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第3回 「FONはビジネスに使えない?」の本当とウソ (1/3)

無線LANの共有プロジェクト「FON」は、1万8000人のユーザーと9500以上のAPを持つサービスに発展した。これを仕事に利用しない手はない。

2007年04月27日 08時00分 更新

連載「再考・ワイヤレスネットワーク」では、本記事を含む以下の記事を掲載しています。

【第1回】わたしがモバイルをしたくない理由

【第2回】なぜ、我が社には無線LANがない?

【第3回】「FONはビジネスに使えない?」のホントとウソ(本記事)

 日本のモバイル環境はいまだに黎明(れいめい)期から脱却していない。ひとたび社外でノートPCを使おうとすると、苦労してアクセスポイント(AP)を探し回るハメになる。なにしろ、大手事業者が運営するAPは、NTTコミュニケーションズの「ホットスポット」で約3500、NTTドコモの「MZone」でさえ4700程度しかないのだ(関連記事参照)。

 この程度の数では、モバイルユーザーにとってはインターネットカフェやマンガ喫茶を探し回るといった次元から脱却することは難しい。そんな状況の中、2006年12月に上陸した「FON」が、日本のモバイルの世界に新たな新風を吹き込もうとしている。

FONはまさに「公衆無線LAN 2.0」

 FONはスペインの起業家、マーティン・バルサフスキー氏が考案した無線LANサービス。2005年に英FON Wirelessを設立し、欧州企業として初めて米Google、そしてSkypeからの出資を受けて世界的なビジネスへと発展した。今年3月には、伊藤忠商事、エキサイト、デジタルガレージのベンチャーキャピタルであるDGインキュベーションからの出資を受け、日本でのビジネスも本格化しつつある(関連記事参照)。

 FONは、これまでに登場した公衆無線LANサービスとは一線を画する。自分のインターネットアクセス回線をほかの利用者に開放/共有することによって世界中にAPを広げるという自律的(コンシューマージェネレーテッド)なサービスであり、「エリア拡大はユーザー次第」という前代未聞のムーブメントである。

 FONを利用するには、「La Fonera(ラ・フォネラ)」という専用の無線ルータを購入し、それをほかのFONユーザーが使えるようにユーザー登録と機器のセットアップをする必要がある。この無線ルータはまったくセキュリティのかかっていない「公開用」と、WPA/WPA2、もしくはWEPで保護された「自分用」の2つのSSID を同時に運用する。

画像 FON専用の無線ルータ「La Fonera」はフォン・ジャパンのページや九十九電機で購入できる

 FON APを利用するには、自分のIDをオンラインサインアップ(無料)で取得し、かつ購入したLa Foneraを有効化してインターネット経由でFONに通知する必要がある。これで世界中のFON APが利用できる。利用に当たっては、FONユーザーであれば料金はかからない。1980円のLa Foneraさえ購入すれば、あとはどんなAPも無料で使えるのだ。

 どこにFON APがあるのかは、英FON Wirelessが提供する「FON Maps」で確認できる。また、日本では有志によって「Simple FON Maps」や「FON Active Router Viewer」も公開されている。いずれもGoogle Mapsをベースにした地図検索が可能で、APが地図上にマッピングされ、非常に分かりやすい。さらに、携帯電話向けの「FONサーチ」などの検索サイトもある。

 これらの地図を眺めていると、日々FON APが広がっていることを実感する。特に大都市圏は面展開の広がりを見せており、既存の公衆無線LANサービスがカバーしていないエリアでの利便性が期待できる。すでに国内のユーザー数は1万8000人、9500以上のAPが稼働し、その数は今も増加中だ。

画像 「Simple FON Maps」で東京中心部のFON APの場所を表示した。まさにAPで埋め尽くされている様子が分かる(クリックで拡大)

 また、スペイン、イギリス、ドイツ、フランスなどの欧州圏をはじめ、韓国、台湾、北米、オーストラリアなど、世界13万以上のAPを日本国内と同じように、シームレスに利用できるのも大きな魅力だろう。

第3回 「FONはビジネスに使えない?」の本当とウソ (2/3)

2007年04月27日 08時00分 更新

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FONはビジネスに使えないのか

 FONは大きな広がりを見せているが、問題がないわけではない。まず第一に挙げられるのが、セキュリティの問題である。

 La Foneraは公開用APからアクセスしてくるFONユーザーのトラフィックをルーティングテーブルで制御し、LANにアクセスできないようにしている。しかし、それ以外のセキュリティ機能は実装されていないため、社内LANとの接続は厳しい。設置場所はオフィスではなく、機密情報漏えいの危険度が比較的低い社員個人の自宅などにするべきだろう。

 なお、自宅に設置するときは、La Foneraの上流にルータを設置してネットワークセグメントを分割しないようにしよう。La Foneraではルーティングテーブルの設定を変更できないので、そのままではLANが外部に丸見えになってしまう。こうなると、手持ちのルータなどでセキュリティ対策を講じざるを得なくなり、LANを危険にさらす恐れがある。

画像 La Foneraのネットワーク設定画面。基本的に家庭で使うことを前提としており、必要最低限の設定項目しかない(クリックで拡大)

 反対に、ほかのFON APに接続する際も注意が必要だ。見ず知らずのユーザーのLANを自分のトラフィックが通過するわけで、APを悪意で設置する者がパケットをキャプチャーしたり、接続したユーザーの共有フォルダへのアクセスを試みる危険性はゼロではない。このあたりは最も心配なところだろう。

 次に挙げられるのが、コネクティビティーや信頼性の問題。FON APはユーザーが設置したもので、接続性は保証されていない。また、個人やオフィスの回線の帯域を使うため、利用できる帯域はそのAPを設置したユーザー任せで、場合によっては速度がかなり遅くなってしまうかもしれない。

 また、公開用のFON APで筆者のオフィスLANとVPN(PPTP)で接続した場合、なぜか数分でVPNセッションが切れてしまい、実用にはならなかった。電波の強度は十分にありノイズレベルもさほど高くないので、何か別の原因があるものと思われるが、詳細は不明だ。このような問題により、ちまたでは「FONはビジネスに使えない」という固定観念が支配的なように思える。

 だが、FONの広大なカバーエリアは非常に魅力的。特に事業者系公衆無線LANサービスがカバーしていないエリアで威力を発揮する。メールと Webブラウジングなどに用途を限定し、必要なセキュリティ対策を施せば、FONをビジネス用途に活用できないわけではない。FON AP利用時の注意点について以下にまとめてみた。

・Windowsのセキュリティレベルを確保する

 これは、FONに限らず公衆無線LANサービスを利用するときの基本であるが、クライアントセキュリティは十分に確保しておこう。ウイルス対策ソフトはもちろん、ファイアウォール機能や不正アクセス検知(IDS)機能を備える統合クライアントセキュリティソフトの導入が望ましい。

画像 マルウェア対策やファイアウォール機能など、セキュリティ対策を十分講じることは公衆無線LANサービスを使う上で重要だ。画面はシマンテックの「Norton 360」をインストールしたWindows Vistaの状況を「セキュリティセンター」で確認したところ

・機密性の高いメールはやり取りしない

 FON AP利用時は、できるだけ機密性の高いメールを送受信しないようにしよう。しかし、どうしてもやり取りしなければならない場合は、接続先AP上でデータを傍受されることを考え、メールデータはすべて暗号化しておく。

 具体的には、POP3S/SMTPSといったSSL暗号化メール機能を有効化にして、APOPに対応していればPOPパスワードも暗号化するようにメールクライアントソフトで設定しておく。もし、SSLメールが使えないメールサーバの場合は、本文には機密性の高い情報は記載せず、Word文書やテキストファイルに記述し、ファイルを暗号化して添付するのが最も安全だ。

第3回 「FONはビジネスに使えない?」の本当とウソ (3/3)

2007年04月27日 08時00分 更新

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                                              池田冬彦,ITmedia]

・Web利用の基本はブラウジング

 Web利用は基本的にブラウジングにとどめておき、SSL非対応の掲示板やWebメールなどは利用しない方がいい。SSLで暗号化されていれば、まずパケットの内容は簡単には分からないので安心だが、オンラインバンキングやショッピングなどトランザクション系のサービス利用は、コネクティビティーの信頼性の問題もあり、あまりお勧めできない。

・ファイル転送サービスなどは使わない

 比較的大きなファイルを転送する際に使われるインターネットのファイル転送サービスも、データ傍受の危険を考えれば使わない方が無難だ。どうしても送受信する必要があるときは、ファイルを暗号化しよう。

 以上のポイントを見て「なんだ、一般的な公衆無線LANサービス利用時の注意点とほとんど同じじゃないか」と思われることだろう。確かにその通りで、WEPが主流の事業者系公衆無線LANサービスでもユーザーが同じWEPキーを使うため、簡単に解読され、データが傍受されるリスクがあるわけだ。ちなみにFONはWPA2-PSK(WPA2で使われる事前共有秘密鍵)に対応している。

 このように、単に人様のLANを使うからFONは危険、と一概に決めつけるのは早計だ。積極的に街中でインターネットアクセスを行うなら、事業者のサービス、FONの区別なく、日頃からこれらの注意を念頭に入れて安全に利用すればいい。これで、もうすぐ1万APになろうとしているFONの恩恵を十分に受けられるのだ。

 次回は、FONにも対応したSKype対応IP電話「LAN-WSPH01WH」(ロジテック製)を利用して、無線LANサービスでの使い勝手を検証する。

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