニューから「コミュニケーション」を選択し、「WLANボタン」を押して接続。この場合、内蔵の無線LANはアドホックモードで動くため、アクセスポイントとの接続設定は必要ない。接続が確保されると、プレゼントしたい画像を相手機に送れるようになる。

 

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スライドショー形式での表示も可能

3つめは「コラボショット機能」。やはりホームメニューの「コミュニケーション」から「コラボショット」を選択すると、この機能が利用できるようになる。起動すると、無線LAN接続をキープしたまま撮影モードになり、以降、それぞれのDSC-G1で撮影された画像が、シャッターを切ったそばから相互に送りつけられるようになる。アドホック接続は4台まで可能で、見通し距離で20メートルくらい離れていても送受信が行える。

 1つの被写体を複数のDSC-G1で、異なるアングルから異なる撮影設定で撮りあったり、1台は撮影に集中し、もう1台は写りの確認用に徹して撮り手に指示を出したり、といった活用のしかたが考えられる。

 実際にこの機能を使い始めると、どんどん画像が増えていく。おそらくはこれが、3.5型の高精細液晶モニターと、2ギガバイトのメモリーを内蔵した理由の1つなのだろう。液晶は最大100枚までのサムネイル表示が可能、メモリーにも余裕があるため、次々と画像が増えても十分に対応できる。

●複数台ないと意味がない無線LAN機能、今後に期待

 まとめると、DSC-G1の無線LAN機能では、カメラから直接メールを送信したりウェブにアップロードしたりはできない。また、DLNAによる接続では、画像が閲覧できるだけなので、パソコンにデータを保存したいときには、結局のところメモリーカードリーダーやパソコンとの接続ケーブルを使う必要がある。

 「ピクチャーギフト機能」と「コラボショット機能」についてはさらにやっかいで、互換性のある機能を持つ製品がほかに存在しない。そのため、DSC-G1が複数ないと利用することもできないのだ。コラボショットの活用範囲は広そうだが、現時点ではユーザー同士がチームを組んで撮影をするとか、教育目的や調査目的で団体が複数台購入して利用する形でないと、その機能は生きてこないだろう。

 さらに惜しいのは、コラボショット機能での画像送信の相手に、パソコンが含まれていないことである。ファームウェアのアップデートで、ぜひともこの機能を追加してほしいと思う。

 ソニーのDSC-G1は、「デジタルカメラへの無線LAN機能の搭載」を根付かせられるかどうか。また、その機能を販売実績に結び付けられるか。

 これは、使い勝手をさらに向上するべく機能のアップデート図れるかどうか、そして無線LANによる柔軟な接続性を生かしたサービスの提供、また、DSC-G1と機能的な互換性を持つモデルを、今後どのくらい増やしていけるかにかかってこよう。各社の主力モデルは、有効画素数700~800万画素で実売4万5000円といったところだ。しかしこのDSC-G1は、有効画素数600万画素で6万円弱。機能的には妥当だが、いささか割高感を感じるのも否めない事実ではあろう。そうした「壁」を超えて訴えかけるプラスアルファ要素を期待したいものだ。

[2007年4月25日]

  • 筆者紹介-

田村 安史(たむら やすふみ)

技術評論家

略歴

 高校時代からフリーの技術者として活躍し、85年から評論活動を展開。

 情報機器分野で辞典や解説記事を数多く手がけたほか、90年代はパソコンやインターネットの世界を幅広い層に紹介。エレクトロニクスを中心に幅広く「技術」に精通し、雑誌、新聞、テレビなど各メディアにコメントや寄稿をしている。雑誌『特選街』では家電製品の記事を監修するなど、趣味や生活に密着したジャンルにも造詣が深い。

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