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第318回:コグニティブ無線 とは

大和 哲

http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/keyword/34018.html

1968 年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、 CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら。

(イラスト : 高橋哲史)

■ 別名「認知無線技術」

 「コグニティブ無線」とは、端末や基地局などが周囲の電波状況をチェックし、その状況に応じて、ユーザーに気づかせないまま、周波数や方式を変えて通信するという技術のことで、「認知無線」とも呼ばれます。コグニティブとは、「認知的な」を意味する英単語の“cognitive”から来ています。

 この方式を利用すると、たとえば通信機器は、自分が利用している無線方式やエリアが込み合ってきたり通信品質が悪くなったりした場合、あるいはもっと良い条件の方式・エリアが見つけた場合、自動的により良い方式へスイッチできます。たとえ、携帯電話の電波を使った通信から、WiMAXや無線 LANという異なる通信方式だったとしても切り替えが行なわれるのです。


コグニティブ無線は、別名「認知無線」とも言う。端末や基地局などが周囲の電波状況を自分で知り、最適な周波数や方式で通信を行なう無線技術だ

コグニティブ無線は、別名「認知無線」とも言う。端末や基地局などが周囲の電波状況を自分で知り、最適な周波数や方式で通信を行なう無線技術だ

 かつては、携帯電話と無線LANというような異なる方式、かつ異なる周波数の通信方式をサポートしようとした場合、それぞれ異なる通信用ハードウェアを搭載しなければならなかったため、あまり現実的とは思われていませんでした。なぜなら、2つの方式に対応しようとするためには、必要となるコスト、あるいは筐体サイズが増大するからです。

 一方、最近では、“ソフト無線”と呼ばれる技術などによって、コグニティブ無線が現実的なものになってきました。ソフト無線装置とは、無線機内の、たとえば受信部分をADコンバーターやデジタルシグナルプロセッサなどのデジタル機器で構成した装置です。ソフト無線装置は、受信した電波を一度AD コンバーターでアナログデジタル変換し、復調などの部分をデジタルシグナルプロセッサやマイクロプロセッサとソフトウェアで行なうため、ソフトウェアの切り替えで、複数の周波数や無線方式に対応できるのです。

 ソフト無線の応用分野として、このコグニティブ無線の実用化が現実味を帯びてきたわけです。


■ 研究は進み、デモも実施

 2007年現在、コグニティブ無線は、実験段階の技術として研究所などで研究が行なわれ、その成果が発表されています。たとえば、2007年4月に開かれた無線ネットワーク関係の技術展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2007」では、情報通信研究機構(NICT)、KDDI研究所がコグニティブ無線技術のデモを行ないました。

 コグニティブ無線が実現するメリットとしては、まず、その時々で最適な無線通信方式を選ぶ手間をユーザーにかけさせない、ということがあげられます。これまでは、無線LAN対応の携帯電話を使っている際に、屋外ではHSDPAを選択し、自宅ではさらに高速な無線LANを使うというような場合、ユーザー自身が通信モードを切り替えなければならなかったわけです。

 しかし、今回の展示会で披露されたデモでは、携帯電話やWiMAX、無線LANといった周波数も方式も違う複数の通信方式から、環境に応じて、最適な経路を選ぶことでスムースなデータ通信を可能とするようなシステムが紹介されていました。

 このデモでは、通信時の物理的に近い層、つまり、実際にコグニティブ通信によって切り替われられる層と、ユーザーが操作する部分であるアプリケーション層の間に、仮想MAC副層を設定し、ここで通信しているデバイスを認識し、データをそちらに回すことで、サーバや端末からは、通信方式が変わってもソフトやユーザーには切り替えを意識させないように、スムーズに通信経路を切り替えるできるようになっていました。

 また、限りある周波数帯を有効利用できる、というのもコグニティブ無線に込められている期待の1つです。電波は、その使える周波数帯などには限りがあり、その意味では「限られた資源」と言えるでしょう。そのうえ、電波はさまざまな機器の通信に使われ、その需要は非常に増えています。

 電波は、これまで「ある通信方式・システム」、あるいは「特定の事業者や団体に」というように、周波数や地域、出力ごとに硬直的な使い方が決められています。これはわかりやすい割り当て方である反面、ある周波数帯はある時間帯は非常に空いているのに、別の周波数帯では同じ時に通信量が多くて輻輳し、さばききれないこともある、というようなことも発生し得ます。これは、非効率的な電波の使い方であるとも言えます。

 コグニティブ無線は、そのときそのときで、空いているかどうかを判断して、その周波数・通信方式を利用できるので、電波全体で見ると、より効率の良い帯域利用ができます。そのため、電波の効率的な共同利用のための要素技術としても注目され、研究されている要素技術の1つなのです。


■ 関連記事

・ KDDI研、“データ放送経由で輻輳を防ぐ”デモ

・ NECやNICT、通信切替技術のデモ


(大和 哲)

2007/04/10 12:05

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