フォン・ジャパン社長インタビュー
http://japan.cnet.com/interview/story/0,2000055954,20340989,00.htm
英FON WIRELESSの子会社であるフォン・ジャパンは、2006年12月5日より「FON」のサービスを開始した。このサービスは、同社が提供する無線ルータ「LaFonera」を自分の利用する回線に接続して、ほかのFONユーザーが利用できるアクセスポイントとして開放するという無線LANの共有サービスだ。
FONでは3種類のユーザーカテゴリを設定している。1つ目は、利用する無線LANのアクセスポイントをほかのFONユーザーに開放するかわりに、ほかのFONユーザーの設置したアクセスポイントを無料で利用できる「Linus(ライナス)」。2つ目は、アクセスポイントを有料で開放するかわりに、ほかのアクセスポイントも有料で利用する「Bill(ビル)」。3つ目は、アクセスポイントを用意せず、有料でほかのユーザーが設置したアクセスエリアを利用する「Aliens(エイリアン)」だ。
フォン・ジャパンでは現在日本でLinusのサービスのみを提供している。一部では、インターネットサービスプロバイダ(ISP)のインフラを契約者以外にも提供することになることから、無線LANの「ただ乗り」を増長するという指摘もあるFONだが、アクセスポイントを設置できる建物の少ない住宅地などでもサービスを利用できることもあり、注目を集めている。サービス開始から1カ月弱、フォン・ジャパンCEOの藤本潤一氏に改めて現状を聞いた。
- 日本でのサービスを開始して1カ月ほどが経過しました。ユーザーの増加状況を教えて下さい。
フォン・ジャパンCEOの藤本潤一氏 FON全体の規模としては、現在世界144カ国でサービスを提供しており、ユーザー数が22万人(1月5日時点)を超えています。また、日本では2006年12月5日から5日間、無料でルータを提供する「5daysキャンペーン」を実施したところ、8500人に登録いただき、現在では1万2000人(1月5日時点)近い登録ユーザーがいます。
まだ登録ユーザーのすべてにルータを配り終えていない状況ですが、東京都内を中心に約1万2000近くのFONアクセスポイントが存在することになります。また韓国、台湾でもほぼ同時にサービスを開始していますが、特に台湾では1万6000人以上と急激にユーザー数が伸びています(編集部注:1月8日時点では全世界のユーザー数は24万、日本国内では1万3000となる)。
- 英国本社では日本のマーケットをどう見ていますか。
本社の日本に対する期待はかなり高いですね。法人を作って事業者として登録し、カスタマーサポートを充実させるなど、時間をかけてしっかりした体制を構築せよと言われています。特に日本のインターネット環境は、ADSLの普及率が高い上に家が密集しており、FONに適しています。サービス開始後の勢いもあり、可能性のあるマーケットとして高い期待感を持っているようです。
- サービス開始時の記者会見ではルータの販売や広告での収益について話していらっしゃいましたが、今後はどのように収益を得ていくのでしょうか。
最初の1年間は、Linusユーザーへのルータの販売収益と、2007年に導入予定のAliensユーザーへの課金が中心になります。そして2年目からはコミュニティサイトを運営し、そこでの広告やアフィリエイトによって収益を上げていく計画になっています。
ただ、現在でも主にサービス業などの法人から「利用したい」という問い合わせが非常に多く、また家電メーカーから「端末を販売したい」といった打診も増えています。このような傾向は海外にはない、日本だけのものですので、日本独自の展開ということもあり得るかも知れません。
Aliensの課金については、欧州では1日3ドルで設定していますが、日本での価格設定はまだ決定していません。ただ、あまり安い金額にはしない方向で検討しています。これは、FONがいわゆる無線LANの「ただ乗り」を増長させるのではなく、FONを導入することで無線LANアクセスポイントを整理し、またSSIDなどによるセキュリティ機能によって無法状態を停止させることを目的としているためです。
日本でのAliensの課金については1日500円程度を予定しているという 欧州での1日3ドルという価格設定は、その金額で4日間も利用すればADSLを導入した方が安いということになります。あくまでADSL環境を前提としているため、ただ乗りを排除する効果も狙っているのです。日本でも同様の考えから、おそらく1日500円前後の価格設定になると思います。
支払い方法についてもまだ未定ではありますが、コンビニエンスストアでのカード販売が現実的と考えています。ただ、フォン・ジャパンではあくまでユーザーの利便性を重視していますので、支払い方法にも幅を持たせていくことになるでしょう。
- LinusとAliensについては話が出ていますが、Billの日本展開はどのように考えていますか。
アクセスポイントを有料で開放し、ほかのアクセスポイントも有料で利用するBillについては、現在のところ、日本での展開は未定です。有料でアクセスポイントを解放するには、日本では通信事業者としての登録が必要になる可能性があります。もちろんそうすればサービスの提供は可能ですが、よほどの密集地域か過疎地域でない限り有効なサービスとはいえず、日本の事情に合っているかどうかは微妙です。現在は模索中、検討中といったところです。
欧州ではADSLを退会する理由が、「夜間あるいは日中しか利用していないから」というケースが多くあります。このようなユーザーがFONを利用することによって帯域を有効利用できたり、海外などほかの場所でもFONを利用できますよね。またBillユーザーであれば利益を得られるといったメリットもあります。日本でも同様に、ユーザーにメリットがあるのであればBillの導入も検討していきたいと考えています。
- ISPの契約約款によっては、契約ユーザー以外の回線利用を禁止しています。
FONのサービスは「ただ乗り」ではなく、ISPの退会率低下にも有効なサービスだと語る その点に関してはポジティブに見ています。FONの普及がADSLの退会率低下につながることは欧州で実証されていますし、多くのISPがFONに大きな興味を示しています。事実、欧州では特に問題は発生していませんし、日本でもネガティブな意見やクレームも現在のところありません。
ISPの契約時の約款などといった問題はありますが、急にすべてを変えられるわけでもないので、半年といった長いスパンでじっくりとサービスを作り上げていきたいと思っています。FONもISPもゴールは同じですからね。現在エキサイトと提携していますが、ほかにもいろいろなISPと交渉が進んでいます。
- FONの競合サービスはどこになるのでしょうか。
現在のところ、競合と呼べるサービスはないように思います。無線LANという視点ではあるかも知れませんが、そのほとんどはビジネスのニーズであって、今後もニーズは増えていくでしょう。ですが、わたしたちはそこにフォーカスしているわけではありません。あくまで個人ユーザーにフォーカスしていて、たとえば住宅地などで使いたいときに使いたい場所でインターネットを利用できる、しかもセキュリティがしっかりしていることを目指しています。これをわたしたちは「インフラ 2.0」と呼んでいますが、フォーカスしているのはライトな利用ユーザーなんです。
ライトなユーザーがお互いにインフラを共用する。だから無料で提供できるのです。わたしたちはプラットフォームを提供しているだけで、インフラはユーザーのものを使用しています。そしてそれを活性化するためにコミュニティを提供していく。投資がないから無料にでき、ユーザーにメリットがあるわけです。ビジネス用途の場合は、今すぐに品質の高いインターネットアクセスを利用することが前提となるため、費用が発生しても構わないということになり、それはそもそもFONとはモデルが異なるわけです。わたしたちはあくまでも、個人ユーザーにメリットのあるサービスを提供していきたいと考えています。
- この1カ月の率直な感想をお聞かせ下さい。また今後のサービス展開について教えて下さい。
予想以上のユーザーに登録いただき、注目されていることを実感するとともに、自信にもなっています。フォン・ジャパンのサイトではアクティブユーザーを地図上で確認できるようになっていますが、この表示がどんどん増えていくのを見るのはうれしいですね。サービス拡大のお話しもたくさんいただいています。現在はサポート体制を充実させているところで、ここでしっかりと対応できるようにしておかないと、続いていかないと考えています。
ユーザー数は、最初の1年間で7万5000人を目標としていますが、個人的にはもう少しいきそうな印象があります。ただ、アクセスポイントにばらつきがあったり、半径が小さかったりと、弱い部分も見えてきています。まずはこのあたりをしっかり対処していきたいと考えています。目標は7万5000ユーザーですが、数だけでなく、アクセスポイントの接続状況などの面でクオリティの高い7万5000ユーザーを目指したいと思います。
アクセスポイントが2~3万程度に増えた時点でAliensサービスも開始する予定です。無線についてもWi-Fiにこだわっているわけではありません。将来的にはWiMAXなども視野に入れて柔軟に対応していきたいと考えています。
FONのアクセスポイントを示した地図。緑色の丸印が現在アクティブなアクセスポイント